Kadath Ragnarok Story

甲斐 結城

文字の大きさ
5 / 7

ソロデビュー

しおりを挟む
 理恵と翔と別れてから部屋でぐっすりと寝た。たとえゲームでも時間が3倍速となっているせいで脳に一日分の負担がかかってるので、脳の休息として睡眠時間の確保を推奨されている。もし寝ずにゲーム内徹夜を連続でやらかした場合、安全機能によりゲームを強制的に中断させられるようになっているらしい。ベッドはなかなか気持ちよかったと付け加えておく。
 あの後別れた時に食堂から「やめてくれ!俺は悪くない!無実だぁ!」とかきこえてきたけど本当に大丈夫なのか心配になる。

「取り敢えずギルドにきたけどどうしようか、やっぱり依頼を受けるのがよさそうかな?」

 希望としては街の中で一人でできるやつなんだけどどうだろうか。ざっと見回しただけでも討伐が過半数でやや採取、残りが街の中の依頼のように見える。

「ん~、少ないな~。どれにしようかなー。あれ、これ清掃だよね。うん、これにしよう。スキルを育てるのに良さそうだしね。ポーションを買った道具屋に掃除用具あったかな?みてからいくかな」

 さっそく清掃の依頼を受理してもらい道具屋を目指す。
 店内をみわたすとすみの方におかれていた。【清掃】スキルをとるひとなんていないだろうし、人気がないのも仕方ないか。取り敢えず数種類購入してから依頼主のもとへとむかう。

「ごめんくださーい。ギルドで清掃の依頼を受けたものです」
「はいはい、おや、可愛い嬢ちゃんじゃね。依頼を受けてくれて助かるよ。わしはメラン。よろし頼むね」
「私はカリンといいます。よろしくお願いします」

 メランさんは一人暮らしで先日体を痛めて知り合いに頼んで依頼をだしたらしい。

「でも大丈夫なのかい?一人じゃ大変だろうからある程度でいいからね」
「わかりました、でも私、【清掃】スキルをもっていますので、結構できるとおもいますよ」
「ほう、アレをかい。嬢ちゃんは冒険者なんだろう。【清掃】なんて普通主婦とか清掃を仕事してるもんどもくらいしかもってないんだけどねぇ。ちょっとした好奇心からでわるいんだがなんで持ってるのかきいてもいいかい」
「いいですよ。私の家では家事のうち掃除が私の担当だからっていうのと、その、あれです。魔女って知ってます?」
「……ああ、知ってるよ。それで?」
「はい、私魔女ってちょっと憧れでして逸話にそってかたちだけでも真似てみようかなー、なんて思いまして。なので【清掃】とか【錬金】とか【魔法陣】とか、それっぽいものをとってみた次第です。まあそんな感じですね、あまりおもしろおかしい理由じゃなくてすみません」
「いや、謝ることじゃあないさ。目標をもってそれにむかってゆく。そのことを笑うのはいけないことさ。それがたとえ自分自身であってもね。完全に諦めちまって過去の話として笑うのならまあ自分のことだからいいんじゃないかい。すまないね。初対面の嬢ちゃんに説教じみたこといっちまってさ。ただ、一ついいかい。【調合】はいらないのかい」
「ちょっと悩んだんですけど、どっちかっていうと薬師かなー、と思いまして」
「ふむ、そうかい。ありがとね」
「いえ、きいてくださってありがとうございます!」
「別に感謝されるようなことじゃないさ。ただの世間話さ。さ、横道にそれた話は置いといて、さっそく依頼をやってくれるかい」

 それからしばらくメランさんの指示に従って掃除をこなしていた。
 リアルと比べるとやはりスキルによる補正はかなりのもので、身体能力がからっきしなこの体でさほど疲れを感じずに綺麗に仕上げられた。

「ありがとうね。おかげで綺麗になったよ。スキルの方はどうだい?」
「えっと、6になりました!」
「そうかい、【清掃】は掃除の時間と範囲、とりにくい汚れをとることの三点の具合でレベルの上がりがかわる。今回なら数時間で家一軒分だからだろうね。元気な時にこまめに掃除してなかったらもうすこしあがっただろうにねぇ」

 レベルの上げ方は予想どうりだね。こういう補助系のスキルの最大値はたしか10だから一回で折り返し地点をこえちゃったね。

「まだ治りそうにないからね、依頼をだしたらまたきてくれるかい?」
「はい、いいですよ。」
「すまんねぇ。そうだ、いい仕事をしてくれたから、特別報酬がわりに嬢ちゃんに少し面白い情報をやろう」

 一体なんだろうか。知恵袋かな。

「攻撃魔法のスキルはいくつもってるんだい?」
「6種全部です」
「ほう、ならまず育てるのは3つに絞りな。魔法スキルが3つレベルが30になると【魔力操作】というのが手に入る。【魔法陣】はそれからだよ。そして【清掃】スキルも育てな。面白いスキルが貰えるからね。あとはそうさね、【錬金】を教えてあげるからもっかいあがりな」

 おお、ありがたい情報をもらえた。【魔力操作】か。なら最初に決めた【光魔法】と【闇魔法】と【風魔法】かな。【清掃】はまたメランさんの家の掃除をやらせてくれるそうだから置いといて、【錬金】についてさっそく教えてもらいましょう。

 あれから初歩的なことなどをいろいろと教わった。初期ライフポーションの作り方から道具の使い方まで。

「さすがだねぇ。初歩とはいえもうそこまで極めるとは。依頼とは別でスキルを鍛えたいときはきな。またおしえたるよ」

 これはたぶん結構気に入られたんだと思う。なぜかはわからないがいいことなのでよろこぶとしよう。

「いろいろとありがとうございました」
「それはこっちもだよ。なかなか受けてもらえない依頼を受けてくれたり、綺麗に掃除をしてくれたり、あとこんなババアの話し相手になってくれたりね」

 とてもいい依頼だった。メランさんの言う通りまたここにこさせてもらおう。


「ふむ、いったかい。あの嬢ちゃんならいいかもしんないね。いずれはみんなにも紹介しようかね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

処理中です...