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第2章
第262話 お疲れ様会
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日が暮れる少し前位に、父上と騎士達が屋敷まで戻ってきた。
最初の予定では、夕食の席で軽くお疲れ様会として乾杯という流れだった。
でも黒ローブ事件があって、晴れやかな気分で乾杯という雰囲気ではなくなってしまった。黒ローブめ。
帰宅後に父上は休むことなく、母様から報告を聞き、兄上や僕からも事情聴取をして、黒ローブの男が拘束されているところに
向かった。
乾杯は中止になるのかなと思っていたのだけど、日がすっかり暮れた手から暫く経った頃、
夕食だと呼ばれて食堂に行ってみたら、父上の姿があった。
「父上!もうお仕事は済んだのですか?」
「まだ色々あるが、食事くらいはできるさ」
「お疲れ様です!」
「父上、お疲れ様です」
「父様、おかえりなさい」
僕達が口々に言うと、父上は嬉しそうに笑った。
父上は疲れた様子ではなかったけれど、どこか張り詰めたような雰囲気を纏っていた。
黒ローブの事件があるなんだろうな。黒ローブめ。
食卓には唐揚げの他に、肉団子とトマトソースの麺料理、野菜スープやサラダが並ぶ。
でも父上も母様もお酒は飲まないみたいだ。お酒ではなく果実炭酸光水で乾杯をした。
「皆が協力してくれたおかげで、ネイサン殿下の訓練を無事に終了して送り出すことができた。ありがとう!」
「乾杯!お疲れ様でした!」
「父上も母様も兄上もメイリもお疲れ様でした!」
「クリスもね!」
「本当にお疲れ様でした!」
口々に労いの言葉を言って、普段より炭酸と果汁を強めにした果実炭酸光水を口に含む。良く冷えていて美味しい!
ゴクゴクゴクとグラスの半分位の領を一気に飲んでしまった。プハーって言いたくなる。
「はぁ~」
兄上が「プハー」に近い感じで息を吐いて、グラスをトンとテーブルに戻した。
「とりあえず、王族や高位貴族の方々に失礼にならずに済んだのかな……」
「ローレンは良くサポートしてくれたわ。ありがとう」
兄上がボソリと呟くように言うと、母様が兄上に労いの言葉をかけた。兄上は少しだけ口の端を上げて
ほっとした顔をする。
「役に立ったなら良かったけど……」
「……クリスが目立っちゃってなかったか、ちょっと心配だよ」
「魔道具や解毒剤の製作者については、興味は持たれてはいなかったようよ」
「そうなんですかね。……あ、クリスの作った新しい魔道具を父上にお見せないと……」
「……また何か作ったのか?」
兄上が「収納」から「手紙」の魔道具と「メッセージ」の魔道具を取り出すと、父上がフォークを持つ手を止めた。
「声だけでなく文字での通信も可能になったようです」
兄上が簡単に「手紙」の魔道具と「メッセージ」の魔道具の機能を説明すると、父上はちょっと呆れたように僕の方を見た。
「……素晴らしいとは思うが……。ほぼ原料は魔石だけで一晩で作るというのが信じがたいな。……クリス」
「はい」
「作業に夢中になって夜更かしなどするなよ。子供は良く寝るのも仕事だぞ」
「はあい」
「それと……、魔道具を作っていることが知られると、目立ってしまう。
気をつけるんだぞ」
「はあい」
夜はちゃんと寝るようにしているし、目立ったら良くないって何となくわかる。
治癒の魔石を欲しがってた辺境伯様とかが、僕が治癒玉を作ったとか知ったら大量に作れとか無理難題言ってきそうだって想像してしまう。
他の貴族に知られたら、もっと大変になりそうだ。うん。目立ったらダメだね。
でも、大怪我をした時に使う治癒玉とか、解毒剤とか、何か危険だったり緊急だったりした時に連絡する手段とか、なかったら命に関わることだってあるからなぁ。作るけど目立たないようにうまくできると良いんだけどね。
