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第81話「見えない住人」
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こんばんは、怪録の黒天です。
今夜は、“見えない何か”に侵される恐怖のお話をお届けしましょう。
投稿者の名はユキノさん。
これは、彼女が数か月前から自宅で体験している出来事です。
彼女は都内の1Kのマンションで、一人暮らし。
特に霊感もなく、そういった話も信じるほうではありませんでした。
──最初の異変に気付いたのは、仕事から帰ってきたある夜のこと。
いつものように部屋の鍵を開け、中に入る。
その瞬間、何かが違うと感じた。
だが、何が違うのかは分からない。
靴の位置?
テーブルの上のリモコン?
カーテンの隙間?
気のせいだと自分に言い聞かせ、その夜はそのまま眠りにつきました。
けれど、翌朝。
ベッドの枕元に、彼女が記憶していない空のペットボトルが置いてありました。
寝る前、そんなものはなかったはず。
「……あれ?」
些細な違和感は、日を追うごとに増していきました。
・閉めたはずの引き戸が数センチ開いている。
・玄関の靴の向きが揃えられている。
・消したはずのテレビの電源ランプが点滅している。
“風のせい”“自分のうっかり”そう思い込もうとしました。
だが、その夜。
電気を消してベッドに横になった瞬間、背後でスゥー、スゥーと規則正しい呼吸音が聞こえたのです。
「……え?」
瞬間、動けなくなる。
息を詰め、耳を澄ます。
スゥー、スゥー
確かに、誰かがすぐ後ろで寝息を立てている。
けれど振り返れない。
目を閉じ、必死に気配を消し、そのまま朝を迎えた。
目が覚めると、部屋の隅に、自分のものではない靴が一足、並べて置かれていました。
泥がついていて、サイズも明らかに大きい。
“昨日まではなかった”
確信があった。
恐怖を覚え、管理会社に連絡し、鍵を交換してもらった。
部屋も隅々まで確認した。
誰も、いない。
だが、異変は止まらない。
夜になると、電気を消した瞬間に背後で息遣い。
トイレのドアの内側に、湿った手形。
壁に、何かが這いずったような黒ずんだ跡。
それでも、姿は見えない
見えるならまだいい。
誰がいるのか、何がいるのかも分からず、確実に“そこにいる”という感覚だけが、じわじわと生活空間を侵食していく。
ある晩、ユキノさんは決意して、部屋中の物の配置をすべて撮影し、記録することにした。
家具の位置、小物の並び、カーテンの開き具合。
そして夜、撮影した画像を確認する。
──ベッドの上。
寝具の上に、もう一つ。
誰かの足の形が、うっすらと沈んでいた。
彼女は絶句した。
その夜、電気を消した瞬間。
スゥー、スゥー
背後から、耳元に近づくような音。
そのまま、怖さのあまり意識を失うように眠ってしまった。
朝。
起きたとき、自分の布団の中に、自分の足とは別の、冷たく濡れた足が重なっていた。
慌てて布団を跳ね上げる。
──誰もいない。
ただ、濡れた足跡が、玄関へと続いていた。
そして、その日。玄関の内側に、一枚の紙切れが貼られていた。
『ここにいさせて』
もしあなたの部屋の中で、微かな異変を感じたなら。
目に見えぬ何かが、もうそこに棲みついているのかもしれません。
だって、見えないということは、そこに“いない”証拠にはならないのですから。
今夜は、“見えない何か”に侵される恐怖のお話をお届けしましょう。
投稿者の名はユキノさん。
これは、彼女が数か月前から自宅で体験している出来事です。
彼女は都内の1Kのマンションで、一人暮らし。
特に霊感もなく、そういった話も信じるほうではありませんでした。
──最初の異変に気付いたのは、仕事から帰ってきたある夜のこと。
いつものように部屋の鍵を開け、中に入る。
その瞬間、何かが違うと感じた。
だが、何が違うのかは分からない。
靴の位置?
テーブルの上のリモコン?
カーテンの隙間?
気のせいだと自分に言い聞かせ、その夜はそのまま眠りにつきました。
けれど、翌朝。
ベッドの枕元に、彼女が記憶していない空のペットボトルが置いてありました。
寝る前、そんなものはなかったはず。
「……あれ?」
些細な違和感は、日を追うごとに増していきました。
・閉めたはずの引き戸が数センチ開いている。
・玄関の靴の向きが揃えられている。
・消したはずのテレビの電源ランプが点滅している。
“風のせい”“自分のうっかり”そう思い込もうとしました。
だが、その夜。
電気を消してベッドに横になった瞬間、背後でスゥー、スゥーと規則正しい呼吸音が聞こえたのです。
「……え?」
瞬間、動けなくなる。
息を詰め、耳を澄ます。
スゥー、スゥー
確かに、誰かがすぐ後ろで寝息を立てている。
けれど振り返れない。
目を閉じ、必死に気配を消し、そのまま朝を迎えた。
目が覚めると、部屋の隅に、自分のものではない靴が一足、並べて置かれていました。
泥がついていて、サイズも明らかに大きい。
“昨日まではなかった”
確信があった。
恐怖を覚え、管理会社に連絡し、鍵を交換してもらった。
部屋も隅々まで確認した。
誰も、いない。
だが、異変は止まらない。
夜になると、電気を消した瞬間に背後で息遣い。
トイレのドアの内側に、湿った手形。
壁に、何かが這いずったような黒ずんだ跡。
それでも、姿は見えない
見えるならまだいい。
誰がいるのか、何がいるのかも分からず、確実に“そこにいる”という感覚だけが、じわじわと生活空間を侵食していく。
ある晩、ユキノさんは決意して、部屋中の物の配置をすべて撮影し、記録することにした。
家具の位置、小物の並び、カーテンの開き具合。
そして夜、撮影した画像を確認する。
──ベッドの上。
寝具の上に、もう一つ。
誰かの足の形が、うっすらと沈んでいた。
彼女は絶句した。
その夜、電気を消した瞬間。
スゥー、スゥー
背後から、耳元に近づくような音。
そのまま、怖さのあまり意識を失うように眠ってしまった。
朝。
起きたとき、自分の布団の中に、自分の足とは別の、冷たく濡れた足が重なっていた。
慌てて布団を跳ね上げる。
──誰もいない。
ただ、濡れた足跡が、玄関へと続いていた。
そして、その日。玄関の内側に、一枚の紙切れが貼られていた。
『ここにいさせて』
もしあなたの部屋の中で、微かな異変を感じたなら。
目に見えぬ何かが、もうそこに棲みついているのかもしれません。
だって、見えないということは、そこに“いない”証拠にはならないのですから。
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