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雨の中の出会い
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雨が激しく降りしきる中、ナオキは真っ暗な洞窟の中で座っていた。そのそばにはゴブリンの姉弟が座っている。洞窟の中は薄暗く、シルエットでのみ姉弟が確認できた。
「……そう言えばお前たちの名前聞いてなかったな。何て言うんだ?」
「……?」
「名前だよ。ナ……マ……エ」
「アー。『クー』ワタシ『クー』」
姉の名はクーと言うらしい。
「『ガー』ワイ『ガー』」
弟の方はガーだそうだ。それにしてもワイって……
「よし、クーとガーだな。いいか? オレの名前はナオキだ」
ナオキは自分を指さして名乗った。
「ナオキダ?」
「違う。ナオキ。ナ……オ……キ」
「ナオキ?」
「そう。ナオキ」
「ナオキ!」
「そうだ」
「ナオキ! プーッ! ナオキ……ヘン……プー」
弟はナオキの名を口にし、笑っている。こっちからすればそっちのほうが充分変なんだが……
「うるせぇ。全然変じゃねぇよ!」
「ナオキ、ナオキ、ナオキ、プーッ! ヘン」
弟は嬉しそうに踊りながらナオキの名前を連呼している。姉の方はそれをコロコロと笑いながら眺めていた。
なんだ。こいつらオレたち人間と変わんないじゃないか……
ナオキはこの場の雰囲気を楽しんでいた。その時――
……ジャリ……
入口の方から地面を踏む音がした。反射的にナオキ達はしゃべるのを止め身構えた。
兵士か……迂闊だった。
せめてナオキが見張りで入口を監視しておくべきだったと後悔をした。
「何だ。先客か?」
入口にいる者は一歩中に入ってきた。声から男のようだ。暗がりで全体は見えないが、マントのようなものを羽織り、頭にはターバンのようなものを深く被っている。シルエットから兵士の格好をしているようには見えなかった。
「だ、誰だ!?」
ナオキは男に向って問いただした。ナオキの腰にはクーとガーがしがみついている。
「おいおい。俺は旅人だよ。そんなに警戒することないだろ。ほら、外はこの通り雨だ。雨宿りをしたいんだよ」
どうやらナオキを探していたわけでは無いらしい。だが、油断は禁物だ。そしてここにはゴブリンがいる。この男が何もしないとは限らなかった。
「なぁ、中に入っても良いだろ? ここはまだ雨が当たるんだ」
「……まぁいいですけど……でも……」
ナオキの言葉を聞き終わる前に男は中に入ってきた。
「いや~。凄い雨だな。お前さんも雨宿りだろ? ……って……ん?」
男がクーとガーに気付いた。ナオキは身構える。
「あの……この2匹は……」
「人間とゴブリンか……随分と珍しい組み合わせだな。でも面白くっていいじゃないか」
「……へっ……?」
男はハッハッハッと爽やかに笑っていた。ナオキは拍子抜けてしまった。
「あの……ゴブリンですよ? その……何とも思わないんですか?」
思わずナオキは聞いてしまった。
「あん? そりゃこの組み合わせは中々見れるもんじゃないけど、旅を続けてりゃあいろんなことがあるわ。それにゴブリンなんてそこらへんにいるしな」
「そ……そうですか……」
この男が変なのか今まで出会った人間が閉鎖的過ぎたのかナオキは分からなかった。だが少なくともこの男はクーとガーに危害を加える気が無いことは良かった。
ナオキ達は腰を下ろした。だが警戒を怠ったわけでは無い。
「いや~。ここに来る途中、妹とはぐれちゃってさぁ。名前はヴェルニカ。ベルって言うんだけど、これがまた可愛いんだ。で、ベルを探してたら急にこの雨だろ? 暫く探してたけど、いい加減身体が冷えてきてよ。そしたら洞窟があったから避難したって訳よ」
初対面に対してよく喋る男だ。
「そ、そうなんですか……大変でしたね」
「おたくらは? 見た感じ旅人……って感じじゃなさそうだけど?」
「いや、オレたちは……」
言葉に詰まった。ナオキ自身のこと。クーとガーのこと。どこまでこの男に話していいモノか考えてしまう。
「何だ訳アリか? 別に話したくなかったらそれでもいいが」
「………………」
どうなんだろう……オレの存在は城内の秘密事項なんだろうか……いや、八京とエドガーの関係を見る限りそれは無さそうだ。じゃあオレとクーやガーの関係は? この男の対応を見る限りそれも大丈夫そうだ。では全て話しても問題ないのか……
そんなことを考えているうちに男は神妙な面持ちになっていた。
「俺の好きな言葉でな、『旅は一期一会の連続。その場限りの出会いを楽しみ大事にしろ』ってのがある。二度と会うことの無い奴とでもお互い楽しみを共有し、誠意をもって対応する。つまり、今この一瞬・時間を相手と共に大切にしなさいってなぁ。俺の婆さんがよく言ってた言葉だ」
確かにこの場をそれとなくやり過ごすことは出来る。だがそれがお互いのためになるのだろうか……全てのことを知ってもらうことで、お互いの中で何かいいことが生まれるかもしれない。この男の話を聞いてそう思えてきた。そしてこの男からはそんな期待を持たせる何かがあった。
「……じゃあ、少し長くなりますけど聞いてもらえますか?」
「おぉ。どうせこの雨だ。付き合ってやるぜ」
男は嬉しそうに言った。気が付けばクーはナオキの膝に、ガーは男の膝の上に座ってナオキ達の話を聞いていた。
