31 / 90
ショー
しおりを挟む
ゾーラはナオキの肩をガッチリ掴んだまま歩いている。逃げ出さないためだろう。掴まれている肩に痛みを覚えるほどの力が込められている。その痛みとゾーラから発せられる酒臭さに耐えながらナオキは歩いていた。
周りにはゾーラ同様酒を飲んでいる者、集団で賭け事をしている者、談笑している者など様々だった。
「――だからよお、あの女は俺に気があるんだって――」
「――なんか雨が降りそうな天気だな」
「あぁ、じゃあ早めに飲みに行かねぇとな」
「――ああああぁぁぁぁ! また負けちまったよ、畜生!」
「――それってお前、レアモンじゃねぇかよ。どこで捕まえたんだ」
「へっへっ、森の中でな、かなりの上物だろ? これで暫く金に困らねぇ――」
「――さっさと飲みに行こうぜ、疲れちまった――」
「――おい、また革命軍が出たらしいぞ」
「マジかよ。最近多くねぇか?」
断片的だが様々な会話が耳に入ってきた。
「あの……まだですか……」
「もうすぐだよ! んな焦んなよ!」
焦ってるんじゃなくて早く戻りた良いんだけど……
言葉には出さないが、ナオキの足取りは重かった。
「ほら、着いたぜあそこだ」
ゾーラが言った先には人だかりができている。何かを囲んでいるようだ。
「ゾーラ遅ぇよ! 皆待ちくたびれちまったぜ」
人だかりの中の一人がゾーラに声をかけた。ここにいる兵士たちはゾーラとナオキを待っていたらしい。
「ワリィな。時間喰っちまった」
「あぁ? 何だぁ? 女はどうしたんだよ?」
更に男はゾーラに話しかけた。女というのは明日香たちだろう。
「来ねぇってよ! まったく、ノリが悪ぃぜ!」
ぶっきらぼうな口調は苛立っている。
「嫌われてんじゃねぇの? まぁ来ねぇもんはしょうがねえ。おい。早く始めようぜ!」
ゾーラを茶化すように言いながら男はゾーラに木で作られたジョッキを渡した。中には当然酒が入っている。
「ボーズも飲むか?」
男はナオキにも酒をを進めてきた。
「いえ……スグ行きますんで……」
「そうかい。ちったぁ酒を飲んだほうが盛り上がるってもんだ」
盛り上がる? 一体何が始まるんだ……
「――ングッングッングッ……ぷはぁー!」
ジョッキの中身を豪快に飲み干しゾーラは大きく息を吐き出した。
「よーし! 始めるかぁ!」
その言葉を皮切りに待ってましたとばかりに兵士たちから
「オー!」
「オー!」
「オー!」
「オー!」
と盛大な叫び声が上がった。
そんな人ごみを掻き分けナオキを引っ張りながらゾーラは輪の中に入っていく。
輪の中心は開けていた。その中央でゾーラは立ち止まりナオキを開放した。
「ニィチャンには最前列で見せてやるよ! シッカリ堪能しろよ」
言われたナオキは周りを見回した。兵士たちが10mほどの円を作るように囲っている。そんな兵士たちは口々に何かを叫んでいた。
そして円の中央付近にはナオキ達以外に何やら動くモノがいた。
動物か?
そう思ったが違うことにスグ気が付いた。それはナオキがこの世界に来て見たことがある生き物だった。
――ゴブリン――
それも4匹いる。その内の2匹はまだ小さい。まだ子供だろう。2匹はお互い抱きしめあいブルブルと震えている。
「ゴブリンの親子だ。家族で見つけるなんて滅多にないんだぜ! ニィチャン運がいい」
意気揚々とゾーラは話す。それはまるで子供が自慢のオモチャを見せびらかしているように見えた。
「あの……一体何を……」
これから起こるであろうことが想像できた。だがナオキは質問をせずにはいられなかった。そしてナオキはその想像が外れていることを願った。
「あぁ? 目の前にゴブリンがいるならやることは一つだろ!」
ゾーラは笑みを浮かべている。
「殺すんだよ!」
叫ぶように放ったゾーラの声に反応し、周りの兵士が一層声を大きく騒ぎ出した。
その熱気がこの辺一帯は熱いほどに包んでいる。
その熱気とは逆にナオキの身体は冷たいほど血の気が引いていた。
「オメェら、待たせたな! ショーの始まりだ! 存分に楽しんでくれ!」
「おー!」
「今日はゴブリンが4匹もいる! 時間はたっぷりある! 酒もある! お前ら明日は二日酔いだ! 覚悟しておけ!」
「おー!」
ゾーラが叫ぶたびに周りから歓声が湧きたつ。兵士たちが足踏みをし、地面を揺らす。まるで地震が起こっているようだ。
「さぁ始めるぞ! お前ら心の準備は良いか?」
「おおおおぉぉぉぉーーーー!!!!」
この場のボルテージが最高潮になり、地面の振動が大きくなる。その振動がナオキの心臓を刺激する。
