異世界に召喚されたオレだが、可哀そうだからゴブリンを殺せない

たけるん

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ナオキの選択

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「これがあの時の顛末だ」

「…………」



話が色々ありすぎて頭の中の整理が追いつかない。



「あの、ちょっといいか?」



 レイが手を上げた。



「なんだ?」



 魔王の鋭い眼光がレイを刺す。



「その後、なんでそこの魔人は八京の近くで動いていたんだ……ですか」



 普段敬語を使わないレイだが流石に魔王には気を遣うらしい。そこの魔人とはエドガーのコトだろう。



「そのことか。それはな、エドガーが八京を気に入ってしまってな。ゼヒ八京の手助けをしたいと申し出たのだ」

「ま、魔王様チョット……」



 エドガーは照れ臭そうにしていた。



「エドガーさんが……」



意外だ



「まぁ、余としても八京のことには興味が湧いたのでな、人間の動向を監視がてら協力することを許可したのだ」

「な、なるほど……」

「ンフフフ。ですから私はサーカス団と称し、傷ついた魔物を買い取り、保護していたのですよ」

「そういったことが……」

「八京は余程のことが無い限り魔物の命をとることはしないのでな」

「でもいくら八京さんとは言え、魔物を傷つけたり、時には殺したりするのは魔王様的にはいいのですか?」

「魔物と言っても余の配下ではないからな。部下をやられれば考えるが、それは余の範疇ではない。とはいえ、エドガーが連れ帰った魔物は我が軍が責任を持って治療し、その後は我が軍で働いているぞ」

「そういうことか……なるほど理解した」



流石八京さんだ……この世界の人間じゃ出来ないことをやっていたのか……



「さぁそこでだ。ナオキ、話が長くなってしまったが確認をする。貴様はこれからどうするつもりだ?」

「えっ? オレですか?」

「そうだ。余は八京のこの先のビジョンに協力をするつもりでいた。だが八京は死んでしまった。ナオキ、貴様は八京の意志を継ぐ気があるか?」

「や、八京さんの意志……」

「お前にその気があるなら余が力を貸すことを約束する。どうだ?」



ま、魔王の力……それって物凄い後ろ盾じゃないか



「ナオキさん。これはまたとない申し出ですよ。魔王様が直々に手を差し伸べるなどそうあるものではありません」

「ナオキ、確かにそうだ。これはチャンスかもしれないぞ」



 エドガーもレイも言っている。これは神が気まぐれに垂らした一本の糸なのだろう。これを掴めば最強の力が手に入ったも同然だ。



「……」

「どうした? 悪い話では無かろう」

「ナ、ナオキさん……」

「ナオキさん」



 アイリもベルもナオキを心配している。



八京さんの意志をオレが……それって……



「どうした? 良い提案だぞ」

「……」

「ンフフフ。ナオキさん、魔王様が力を貸すということは私も引き続き協力するということです。どうです? 共に八京さんの求めたものを目指そうではありませんか」



 エドガーはナオキへ手を差し出した。それほどまでに八京のことをエドガーは思っていたのだろう。



ヨシ決めた。



「魔王様、エドガーさん。決めました」

「そうか、返答は?」



 ナオキは立ち上がり顔を魔王へ向けた。



「……すいません。その申し入れを受けることはできません」



 ナオキは深く頭を下げた。



「ナオキ、お前……」

「ナオキさん」

「な、ナオキさん」



 レイもベルもアイリも驚いていた。



「ほう。何か不満でもあるのか?」



 魔王はいたって冷静だ。



「いえ、不満なんてそんな……」

「ではなぜだ?」

「その……オレはオレ自身の意志で動かなきゃダメだと思って」

「ほう……。お前の意志とは?」

「実は……まだそこまで決めてたわけじゃないんです……」



 申し訳なさそうにナオキは頭を掻いた。



「なに!?」

「でも、八京さんは八京さんが経験したことでどうするかを決めてきたはずです……オレも、自分で見て感じて経験してオレが進むべき道を決めたいんです」

「……」

「オレはまだこの世界のことを知らなすぎます。それに、恥ずかしいですけど、今この場で八京さんの意志を継ぐほどオレは覚悟が出来ているわけでもありません。なので、もっと世界を見てみたいんです」

「……」

「そして、オレがどうしたいのか、何をすべきか分かった時、今度はオレが報告に来ます」

「ナオキ……」

「その時にはもう遅いかもしれんぞ? 余の気が変わっているやもしれん」

「その時はその時です。人にお願いするばっかりじゃなく、先ずは自分で色々やってみます」

「……」



 魔王は黙ったままだ。



アレ? もしかして怒らせた……



「ふっ。八京といいお前といい面白い人間もいたものだ。なぁ、エドガー」

「ンフフフ。そうですね、我々の考えの斜め上を行く存在。アナタたちを見ていると飽きません」

「ナオキ。お前のコト、気に入ったぞ。何かあればいつでも来るがよい。我ら魔王軍はお前たちを歓迎する」

「えっ!? そんな……」



怒ってないのか……



「やったなナオキ。正直ヒヤヒヤしたぜ」

「本当ですよ。でも良かった」

「あの、ナオキさん、良かったですね」

「みんな……あぁ」



 レイたちから安堵の笑みがこぼれる。みんな一様に心配だったのだろう。



「そうと決まれば今宵は宴だ。皆の者、準備をせぇ」

「はっ!!」



 魔王の命令に部下たちは反応した。



「え!? 宴!?」

「そうだ。余が呼んだ客人だ。歓迎せずに帰しては余の沽券にかかわるからのう」

「よっしゃー! 酒が飲めるぞ!」

「チョット兄さま!」

「なんだよ良いじゃねぇか! 魔王様が言ってるんだぞ」

「そうですけどもう少し場の空気を読んでください」

「何言ってんだ。十分すぎるほど読んでたろ。ずっと大人しくしてて疲れたんだ」

「ソレは私たちだって一緒です。ねぇアイリ?」

「え? そ、そうですね……」



 いつものレイとベルのやり取りで場の雰囲気が柔らかいモノになった。



「まったく……魔王の前でも二人は変わんないんだな……」

「それが俺たちなんだからいいじゃねぇか」



褒めたつもりはないいだけどな……でもいっか……



 この場にレイたちがいて本当に良かったとナオキは心から思った。



「ところでそこのエルフ。男の方だ」



 唐突に魔王がレイには声をかけた。



「あっ? あ、いや、なんでしょうか?」



 思わず素が出そうになる辺り、こういったところはやはりレイだ。



「その剣は、ムサシが使っていたモノか?」



 レイの背中にある剣を指差し、魔王は言った。



「えっ? 確か……そうだ……ですけど」

「八京が使っていたモノだな?」

「はい。アイツが死ぬ前に俺にくれたんだ……です」

「そうか……その剣は余やナオキの肩にいる竜をも殺せる剣。精進して八京やムサシのように使いこなせねば宝の持ち腐れになってしまうぞ」

「それなら大丈夫ですよ! 俺はアイツと互角の戦いをしたんだ。使いこなせるさ」

「ほう、八京と互角にのう……」

「ンフフフフ……」



 魔王とエドガーは意味深な笑みを浮かべている。



「な、なんだよ。本当だぞ!」

「では訊くが、エルフ。お前はここにいるエドガーに勝てるのか?」

「えっ? えっと……それは……」



 レイはエドガー見て言葉に詰まる。



「エドガー、どうだ?」

「そうですねぇ。まぁ3分とかからず殺せますね」

「んな!?」



 エドガーの言葉にレイは立ち上がった。



「まぁそんなもんだろう。エルフ、八京と剣を交えたと言ったが、八京はまだナオキの肩に乗っているトカゲとの戦いの怪我が完治していなかったのだろう?」

「誰がトカゲじゃ! かみ殺すぞ坊主!」



 カーマインが魔王に過剰に反応する。



「そりゃそうだけど……でもほぼ完治って聞いてたし……」

「ソレは通常の生活に毛が生えたほどの状態だろう。なぁトカゲ?」

「あぁ!?」



 カーマインが魔王ににらみを利かすが、魔王は余裕の笑みを浮かべている。



「……まぁそうじゃのう。ワイと戦った頃の三分の一程度ッテところかのう」 



 渋々カーマインは答えた。



「えぇ!?」

「三分の一!?」



 ナオキとレイは同時に声を出した。あの時の八京でもカーマインと戦った時の三分の一の力だとは思いもしなかったのだ。



「ンフフフ。そうでしょうね。そうでなければあの八京さんが人間ごときの剣で死ぬもんですか」



 エドガーの言う通り、考えてみれば魔人や竜と互角に戦える八京が騎士とは言え、人間に殺されるのには違和感があった。



「アイツ……まだそんなに実力があったのか……」



 レイは拳を握りブルブル震えている。



「れ、レイ――」

「面白れぇじゃねぇか!」

「へっ?」

「あの時、俺もアイツも本気じゃなかった。けど余力はあっちの方が桁違いにあったってか。なら俺はアイツ以上に強くなってやるよ!」



 レイが熱くなっている。ナオキはてっきり落ち込むと思っていたが、レイはそんなタマではなかった。



「ふっ……」

「ンフフフ。ではそのうちアナタは私をも超えるということですかねぇ」



 エドガーは聞き捨てならないとでもいいたそうだ。



「あぁそうだ。アンタを初めて見た時は正直ビビっちまったがこんな話を聞いちまったんだ。絶対にアンタを超えてやるよ」

「ンフフフ。それは楽しみですねぇ」

「あぁ。待っとけ、スグに強くなってやるから」



 レイとエドガーは何やら楽しそうだ。

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