……まったく、人懐っこいゴブリン達だ……
「……始まりは……オレがこの世界に召喚されたことでした……」
ナオキはゆっくりと話し出した。
「……そう言えばお前たちの名前聞いてなかったな。何て言うんだ?」
「……?」
「名前だよ。ナ……マ……エ」
「アー。『クー』ワタシ『クー』」
姉の名はクーと言うらしい。
「『ガー』ワイ『ガー』」
弟の方はガーだそうだ。それにしてもワイって……
「よし、クーとガーだな。いいか? オレの名前はナオキだ」
ナオキは自分を指さして名乗った。
「ナオキダ?」
「違う。ナオキ。ナ……オ……キ」
「ナオキ?」
「そう。ナオキ」
「ナオキ!」
「そうだ」
「ナオキ! プーッ! ナオキ……ヘン……プー」
弟はナオキの名を口にし、笑っている。こっちからすればそっちのほうが充分変なんだが……
「うるせぇ。全然変じゃねぇよ!」
「ナオキ、ナオキ、ナオキ、プーッ! ヘン」
弟は嬉しそうに踊りながらナオキの名前を連呼している。姉の方はそれをコロコロと笑いながら眺めていた。
なんだ。こいつらオレたち人間と変わんないじゃないか……
ナオキはこの場の雰囲気を楽しんでいた。その時――
……ジャリ……
入口の方から地面を踏む音がした。反射的にナオキ達はしゃべるのを止め身構えた。
兵士か……迂闊だった。
せめてナオキが見張りで入口を監視しておくべきだったと後悔をした。
「何だ。先客か?」
入口にいる者は一歩中に入ってきた。声から男のようだ。暗がりで全体は見えないが、マントのようなものを羽織り、頭にはターバンのようなものを深く被っている。シルエットから兵士の格好をしているようには見えなかった。
「だ、誰だ!?」
ナオキは男に向って問いただした。ナオキの腰にはクーとガーがしがみついている。
「おいおい。俺は旅人だよ。そんなに警戒することないだろ。ほら、外はこの通り雨だ。雨宿りをしたいんだよ」
どうやらナオキを探していたわけでは無いらしい。だが、油断は禁物だ。そしてここにはゴブリンがいる。この男が何もしないとは限らなかった。
「なぁ、中に入っても良いだろ? ここはまだ雨が当たるんだ」
「……まぁいいですけど……でも……」
ナオキの言葉を聞き終わる前に男は中に入ってきた。
「いや~。凄い雨だな。お前さんも雨宿りだろ? ……って……ん?」
男がクーとガーに気付いた。ナオキは身構える。
「あの……この2匹は……」
「人間とゴブリンか……随分と珍しい組み合わせだな。でも面白くっていいじゃないか」
「……へっ……?」
男はハッハッハッと爽やかに笑っていた。ナオキは拍子抜けてしまった。
「あの……ゴブリンですよ? その……何とも思わないんですか?」
思わずナオキは聞いてしまった。
「あん? そりゃこの組み合わせは中々見れるもんじゃないけど、旅を続けてりゃあいろんなことがあるわ。それにゴブリンなんてそこらへんにいるしな」
「そ……そうですか……」
この男が変なのか今まで出会った人間が閉鎖的過ぎたのかナオキは分からなかった。だが少なくともこの男はクーとガーに危害を加える気が無いことは良かった。
ナオキ達は腰を下ろした。だが警戒を怠ったわけでは無い。
「いや~。ここに来る途中、妹とはぐれちゃってさぁ。名前はヴェルニカ。ベルって言うんだけど、これがまた可愛いんだ。で、ベルを探してたら急にこの雨だろ? 暫く探してたけど、いい加減身体が冷えてきてよ。そしたら洞窟があったから避難したって訳よ」
初対面に対してよく喋る男だ。
「そ、そうなんですか……大変でしたね」
「おたくらは? 見た感じ旅人……って感じじゃなさそうだけど?」
「いや、オレたちは……」
言葉に詰まった。ナオキ自身のこと。クーとガーのこと。どこまでこの男に話していいモノか考えてしまう。
「何だ訳アリか? 別に話したくなかったらそれでもいいが」
「………………」
どうなんだろう……オレの存在は城内の秘密事項なんだろうか……いや、八京とエドガーの関係を見る限りそれは無さそうだ。じゃあオレとクーやガーの関係は? この男の対応を見る限りそれも大丈夫そうだ。では全て話しても問題ないのか……
そんなことを考えているうちに男は神妙な面持ちになっていた。
「俺の好きな言葉でな、『旅は一期一会の連続。その場限りの出会いを楽しみ大事にしろ』ってのがある。二度と会うことの無い奴とでもお互い楽しみを共有し、誠意をもって対応する。つまり、今この一瞬・時間を相手と共に大切にしなさいってなぁ。俺の婆さんがよく言ってた言葉だ」
確かにこの場をそれとなくやり過ごすことは出来る。だがそれがお互いのためになるのだろうか……全てのことを知ってもらうことで、お互いの中で何かいいことが生まれるかもしれない。この男の話を聞いてそう思えてきた。そしてこの男からはそんな期待を持たせる何かがあった。
「……じゃあ、少し長くなりますけど聞いてもらえますか?」
「おぉ。どうせこの雨だ。付き合ってやるぜ」
男は嬉しそうに言った。気が付けばクーはナオキの膝に、ガーは男の膝の上に座ってナオキ達の話を聞いていた。
……まったく、人懐っこいゴブリン達だ……
「……始まりは……オレがこの世界に召喚されたことでした……」
ナオキはゆっくりと話し出した。
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