敗北勇者、魔王の娘になる。~TS女体化したら魔王と幼馴染に溺愛された~

ゆきなっしゅ

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魔王城で娘にされました。

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魔王城、最奥の間。
雷鳴が轟き、ステンドグラスから不気味な光が差し込む中、勇者である俺アルトと魔法使いで幼馴染の相棒フィナは玉座に座る魔王ヴァニアと対峙していた。

「よくぞここまで来たな、人間どもよ」

重々しい声……ではなく、場違いなほど幼い声が響く。
玉座に座っていたのは、銀髪の幼女だった。

「……は? 子供?」
「無礼者! 誰が子供じゃ! 我こそが魔族を統べる王であるぞ!」

玉座から飛び降りた魔王は、腰に手を当ててふんぞり返るが、背丈は俺の腰ほどしかない。
俺は思わず肩の力を抜いて、呆れたように言った。

「お前が魔王ヴァニアか。魔王ってわりには随分ちっこいんだな」
「なっ……!」
「おいおい、こんな子供相手に本気で聖剣振るえってのか? なあフィナ、これどうするよ」

俺は隣に立つ相棒の魔法使い、フィナに問いかける。
しかし彼女は震えながら言う。

「アルトくん、油断しちゃだめだよ。魔王ヴァニア……見た目はちっこいけど、魔力が桁外れだよ。ボクの何倍もある。ただ者じゃない」
「そ、そうなのか……こんなちっこいやつにそんなパワーが……ならやるしかないな!」

あの優秀な魔法使いであるフィナが恐れるほどとは……俺は気合を入れなおし剣を構える。その時だった。

「……許さん」

魔王ヴァニアの小さな肩が震え、周囲の魔力が爆発的に膨れ上がる。
空気がビリビリと震え、フィナが悲鳴のような声を上げた。

「アルトくん逃げて!なにかが来る!」
「さっきからちっこいちっこいと!我がいちばん気にしていることを何度も言いおってぇぇぇ! 我の威厳が分からぬ勇者など、こうしてくれるわぁぁぁ!!」

ドォォォォォン!!

視界が真っピンクに染まる。
殺気とは違う、甘ったるくて濃密な魔力の奔流が、俺の体を包み込んだ。

「う、わぁぁぁぁ!?」

意識が遠のく中、フィナが「アルトくん!」と叫んで手を伸ばしてくるのが見えた。

***​​***

「……ん……うぅ……」

硬い石床の感触と、どこからともなく漂う甘い香りで目が覚める。
重かったはずの体が、妙に軽い。さっき攻撃を喰らって鎧が吹っ飛んだのか?いや、それにしては軽すぎるような。

「アルトくん!? 大丈夫!? ボクの声聞こえる!?」

すぐそばで、フィナの切羽詰まった声が聞こえる。
俺はのろのろと体を起こそうとして――胸元に強烈な違和感を覚えた。

「俺は生きてるのか……?いったいなにが……」

視界が煙に覆われてよく見えない。
俺は自分の胸元に手をやる。鎧はない。ボロボロになったインナーシャツの感触があるだけだ。
だが、その内側にあるはずの「板」のような筋肉がない。
代わりに掌に満たされたのは、信じられないほど柔らかく、そして豊かな膨らみだった。
それに

「あ、れ……? 声が……」

俺の口から出たのは、聞いたこともないような高く愛らしい声だった。
煙が散り視界がひらけてくる。
俺を見つけたフィナがすぐに駆け寄ってくる。
しかし様子がおかしい。

「アルトくん……?」

フィナが、恐る恐る俺の顔を覗き込む。
その瞳が、驚愕に見開かれ――冷や汗をかいている。

「え、うそ……なにこれ……」
「おいフィナ、どうなってんだ。体が変なんだよ」

俺は助けを求めてフィナのローブの裾を掴んだ。
その小さな手を見て、俺自身も絶句する。白くて、小さくて、モチモチした手。

「なんだこれ…俺の手か!?」
「アルトくんが……女の子になってる……」
「へっ……?」

フィナの言葉に俺は絶句してしまう。
女の子になってるだって……?
俺の身体が……?魔王討伐のために鍛えた身体が……?

そこへ、玉座から魔王の高笑いが響く。

「くくく! どうじゃ勇者よその姿! 貴様の生意気な口も、その愛らしい唇から紡がれれば小鳥のさえずりのようじゃの!」
「ヴァニア……! 貴様ふざけるなよ!」
「ふん、我を『ちっこい』と侮った報いじゃ!」

ヴァニアはビシッと俺を指差した。

「今日からお主はこの魔王ヴァニアの『娘』として生きるのじゃ。悪いようにはせぬ。美味しいお菓子と、ふかふかのベッドを用意してやるぞ?」
「ふざけるな……! 誰が魔王の娘になんか……!」

俺は床に落ちた聖剣に手を伸ばす。

「なんだ……これ……重たい……」

ずしりとした重さに体が持っていかれ、剣先を数センチ浮かすのがやっとだった。
カラン、と乾いた音を立てて剣が落ちる。

「くくく、そんな細い腕で剣が持ち上げられるのかのぉ?」

「アルトくん!肉体強化魔法は!?」

「だめだ!俺は魔法が使えないんだ!だから死に物狂いで鍛えたのに……」

「そうだった……ならボクが!」

​フィナが杖を構え、詠唱を始めようとする。
だが、ヴァニアは退屈そうに指をパチンと鳴らした。

「おっとそうはさせんぞ?もっともそんなことしても我に勝てるとは思えんがなぁ」

​ふわり、とフィナの魔力が霧散させられる。
魔法の行使すら封じられた。今の俺たちにはなすすべがなかった。

「ヴァニア!お前なにが目的だ!わざわざ俺をこんな身体にして!」

「実は我、娘が欲しかったんじゃよ」
「……は?」
「魔王軍はのぉ、むさ苦しいやつばっかでなぁ……もう嫌になってたんじゃ。そこでちょうどお主が来たんでのぉ。生意気じゃし我の娘にしてやろうと思ったんじゃ」

悪びれもせず言い放つ魔王に俺は激昂する。

「ふ、ふざけるな!殺せ!こんな辱めを受けるくらいなら死んだほうがマシだ!」
「アルトくん!それはだめだよ!」

フィナが俺の体を強く抱きしめ、必死に止める。

「ボクはアルトくんに死んでほしくない!それならヴァニアの娘になったほうがいいよ!」
「なっ!?フィナお前裏切るのか!?なぜヴァニアの味方を!?一緒に魔王討伐するって誓ったじゃないか!」
「あんなの嘘だよ」
「えっ」

フィナの声から、感情の色が抜け落ちた。

「ボクはアルトくんと一緒にいられればなんでもよかったんだよ。魔王討伐なんてどうでもよかった。あんなのただの口実。アルトくんが死ぬのが1番嫌だ」
「そんな……」

​フィナの腕に力がこもる。それは守るための抱擁というより、逃さないための拘束に近かった。

「どうやらお主は我の娘になるしか選択肢はないようじゃのぉ勇者アルトよ」

魔王の無邪気な支配欲と、相棒の歪んだ愛着。
二つの暴力に挟まれ、元勇者アルトの運命は完全に詰んでいた。
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