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1年生編
第24話「卒業式と、春のはじまり。」
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三月中旬の空は、まだ冬の色を残していた。
頬を撫でる風は冷たくて、手袋が恋しくなるような朝。
ゆいは制服の袖をきゅっと握りしめながら、隣を歩くつかさに話しかけた。
「今日、卒業式だね……」
「うん。空気、ちょっとだけピリッとしてる」
つかさが空を見上げながら、静かに微笑んだ。
いつもと同じ通学路なのに、なんだか少しだけ背筋が伸びるような気がした。
二人は、どこか慎重に、一歩一歩を確かめるように歩く。
式典が行われる体育館の中は、普段よりも厳かな雰囲気に包まれていた。
並べられたパイプ椅子に、きちんと腰かける生徒たち。
壇上には校長先生、そして卒業生代表の姿。
校歌斉唱。
卒業証書授与。
一人ひとりの名前が、丁寧に呼ばれ、手渡される。
ぴしっとした空気の中、ゆいは思わず小さなあくびを飲み込んだ。
(……眠い……)
ちらっと隣を見ると、つかさも目をこすりながら、必死に眠気と戦っている。
前の列のりんはというと──
「…………」
直立したまま、魂がどこかへ飛んでいっていた。
目はぱっちり開いているのに、絶対、心はここにない。
ゆいはくすっと笑いそうになるのを、ぐっと堪えた。
やがて、卒業生代表がマイクの前に立ち、
静かに、でも力強く言葉を紡ぐ。
「私たちは、たんぽぽの丘学園で過ごした日々を、ずっと大切にしていきます。ここで出会った仲間たちは、かけがえのない宝物です」
体育館に響くその声に、ゆいは胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
卒業するのは上級生たちだけど、ゆいたちも、もうすぐ──四月から二年生になる。
時間は、確かに流れているんだ。
式が終わると、体育館を出る生徒たちの間に、少しだけ名残惜しい空気が漂った。
教室に戻る途中、あちこちで別れの挨拶や、写真を撮る音が聞こえる。
「……もうすぐ、二年生かぁ」
ゆいが窓の外を見ながら、ぽつりとつぶやいた。
窓の外には、まだ固い蕾をつけた桜の木が、冷たい風に揺れている。
「うん。あっという間だったね」
つかさが机に頬杖をつきながら、静かに応えた。
その瞳は、ほんの少しだけ、遠くを見ているようだった。
「でも、二年生になっても、わたしたちずーっと一緒だよねっ!」
りんが机に乗り出して、元気よく言った。
その言葉に、教室の空気がふわりと明るくなる。
「もちろんっ!」
ゆいは笑顔を向けて、りんとハイタッチ。
つかさも、ふっと目を細めて小さくうなずいた。
教室のざわめきの中、三人は自然に輪になった。
「クラス替え……あるかもだけど」
つかさが、少しだけ不安げに言うと、
「そんなの関係ないっ!」
りんが元気に言い切った。
「離れても、毎日会いに行くし、放課後だって遊ぶし!」
「うんっ! つかさ、りんちゃん……これからも、ずっと一緒だよ!」
ゆいの小さな願いに、つかさとりんも大きくうなずく。
「もちろんっ! 私たち、最強トリオだもん!」
「……そうだね。来年も、その先も、ずっと一緒」
優しい、温かい言葉たちが、ゆるやかに教室に満ちていく。
たんぽぽ学園での日々は、これからも続いていく。
平和(じゃない)毎日を、いっぱい積み重ねながら。
春は、すぐそこまで来ている。
新しい教室、新しい先生、新しい友だち。
ちょっとだけ怖いけど、すごく楽しみな未来。
でも、何があっても──この三人なら、大丈夫。
そんな確信が、ぽかぽかと胸に広がっていく。
──卒業式の日、まだ咲かない桜の下で、三人は小さな指切りを交わして、また、未来へと歩き出した。
