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第20話 生きた教材
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「い、痛いッ! 足が! 背中がぁぁぁッ!!」
俺はその場に崩れ落ち、芝生の上をのたうち回る。
痛い。とにかく痛い。
全身の筋肉という筋肉が、万力で締め上げられているようだ。
加速の反動は想像を絶する激痛だった。
「お、お姉様ーッ!! しっかりしてください! 誰か! 先生!」
カノンが俺のもとで半狂乱で叫んでいる。
その声が耳元で響いてさらに頭が痛い。
「落ち着きなさい、カノンさん。ちょっと見せてもらえますか?」
アルノート先生が冷静な足取りで近づき、俺の前にしゃがみ込んだ。
先生は俺の痙攣しているふくらはぎに手を当て、淡い光を灯して診断を始める。
「うぅ……先生……足が……私の足が……」
「ふむ……」
先生の表情が少し曇る。
やはり、ただ事ではないのか?
筋断裂? 骨折? それとももうだめなのか……?また転生……?
「……なるほど。これはひどいですね」
「そ、そんな……」
「『急性の重度筋肉痛』です」
「……はい?」
俺は涙目で聞き返した。
いま、なんて?
「ですから、ただの筋肉痛です。肉体強化魔法の初心者によくあることですね。加減を間違えたことが原因でしょう。骨や筋に異常はありません」
「き、筋肉痛……?」
よかった。怪我ではないらしい。
しかし、ただの筋肉痛でここまで痛いのか?
動こうとすると、ピキキッ! と電気が走るような痛みが全身を駆け巡る。
「先生……痛くて動けませんわ……ポーションを……」
俺は震える手で懇願した。
授業の最初に先生は言っていたはずだ。
『自分の傷を治すのは効率が悪いから、ポーションを飲め』と。
今こそ、その便利なアイテムを使う時だ。
「そうですねぇ……確かにこれだけ痛むならポーション案件ですが……」
先生は懐に手を入れかけ――そして、ピタリと止めた。
瞳がキラリと妖しく光る。
「……いえ、待ってください。これは『絶好の機会』ではありませんか?」
「……へ?」
「みなさん、注目!」
先生は立ち上がり、パンパンと手を叩き、ざわざわしている生徒たちを集めた。
嫌な予感がする。
背筋に冷たいものが走った。
「セレスティアさんの症状は、命に別状はないものの、動けないほどの激痛を伴うものです。そして何より、今の彼女は魔力を使い果たして抵抗できません」
「せ、先生……?」
抵抗できない……?なにその言い方!
すごく怖いことしようとしていないか!?
「つまり、初心者が治癒魔法を練習するのに、これ以上ないほど『最適な教材』というわけです!」
先生がニッコリと微笑んだ。
いつもはあんなにも優しく見えた笑顔がとても邪悪に見えた。
悪魔だ、エリス以外にも悪魔はいたのか。
「えっ、でもポーションがあるんじゃ……」
「ポーションは貴重品ですからね。使える教材は有効活用しないと」
先生は俺を見下ろし、慈愛に満ちた表情で告げた。
「さあ、みなさん。セレスティアさんを囲んでください。これより『治癒魔法』の実践練習を行います。」
「わぁ! 私やります!」
「私もやりたいです!」
わらわらと集まってくる女子生徒たち。
無邪気な笑顔が、今の俺には死神の群れに見える。
いやこいつらも悪魔か。もっと躊躇ってくれ!
「治癒魔法を使ううえで大事なイメージは修復です。肉体の損傷を修復するイメージをしながらセレスティアさんの筋肉痛を治していきましょう。」
なんか解説し始めたぞ!?俺の意思は!?
「ちょ、ちょっと待って……! わたくし心の準備が……!」
「セレスティア様! 私が愛の力で癒やしてみせます!」
カノンが鼻息を荒くして、俺の太ももをガシッと掴んだ。
痛い! 握力が強い!
「私もやるー! 治せばいいんでしょ!?」
ミーナが反対側の足を掴む。
こいつも握力強いな!痛いって言ってるだろ!
「私も……やります……!セレスティア様を治してみせます……!
本で読んだ通りにやれば――」
リリィもなにかぶつぶつと言いながら俺の身体に治癒魔法を使おうとしている。
「これが私の愛の力です!『治癒(ヒール)』!」
「私もいくよー!!『治癒(ヒール)』!」
「えいっ……!」
そしてさらなる地獄が訪れた。
「あつっ!? ミーナそれ熱い! 治癒どころか火傷しますわ!」
「あれ、おかしいな?」
「カノン! 重い! 魔法使いなさい!物理的に押さないで!」
「これが私の愛の重さですお姉様!」
「リリィ! なんかくすぐったいですわ! 」
「うぅ……すみません……」
演習場に俺の悲痛な叫びが響き渡る。
素人の治癒魔法は治るどころか新たな拷問だった。
熱かったり、重かったり、くすぐったかったり。
痛みが引くどころかダメージが蓄積されていく!
「あだだだだ! もう許して! ポーション! ポーションをくださいましーッ!!」
俺は涙ながらに絶叫した。
更衣室での恥ずかしさなど比ではない。
誰か助けて……
エリス……は絶対面白がって助けてくれない……
そんなとき救世主が現れた。
「はぁ……あんたたちなにしてんの……?」
「ク、クレア……!?助けて……助けてくださいまし……」
「あんたらどきなって、あたしがやるから」
「ちょっとクレア、お姉様の神聖な身体に勝手に――」
「『治癒(ヒール)』」
カノンを無視し、クレアは治癒魔法を使った。すると――
「痛みが……引いていく……?」
「はい、完璧じゃないけどこれで身体動かせるくらいにはなったでしょ」
凄い!まだ多少痛みはあるがさっきまでと比べたら全然マシだ!クレアの言うとおり身体も動かせる。
「すごいですねクレアさん!初心者でここまで治癒魔法を使いこなせるとは!」
「いえ、別に……個人的にちょっと勉強したことあるので……」
先生の称賛の言葉に素っ気なく答えるクレア。
火属性の魔法の時も思ったが魔法が得意なのだろうか。
それにしてもこの先生、俺を実験台にした悪魔的な行為に対しての謝罪とかないのか……?
いつか訴えてやるッ!
「ありがとうございます、クレア」
「あんたたちがギャーギャーうるさいからやってあげただけよ。でもまあ、ふふっ。あんたのみっともない姿が見れて面白かったけど!」
ぐぐぐ、何も言い返せない……
「それでは、皆さん!そろそろ時間なので本日の授業は終わりにしたいと思います!お疲れ様でした!」
「「ありがとうございました!」」
生徒全員で終了の挨拶をする。
こうして、ハチャメチャだった初めての補助魔法の授業は終わりを迎えた。
俺はその場に崩れ落ち、芝生の上をのたうち回る。
痛い。とにかく痛い。
全身の筋肉という筋肉が、万力で締め上げられているようだ。
加速の反動は想像を絶する激痛だった。
「お、お姉様ーッ!! しっかりしてください! 誰か! 先生!」
カノンが俺のもとで半狂乱で叫んでいる。
その声が耳元で響いてさらに頭が痛い。
「落ち着きなさい、カノンさん。ちょっと見せてもらえますか?」
アルノート先生が冷静な足取りで近づき、俺の前にしゃがみ込んだ。
先生は俺の痙攣しているふくらはぎに手を当て、淡い光を灯して診断を始める。
「うぅ……先生……足が……私の足が……」
「ふむ……」
先生の表情が少し曇る。
やはり、ただ事ではないのか?
筋断裂? 骨折? それとももうだめなのか……?また転生……?
「……なるほど。これはひどいですね」
「そ、そんな……」
「『急性の重度筋肉痛』です」
「……はい?」
俺は涙目で聞き返した。
いま、なんて?
「ですから、ただの筋肉痛です。肉体強化魔法の初心者によくあることですね。加減を間違えたことが原因でしょう。骨や筋に異常はありません」
「き、筋肉痛……?」
よかった。怪我ではないらしい。
しかし、ただの筋肉痛でここまで痛いのか?
動こうとすると、ピキキッ! と電気が走るような痛みが全身を駆け巡る。
「先生……痛くて動けませんわ……ポーションを……」
俺は震える手で懇願した。
授業の最初に先生は言っていたはずだ。
『自分の傷を治すのは効率が悪いから、ポーションを飲め』と。
今こそ、その便利なアイテムを使う時だ。
「そうですねぇ……確かにこれだけ痛むならポーション案件ですが……」
先生は懐に手を入れかけ――そして、ピタリと止めた。
瞳がキラリと妖しく光る。
「……いえ、待ってください。これは『絶好の機会』ではありませんか?」
「……へ?」
「みなさん、注目!」
先生は立ち上がり、パンパンと手を叩き、ざわざわしている生徒たちを集めた。
嫌な予感がする。
背筋に冷たいものが走った。
「セレスティアさんの症状は、命に別状はないものの、動けないほどの激痛を伴うものです。そして何より、今の彼女は魔力を使い果たして抵抗できません」
「せ、先生……?」
抵抗できない……?なにその言い方!
