179 / 334
第1章
第179話 問いかけてみた
しおりを挟む
ニコリとシェリル嬢が微笑む。
「確かに……。もうすぐ訓練を終えて自領に帰るって言う頃に、ギクシャクするより
楽しく出来る訓練にした方が良いわね」
「ああ……」
ハロルド君はシェリル嬢を見つめて微笑んだ後、視線を兄上に移して、真面目な表情になった。
「殿下と話してみるよ。殿下から訓練の形式を希望してもらった方が実現しやすいと思うから」
「はい」
兄上が静かな笑みを浮かべて頷いた。ほっとしている様子だ。
訓練の時の様子は、僕もちょっと気になったことがあったんだよね。
今なら聞いてもらえるかな。「はい」と手を上げてみた。
「僕も、見ていて思ったことがあります!」
「うん?何だい?」
ハロルド君が首を傾げた。兄上はピクッと肩を揺らした。
あれ、発言したらまずかったかな?
兄上を見上げた微妙な表情。
「どんなことを思ったんだい?」
兄上の様子を見て、言っちゃまずかったかなと思ったけど、
ハロルド君が訊き返してきたので言ってしまおう。
「外す時も外す場所を狙った方が、練習になると思います」
「外す場所を狙う?」
「的の中心を狙わずに、的の左端を狙うとかです。しっかり狙った方がフォームも崩れないし、わざと外したとしても分かりにくいでしょう?」
何か例を示そうかと、狙いを定められそうなものがないかキョロキョロしたら、兄上が僕の方に手を置いた。
「庭を荒らすなよ」
「……はあい」
庭の木とか無闇に着ると母様が起こりそうなのでやめておこう。
ハロルド君は「なるほど」と納得した様子で頷いて、ハロルド君の腕に手を添えていたシェリル嬢と微笑みあっている。
仲良いなぁ。
「お二人は仲良いですね」
「え?」
「え」
ピクッとして、シェリル嬢がハロルド君の腕から手を離した。
言ってみちゃおうかな。
「婚約したりしないんですか?」
「……いいえ……」
シェリル嬢が眉を下げ、苦笑するようは表情で首を振った。
「私は一人娘だから……、次期当主なのよ。
ハロルドも家を継ぐことになるから、婚約はできないの」
「……」
シェリル嬢が言っている間、ハロルド君は苦しげに目を伏せた。
「そうなんですね。次期当主って……、もしもシェリル嬢に弟が生まれたりした場合はどうなるんですか?」
「え?」
シェリル嬢がびっくりしたように目を見開いた。思った以上に愕然とされてしまって、どうしようと思ったら、兄上が僕の背中に手を添えて微笑みながら言った。
「弟は例えで言ったんだと思います。家によって、男女関係なく長子が継ぐ家と、男子が優先して継ぐ場合があるでしょう?
辺境伯家では、そういったケースの時どうなるのかって思ったんだと思います」
「……」
シェリル嬢が急に不安そうな表情になった。ハロルド君がシェリル嬢の背中に手を回した。
「シェリル……。不安なら、辺境伯様と話をしてみたら?」
「うん……」
シェリル嬢が元気なく頷いた。大丈夫かな。でも弟さんが生まれた場合のことを考えてくれそうだ。
「確かに……。もうすぐ訓練を終えて自領に帰るって言う頃に、ギクシャクするより
楽しく出来る訓練にした方が良いわね」
「ああ……」
ハロルド君はシェリル嬢を見つめて微笑んだ後、視線を兄上に移して、真面目な表情になった。
「殿下と話してみるよ。殿下から訓練の形式を希望してもらった方が実現しやすいと思うから」
「はい」
兄上が静かな笑みを浮かべて頷いた。ほっとしている様子だ。
訓練の時の様子は、僕もちょっと気になったことがあったんだよね。
今なら聞いてもらえるかな。「はい」と手を上げてみた。
「僕も、見ていて思ったことがあります!」
「うん?何だい?」
ハロルド君が首を傾げた。兄上はピクッと肩を揺らした。
あれ、発言したらまずかったかな?
兄上を見上げた微妙な表情。
「どんなことを思ったんだい?」
兄上の様子を見て、言っちゃまずかったかなと思ったけど、
ハロルド君が訊き返してきたので言ってしまおう。
「外す時も外す場所を狙った方が、練習になると思います」
「外す場所を狙う?」
「的の中心を狙わずに、的の左端を狙うとかです。しっかり狙った方がフォームも崩れないし、わざと外したとしても分かりにくいでしょう?」
何か例を示そうかと、狙いを定められそうなものがないかキョロキョロしたら、兄上が僕の方に手を置いた。
「庭を荒らすなよ」
「……はあい」
庭の木とか無闇に着ると母様が起こりそうなのでやめておこう。
ハロルド君は「なるほど」と納得した様子で頷いて、ハロルド君の腕に手を添えていたシェリル嬢と微笑みあっている。
仲良いなぁ。
「お二人は仲良いですね」
「え?」
「え」
ピクッとして、シェリル嬢がハロルド君の腕から手を離した。
言ってみちゃおうかな。
「婚約したりしないんですか?」
「……いいえ……」
シェリル嬢が眉を下げ、苦笑するようは表情で首を振った。
「私は一人娘だから……、次期当主なのよ。
ハロルドも家を継ぐことになるから、婚約はできないの」
「……」
シェリル嬢が言っている間、ハロルド君は苦しげに目を伏せた。
「そうなんですね。次期当主って……、もしもシェリル嬢に弟が生まれたりした場合はどうなるんですか?」
「え?」
シェリル嬢がびっくりしたように目を見開いた。思った以上に愕然とされてしまって、どうしようと思ったら、兄上が僕の背中に手を添えて微笑みながら言った。
「弟は例えで言ったんだと思います。家によって、男女関係なく長子が継ぐ家と、男子が優先して継ぐ場合があるでしょう?
辺境伯家では、そういったケースの時どうなるのかって思ったんだと思います」
「……」
シェリル嬢が急に不安そうな表情になった。ハロルド君がシェリル嬢の背中に手を回した。
「シェリル……。不安なら、辺境伯様と話をしてみたら?」
「うん……」
シェリル嬢が元気なく頷いた。大丈夫かな。でも弟さんが生まれた場合のことを考えてくれそうだ。
365
あなたにおすすめの小説
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
何故か転生?したらしいので【この子】を幸せにしたい。
くらげ
ファンタジー
俺、 鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は…36歳 独身のどこにでも居る普通のサラリーマンの筈だった。
しかし…ある日、会社終わりに事故に合ったらしく…目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた!
しかも…【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!?
よし!じゃあ!冒険者になって自由にスローライフ目指して生きようと思った矢先…何故か色々な事に巻き込まれてしまい……?!
「これ…スローライフ目指せるのか?」
この物語は、【この子】と俺が…この異世界で幸せスローライフを目指して奮闘する物語!
ゲームちっくな異世界でゆるふわ箱庭スローライフを満喫します 〜私の作るアイテムはぜーんぶ特別らしいけどなんで?〜
ことりとりとん
ファンタジー
ゲームっぽいシステム満載の異世界に突然呼ばれたので、のんびり生産ライフを送るつもりが……
この世界の文明レベル、低すぎじゃない!?
私はそんなに凄い人じゃないんですけど!
スキルに頼りすぎて上手くいってない世界で、いつの間にか英雄扱いされてますが、気にせず自分のペースで生きようと思います!
昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ
蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。
とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。
どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。
など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。
そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか?
毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる