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第15話 セレスティアの更衣室問題
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至福のランチタイムを終えた俺たちは、食堂を出て廊下を歩いていた。
美味しいオーク肉とリリィの可愛らしい笑顔のおかげで授業の疲れもすっかり吹き飛んだ気分だ。
唯一、女神への借金という事実は心の奥底に封印しておくことにする。
そしてふと、俺は思った。
「そういえば、午後はどうするのかしら?」
俺が尋ねると、隣を歩いていたミーナが元気に答えてくれた。
「午後はまた演習場だよ! でも、男子は剣術の授業があるから別々みたい。女子はアルノート先生の補助魔法の授業だって!」
「楽しみですね、セレスティア様!
補助魔法には属性魔法とはまた違った魅力があって――」
魔法と聞いてリリィのテンションが上がっている。
それにしても、午後にも授業があるらしい。
そして今、ミーナは重要なことを言った。
「男女別……ですの?」
「うん! 男子は第二演習場、女子は第一演習場だって!」
(!!)
俺は心の中でガッツポーズをした。
男女別!
ということはあの厄介な婚約者、クロード殿下と顔を合わせずに済むということだ!
属性魔法の授業で遭遇したときは寒気がしたからな。
これで心置きなく授業に集中できる。
「それでは、第一演習場へ参りましょうか」
「第一演習場……?」
第一ってことはさっきのとは別の演習場もあるってことか?
どんだけ広いんだこの学園。
「魔法訓練をする演習場と剣術などの接近戦を学ぶ演習場に分かれてるみたいですよ♪」
エリスがこっそりと教えてくれた。
簡単に言うと魔法と物理ってことか。
俺たちはそのまま演習場へと向かう。
到着するとすでに多くの女子生徒が集まっていた。
そして前方にはニコニコと柔和な笑みを浮かべたアルノート先生が待っていた。
「あら、みなさん揃いましたね。お昼休みはゆっくり休めましたか?」
先生は生徒一人一人を見渡しながら穏やかな声で語りかける。
やはりこの先生は癒やし系だ。
属性魔法の授業で俺が少し生意気な口を利いた時も怒るどころか柔軟に対応してくれたしな。
ただ、リリィみたく魔法の話になるとスイッチが入ることがあるみたいだが……
「さて、午後の授業ですが……男子生徒は剣術の授業に向かいました。ですので、午後は女子生徒だけで『補助魔法』の実技を行いたいと思います」
「補助魔法……ですの?」
俺は思わず小首を傾げる。
先生は優しく頷いた。
「ええ。午前中に少しお話ししましたが、魔法には火や水などの『属性魔法』と、魔力そのもので強化や治癒などを行う『補助魔法』があります。属性魔法は適性が必要ですが……補助魔法は基本的に魔力さえあれば『誰でも』使えるんですよ」
誰でも使えるのか。
その言葉に安心する。
俺は属性魔法を全属性使うことができる。
おそらく補助魔法も使うことができるはずだ。
多分エリスがそうしてくれただろう。
誰でも使えるなら目立つことを気にする必要はない。
気兼ねなく魔法を試せるな。
「ただし、誰でも使えるからこそ魔力量とセンスの差がはっきりと出てしまう魔法でもあります。今日はその基本、『身体強化(アクティベート)』を練習してみましょう」
身体強化だって……!?
少年漫画やバトル物でお馴染みのやつだ!
俺は密かにテンションが上がった。
魔力を身体に纏わせてパワーアップするなんて男(中身)のロマンじゃないか!
属性魔法は属性によってイメージが難しくて苦戦したけど、これなら魔力を流すだけでイメージしやすいし簡単なんじゃないか?
「まずは着替えてきてもらいましょうか。動きやすい格好でお願いしますね」
「着替え……ですの?」
俺が思わず聞き返す。
属性魔法のときは着替えとかなかったよな?
「ええ。属性魔法は立ち止まって行うものでしたが、今回は実際に走ったり跳んだりして効果を確認しますからね。動きやすい格好のほうが訓練しやすいんですよ。」
確かにそうだ。
先生の指示で俺たちは更衣室へ向かうことになった。
まてよ……?着替え……?更衣室……?
