アーカイブ:怪談YouTuber・黒天の記録

kuro.

文字の大きさ
59 / 101

第51話「明かりの向こう」

しおりを挟む
こんばんは、黒天です。
今夜は、大学生の視聴者「Bさん」から寄せられた、通学路での不思議な体験をお話ししましょう。

何気ない日常のなかに潜む、ひとつの影――
それがどこから来たのかも、なぜそこにいたのかも分からないまま、
ただ「在る」ことが、これほどまでに恐ろしいとは。



Yさんがその“人影”を見たのは、大学の課題で遅くなった帰り道。
時刻は23時を回った頃だったそうです。

静まり返った住宅街を歩いていると、前方の路地に、街灯が一本だけ灯っているのが見えた。
その灯りの真下に、誰かが立っているのがわかったそうです。

うつむいているのか、顔は見えず、服装もはっきりしない。
ただ、不思議だったのは、その人影が“まるで塗りつぶした影”のように、黒く沈んでいたこと。

最初は気にしないようにして通り過ぎようとしたそうですが、近づくほどに、ある違和感が募っていったといいます。

明かりの下にいるはずなのに、影の輪郭は変わらず、どの角度から見ても“顔”がまるで見えない。

すれ違う瞬間、Yさんは意を決してその人影をちらりと見たそうです。
けれど――そこには、なにもなかった。

「顔が……なかった、んです。暗くて見えないとかじゃなくて、本当に、無かった」



気味が悪くなったYさんは、できるだけ早足でその場を離れました。
振り返ると、その影はまだ、街灯の下に“立っていた”。

次の日から、Yさんは帰り道を変えるようになりました。
けれど数日後、偶然同じ道を通った時、あることに気づいたそうです。

「……あの街灯、無かったんです。あの人影が立ってた場所、街灯どころか、電柱すらなかった」



気になったYさんは、地元の役所に問い合わせてみたそうです。
するとその場所には、数年前までは確かに街灯が立っていたけれど、老朽化で撤去され、以降は再設置もされていないという返答が返ってきました。

つまり、Yさんが見たのは「もう存在しないはずの明かり」と、
その下に“居た”はずのない何か――。



「僕、見たんです。明かりに照らされてるはずなのに、光を吸い込むような“黒”の人影を」

Yさんはそう語っていました。

もしあなたが、夜道の向こうにぽつんと灯る明かりを見かけたら……
その明かりが「本物かどうか」、少しだけ疑ってみた方がいいかもしれません。

光の向こうにいるのは、あなたを待っている誰かか、
それとも――もうこの世にいない“何か”なのかもしれませんから。


次は、あなたのすぐ後ろの街灯が、灯るかもしれません。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2025/12/7:『どろのあしあと』の章を追加。2025/12/14の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝8時頃より公開開始予定。 2025/12/5:『ひとのえ』の章を追加。2025/12/12の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/4:『こうしゅうといれ』の章を追加。2025/12/11の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/3:『かがみのむこう』の章を追加。2025/12/10の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/2:『へびくび』の章を追加。2025/12/9の朝4時頃より公開開始予定。 2025/12/1:『はえ』の章を追加。2025/12/8の朝4時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...