異世界に召喚されたオレだが、可哀そうだからゴブリンを殺せない

たけるん

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ナオキ争奪戦

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    色々わからないことだらけだが、確信したこともある。そんな八京の心を読んだかのように――



「貴様、あの時の人間か……」



 突然ドラゴンが喋りだした。



「ドラゴンが……喋れるのか……?」



そんな話聞いたことない。



「フン……会話をするのが人間だけだと思っていたか。もっとも貴様ら人間と話す必要もないがな」



 確かにその通りだ。エルフでも魔人でもそこにいるゴブリンでも話すことが出来た。数百年……ひょっとしたら数千年生きるドラゴンが話せても不思議ではない。ならばこのドラゴンに聞くことがある。



「なぜここにいる? 僕の仲間がお前を追っていたハズだ!」



 そう、ヨシキたちはどうした。



「ハッ。分かり切ったことを。ワイがここにいるのが答えだろうに」

「まさか……」

「その通り、全員殺してくれたわ」



 信じたくなかった。いくら相手がドラゴンとはいえあの時のドラゴンは瀕死だった。ヨシキの実力ならなら十分だったハズだ。



「出鱈目だ! ヨシキさんがそんな簡単にやられるわけ……」

「ならナゼワイは今貴様の目の前にいる? それが全てだろう? 現実を受け入れろ」

「そんな……」



 ヨシキと分かり合える日がくる。そんな日を信じていた。それがこんな形で砕かれるとは思わなかった。



「まぁいい。そんなに大事な仲間なら貴様も同じ所へ送ってやろう。このワイをあそこまで追い詰めたのだからな。その罪は重い。楽に死ねると思うなよ」

「この……」

「ちょっと待て!」



 八京とドラゴンの会話に割って入ってきたモノがいた。



「ナオキ君……」

「八京さんとお前、知り合いなのか?」



 事情を知らないナオキにしてみれば当然の質問だ。



「お前、何をいまさら……」

「答えろよ!」

「……あぁ。その通り。この人間はこのワイを瀕死の状態まで追いやった憎むべき人間だ」

「えっ? じゃ、じゃあ八京さんの右腕って……」

「そう。そのドラゴンにやられたんだ」

「そ、そんな……」



 ナオキは驚きを隠せなかった。当然だろう。自分が呼び出したドラゴンが以前、八京と戦ったドラゴンなのだ。当事者の八京ですら驚いている。



「小僧。ワイはお前に呼び出された。お前の利になるよう動くのが筋だ。だが、それとは別に、ワイを殺そうとした奴らに報復するのはワイ個人の問題だ」

「そ、それってつまり……」

「あぁ、ここにいる人間を皆殺しにする」

「な……」

「小僧、お前はこの場から脱出でき、ワイは恨みを晴らす。どうだ? 一挙両得だろう」



 カーマインの言い分は理解できる。こちらが一方的に彼を襲ったのだ。復讐をするのも納得が出来た。

 しかし――



「……だ……」



 ナオキが呟く。



「ナニ?」



 カーマインがナオキの呟きに



「八京さんを殺すなんて絶対駄目だ。そんなこと許さない!」

「お前……何を言っている……」

「あの兵士たちだってそうだ。何も殺すこと無いじゃないか。オレはそんなこと認めないぞ!」



 やはりナオキだ



「愚か者が。奴らはお前の敵だぞ? 殺されて当然だろ」

「そんなことない! いくらオレの敵でも殺していい理由じゃない。殺す必要なんてないんだ」

「何を言ってる、お前は。殺さなければお前たちが殺されるんだぞ!」

「そうならないためにお前が必要なんだろ! いいか? 人間を殺さないでオレたちを無事に脱出させる。それがお前の役目だ! それが出来ないならオレの魔力の供給を止めてやる!」

「な……何を馬鹿なことを……そうなったら困るのはお前だろう」

「うるさい! そうならないためにやるんだ! いいか!? これは命令だ! オレやクーが殺されたくなかったらやるんだ」

「く……」



 流石ナオキ。相手がドラゴンだろうが自分の信念は決して曲げない。そんなナオキだから八京にはナオキが必要なのだ。

 そして、ナオキが秘龍石からカーマインを出したのは間違いなさそうだ。カーマインはナオキの魔力を自らの力に変換して動いている。だとしたらナオキにかかっている負担は相当なものだろう。おそらく持って後数分……なら八京のやることは決まった。



「ジュダさん。ナオキ君です。カーマインはナオキ君の魔力を使って秘龍石から現れている。ならナオキ君から秘龍石を取り上げるかナオキ君の魔力が切れるのを待てばいい」

「ナオキの魔力切れを待つって……そんなのどれだけ待てばいいかわからないだろう?」

「だから僕がカーマインを引き付けます。その間にジュダさんたちはナオキ君から秘龍石を奪ってください。そうすればカーマインは姿を消すはずです」

「な、なるほど。わかった。おい!」



 ジュダは辺りに散っている兵士たちに聞こえるように声を張り上げた。



「残っている兵士でまだ戦えるものはナオキを狙え! 秘龍石を奪うんだ! なお、戦線に参加できないもので動けるものは町の住人を避難させろ!」

「ハイ!」



 兵士たちは陣形を組みナオキに狙いを定め動き出した。兵士は4分の1ほどカーマインに殺されただろうか。残った兵士の半分ほどがナオキへ向けられた。ナオキはというと、カーマインに魔力を供給するので精一杯なのだろう。剣を構えるが動作が酷くノロい。

 兵士たちはナオキに向って走り出した。そんなナオキと兵士たちの間に割って入ってきたモノがいた。



「レイ!」

「任せろナオキ。誰一人お前の所へいかせねぇ」



 レイは迫ってきた兵士たちを次々に斬り払った。



「ち……またあのエルフか。ロックフォール、ロックフォールはいるか?」



 ジュダは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべながら部下の名前をあげた。



「ハッ。ここにいます」



 その男はスティルトンやゾーラと一緒にいた兵士だった。



「私とお前でエルフを正面から相手をする。お前たちは私たちをサポートしろ!」

「ハイ!」



 ロックフォールは持っていたバトルアックスを構えた瞬間――レイに突進し、ソレを振り下ろした。レイは降ろされた戦斧を剣で受け止めた。だが、戦斧の勢いに押され、片膝をついた。



「うおっ!?」



 尚もロックフォールは戦斧に力を込めレイを斬り落とそうとする。



「く……」



 必死に耐えるレイに向って横から複数の氷の矢が襲った。

 咄嗟に受けていた剣を斜めにし、バトルアックスをいなし、身体を反転させながら矢を躱した。矢はレイの身体を掠め飛んでいった。



「惜しかったな」



 ジュダは不敵な笑みを浮かべながらレイへ手のひらを向けていた。



「……なるほどね。これはやりずらいな……」



 矢が掠めた頬から血が一筋垂れた。レイはそれを拭い、視線をジュダとロックフォールの両方を交互に見比べた。



「投降するなら早い方が身のためだぞ」



 尚も笑みを受かべながらジュダは言った。



「冗談は俺を倒してからにしな。まぁ無理な話だけどよ」



 レイも負けじと応戦する。



「なら後悔させてやる!」



 再び氷の矢がレイを襲い始めた。ソレに加えロックフォールのバトルアックスが竜巻のようにウネリ襲い来る。更にその隙をついて他の兵士たちがレイを襲ってくる。それらの攻撃を捌きながらレイはロックフォールと兵士へ攻撃を行うが、決定打に欠け、膠着状態になった。
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