アーカイブ:怪談YouTuber・黒天の記録

kuro.

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第90話「廃墟の赤い部屋」

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こんばんは、怪異語りの黒天です。
今宵もまた、ひとつ背筋の凍る話をお届けしましょう。



これは、ある視聴者の方から寄せられた体験談です。
舞台は、とある山奥に今も残る廃墟――昭和の時代に営業していた古い温泉ホテル。
廃墟マニアの間ではそこそこ有名で、「赤い部屋」という呼び名の部屋があることで知られていました。

その夜、投稿者の彰人さんと友人の克也、佳菜、涼介の四人は、肝試し半分、探索半分のつもりで、その廃ホテルを訪れたそうです。

建物は、すでに崩れかけた壁と割れた窓、草木に呑まれた外壁が幽霊屋敷そのもの。
けれど、誰もが噂話で耳にしていた「赤い部屋」――そこだけは、どこにあるのか明確な情報がなく、まるで招かれる者を選ぶように存在していたのだとか。

その日、彰人たちが入ったのは夜の九時過ぎ。
懐中電灯の明かりを頼りに、崩れたロビーを抜け、朽ちかけた階段を上っていく。

そして、三階の奥――

奇妙に、そこだけ傷みの少ない扉。
ドアには、赤黒く滲んだ文字で「入るな」と書かれていたそうです。

もちろん、若さゆえの怖いもの知らず。
克也が笑いながら扉を押し開けると、中は文字通り、真っ赤な世界。

床も、壁も、天井も、すべて朱に染まっていた。
だがよく見ると、それはただの塗料でも血糊でもない。
無数の文字で埋め尽くされていたのです。

その文字というのが――

人の名前

最初に克也が「うわっ、これ…名前じゃねえか?」と口にした時、佳菜が「ちょっと待って…これ…」と震える声で指差した。

そこに記されていたのは、紛れもなく彼ら四人の名前だった。

しかも、日付が添えられている。

その日の日付で。

「誰だよ、こんなイタズラ!」と涼介が叫んだその時、部屋の隅でガサリと音がした。

明かりを向けると、そこには――

腐敗したように膨れた顔の、得体の知れないものが、のっぺりとした笑みを浮かべてこちらを見ていた。

彰人は咄嗟に扉に手をかけ逃げ出そうとするも、扉はビクともしない。
慌てふためく中、克也が窓を叩き割り、辛うじて飛び出した。

残りの三人も後に続き、崩れかけた非常階段を転がるように駆け下りて、やっとのことでホテルから脱出。

だが、それで終わりではなかった。

後日、彰人の元に届いた一通の手紙。

差出人不明の封筒の中には、真っ赤な紙切れ一枚。
そこには、達筆とも乱筆ともつかない文字で、こう記されていた。

「次はいつ来る?」

以来、彰人は赤い染みのようなものを見ると、あの腐った顔が頭にちらつくようになり、誰もいない部屋で名前を呼ばれる声を耳にすることも増えたそうです。

そして、この話を送ってくれた数日後、彰人さんからの連絡は途絶えました。



今も彼が無事でいるのかどうか、私には分かりません。

――あなたの名前は、どこに記されているでしょうか?

廃墟の壁の中か、それとももう、この世のどこかに。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

macarin
2025.04.06 macarin

昼読むと怖くないのに夜読むと怖いのなんでだ:( ˙꒳​˙ ):

解除

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