騎士志望のご令息は暗躍がお得意

月野槐樹

文字の大きさ
287 / 324
第3章

第286話 イーモコール

しおりを挟む
ラドロのパーティメンバーもロアン君達も朝食はまだだったらしい。
冒険者ギルド脇のベンチで食べるというので、温風魔法で壁を作った。

「すまんな。気を遣ってもらって。」
「役に立ったなら良かった。」

何か他に食べる予定だったのかと思ったけど、適当なパンを買う予定だったそうで、焼きたてなので喜ばれた。

「本当はイーモにする予定だったのでござるが品切れだったでござる。」
「「「イーモ!」」」

イーモと聞いて、ロアン君達が一斉に腕を振り上げた。それを見てユリウスも嬉しそうに腕を突き上げている。

「イーモの代わりに焼きたてパンでござる。」
「温かくて美味しいです!ありがとうございます!」

パンを両手でモグモグと齧っている。

温風魔法で壁を作ったついでに消音魔法も発動させた。まあ、誰か聞き耳を立てているわけでもないんだけど。

「もう少ししたら出発だから、一応連絡とれるように、しておこうと思って。」

ラドロ達が暫くツヴァンで過ごすと言っていたから、ツヴァンでも会えそうだけど、何かあったらツヴァンの商業ギルドに連絡をいれてもらうように伝えた。

「商業ギルド?冒険者ギルドじゃなくて?」
「冒険者ギルドでも良いけど、商業ギルドの方が早く伝えてもらえるようにしておけるから。こっちがツヴァンに居なくても連絡してもらえるんだ。」
「へえ。商業ギルドに登録しておくと便利なんだな。」
「有料ではあるけどね。」
「まあ、そうか‥‥。」
「都度料金じゃないから遠慮しないでね。ラドロ達へは、冒険者ギルドに連絡した方が良いのかな。」
「そうだな‥‥。紹介状を送ってもらう返事は商業ギルドで受け取る事になっているが。」

口座開設の為の紹介状を書いて送ってもらうように実家に頼んでいて、その返信はツヴァンの商業ギルドに送ってもらう事にしたそうだ。
その為、返事が来たかどうか定期的にツヴァンの商業ギルドに確認に行く予定らしい。
まあ、だけど、紹介状が届いたら商業ギルドに頻繁に行く必要もないだろうから、連絡は冒険者ギルド経由の方が確実かもしれない。

俺とジョセフィンは商業ギルドと商会経由で、ツヴァン以外に滞在していても連絡がつくようにしてある。

「ツヴァン以外の商業ギルドからでも連絡がつくからね。もしよかったら拠点を移したりしても連絡くれると嬉しい。」
「そうか。ありがとう。連絡するよ。」

ツヴァンに滞在するのは、雪が少なくて、辺境程魔獣が強くないからだと思う。冬の間の活動の為なのだったら、春になったらまたどこかに拠点を移すだろう。
そうなった時も一応連絡が取れるようにしておこうと思ったのだ。

‥‥そんなに用件はないかもしれないけれどね。ロアン君達は春になったら学園に入学する。
ロアン君達が兄と連絡が取れる手段の一つになれば、いうことも考えてのことだった。

「おおお!もしかして、拙者がアリアス領の商業ギルドに行っても、連絡できるということでござるか?」

ユリウスが声を上げた。ツヴァン以外の商業ギルドからでも連絡ができるという言葉に反応したらしい。

「‥‥手紙を出すとかって、普通そういうものだろう?まあ、伝手があるから早くは伝わるけど。」
「居場所がわからなくても連絡がつくというのは凄いでござるよ!」
「俺達そんなにあちこちウロウロしてないと思うけど。」
「今も移動中でござる。」
「‥‥まあ、そうか。」

確かに言われてみれば、移動している時間が長いんだよな。帰省して往復している途中でも連絡がつくというのが嬉しいようだ。
それなら魔鳥便も教えようかな。

朝食用のパンを食べ終わった後、残りのパンをそれぞれ布に包んで懐にしまった。
そしてロアン君がお礼を言ってお辞儀をしてきた。

「すごくお世話になりました。この街でのこととか、口座の事もだけど、デヴィンの入学の事も‥‥。」

ロアン君が姿勢を正して礼を言い始めたのを見て、ローレ嬢とデヴィン君が慌ててそれに習った。

「「お世話になりました!」」

まだ、途中の街のネーダベルクやツヴァンでも会うとは思うんだけどね。でも出会った時に比べて表情が明るくなっているし、
感謝の気持ちは伝わって来た。

「「「イーモ!」」」
「「「イーモ!」」」

冒険者ギルド前で別れたのだが、最後はなぜかイーモコールになった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

処理中です...