薬草の姫君

香山もも

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幼なじみ

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 災難というのは、こうも立て続けに起きるのだろうか。
 そんなことを思いながら、ライトは今日何度目かわからないため息をついた。
「まあまあ、ライト、そういう日もあるって」
 戸をおさえながら、なだめるようにベンジャミンが言った。ライトは金槌を持ったまま、彼をにらみつける。
「おまえな、いつもいつも言ってるだろ。なんで来る度に、人の家どっか壊してくんだよ」
 ライトの剣幕をよしに、ベンジャミンはひょうひょうとしたまま口を開く。
「ほらほら、ライト。よそ見してると、今度は自分の手、打っちまうぞ」
 それを言われると、ライトは視線を戻す。
 確かに今日だったらありえそうだ。手を怪我すれば、さらに面倒なことになる。
 ライトは仕方なく、戸を付けるため、釘を手に持った。
「まあ、壊したのはオレが悪かったけど、これで戸は5回目だけど、おまえだって多少、学習してないと思うぜ」
 同じことを5回もくり返している。それはつまり、工夫が足りないと言いたいんだろう。
 ライトは釘を持ったまま、大きく息を吸って、吐いた。それからもう一度息を吸って、
「――ふざけんな。どう工夫したって、そんなのおまえの怪力の前じゃ、意味ないだろ。だったらそっちが気を遣えって話だ」
 自慢じゃないが、ライトは最低限、いや最大限、できることはしている。努力するのであれば、別のことに時間は使いたい。
 けれど、彼のそんな思いは届くことなかった。ベンジャミンは大して悪びれる様子もなく、
「オレの怪力はオレのせいじゃない。家系の問題だ」
 きっぱりと言い切った。
 身体も大きく、そして気も大きいこの幼なじみは、ライトと同じ十八で、家からすぐのところに住んでいる。彼の言うとおり、家族みんな体格が良い。
「せっかく店のモン、持ってきてやったっていうのに」
「……マジか?」
 その言葉に、ライトの頬がゆるむ。
 ベンジャミンの家は小店をやっている。主に扱ってるのが小麦類や豆といった穀物で、他には加工食品なんかもある。
 その中でいわゆる規格外品ーーなんらかの理由で店に出せないものを、格安でライトは譲ってもらっているのだ。
 本来なら正規品を買うべきだが、背に腹は代えられない。
「それに今、問題があるとすれば、おまえのほうじゃないか?」
 ベンジャミンが目をやったのは、台所ですやすやと眠る少女。
 顔だけ見れば、まるで天使のように愛らしい。
「――ああ、まあ……な」
 彼が言いたいことは、なんとなくわかった。
 けれどライトはこれ以上、問題を抱えたくないので、ひとまず戸を直すのに、集中することにした。
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