最初の予定では、夕食の席で軽くお疲れ様会として乾杯という流れだった。
でも黒ローブ事件があって、晴れやかな気分で乾杯という雰囲気ではなくなってしまった。黒ローブめ。
帰宅後に父上は休むことなく、母様から報告を聞き、兄上や僕からも事情聴取をして、黒ローブの男が拘束されているところに
向かった。
乾杯は中止になるのかなと思っていたのだけど、日がすっかり暮れた手から暫く経った頃、
夕食だと呼ばれて食堂に行ってみたら、父上の姿があった。
「父上!もうお仕事は済んだのですか?」
「まだ色々あるが、食事くらいはできるさ」
「お疲れ様です!」
「父上、お疲れ様です」
「父様、おかえりなさい」
僕達が口々に言うと、父上は嬉しそうに笑った。
父上は疲れた様子ではなかったけれど、どこか張り詰めたような雰囲気を纏っていた。
黒ローブの事件があるなんだろうな。黒ローブめ。
食卓には唐揚げの他に、肉団子とトマトソースの麺料理、野菜スープやサラダが並ぶ。
でも父上も母様もお酒は飲まないみたいだ。お酒ではなく果実炭酸光水で乾杯をした。
「皆が協力してくれたおかげで、ネイサン殿下の訓練を無事に終了して送り出すことができた。ありがとう!」
「乾杯!お疲れ様でした!」
「父上も母様も兄上もメイリもお疲れ様でした!」
「クリスもね!」
「本当にお疲れ様でした!」
口々に労いの言葉を言って、普段より炭酸と果汁を強めにした果実炭酸光水を口に含む。良く冷えていて美味しい!
ゴクゴクゴクとグラスの半分位の領を一気に飲んでしまった。プハーって言いたくなる。
「はぁ~」
兄上が「プハー」に近い感じで息を吐いて、グラスをトンとテーブルに戻した。
「とりあえず、王族や高位貴族の方々に失礼にならずに済んだのかな……」
「ローレンは良くサポートしてくれたわ。ありがとう」
兄上がボソリと呟くように言うと、母様が兄上に労いの言葉をかけた。兄上は少しだけ口の端を上げて
ほっとした顔をする。
「役に立ったなら良かったけど……」
「……クリスが目立っちゃってなかったか、ちょっと心配だよ」
「魔道具や解毒剤の製作者については、興味は持たれてはいなかったようよ」
「そうなんですかね。……あ、クリスの作った新しい魔道具を父上にお見せないと……」
「……また何か作ったのか?」
兄上が「収納」から「手紙」の魔道具と「メッセージ」の魔道具を取り出すと、父上がフォークを持つ手を止めた。
「声だけでなく文字での通信も可能になったようです」
兄上が簡単に「手紙」の魔道具と「メッセージ」の魔道具の機能を説明すると、父上はちょっと呆れたように僕の方を見た。
「……素晴らしいとは思うが……。ほぼ原料は魔石だけで一晩で作るというのが信じがたいな。……クリス」
「はい」
「作業に夢中になって夜更かしなどするなよ。子供は良く寝るのも仕事だぞ」
「はあい」
「それと……、魔道具を作っていることが知られると、目立ってしまう。
気をつけるんだぞ」
「はあい」
夜はちゃんと寝るようにしているし、目立ったら良くないって何となくわかる。
治癒の魔石を欲しがってた辺境伯様とかが、僕が治癒玉を作ったとか知ったら大量に作れとか無理難題言ってきそうだって想像してしまう。
他の貴族に知られたら、もっと大変になりそうだ。うん。目立ったらダメだね。
でも、大怪我をした時に使う治癒玉とか、解毒剤とか、何か危険だったり緊急だったりした時に連絡する手段とか、なかったら命に関わることだってあるからなぁ。作るけど目立たないようにうまくできると良いんだけどね。
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