転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第2章

第263話 ルシャル商会作戦

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「そのことに関連するのだけど……」

母様が少し慎重な口調で父上に話しかけた。皆の視線が母様に向けられる。

「『手紙』の魔道具は、ルシャル商会で扱えないかしら。
 商会の各拠点の連絡用に使って、広めてはどうかと思って」
「……シャルのところか」
「ええ。国外の支店も多いから製作元が知られにくいでしょう。それに、仮の製作者の名前にしておくこともできるんじゃないかしら」
「商業ギルドの連絡業務と競合しそうだが……、商会内で扱った方が情報は秘匿しやすいか……」
「ええ……」
「仮の製作者の登録については、シャルに確認だな」
「そうね。うまく行くと良いけど……」

ルシャル商会は、父上の弟のシャル叔父さんが経営している商会だ。
あちこちにある支店に「手紙」の魔道具を置いてはどうかってことらしい。
使ってもらえるのは嬉しいんだけど、「手紙」の魔道具がどのくらい遠くまで繋がるのかわからないのが心配だ。使おうと思ったら全然繋がらなったって言われたらショックだし、使おうと思った人にも迷惑かけちゃう。

「あの……。『お話』の魔道具が繋がるくらいの距離は大丈夫だと思うけど……。今のところ、領境まで離れたところしか確認できてないんだけど」
「それは、いずれ試してみれば良いことよ。……使える範囲で使えば良いことなのだから、繋がらないところを無理して繋げようとする必要は無いのよ?ね?」

「うん……」
「それに、もしも沢山欲しいって言われても、無理してまで作らなくて良いわよ」
「うん……」

母様がニコリと笑顔を向けながら言うんだけど目つきが笑ってない。怒ってみるみたいにじっと鋭い目を向けられている。うまく繋がらなくても頑張るなって釘を刺された気がするなあ。使ってもらえるなら、ちゃんと使えるものにしたいんだけど……。

近いうちにシャル叔父さんにゲンティアナまで来てもらうように連絡するって言っていた。
シャル叔父さんは「手紙」の魔道具を気に入ってくれるかな。「お話」の魔道具をシャル叔父さんの分も準備して良いかな。

あまり遠くまで離れたら使えないかもしれないことは、シャル叔父さんにもしっかり話しておこう。使いやすいかどうかも訊いてみれば良いよね。無理するなって言われたけど、次に何か作るときの参考にもなるし。

サクッと角兎肉の唐揚げを齧る。ジュワッと熱い肉汁が口の中に溢れる。
角兎肉は、鳥魔獣の肉と似て淡白だけど、肉肉しい弾力があって、少しだけ癖がある感じだ。
だからか、ニンニクとか生姜を多めに使っているのかな。
鳥魔獣の唐揚げは最高だけど、角兎肉の唐揚げも美味しいなぁ。

「……川に毒を流そうとしていた男の件は、目的とか何かわかったのですか?」

僕が角兎肉の唐揚げを堪能していると、兄上が少し真剣な様子で父上に尋ねた。
父上は、果実炭酸光水の入ったグラスを傾けてから兄上に目を向けた。

「……まだ、調査中だ。それにこの場で言う話題ではない。……が、ローレンとクリスにはもう一度詳しい状況を確認するかもしれない」
「はい」

あの黒ローブが尋問されて目的だとか白状したかどうかは、父上は教えてくれないみたいだ。
「この場」でってことは、楽しい食事の時間にする話題じゃないってことなのかな。
それとも、メイリを怖がらせちゃいけないってことかもしれないな。
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