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第十一章
しおりを挟む彼女に導かれ、私は素直に背を預けた。
ベッドは思いのほか柔らかく、まるで私という存在を静かに沈めるために用意された祭壇のようであった。
仰向けで照明が眩しい。視線の置き場に迷っている。
逆光のなかに彼女が立つ。
照明を背に受けたその輪郭は、白磁の像のようにほのかに輝き、顔の表情は影に溶けて判然としない。
だが、見下ろしていることだけは、確かであった。
彼女が身を屈め、唇を重ねる。
ゆるやかで、逃げ場を与えぬ接吻だった。
互いの呼吸が混ざり合い、粘度を帯びたディープキス。
時間はとろりと引き延ばされ、まるで蜜を匙で掬うかのような速度で流れていく。
胸元に触れる彼女の乳房の重み。
その質量は確かで、温度は柔らかく、私の鼓動の上に静かに横たわる。
それは肉体というより、彼女という存在そのものが覆い被さってくる感覚であった。
「エッチしよ?」
彼女の声は低く、柔らかく、それでいて拒み難い響きを含んでいた。
問いかけというより、既に決まっている未来を確認するための儀式のようだった。
私は頷く。
視線を外すことができぬまま、枕元のコンドームに手を伸ばす。
「……唾をください」
ゴムをつける時間を言い訳に彼女の体液を求める。
乾いた喉から痰を吐き出すように、
奥から唾を集めている仕草に興奮する。
軽蔑の眼差しと赦しの眼差しが混在している。
塊のようで小さな塊の唾液を僕に注ぐ。
グミような質感の唾液は僕の舌の上で
充分に主張した後、溶けていった。
合図として彼女の腰に手を添える。
「……ふふ」
彼女の瞳の奥には、私を試す静かな愉悦が潜んでいる。
彼女はわずかに身体を起こし、膝立ちになる。
逆光の中でその姿は、まるで舞台の上の主役のようだ。
私はただ、その舞台の床である。
ペニスを掴み、亀頭を膣に当てがう。
膣口を3往復させ、挿入の準備をする。
膣口は確かに濡れている。
彼女が導くまま、二人の距離は失われる。
温度が重なり、呼吸が混ざる。
彼女はゆっくりと腰を落とす。
その動きは急がず、慎重で、どこか儀式めいている。
膣内は温かく抵抗がないほどに蜜に溢れていた。
卒業生の体温がペニスを包み込む。
包み込む温かさは、柔らかく、それでいて確実だった。
「……ん」
微笑みがこぼれる。
それは勝者の笑みか、あるいは共犯者の笑みか。
深く重なったまま、彼女はほとんど動かない。
ただ、わずかに、ほんのわずかに、前後へスライドする。
彼女の深い淫毛が僕の下腹部に擦れる。
その微細な運動が、逆に私の神経を過敏にする。
彼女の身体の重みが、私の上に預けられる。
そのたびに、ペニスが彼女の一部に組み込まれていくような錯覚を覚える。
「……はぁ、ぁ」
こつりと触れ合うと彼女から吐息が漏れる。
彼女が腰をスライドさせると僅かに子宮口が感じられる。
その硬さでペニスの居場所を確認できる。
大きくもない平凡なペニスをポルチオにあて喘いでいる。
僕のテクニックかと錯覚させる。
陶器のような白い肌の彼女が感じている。
程よい肉感で充分に体重を預けてくれている。
体重がかかるたびに、彼女の快楽のパーツとなれている喜びを感じる。
先端がポルチオを感じる。
支配されているはずなのに、そこに甘やかな誇りが芽生える。
私は一瞬、彼女を抱き寄せる。
それは主導権を取り戻すためのささやかな抵抗であったのかもしれない。
しかし彼女は、軽く私を押し返す。
静かな微笑を浮かべたまま、再び高みへ戻る。
「……ねぇ。先生のことイかせたい」
その呼び名が、胸の奥で鈍く響く。
かつての立場を示すその言葉が、今は逆説的な鎖となって私を縛る。
彼女は私の手を取り、指を絡める。
恋人繋ぎ。
膝を立て、彼女と僕の接点は膣のみとなった。
恋人のようでありながら、どこか決定的に優位な仕草。
膝を立て、膣を打ち付ける騎乗位などAVであり、僕の世界にはなかった。
腰を上げ、再び落とす。
パツン、パツン……
そのたびに、私の理性は削られてゆく。
彼女から引き抜かれるペニスが一瞬外気を感じスッと冷える。
そして温かく柔らかい膣へ戻る。
彼女と私の陰毛が卑猥な雫で濡れている。
「…イって。イっていいよ。」
許しを与える声。
それは慈悲にも似ているが、実のところ最後の支配であった。
私は抗うことをやめる。
イキたい。
一方でもっと感じていたい。
「……くちあけて。」
膝立ちの騎乗位である。
彼女と僕の距離はかなりある。
手を伸ばしても届かない。
唾液をくださるのだ。
彼女の唾液を受け止めるために
僕は腰を引き、彼女の唾液の落下点を探す。
彼女の唾液は水のように粘度がない。
湧いてくる泉のようでポタポタと速度を持って溢れ出す。
「…ぁ、ぁ、ぁ、」
軽い唾液が喘ぎ声と共に落ちてくる。
彼女はこちらを見ていない。
快感に集中されている。
唾液を舌で受け止める。
鼻や顎にも注がれている。
冷たく、甘い。
鼻の穴に入り鼻水と混ざる。
先刻まで唾液童貞であった。
それなのに、こんなにも多様な唾液に出会えた。
手を握ると、さらに強く返してくれる。
僕をコントロールしてくれている喜び。
射精感に耐えられない。
「……イキそう」
吐息のように彼女に伝える。
彼女と目が合う。
「いいよ。イって。先生」
彼女の視線のもとで、何もかもを手放す。
かつてないほど無心に、私は崩れ落ちた。
気がつけば、情けないほど大きな声を上げている。
だがそれさえも、彼女の掌の上で許された音にすぎない。
彼女が唇を寄せる。
微笑みは穏やかで、どこか母性的ですらある。
「先生、イっちゃったね」
その一言で、私は完全に彼女の世界に取り込まれたのだと知る。
部屋は静まり返り、
照明の下で、私の存在だけが彼女の余韻に溶けていた。
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