俺は即エリスを呼び止めた。
「エリス!少しいいかしら?」
「おやぁ?どうしたんです?セレスティアさん♪」
いつも通りのニヤニヤ顔で振り返るエリス。
「セレスティア様……?」
「どうしたの?」
「いえ、エリスとお話がありまして。ご心配なさらず。お二人はお先に更衣室に向かっていてください」
「……?」
リリィとミーナは不思議そうな顔をしていたが先に更衣室に向かった。
「エリス、どうしましょう……更衣室って『女子更衣室』ですよね……?」
「当然でしょう?『女子』なんですから、セレスティアさんは♪」
「いいんですの?わたくしが『女子更衣室』になど……しかも着替え方なんてわかりませんわ!そもそも着替えはあるんですの!?」
焦りからか俺はエリスに質問責めしてしまう。
「落ち着いてくださいよ……いくら私が女神だからって、一気に質問されても答えられませんって……」
「ご、ごめんなさい……取り乱してしまいましたわ……」
はぁ……と一度ため息をつき、エリスが質問に答えてくれる。
「まずさっきも言った通り今のセレスティアさんは『女子』なんですから『女子更衣室』で問題ないですよ。それとも今から男子のほうに行きますか?殿下に会えますよ♪」
「絶対嫌ですわ!」
俺は即答する。
あいつに会うのは死んでもごめんだ。
もう一度死んでるんだが。
「はいはい、なら大人しく更衣室に行きましょう♪着替えもちゃんと私が用意しましたし着替え方も私が教えてあげますから♪」
「エリス……!」
「ちょっなに泣いてるんですか!」
俺は思わず涙を流す。
いつも煽ったり掻き回したりしてるエリスが、これほど頼りになったことがあっただろうか!これは間違いなく女神だ!
「……なんか失礼なこと考えてません?」
「いえ、素晴らしい女神としか。それでは参りましょう、更衣室に案内してくださる?」
「まあいいでしょう♪」
その道中、ふとある人物の姿が目に入った。
「はぁ……はぁ……お、お姉様……」
カノンだ。
演習場のベンチに突っ伏してげっそりとやつれていた。
まるで生命エネルギーを吸い取られたかのような憔悴ぶりだ。
(あ……そういえば……)
すっかり忘れていた。
属性魔法の授業の時、俺は殿下の相手をカノンに丸投げして逃げ出したんだった。
あの気持ち悪い王子の相手を一身に背負わせてしまったのだ。
「カノン、大丈夫? 顔色が悪いですわ?」
俺は歩み寄り、彼女の背中に手を置いた。
するとカノンは、弾かれたように顔を上げた。
「お、お姉様! いえ! 私は大丈夫です! お姉様の盾となり、あの軟弱なクソ王子を追い払うことが私の使命……これしきの疲労、何の問題もございません……!」
目はバキバキだが、声には悲壮感が漂っている。
相当ハードだったらしい。
俺は少しだけ良心が痛んだ。
「ありがとう、カノン。貴女のおかげで助かりました。本当に感謝していますわ」
俺は素直な気持ちを伝え、彼女の乱れた髪をそっと撫でた。
するとカノンの表情が一瞬でとろけた。
「あぅ……お姉様……! そのお言葉だけで、私はあと百年は戦えます……!」
「ふふ、百年も戦わなくていいですわ。次の授業は女子だけだし、ゆっくり身体を動かしてリフレッシュしましょう」
「はいっ! お供します、お姉様!」
カノンは完全復活したようだ。
忠誠心が厚くて助かる。
「しかしあのクソ王子、お姉様について詳しすぎますわ」
「……ん?」
「私との『お姉様の秘密対決』に負けず劣らず食いついてくるとは……大したやつです!」
「あなたたち、なにしていたんですの……」
なんだそれ!
本人のいないとこで勝手に何やってんだ。
てかこれでふたりが意気投合してたりしないだろうな?
