転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第102話 夕食の鹿魔獣ロースト

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「クリス兄様、おかえりなさい!」

着替えて食堂に行くと、もう兄上とメイリが席について待っていた。
テーブルの上に食事の準備もされている。

「なんか時間かかってたな。大丈夫か?」
「クリス兄様お疲れなの?」

僕が食堂に着くまでに結構時間が経っていたらしい。兄上とメイリに心配されてしまった。
シャワーの水魔法実験をやっていて待たせてしまったってちょっと言いにくいなぁ。

「大丈夫。疲れてはいないよ!」
「そう。それなら良かった!さあ食べましょう!」

来るまでに時間がかかったことは深く追及はされなかった。多分皆お腹が空いていて早く食べたかったんだと思う。目の前にご馳走が並んでいたし。

皿の上に盛り付けられた鹿魔獣のローストは、切り口が薔薇のように赤くとても美味しそうだ。

添えられている野菜のソテーとの彩りも綺麗。
その他にカボチャのポタージュスープと、リンゴとキャベツのサラダ。それと焼きたてのパンが準備されていた。

鹿魔獣のローストは、魔獣っぽい臭みがなくて柔らかで想像以上に美味しかった。ロースト肉にかけられていたリンゴのソースも程よい酸味と甘味があってお肉に良く合っている。
兄上もメイリも頬を緩ませていた。

「美味しい!これならお客様もきっと満足されているわね!」
「そうだと良いねぇ」
「この鹿の魔獣って泉の向こう側にいたのでしょう?他の場所でも手に入るのかしら?」
「どうだろう。王都はわからないけど、辺境伯領は魔獣が多いって聞くし似たようなのが出るんじゃないかな」
「そうなのね。角兎のソテーだって大評判だったから、この鹿魔獣のお肉ももっと食べたいって言われそう」
「それはそれで困るなぁ……」

鹿魔獣をどこで狩ったかって聞かれたらどうしよう。黎明の泉には案内はしたくないよね。

「ねえ、兄上、鹿魔獣を狩った場所に案内してって言われちゃったらどうしよう?」
「俺達が狩ったって言わなきゃ良いんじゃないかな」
「ええ……」
「それでも狩った場所を聞かれたら、森でハグレで彷徨いていたのを運よく狩れたって言う」
「確かに一頭で森に居たよね」

兄上は黎明の泉に誰かを案内するつもりはないらしい。僕と同じ気持ちみたいでホッとした。

「今日の訓練の案内はどうだったの?」

メイリに尋ねられて、背びれイタチの狩場に案内をした話をした。最初は角トカゲの湿地に行く予定だったけど、森の沼地が荒らされていて森に近寄らない方が良いってことになって急遽他の場所を案内をしたという経緯についても説明をした。

騎士の人が土で囲いを作ったり、魔獣を土で半分埋めて動かなくしたりして訓練していたことも話すと魔獣を土で半分埋めるというところにメイリは興味を持ったようだった。
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