すごく怖いことしようとしていないか!?
「つまり、初心者が治癒魔法を練習するのに、これ以上ないほど『最適な教材』というわけです!」
先生がニッコリと微笑んだ。
いつもはあんなにも優しく見えた笑顔がとても邪悪に見えた。
悪魔だ、エリス以外にも悪魔はいたのか。
「えっ、でもポーションがあるんじゃ……」
「ポーションは貴重品ですからね。使える教材は有効活用しないと」
先生は俺を見下ろし、慈愛に満ちた表情で告げた。
「さあ、みなさん。セレスティアさんを囲んでください。これより『治癒魔法』の実践練習を行います。」
「わぁ! 私やります!」
「私もやりたいです!」
わらわらと集まってくる女子生徒たち。
無邪気な笑顔が、今の俺には死神の群れに見える。
いやこいつらも悪魔か。もっと躊躇ってくれ!
「治癒魔法を使ううえで大事なイメージは修復です。肉体の損傷を修復するイメージをしながらセレスティアさんの筋肉痛を治していきましょう。」
なんか解説し始めたぞ!?俺の意思は!?
「ちょ、ちょっと待って……! わたくし心の準備が……!」
「セレスティア様! 私が愛の力で癒やしてみせます!」
カノンが鼻息を荒くして、俺の太ももをガシッと掴んだ。
痛い! 握力が強い!
「私もやるー! 治せばいいんでしょ!?」
ミーナが反対側の足を掴む。
こいつも握力強いな!痛いって言ってるだろ!
「私も……やります……!セレスティア様を治してみせます……!
本で読んだ通りにやれば――」
リリィもなにかぶつぶつと言いながら俺の身体に治癒魔法を使おうとしている。
「これが私の愛の力です!『治癒(ヒール)』!」
「私もいくよー!!『治癒(ヒール)』!」
「えいっ……!」
そしてさらなる地獄が訪れた。
「あつっ!? ミーナそれ熱い! 治癒どころか火傷しますわ!」
「あれ、おかしいな?」
「カノン! 重い! 魔法使いなさい!物理的に押さないで!」
「これが私の愛の重さですお姉様!」
「リリィ! なんかくすぐったいですわ! 」
「うぅ……すみません……」
演習場に俺の悲痛な叫びが響き渡る。
素人の治癒魔法は治るどころか新たな拷問だった。
熱かったり、重かったり、くすぐったかったり。
痛みが引くどころかダメージが蓄積されていく!
「あだだだだ! もう許して! ポーション! ポーションをくださいましーッ!!」
俺は涙ながらに絶叫した。
更衣室での恥ずかしさなど比ではない。
誰か助けて……
エリス……は絶対面白がって助けてくれない……
そんなとき救世主が現れた。
「はぁ……あんたたちなにしてんの……?」
「ク、クレア……!?助けて……助けてくださいまし……」
「あんたらどきなって、あたしがやるから」
「ちょっとクレア、お姉様の神聖な身体に勝手に――」
「『治癒(ヒール)』」
カノンを無視し、クレアは治癒魔法を使った。すると――
「痛みが……引いていく……?」
「はい、完璧じゃないけどこれで身体動かせるくらいにはなったでしょ」
凄い!まだ多少痛みはあるがさっきまでと比べたら全然マシだ!クレアの言うとおり身体も動かせる。
「すごいですねクレアさん!初心者でここまで治癒魔法を使いこなせるとは!」
「いえ、別に……個人的にちょっと勉強したことあるので……」
先生の称賛の言葉に素っ気なく答えるクレア。
火属性の魔法の時も思ったが魔法が得意なのだろうか。
それにしてもこの先生、俺を実験台にした悪魔的な行為に対しての謝罪とかないのか……?
いつか訴えてやるッ!
「ありがとうございます、クレア」
「あんたたちがギャーギャーうるさいからやってあげただけよ。でもまあ、ふふっ。あんたのみっともない姿が見れて面白かったけど!」
ぐぐぐ、何も言い返せない……
「それでは、皆さん!そろそろ時間なので本日の授業は終わりにしたいと思います!お疲れ様でした!」
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