「お姉様のことをあそこまで知っているのは私だけで十分です!なのでいつかぶっ飛ばします!」
……その心配はないようだが、別の心配が生まれたな……
何を知っているんだカノンと殿下は……
「カノン、わかりましたから更衣室に向かいましょう。次は補助魔法の授業ですわ」
「ああそうでしたね、行きましょうお姉様!」
「ではエリス、道を教えてくださる?」
「はいはい♪」
美味しいオーク肉とリリィの可愛らしい笑顔のおかげで授業の疲れもすっかり吹き飛んだ気分だ。
唯一、女神への借金という事実は心の奥底に封印しておくことにする。
そしてふと、俺は思った。
「そういえば、午後はどうするのかしら?」
俺が尋ねると、隣を歩いていたミーナが元気に答えてくれた。
「午後はまた演習場だよ! でも、男子は剣術の授業があるから別々みたい。女子はアルノート先生の補助魔法の授業だって!」
「楽しみですね、セレスティア様!
補助魔法には属性魔法とはまた違った魅力があって――」
魔法と聞いてリリィのテンションが上がっている。
それにしても、午後にも授業があるらしい。
そして今、ミーナは重要なことを言った。
「男女別……ですの?」
「うん! 男子は第二演習場、女子は第一演習場だって!」
(!!)
俺は心の中でガッツポーズをした。
男女別!
ということはあの厄介な婚約者、クロード殿下と顔を合わせずに済むということだ!
属性魔法の授業で遭遇したときは寒気がしたからな。
これで心置きなく授業に集中できる。
「それでは、第一演習場へ参りましょうか」
「第一演習場……?」
第一ってことはさっきのとは別の演習場もあるってことか?
どんだけ広いんだこの学園。
「魔法訓練をする演習場と剣術などの接近戦を学ぶ演習場に分かれてるみたいですよ♪」
エリスがこっそりと教えてくれた。
簡単に言うと魔法と物理ってことか。
俺たちはそのまま演習場へと向かう。
到着するとすでに多くの女子生徒が集まっていた。
そして前方にはニコニコと柔和な笑みを浮かべたアルノート先生が待っていた。
「あら、みなさん揃いましたね。お昼休みはゆっくり休めましたか?」
先生は生徒一人一人を見渡しながら穏やかな声で語りかける。
やはりこの先生は癒やし系だ。
属性魔法の授業で俺が少し生意気な口を利いた時も怒るどころか柔軟に対応してくれたしな。
ただ、リリィみたく魔法の話になるとスイッチが入ることがあるみたいだが……
「さて、午後の授業ですが……男子生徒は剣術の授業に向かいました。ですので、午後は女子生徒だけで『補助魔法』の実技を行いたいと思います」
「補助魔法……ですの?」
俺は思わず小首を傾げる。
先生は優しく頷いた。
「ええ。午前中に少しお話ししましたが、魔法には火や水などの『属性魔法』と、魔力そのもので強化や治癒などを行う『補助魔法』があります。属性魔法は適性が必要ですが……補助魔法は基本的に魔力さえあれば『誰でも』使えるんですよ」
誰でも使えるのか。
その言葉に安心する。
俺は属性魔法を全属性使うことができる。
おそらく補助魔法も使うことができるはずだ。
多分エリスがそうしてくれただろう。
誰でも使えるなら目立つことを気にする必要はない。
気兼ねなく魔法を試せるな。
「ただし、誰でも使えるからこそ魔力量とセンスの差がはっきりと出てしまう魔法でもあります。今日はその基本、『身体強化(アクティベート)』を練習してみましょう」
身体強化だって……!?
少年漫画やバトル物でお馴染みのやつだ!
俺は密かにテンションが上がった。
魔力を身体に纏わせてパワーアップするなんて男(中身)のロマンじゃないか!
属性魔法は属性によってイメージが難しくて苦戦したけど、これなら魔力を流すだけでイメージしやすいし簡単なんじゃないか?
「まずは着替えてきてもらいましょうか。動きやすい格好でお願いしますね」
「着替え……ですの?」
俺が思わず聞き返す。
属性魔法のときは着替えとかなかったよな?
「ええ。属性魔法は立ち止まって行うものでしたが、今回は実際に走ったり跳んだりして効果を確認しますからね。動きやすい格好のほうが訓練しやすいんですよ。」
確かにそうだ。
先生の指示で俺たちは更衣室へ向かうことになった。
まてよ……?着替え……?更衣室……?
