小虎|僕を愛して身代わりになってくれた彼が、霊能者になるなんて!!

宇美

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第5章 祭りの日

祭りの日(1)

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それから四日後の夕べ、
私は父、
母、
二郎叔父と連れ立って、
祭り見物にでかけた。

いつも仕事で忙しく、
めったに私と一緒に外出しない父もいることが
嬉しくてしかたがなかった。

お稚児さんを首になったことなど
百年も前のことのように思われた。

ばねのようにはぜる思いで、
家を出て大通りに出ると、
ちりめんじゃこのようにみっしりと、
露店がならんでいる。

お面や綿飴に金魚、
欲しいものばかりだった。

どれからねだればよいか、
わからない。

ウィンナーを頬張りながら
射的の店に行った。

棚に掛かった紅白の幕に銃口を向ける。

雄牛のように興奮しながら、
西部劇のガンマンになったつもりで
猫のぬいぐるみめがけて発射する。

玉は空しく銃口の5センチメートル先で下に落ちた。

二郎叔父が貸してみろ!
と銃を取る。

黙って猫を睨みながら
二、三度位置を変えた後、
引き金を引いた。

ぱ!と指を離すと、
玉は見事に私が欲しがっていた猫を打ち落とした。

大当たり大当たりという声が聞こえる。

鐘の音が響いた。

周りの人たちが手を叩いて祝ってくれた。

二郎叔父がガッツポーズをしている。

茶髪のお団子頭の派手なはっぴをまとった女の人が
私に戦利品を渡してくれた。

叔母さんとお姉さんの中間ぐらいの年頃で赤い口紅を塗り、
鉢巻を締めていた。

猫のおなかには電池のケースがある。

父も負けてはいられないと、
ドラえもんの人形を狙った。

残念ながら父の腕前は私と五十歩百歩だった。

辺りのざわめきがふと静まった。

しゃんしゃんと束にした鈴の音が鳴り渡る。

荘厳な雅楽の音が風に乗ってきた。

赤や黄色の原色のはっぴを着た男達が
赤く発光する棒を振りつつ笛を吹いている。

そんなおじさん、
お兄さん達、
五,六人の後ろから白い狩衣に烏帽子をつけた男達が通った。

彼らは帯刀し、
弓を背負っている。

道が白色で埋め尽くされる。

蟻のように続く、
白衣の男達に見飽きた頃だった。

朱色や、
青の錦の着物の中学生くらいの少年達が、
笛を吹いたり、
太鼓を叩きながら現れた。

その後ろに平安時代の貴族のような格好をした、
藍や、
水色や、
赤や紫の着物の男達が続く。

黒い滑らかに光る靴で重々と進み、
手には勺を持っている。

頭にはお内裏様のような帽子を被って、
顎の下で紫の紐を結わえている。

私はこの時代がかった格好の何人かを知っていた。

特に水色の袴に藍の着物の面長の若い男には
とても懐かしい感じがした。

紫に白い丸い文様の袴にワインのような深い赤の着物の
年配の男性が現れた。

その白髪交じりの紳士が父に会釈した。

父と母が会釈を返す。

二郎叔父も私の頭を押しながら、
お辞儀をした。

お雛様の右大臣、
左大臣のような対の武人が現れた。

それに守られるように白毛の馬が脚を動かしている。

馬の上には少年が座っていた。

純白の着物に紫の袴を穿いて、
赤い錦の袖無しを着ている。

金の冠と袖無しの刺繍の金糸が
提灯の灯りを反射している。

白粉の下の顔立ちがはっきりしだした頃だった。

二郎叔父が私の手袋を外して、
コートのポケットに突っ込んだ。

辺りの人が一斉に片足を折ってしゃがみこんだ。

皆、
合掌して、
地面を見ている。

私も二郎叔父に肩をぐいとされて、
皆と同じ格好を取った。

こっそり頭をあげると、
一面に膝まづいた人たちの黒い頭が広がっていた。

誰一人として例外なく手袋を外している。

それよりずっと上に白い顔があった。

小虎だった。

私に気がついた様子で、
こちらに顔を向け微笑んでいた。

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