異世界に召喚されたオレだが、可哀そうだからゴブリンを殺せない

たけるん

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――エルフ――



 見てわかった。男は人ではなくエルフだった。そう考えると先ほどまでの会話の違和感に納得が出来た。

 人間では無いから客観的に人間を見ることが出来る。いや、人間を嫌っているのかもしれない。



「あの……エルフだったんですね……」



 思わず言葉にしたが、この言葉で男がナオキを警戒するかも知れないと言った後で気付いた。



「ん? あぁそうだが……なんだ、お前さん、気付いてなかったのか? そこのチビちゃんたちは気付いてたから、てっきりお前さんもそうだと思ってたぞ」



いや、気付ける要素は耳だけだろ。って言うか何でこの二匹は分かったんだよ



「あの。オレには耳でしか判別できる手段が無いんで。今それが分かったんです」

「あぁ。確かに人間はそうだよな。ゴブリンや魔物なんかは本能的に人間かそうでないかを察知できるんだ。こいつら、俺に懐いてたろ? 基本的にゴブリンは人間には懐かないんだよ」



 クーとガーは男の言葉に頷いている。まぁ、ガーのほうが男の言葉を理解しているかは微妙だが……



「そうなんですか……でもこいつらオレにも懐いてますよ?」

「それはお前さんがチビたちにとって特別な存在だからだろ? お前さんが命がけでチビたちを守ったんだ。当然だろ」



 それはそうだ。ナオキはこの二匹のためにボコボコにされて逃げてきた。ソコを知らなくても必死に逃がしたことは感謝されるべきとこであり、懐かれる理由になる。



「さあ、俺はベルを探すとしよう。人間に捕まったらどんな目に合うか分からないからな」

「エルフが人間に捕まるとマズいんですか?」

「そりゃそうだ。エルフは長命だが、その数が圧倒的に少ない。理由はいくつかあるけど、一番は繁殖力が弱い。性行為を繰り返しても中々妊娠することがないんだ」

「そ、そうなんですね……」

「それもあってエルフは基本的に性欲が強くて何度も何度も愛し合うのさ」



エルフはセックス好きっと……覚えておこう



「ってあれ? 何の話だっけ?」

「人間に捕まるとマズいわけです……」

「そうだそうだ。つまり、エルフは稀少価値が高いうえにその容姿から人間の、特に貴族に人気があるんだ。もし捕まりでもしたらどこぞの貴族に高値で売り飛ばされてどんな辱めを受けるか分かったもんじゃない。更に俺の妹ベルはそんなエルフの中でも飛びぬけた美貌の持ち主。どんな高値でも手に入れようって輩がいてもおかしくない」

「そ、そんなに凄いんですね……」



――あれ?



 その時ナオキは妙な引っかかりを感じた。



なんだ……何が気になるんだ……



 ナオキはエルフの話とこれまでの出来事を必死に整理していった。



何かある……オレはその手掛かりを知っている……そうだ……オレはどこかで知ったんだ……思い出せ……



 ナオキは必死に何かを思い出そうとした。何かきっかけがあれば思い出せそうな……そんなもどかしさがナオキを苛立たせた。



「まぁそんなわけだからさ、俺は行くわ。お前さんは信用できそうだけど、俺と会ったことは他の人間には内緒で頼むぜ」

「あ……」



 急がないと男が行ってしまう。早く何か思い出さないと……



「チビたちももう捕まんなよ。エルフほどじゃあねぇけど、喋るゴブリンも中々のレアモンだからな」



――レアモン――



「あっ!」



その言葉でナオキの身体に電気が走り、頭の中である会話が蘇った。





――お前、レアモンじゃねぇかよどこで捕まえたんだ――

――へっへっ、森の中でな、かなりの上物だろ? これで暫く金に困らねぇ――





 そうだ。ゾーラに無理矢理連れられていかれたその最中、確かに兵士たちの会話で何かを捕まえたと言っていた兵士がいた。それもレアモンでかなりの上物……



かなり可能性として高いんじゃ……



「どうした? 急にデカい声出して。ビックリしてチビたちが飛び上がったぞ」



 男も驚いた様子でナオキに近づいた。



「あの……オレ。妹さんを知ってるかもしれない……」

「なに!?」



 ナオキの言葉に反応して男の表情は急に真剣なものになり、ナオキの両肩を力強く掴んだ。



「どんな些細なものでもいい教えてくれ。妹は……ベルはどこにいるんだ!?」



 今までは平静を装っていたのだろう。だが心の中では妹を心配していたのだ。その感情がナオキの言葉で一気に噴き出したようだ。



「あの……絶対ではないんだけど、妹さんの可能性はあると思います……」

「何でもいい! 教えてくれ! 頼む!」



 男は興奮し、更に強くナオキの両肩を揺さぶる。



「言う! 言いますから取り合えず手を離してください!」



 叫ぶようにナオキは言った。ハッっと我に返ったように男は掴んでいた両手を離した。



「すまない。つい興奮して……で? どうなんだ? ベルの可能性って何なんだ?」



 気持ちが焦っているのだろう。男の口調が今までより早い。



「オ、オレも妹さんを見たわけじゃないんで確証は無いんですけど……」



 ナオキは前置きをしたまま兵士たちの会話を男に話した。
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