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妹の救出
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「――それは本当か?」
男は頭をガシガシ掻きながら言った。焦りと苛立ちが見て取れた。
「はい。確かに兵士たちはそう言ってました。でも妹さんじゃないかも……」
「いや、ほぼ間違いなくベルだ」
男は絞り出すように言った。この話は男の中でかなり悪い情報だろう。表情は険しいモノだった。
「あの……大丈夫ですか?」
ナオキは聞かずにはいられなかった。
「あぁ……状況はかなり悪い……でも最悪じゃない」
「……それは?」
「お前さんがいることだ」
「オ、オレ!?」
「あぁそうだ。お前さんと出会えたからこうやってベルの情報がもらえた。そして、ここからは俺の我がままになるんだが――」
男はナオキへ頭を下げた。
「頼む。お前さんに迷惑はかけないと誓う。だから俺にもっと情報をくれないか?」
「それってつまり……」
「ああ。ベルを助けに行く」
やっぱりそうだ。
「さっきも言ったが、お前さんに迷惑をかけたり、都合の悪いことはしないと約束する。エルフの誇りにかけて誓う。だから……俺にもっと詳しく情報をくれないか」
尚も男は深く頭を下げた。血を分けた兄妹……やはり助けに行かないという選択は無いのだろう。
「……本当に行くつもりですか?」
「勿論。この身がどんな目に合おうともベルを救い出す」
「さっきも言ったけど、基地にはオレの先輩もいます。まともにやりあったらまず勝てませんよ?」
「構わない。それでベルが助かるなら安いもんだ!」
「……顔を上げてください」
ナオキは男を促し男は頭を上げさせた。男の瞳は澄んだ青い目をしている。その瞳の奥には決して揺るがない決意が感じ取れた。
……本気なんだな……
「……分かりました。情報を教えます」
「ありが――」
男が感謝を述べる前にナオキが手を出しそれを遮った。
「ただし、条件があります。これを飲まなければ情報は教えません」
ナオキは握っていた拳を更に握った。ナオキの中でこの男と同様に気持ちは決まっていた。
「あぁ。何でもする。だから教えてくれ」
「情報を教えるだけじゃなくてオレにも何か手伝わせてください」
「!? 何馬鹿なこと言ってるんだ! 俺がやろうとしていることは軽い気持ちで出来ることじゃ無い。それにお前さんの仲間……ではないかもしれないが、同じ人間を俺は出し抜こうとしてるんだ。それを手伝うなんて……何考えてんだ」
声を荒げて男は言った。無理もない。ナオキ自身それは理解している。でも何もしないという選択はナオキにはなかった。
「勿論です。コトがバレてオレがどうなっても構いません。まぁバレないように動くつもりなんですけど……」
「……お前さん。かなり危険だぞ」
「それでも――それでもオレはアナタを手伝いたい。必死に妹さんを助けようとする人がいる。例えそれがエルフでも、オレはそれに協力したい。それがこの世界の人間のルールに背いているとしても。自分が正しいと思ったこの気持ちをオレは優先させたい」
それを玲が望むとするならば尚更だ。
暫くの間、沈黙が続いた。静かな森に虫の鳴き声だけが響いた。
「……覚悟はできてるんだな?」
「はい!」
ナオキは力強く言った。
「失敗してバレたらお前さん……只じゃすまされないぞ?」
「分かってます」
「………………」
「………………」
再び沈黙が訪れた。お互いがお互いの目を見つめている。
「……わかったよ。どうやら本気みたいだな。まったく、お前さんみたいな人間初めてだ」
やれやれといった素振りを男はしてみせた。
「じゃあ……」
「だが、俺も条件がある」
「な、なんですか?」
「もしお前さんが失敗だと判断したら容赦なく俺もベルも切り捨ててくれ」
「そ、そんなこと――」
「これは絶対だ。本来、これは俺とベルの問題だ。お前さんが関わる義理はねぇ。そこをお前さんは協力すると言ってくれている。それならせめてお前さんに被害が及ばないように最大限配慮する義理がある」
「そんなの気にしないでいいですよ」
「いいや。俺が気にする。これだけは譲れない。どうだ? それを拒否するなら俺はここでお前さんに寝てもらってから行くぞ」
「……わかりました。失敗だと思ったらオレはあなた達から手を引く。約束します」
「そうだ。それでいい」
そうならないようにしてやる。絶対に――
「じゃあこれから作戦会議といこうか。相棒、よろしくな」
男は顔に笑みを浮かべ右手を差し出してきた。
「よ、よろしく……そうだ! 名前、まだ言って無かったですね。お互いアナタとお前さんじゃ変だし。オレはナオキ。叢雲ナオキって言います」
名前を言いながら握手に応じた。男から強く、熱いモノが伝わってくる。
「そういえばそうだな。俺はレインズ。レイって呼んでくれ」