俺は即エリスを呼び止めた。
「エリス!少しいいかしら?」
「おやぁ?どうしたんです?セレスティアさん♪」
いつも通りのニヤニヤ顔で振り返るエリス。
「セレスティア様……?」
「どうしたの?」
「いえ、エリスとお話がありまして。ご心配なさらず。お二人はお先に更衣室に向かっていてください」
「……?」
リリィとミーナは不思議そうな顔をしていたが先に更衣室に向かった。
「エリス、どうしましょう……更衣室って『女子更衣室』ですよね……?」
「当然でしょう?『女子』なんですから、セレスティアさんは♪」
「いいんですの?わたくしが『女子更衣室』になど……しかも着替え方なんてわかりませんわ!そもそも着替えはあるんですの!?」
焦りからか俺はエリスに質問責めしてしまう。
「落ち着いてくださいよ……いくら私が女神だからって、一気に質問されても答えられませんって……」
「ご、ごめんなさい……取り乱してしまいましたわ……」
はぁ……と一度ため息をつき、エリスが質問に答えてくれる。
「まずさっきも言った通り今のセレスティアさんは『女子』なんですから『女子更衣室』で問題ないですよ。それとも今から男子のほうに行きますか?殿下に会えますよ♪」
「絶対嫌ですわ!」
俺は即答する。
あいつに会うのは死んでもごめんだ。
もう一度死んでるんだが。
「はいはい、なら大人しく更衣室に行きましょう♪着替えもちゃんと私が用意しましたし着替え方も私が教えてあげますから♪」
「エリス……!」
「ちょっなに泣いてるんですか!」
俺は思わず涙を流す。
いつも煽ったり掻き回したりしてるエリスが、これほど頼りになったことがあっただろうか!これは間違いなく女神だ!
「……なんか失礼なこと考えてません?」
「いえ、素晴らしい女神としか。それでは参りましょう、更衣室に案内してくださる?」
「まあいいでしょう♪」
その道中、ふとある人物の姿が目に入った。
「はぁ……はぁ……お、お姉様……」
カノンだ。
演習場のベンチに突っ伏してげっそりとやつれていた。
まるで生命エネルギーを吸い取られたかのような憔悴ぶりだ。
(あ……そういえば……)
すっかり忘れていた。
属性魔法の授業の時、俺は殿下の相手をカノンに丸投げして逃げ出したんだった。
あの気持ち悪い王子の相手を一身に背負わせてしまったのだ。
「カノン、大丈夫? 顔色が悪いですわ?」
俺は歩み寄り、彼女の背中に手を置いた。
するとカノンは、弾かれたように顔を上げた。
「お、お姉様! いえ! 私は大丈夫です! お姉様の盾となり、あの軟弱なクソ王子を追い払うことが私の使命……これしきの疲労、何の問題もございません……!」
目はバキバキだが、声には悲壮感が漂っている。
相当ハードだったらしい。
俺は少しだけ良心が痛んだ。
「ありがとう、カノン。貴女のおかげで助かりました。本当に感謝していますわ」
俺は素直な気持ちを伝え、彼女の乱れた髪をそっと撫でた。
するとカノンの表情が一瞬でとろけた。
「あぅ……お姉様……! そのお言葉だけで、私はあと百年は戦えます……!」
「ふふ、百年も戦わなくていいですわ。次の授業は女子だけだし、ゆっくり身体を動かしてリフレッシュしましょう」
「はいっ! お供します、お姉様!」
カノンは完全復活したようだ。
忠誠心が厚くて助かる。
「しかしあのクソ王子、お姉様について詳しすぎますわ」
「……ん?」
「私との『お姉様の秘密対決』に負けず劣らず食いついてくるとは……大したやつです!」
「あなたたち、なにしていたんですの……」
なんだそれ!
本人のいないとこで勝手に何やってんだ。
てかこれでふたりが意気投合してたりしないだろうな?
「お姉様のことをあそこまで知っているのは私だけで十分です!なのでいつかぶっ飛ばします!」
……その心配はないようだが、別の心配が生まれたな……
何を知っているんだカノンと殿下は……
「カノン、わかりましたから更衣室に向かいましょう。次は補助魔法の授業ですわ」
「ああそうでしたね、行きましょうお姉様!」
「ではエリス、道を教えてくださる?」
「はいはい♪」
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