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第89話「異様な追跡者」
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今宵もお越しくださり、ありがとうございます。怪異を求め、怪異を追い、怪異に触れる者……怪録の黒天です。
今夜、お届けするのは、ある視聴者の方から寄せられた体験談。
内容は……廃病院にまつわる、逃げても逃げても追いかけられる恐怖。
しかもその相手は、人の形をしていて、人の姿ではない、“何か”。
投稿者・亮介(仮名)は学生時代、好奇心から心霊スポット巡りをしていたという。
仲の良い友人二人と車で訪れたのが、郊外にある廃病院。地元では昔から曰く付きの場所で、戦後しばらく稼働していたが、数十年前に院内で不可解な事故と失踪事件が相次ぎ、閉鎖。
今では荒れ放題で、近隣住民も近づかないという場所だった。
亮介たちは、夜の22時ごろに病院へ到着。
懐中電灯を片手に、壊れかけた自動ドアを押し開けると、微かに血のような鉄錆の臭いが鼻をついた。
内部は思ったよりも荒れており、ガラスも割れ、壁は落書きだらけ。
しかし、彼らは物怖じするどころか、スマホを手に笑いながら進んでいった。
だが、奥の手術室に差し掛かったとき。
友人の一人、誠(仮名)が突然、足を止めた。
「おい……誰かいないか?」
亮介ともう一人の友人・智也(仮名)は冗談だろうと笑った。
けれど、誠の顔は真っ青で、じっと廊下の先を見つめている。
そこに、いた。
ぼんやりとした、異様に背の高い影。
逆光のせいか、顔も姿もよくわからないが、人の形をしているのに、どこか歪んでいる。
長い髪のようなものが揺れ、四肢が異常に長く、静かにこちらを見つめていた。
「逃げろ!!」
誠の叫びと同時に、3人は駆け出した。
しかし、廊下の奥で、カタ……カタ……カタ……と何かが床を叩くような音が響く。
亮介が後ろを振り返ると、それは尋常ではない速さで追ってきていた。
脚も腕も、関節の位置すら怪しい歪んだ姿で、床を這うように、壁に貼りつくように。
しかも、追われるうちに、亮介には“それ”の顔が見えたという。
骸骨のように痩せこけ、目元と口元だけが異様に濡れて歪んでおり、血に濡れたような黒ずんだ包帯が巻かれていた。
「助けてくれ!!」
叫びながら、3人は分かれ道を曲がり、必死に玄関へ向かった。
その途中、誠が転び、智也が一瞬ためらうも、恐怖のあまり置き去りにして外へ飛び出した。
亮介は振り返り、誠が起き上がろうとした瞬間、それが誠の背後にのしかかるのを見た。
闇の中、ぐちゃりと嫌な音が響き、誠の声がかき消えた。
「うわあああああっ!!」
その後、亮介と智也は車に飛び乗り、慌ててその場を後にした。
車内で、震える智也がこう言った。
「……あれ、あいつ……まだ、追ってきてないか……?」
確かめた亮介も、ルームミラー越しに、遠ざかる病院の入り口で、何かがこちらを見ているのを見たという。
ただの影のはずなのに、じっと、じっと、視線を感じたと。
数日後――誠は自宅で発見された。
病院で遭遇した夜の服装のまま、放心状態で座り込んでいたという。
顔には深い引っ掻き傷、爪痕のような痕。
だが本人は、その晩の記憶を完全に失っていた。
ただ一つ、「何かが、ずっと部屋の隅から見てる」と怯えていたらしい。
廃病院という閉鎖空間。
そして、決して振り返ってはいけない、追われる恐怖。
“それ”は、もしかしたらまだ、廃墟のどこかで誰かを待っているのかもしれません。
もしかしたら……あなたが、その廃墟を覗き込むその瞬間を。
今夜、お届けするのは、ある視聴者の方から寄せられた体験談。
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仲の良い友人二人と車で訪れたのが、郊外にある廃病院。地元では昔から曰く付きの場所で、戦後しばらく稼働していたが、数十年前に院内で不可解な事故と失踪事件が相次ぎ、閉鎖。
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「逃げろ!!」
誠の叫びと同時に、3人は駆け出した。
しかし、廊下の奥で、カタ……カタ……カタ……と何かが床を叩くような音が響く。
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