「えっ!! レイ!?」
「?」
ナオキは再びこの男――もといレイから驚かされた。
男は頭をガシガシ掻きながら言った。焦りと苛立ちが見て取れた。
「はい。確かに兵士たちはそう言ってました。でも妹さんじゃないかも……」
「いや、ほぼ間違いなくベルだ」
男は絞り出すように言った。この話は男の中でかなり悪い情報だろう。表情は険しいモノだった。
「あの……大丈夫ですか?」
ナオキは聞かずにはいられなかった。
「あぁ……状況はかなり悪い……でも最悪じゃない」
「……それは?」
「お前さんがいることだ」
「オ、オレ!?」
「あぁそうだ。お前さんと出会えたからこうやってベルの情報がもらえた。そして、ここからは俺の我がままになるんだが――」
男はナオキへ頭を下げた。
「頼む。お前さんに迷惑はかけないと誓う。だから俺にもっと情報をくれないか?」
「それってつまり……」
「ああ。ベルを助けに行く」
やっぱりそうだ。
「さっきも言ったが、お前さんに迷惑をかけたり、都合の悪いことはしないと約束する。エルフの誇りにかけて誓う。だから……俺にもっと詳しく情報をくれないか」
尚も男は深く頭を下げた。血を分けた兄妹……やはり助けに行かないという選択は無いのだろう。
「……本当に行くつもりですか?」
「勿論。この身がどんな目に合おうともベルを救い出す」
「さっきも言ったけど、基地にはオレの先輩もいます。まともにやりあったらまず勝てませんよ?」
「構わない。それでベルが助かるなら安いもんだ!」
「……顔を上げてください」
ナオキは男を促し男は頭を上げさせた。男の瞳は澄んだ青い目をしている。その瞳の奥には決して揺るがない決意が感じ取れた。
……本気なんだな……
「……分かりました。情報を教えます」
「ありが――」
男が感謝を述べる前にナオキが手を出しそれを遮った。
「ただし、条件があります。これを飲まなければ情報は教えません」
ナオキは握っていた拳を更に握った。ナオキの中でこの男と同様に気持ちは決まっていた。
「あぁ。何でもする。だから教えてくれ」
「情報を教えるだけじゃなくてオレにも何か手伝わせてください」
「!? 何馬鹿なこと言ってるんだ! 俺がやろうとしていることは軽い気持ちで出来ることじゃ無い。それにお前さんの仲間……ではないかもしれないが、同じ人間を俺は出し抜こうとしてるんだ。それを手伝うなんて……何考えてんだ」
声を荒げて男は言った。無理もない。ナオキ自身それは理解している。でも何もしないという選択はナオキにはなかった。
「勿論です。コトがバレてオレがどうなっても構いません。まぁバレないように動くつもりなんですけど……」
「……お前さん。かなり危険だぞ」
「それでも――それでもオレはアナタを手伝いたい。必死に妹さんを助けようとする人がいる。例えそれがエルフでも、オレはそれに協力したい。それがこの世界の人間のルールに背いているとしても。自分が正しいと思ったこの気持ちをオレは優先させたい」
それを玲が望むとするならば尚更だ。
暫くの間、沈黙が続いた。静かな森に虫の鳴き声だけが響いた。
「……覚悟はできてるんだな?」
「はい!」
ナオキは力強く言った。
「失敗してバレたらお前さん……只じゃすまされないぞ?」
「分かってます」
「………………」
「………………」
再び沈黙が訪れた。お互いがお互いの目を見つめている。
「……わかったよ。どうやら本気みたいだな。まったく、お前さんみたいな人間初めてだ」
やれやれといった素振りを男はしてみせた。
「じゃあ……」
「だが、俺も条件がある」
「な、なんですか?」
「もしお前さんが失敗だと判断したら容赦なく俺もベルも切り捨ててくれ」
「そ、そんなこと――」
「これは絶対だ。本来、これは俺とベルの問題だ。お前さんが関わる義理はねぇ。そこをお前さんは協力すると言ってくれている。それならせめてお前さんに被害が及ばないように最大限配慮する義理がある」
「そんなの気にしないでいいですよ」
「いいや。俺が気にする。これだけは譲れない。どうだ? それを拒否するなら俺はここでお前さんに寝てもらってから行くぞ」
「……わかりました。失敗だと思ったらオレはあなた達から手を引く。約束します」
「そうだ。それでいい」
そうならないようにしてやる。絶対に――
「じゃあこれから作戦会議といこうか。相棒、よろしくな」
男は顔に笑みを浮かべ右手を差し出してきた。
「よ、よろしく……そうだ! 名前、まだ言って無かったですね。お互いアナタとお前さんじゃ変だし。オレはナオキ。叢雲ナオキって言います」
名前を言いながら握手に応じた。男から強く、熱いモノが伝わってくる。
「そういえばそうだな。俺はレインズ。レイって呼んでくれ」
「えっ!! レイ!?」
「?」
ナオキは再びこの男――もといレイから驚かされた。
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