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ミシェルの独白⑧
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とうとうキャロルが出産した。
生まれた赤子はパスカルと名付けられた。
産婆や侍医等の関係者を別邸に呼び、出産するということになっていた為、ミシェルは別邸には入れず、パスカルが生まれてすぐに様子を見に行くということは叶わなかった。
それから二週間後、王家で集まり、パスカルのお披露目の為の食事会が王宮のダイニングルームにて開かれる。
集まった面々は、国王陛下夫妻、フレデリック、ミシェル、キャロルだ。
キャロルは普段王宮のダイニングルームにて食事を摂ることは許可されていないので、今回が初めてである。
国王陛下を上座とし、それから下座にかけて王妃、フレデリック、ミシェル、キャロルの順に座る。
パスカルは乳母が抱きかかえ、キャロルの側に控えている。
「キャロル殿。此度はご苦労であった。赤子をもっとよく儂らに見せてはくれぬか」
「はいっ! どうぞ!」
国王の願いにまるで友人に返事をするような気安さでキャロルは得意げに返事をする。
その様子に王妃が不愉快な表情をしたが、キャロルは気づかなかった。
パスカルはキャロルの髪色と同じストロベリーブロンドだが、瞳の色はフレデリックともキャロルとも違う藍色だった。
赤子の段階で顔立ちについてあまり断言することは出来ないけれど、顔の一部分だけでもフレデリックに似ている部分を探しても一つも見当たらない。
それにフレデリックとキャロルの結婚から出産するまでの期間がどう考えても短い割に、パスカルは特別小さくはなかった。
少し前に、ミシェルの兄夫婦が赤子が生まれたと赤子を連れてミシェルに会いに来たのだが、その赤子と比べても同じ程度である。
このことは、ミシェルが抱いた疑惑が当たっていたのかもしれないことを示していた。
――つまり、パスカルはフレデリックとキャロルの子ではなく、結婚前にキャロルが付き合っていた別の男性と彼女の子ではないかということだ。
パスカルの血縁上の父親がフレデリックだった場合は、婚前交渉したというだけなので、厳密にはあまり良くはないが、まだ許容範囲の話に収まる。
しかし、違う場合は大問題だ。
当人はそんな気がなくても、これは立派な犯罪行為に該当する。
冤罪をかけたことに対するキャロルからミシェルへの謝罪がないことをミシェルは忘れてなどいない。
直接断罪の言葉を口にしたのはフレデリックだが、元々キャロルが嘘八百の虐めを泣いてフレデリックに訴えたから断罪は起きた。
たとえキャロルが自分は直接断罪の言葉を言っていないと主張しても、ミシェルは見逃すなんて生易しい真似はしない。
当然、キャロルに対しても復讐するつもりでいる。
表向き彼女に罰を与えることが出来る不祥事は大歓迎だ。
とりあえず、パスカルの血縁上の父親は誰なのかミシェルは度々お世話になっている諜報員に調査を依頼する。
キャロルに事情聴取する必要もある。
あと、ミシェルは王妃教育を受ける中で王家の血が流れている者は瞳の色が変わるということを知っている為、彼の世話に携わる使用人にパスカルの瞳が変わるかの記録を自分がもういいと言うまで付けるように命じた。
まだパスカルは生まれたばかりなので、周囲もばたばたと落ち着きがなく、調査をするにはあまり適当ではない。
そこで、ミシェルは半年後にキャロルに事情聴取をすることを国王陛下夫妻に提言した。
王妃もパスカルが本当にフレデリックの子かどうか訝しく思っていたようで、渋る国王を念の為と丸め込んで決定した。
ミシェルも本当は自分だけで調査したかったが、まだあくまで王太子妃であった為、国王を通さない訳にはいかなかった。
王家に関わる重大な事柄を調査する為、あまり使用許可が下りない真実薬の使用許可も下りる。
こうして、半年経つのを待つことになった。
生まれた赤子はパスカルと名付けられた。
産婆や侍医等の関係者を別邸に呼び、出産するということになっていた為、ミシェルは別邸には入れず、パスカルが生まれてすぐに様子を見に行くということは叶わなかった。
それから二週間後、王家で集まり、パスカルのお披露目の為の食事会が王宮のダイニングルームにて開かれる。
集まった面々は、国王陛下夫妻、フレデリック、ミシェル、キャロルだ。
キャロルは普段王宮のダイニングルームにて食事を摂ることは許可されていないので、今回が初めてである。
国王陛下を上座とし、それから下座にかけて王妃、フレデリック、ミシェル、キャロルの順に座る。
パスカルは乳母が抱きかかえ、キャロルの側に控えている。
「キャロル殿。此度はご苦労であった。赤子をもっとよく儂らに見せてはくれぬか」
「はいっ! どうぞ!」
国王の願いにまるで友人に返事をするような気安さでキャロルは得意げに返事をする。
その様子に王妃が不愉快な表情をしたが、キャロルは気づかなかった。
パスカルはキャロルの髪色と同じストロベリーブロンドだが、瞳の色はフレデリックともキャロルとも違う藍色だった。
赤子の段階で顔立ちについてあまり断言することは出来ないけれど、顔の一部分だけでもフレデリックに似ている部分を探しても一つも見当たらない。
それにフレデリックとキャロルの結婚から出産するまでの期間がどう考えても短い割に、パスカルは特別小さくはなかった。
少し前に、ミシェルの兄夫婦が赤子が生まれたと赤子を連れてミシェルに会いに来たのだが、その赤子と比べても同じ程度である。
このことは、ミシェルが抱いた疑惑が当たっていたのかもしれないことを示していた。
――つまり、パスカルはフレデリックとキャロルの子ではなく、結婚前にキャロルが付き合っていた別の男性と彼女の子ではないかということだ。
パスカルの血縁上の父親がフレデリックだった場合は、婚前交渉したというだけなので、厳密にはあまり良くはないが、まだ許容範囲の話に収まる。
しかし、違う場合は大問題だ。
当人はそんな気がなくても、これは立派な犯罪行為に該当する。
冤罪をかけたことに対するキャロルからミシェルへの謝罪がないことをミシェルは忘れてなどいない。
直接断罪の言葉を口にしたのはフレデリックだが、元々キャロルが嘘八百の虐めを泣いてフレデリックに訴えたから断罪は起きた。
たとえキャロルが自分は直接断罪の言葉を言っていないと主張しても、ミシェルは見逃すなんて生易しい真似はしない。
当然、キャロルに対しても復讐するつもりでいる。
表向き彼女に罰を与えることが出来る不祥事は大歓迎だ。
とりあえず、パスカルの血縁上の父親は誰なのかミシェルは度々お世話になっている諜報員に調査を依頼する。
キャロルに事情聴取する必要もある。
あと、ミシェルは王妃教育を受ける中で王家の血が流れている者は瞳の色が変わるということを知っている為、彼の世話に携わる使用人にパスカルの瞳が変わるかの記録を自分がもういいと言うまで付けるように命じた。
まだパスカルは生まれたばかりなので、周囲もばたばたと落ち着きがなく、調査をするにはあまり適当ではない。
そこで、ミシェルは半年後にキャロルに事情聴取をすることを国王陛下夫妻に提言した。
王妃もパスカルが本当にフレデリックの子かどうか訝しく思っていたようで、渋る国王を念の為と丸め込んで決定した。
ミシェルも本当は自分だけで調査したかったが、まだあくまで王太子妃であった為、国王を通さない訳にはいかなかった。
王家に関わる重大な事柄を調査する為、あまり使用許可が下りない真実薬の使用許可も下りる。
こうして、半年経つのを待つことになった。
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