たんぽぽ学園での日々は、まだまだこれから。
笑って、泣いて、転んで、また笑って。
そんな、かけがえのない毎日が、きっとずっと続いていく──。
頬を撫でる風は冷たくて、手袋が恋しくなるような朝。
ゆいは制服の袖をきゅっと握りしめながら、隣を歩くつかさに話しかけた。
「今日、卒業式だね……」
「うん。空気、ちょっとだけピリッとしてる」
つかさが空を見上げながら、静かに微笑んだ。
いつもと同じ通学路なのに、なんだか少しだけ背筋が伸びるような気がした。
二人は、どこか慎重に、一歩一歩を確かめるように歩く。
式典が行われる体育館の中は、普段よりも厳かな雰囲気に包まれていた。
並べられたパイプ椅子に、きちんと腰かける生徒たち。
壇上には校長先生、そして卒業生代表の姿。
校歌斉唱。
卒業証書授与。
一人ひとりの名前が、丁寧に呼ばれ、手渡される。
ぴしっとした空気の中、ゆいは思わず小さなあくびを飲み込んだ。
(……眠い……)
ちらっと隣を見ると、つかさも目をこすりながら、必死に眠気と戦っている。
前の列のりんはというと──
「…………」
直立したまま、魂がどこかへ飛んでいっていた。
目はぱっちり開いているのに、絶対、心はここにない。
ゆいはくすっと笑いそうになるのを、ぐっと堪えた。
やがて、卒業生代表がマイクの前に立ち、
静かに、でも力強く言葉を紡ぐ。
「私たちは、たんぽぽの丘学園で過ごした日々を、ずっと大切にしていきます。ここで出会った仲間たちは、かけがえのない宝物です」
体育館に響くその声に、ゆいは胸の奥がじんわりと温かくなるのを感じた。
卒業するのは上級生たちだけど、ゆいたちも、もうすぐ──四月から二年生になる。
時間は、確かに流れているんだ。
式が終わると、体育館を出る生徒たちの間に、少しだけ名残惜しい空気が漂った。
教室に戻る途中、あちこちで別れの挨拶や、写真を撮る音が聞こえる。
「……もうすぐ、二年生かぁ」
ゆいが窓の外を見ながら、ぽつりとつぶやいた。
窓の外には、まだ固い蕾をつけた桜の木が、冷たい風に揺れている。
「うん。あっという間だったね」
つかさが机に頬杖をつきながら、静かに応えた。
その瞳は、ほんの少しだけ、遠くを見ているようだった。
「でも、二年生になっても、わたしたちずーっと一緒だよねっ!」
りんが机に乗り出して、元気よく言った。
その言葉に、教室の空気がふわりと明るくなる。
「もちろんっ!」
ゆいは笑顔を向けて、りんとハイタッチ。
つかさも、ふっと目を細めて小さくうなずいた。
教室のざわめきの中、三人は自然に輪になった。
「クラス替え……あるかもだけど」
つかさが、少しだけ不安げに言うと、
「そんなの関係ないっ!」
りんが元気に言い切った。
「離れても、毎日会いに行くし、放課後だって遊ぶし!」
「うんっ! つかさ、りんちゃん……これからも、ずっと一緒だよ!」
ゆいの小さな願いに、つかさとりんも大きくうなずく。
「もちろんっ! 私たち、最強トリオだもん!」
「……そうだね。来年も、その先も、ずっと一緒」
優しい、温かい言葉たちが、ゆるやかに教室に満ちていく。
たんぽぽ学園での日々は、これからも続いていく。
平和(じゃない)毎日を、いっぱい積み重ねながら。
春は、すぐそこまで来ている。
新しい教室、新しい先生、新しい友だち。
ちょっとだけ怖いけど、すごく楽しみな未来。
でも、何があっても──この三人なら、大丈夫。
そんな確信が、ぽかぽかと胸に広がっていく。
──卒業式の日、まだ咲かない桜の下で、三人は小さな指切りを交わして、また、未来へと歩き出した。
たんぽぽ学園での日々は、まだまだこれから。
笑って、泣いて、転んで、また笑って。
そんな、かけがえのない毎日が、きっとずっと続いていく──。
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