周りにはゾーラ同様酒を飲んでいる者、集団で賭け事をしている者、談笑している者など様々だった。
「――だからよお、あの女は俺に気があるんだって――」
「――なんか雨が降りそうな天気だな」
「あぁ、じゃあ早めに飲みに行かねぇとな」
「――ああああぁぁぁぁ! また負けちまったよ、畜生!」
「――それってお前、レアモンじゃねぇかよ。どこで捕まえたんだ」
「へっへっ、森の中でな、かなりの上物だろ? これで暫く金に困らねぇ――」
「――さっさと飲みに行こうぜ、疲れちまった――」
「――おい、また革命軍が出たらしいぞ」
「マジかよ。最近多くねぇか?」
断片的だが様々な会話が耳に入ってきた。
「あの……まだですか……」
「もうすぐだよ! んな焦んなよ!」
焦ってるんじゃなくて早く戻りた良いんだけど……
言葉には出さないが、ナオキの足取りは重かった。
「ほら、着いたぜあそこだ」
ゾーラが言った先には人だかりができている。何かを囲んでいるようだ。
「ゾーラ遅ぇよ! 皆待ちくたびれちまったぜ」
人だかりの中の一人がゾーラに声をかけた。ここにいる兵士たちはゾーラとナオキを待っていたらしい。
「ワリィな。時間喰っちまった」
「あぁ? 何だぁ? 女はどうしたんだよ?」
更に男はゾーラに話しかけた。女というのは明日香たちだろう。
「来ねぇってよ! まったく、ノリが悪ぃぜ!」
ぶっきらぼうな口調は苛立っている。
「嫌われてんじゃねぇの? まぁ来ねぇもんはしょうがねえ。おい。早く始めようぜ!」
ゾーラを茶化すように言いながら男はゾーラに木で作られたジョッキを渡した。中には当然酒が入っている。
「ボーズも飲むか?」
男はナオキにも酒をを進めてきた。
「いえ……スグ行きますんで……」
「そうかい。ちったぁ酒を飲んだほうが盛り上がるってもんだ」
盛り上がる? 一体何が始まるんだ……
「――ングッングッングッ……ぷはぁー!」
ジョッキの中身を豪快に飲み干しゾーラは大きく息を吐き出した。
「よーし! 始めるかぁ!」
その言葉を皮切りに待ってましたとばかりに兵士たちから
「オー!」
「オー!」
「オー!」
「オー!」
と盛大な叫び声が上がった。
そんな人ごみを掻き分けナオキを引っ張りながらゾーラは輪の中に入っていく。
輪の中心は開けていた。その中央でゾーラは立ち止まりナオキを開放した。
「ニィチャンには最前列で見せてやるよ! シッカリ堪能しろよ」
言われたナオキは周りを見回した。兵士たちが10mほどの円を作るように囲っている。そんな兵士たちは口々に何かを叫んでいた。
そして円の中央付近にはナオキ達以外に何やら動くモノがいた。
動物か?
そう思ったが違うことにスグ気が付いた。それはナオキがこの世界に来て見たことがある生き物だった。
――ゴブリン――
それも4匹いる。その内の2匹はまだ小さい。まだ子供だろう。2匹はお互い抱きしめあいブルブルと震えている。
「ゴブリンの親子だ。家族で見つけるなんて滅多にないんだぜ! ニィチャン運がいい」
意気揚々とゾーラは話す。それはまるで子供が自慢のオモチャを見せびらかしているように見えた。
「あの……一体何を……」
これから起こるであろうことが想像できた。だがナオキは質問をせずにはいられなかった。そしてナオキはその想像が外れていることを願った。
「あぁ? 目の前にゴブリンがいるならやることは一つだろ!」
ゾーラは笑みを浮かべている。
「殺すんだよ!」
叫ぶように放ったゾーラの声に反応し、周りの兵士が一層声を大きく騒ぎ出した。
その熱気がこの辺一帯は熱いほどに包んでいる。
その熱気とは逆にナオキの身体は冷たいほど血の気が引いていた。
「オメェら、待たせたな! ショーの始まりだ! 存分に楽しんでくれ!」
「おー!」
「今日はゴブリンが4匹もいる! 時間はたっぷりある! 酒もある! お前ら明日は二日酔いだ! 覚悟しておけ!」
「おー!」
ゾーラが叫ぶたびに周りから歓声が湧きたつ。兵士たちが足踏みをし、地面を揺らす。まるで地震が起こっているようだ。
「さぁ始めるぞ! お前ら心の準備は良いか?」
「おおおおぉぉぉぉーーーー!!!!」
この場のボルテージが最高潮になり、地面の振動が大きくなる。その振動がナオキの心臓を刺激する。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
30
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる