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アタシが剣を教えるわよ
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「――剣の指導? アタシが?」
ゴブリン達の統制が行き渡り、城内の掃除が捗り出した頃、グライスが操の元を訪れていた。
「はい。今後の魔王軍で幹部になり得る者の指導を魔王様が是非操様に行って欲しいとのことです」
「魔王様が!?」
「はい」
――怪しいわね――
「何でアタシなの? アタシ、剣術なんて習ったこと無いのよ」
「なぜかと言われますと……本来であれば、魔王軍随一の剣の使い手が行っていたのですが、とある人間に殺されまして……」
「えっ? そのとある人間ってもしかして……」
――いや、もしかしなくても解るわ――
「はい。操様です」
――ですよね――
「ですので、今魔王軍には現在、操様以上の剣の使い手はいないのです。操様、引き受けて貰えますね?」
「う~ん。アタシが殺しちゃったんだもの何とも断わりづらいわね……わかったわ何とかやってみるわ」
「ありがとうございます。操様ならそう言って貰えると思いました」
「でも、期待しないでね。ホントに教えられないから」
「大丈夫です。その者ですが、剣術の基礎はできていますので、操様にはその者と実戦形式で剣を交えて貰えればそれで結構です」
「そう? それなら何とかなりそうね。じゃあサッサと済ませちゃいましょう」
操は安堵しグライスと闘技場へ向かった。
――闘技場はローマのコロッセオのようだった。地面は砂が敷き詰められている。観客席は円形で何段にもなって席が設けられていた。
「へぇ、こんなところがあったのね。雰囲気あっていいわ」
操は闘技場の中心に立ち周りを見回した。
「そう言って頂けて光栄です。こちらドワーフ達が造った自慢の闘技場です」
グライスが嬉しそうに語る。
――流石ドワーフの建築技術。侮れないわね――
「そして、あちらの観客席にいる魔人が操様に指導していただきたい者です」
グライスが指差す方に目をやると小柄な魔人が立っていた。
魔人は観客席からジャンプをし、闘技場へ降り立ち、瞬く間に操達のトコまで疾走してきた。
――あらヤダ。カワイイ顔してるじゃない。オネェさんドキドキして勃起しちゃいそう……って竿も玉も無いんだけどね――
魔人の髪はエメラルドグリーンで肌は小麦色をしていた。幼さも残るが、生意気そうでキリッとした緑色の瞳が印象的だった。
「初めまして、操よ」
操は手を差しだし握手を求めた。
「………………」
しかし幼い魔人はソッポを向いていた。どうやら操と手を取り合う気は無いようだ。そして魔人からは操に対して敵意が向けられていた。
――このツンツンした感じ……思春期の少年そのものじゃない。もう、たまんないわ――
「これ、クラウド。操様が握手を求めているのにその態度はなんだ」
「………………」
「クラウド!」
グライスがクラウドと呼ぶ魔人に注意をするがクラウドの態度は変わらずだった。
「まぁいいわ。その内慣れるでしょ」
操は握手を諦め、出した手を上げた。
「申し訳ございません。この子には後でキツク言い聞かせますんで」
「別に構わないわ。そういう時期って誰にでもあるでしょ。人間も魔人も思春期ってあるわよ」
「そんなんじゃない!!」
「――!?」
突然クラウドは操に向って声をあげた。その声に操もグライスも驚いた。
「誰がお前の手ほどきを受けたいと思うか! お前は……お前は父上を……」
クラウドは拳を『ギュッ』っと握りしめていた。
――父上ってもしかして――
「ねぇグライス。この子のお父さんって……」
「はい。先日操様に殺された剣士デュアリスの息子です」
――あらやだ――
「本来ならば父の手ほどきを受け立派な剣士になるはずでしたが……魔王様の指示とは言え、父の仇の指導を受けることになるとは。それも人間の小娘とはクラウドの気持ちを思うと……うぅ……」
グライスは涙を拭うそぶりを見せた。元が骸骨なので涙は流れないのだが……
「ちょっとやめてよグライス。息子を前にシャレになんないわよ。気まずくなるでしょ」
「ヒャッヒャッヒャッ。少し悪ふざけが過ぎましたかな。ですがクラウドはシャレで済まそうとは思っていないようですぞ」
――まぁ目の前に父親の仇がいたらね。しかも剣を教えてもらう立場なんてね……なんか……なんか……――
ギュッ!!
感情が昂った操は強くクラウドを抱きしめた。
「んなっ!」
「んほっ!」
操の行動にクラウドもグライスも驚いた。
「何て健気なの。もうアタシ涙が止んないわ」
「ちょっ放っ――」
「泣きなさい! アタシの胸で泣きなさい!」
クラウドが必死に抵抗しようとするが、更に昂った感情が操を力強く抱きしめさせた。
「いいの! 泣いていいの! アタシの胸で思いっきり泣いてアナタの心の澱を出し切ってしまいなさい」
「ふ、ふざけるな! 誰がお前の前で――」
「強がらなくてもいいの! そしてアタシ、アナタのお母さんになるわ!」
「ヒャッ!」
思わず飛び出した操の発言にグライスも驚き変な声をあげた。
「決めた! もうアナタのお父さんは死んじゃった(殺しちゃった)けどアタシがお父さんの代わりになるわ。今日からアタシのことを『お母さん』って呼びなさい」
「み、操様。あのですね――」
たまらずグライスが操を止めようとするが操は止まらない。
「グライスわかってる! 全部わかってるわ! でもこの子には親が必要なのよ。それも無償の愛を注ぐ親が。確かにアタシとこの子の関係では難しいでしょう。でも大丈夫。アタシたちならきっとこの困難を乗り越えられる。いえ、乗り越えて見せるわ!」
滝のように流れる涙も気にせず操は叫んでいた。この子を立派な大人に、そして最高の剣士に
しよう。操の心の中は固い決意が産まれた。
「み、操様……クラウドが先ほどから気を失っています」
「えっ!?」
操の腕の中、グッタリとしたクラウドがソコにはいた。
ゴブリン達の統制が行き渡り、城内の掃除が捗り出した頃、グライスが操の元を訪れていた。
「はい。今後の魔王軍で幹部になり得る者の指導を魔王様が是非操様に行って欲しいとのことです」
「魔王様が!?」
「はい」
――怪しいわね――
「何でアタシなの? アタシ、剣術なんて習ったこと無いのよ」
「なぜかと言われますと……本来であれば、魔王軍随一の剣の使い手が行っていたのですが、とある人間に殺されまして……」
「えっ? そのとある人間ってもしかして……」
――いや、もしかしなくても解るわ――
「はい。操様です」
――ですよね――
「ですので、今魔王軍には現在、操様以上の剣の使い手はいないのです。操様、引き受けて貰えますね?」
「う~ん。アタシが殺しちゃったんだもの何とも断わりづらいわね……わかったわ何とかやってみるわ」
「ありがとうございます。操様ならそう言って貰えると思いました」
「でも、期待しないでね。ホントに教えられないから」
「大丈夫です。その者ですが、剣術の基礎はできていますので、操様にはその者と実戦形式で剣を交えて貰えればそれで結構です」
「そう? それなら何とかなりそうね。じゃあサッサと済ませちゃいましょう」
操は安堵しグライスと闘技場へ向かった。
――闘技場はローマのコロッセオのようだった。地面は砂が敷き詰められている。観客席は円形で何段にもなって席が設けられていた。
「へぇ、こんなところがあったのね。雰囲気あっていいわ」
操は闘技場の中心に立ち周りを見回した。
「そう言って頂けて光栄です。こちらドワーフ達が造った自慢の闘技場です」
グライスが嬉しそうに語る。
――流石ドワーフの建築技術。侮れないわね――
「そして、あちらの観客席にいる魔人が操様に指導していただきたい者です」
グライスが指差す方に目をやると小柄な魔人が立っていた。
魔人は観客席からジャンプをし、闘技場へ降り立ち、瞬く間に操達のトコまで疾走してきた。
――あらヤダ。カワイイ顔してるじゃない。オネェさんドキドキして勃起しちゃいそう……って竿も玉も無いんだけどね――
魔人の髪はエメラルドグリーンで肌は小麦色をしていた。幼さも残るが、生意気そうでキリッとした緑色の瞳が印象的だった。
「初めまして、操よ」
操は手を差しだし握手を求めた。
「………………」
しかし幼い魔人はソッポを向いていた。どうやら操と手を取り合う気は無いようだ。そして魔人からは操に対して敵意が向けられていた。
――このツンツンした感じ……思春期の少年そのものじゃない。もう、たまんないわ――
「これ、クラウド。操様が握手を求めているのにその態度はなんだ」
「………………」
「クラウド!」
グライスがクラウドと呼ぶ魔人に注意をするがクラウドの態度は変わらずだった。
「まぁいいわ。その内慣れるでしょ」
操は握手を諦め、出した手を上げた。
「申し訳ございません。この子には後でキツク言い聞かせますんで」
「別に構わないわ。そういう時期って誰にでもあるでしょ。人間も魔人も思春期ってあるわよ」
「そんなんじゃない!!」
「――!?」
突然クラウドは操に向って声をあげた。その声に操もグライスも驚いた。
「誰がお前の手ほどきを受けたいと思うか! お前は……お前は父上を……」
クラウドは拳を『ギュッ』っと握りしめていた。
――父上ってもしかして――
「ねぇグライス。この子のお父さんって……」
「はい。先日操様に殺された剣士デュアリスの息子です」
――あらやだ――
「本来ならば父の手ほどきを受け立派な剣士になるはずでしたが……魔王様の指示とは言え、父の仇の指導を受けることになるとは。それも人間の小娘とはクラウドの気持ちを思うと……うぅ……」
グライスは涙を拭うそぶりを見せた。元が骸骨なので涙は流れないのだが……
「ちょっとやめてよグライス。息子を前にシャレになんないわよ。気まずくなるでしょ」
「ヒャッヒャッヒャッ。少し悪ふざけが過ぎましたかな。ですがクラウドはシャレで済まそうとは思っていないようですぞ」
――まぁ目の前に父親の仇がいたらね。しかも剣を教えてもらう立場なんてね……なんか……なんか……――
ギュッ!!
感情が昂った操は強くクラウドを抱きしめた。
「んなっ!」
「んほっ!」
操の行動にクラウドもグライスも驚いた。
「何て健気なの。もうアタシ涙が止んないわ」
「ちょっ放っ――」
「泣きなさい! アタシの胸で泣きなさい!」
クラウドが必死に抵抗しようとするが、更に昂った感情が操を力強く抱きしめさせた。
「いいの! 泣いていいの! アタシの胸で思いっきり泣いてアナタの心の澱を出し切ってしまいなさい」
「ふ、ふざけるな! 誰がお前の前で――」
「強がらなくてもいいの! そしてアタシ、アナタのお母さんになるわ!」
「ヒャッ!」
思わず飛び出した操の発言にグライスも驚き変な声をあげた。
「決めた! もうアナタのお父さんは死んじゃった(殺しちゃった)けどアタシがお父さんの代わりになるわ。今日からアタシのことを『お母さん』って呼びなさい」
「み、操様。あのですね――」
たまらずグライスが操を止めようとするが操は止まらない。
「グライスわかってる! 全部わかってるわ! でもこの子には親が必要なのよ。それも無償の愛を注ぐ親が。確かにアタシとこの子の関係では難しいでしょう。でも大丈夫。アタシたちならきっとこの困難を乗り越えられる。いえ、乗り越えて見せるわ!」
滝のように流れる涙も気にせず操は叫んでいた。この子を立派な大人に、そして最高の剣士に
しよう。操の心の中は固い決意が産まれた。
「み、操様……クラウドが先ほどから気を失っています」
「えっ!?」
操の腕の中、グッタリとしたクラウドがソコにはいた。
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