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第36話 変な奴ばっかの学園
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リリィを部屋まで送り届けた後、俺は自分の部屋へと戻った。
扉を開け、ようやく一息つく。
「ただいまぁ~」
……って、誰もいないか。
俺は制服のまま一目散にベッドへダイブした。
「疲れたぁ~……」
今日一日の出来事が走馬灯のように駆け巡る。
サフィアの実験台にされそうになり、ベアトリスの爆発を喰らい、カノンに襲撃され、ミーナの薪割りを目撃し……
情報量が多すぎる。この学園、もしかして魔境なんじゃないか?
「おかえりなさい♪」
「わぁっ!?」
不意に耳元で声がして、俺はベッドの上で飛び跳ねた。
心臓が口から飛び出るかと思った。
「び、びっくりした……!? いたのかよ!?」
「なんでそんなに驚くんです? ルームメイトでしょう♪」
ベッドの端に、いつの間にかエリスが座っていた。
ニヤニヤと楽しそうな笑みを浮かべてこちらを見ている。
普段なら文句の一つでも言うところだが、今の俺は疲れで精神的に限界だった。
「うぅ……エリスぅ……」
「おやぁ?どうしたんです?」
俺は思わずエリスに抱きついた。
華奢な体に顔を埋め、情けない声を漏らす。
「この学園、変な奴ばっかだよ~! お前が相対的にマシに見えるレベルだよ~!」
「……なんかしれっと失礼なこと言ってる気がしますが、まあ大変だったんですね♪」
エリスはクスクスと笑いながら、俺の頭をよしよしと撫でてくれた。
女神様の手は優しく、不思議と安心する。
「よしよし、可哀想なセレスティアさん♪異世界の洗礼を受けてきたんですね♪」
「うるさい!ていうかお前は放課後なにしてたんだよ!」
俺は顔を上げ、涙目でエリスを睨んだ。
こいつのことだ、どうせろくなことはしていないだろう。
「人間観察ですよ♪ 人間観察♪」
「人間観察ぅ?」
「はい♪ この学園には色んな人がいますからねぇ。見ていて飽きないんですよ♪」
エリスは楽しそうに指を折って数え始めた。
「例えば~、友達の実験台にされそうになって必死に逃げる人とか♪」
「……」
「部室に入った瞬間、爆発に巻き込まれて煤だらけになる人とか♪」
「…………ん?」
「掃除しようとして、逆に爆発起こして仕事増やしちゃう人とか♪」
「全部俺のことじゃねえか!! お前見てたのかよ!?」
俺はエリスから飛び退いた。
こいつ、全部知ってて放置していたのか!
「当たり前じゃないですか♪ こんな面白い逸材、観察するにはうってつけですよ♪」
「誰が逸材だ! 助けろよ!」
「いやぁ、セレスティアさんのリアクションが面白くてつい……ドンマイです♪」
エリスは「あはは♪」と無責任に笑い転げている。
やっぱりこいつもこいつで性格悪い!
俺はふてくされてベッドに寝転がったが、ふと疑問に思っていたことを思い出した。
こいつと落ち着いて話せる機会なんてそうそうない。聞いておくべきかもしれない。
「なぁ。そういえばお前、この世界のことなら何でも知ってるんだろ?」
「もちろん♪何せ『女神』ですからね♪」
エリスはふふん、と自慢げに胸を張る。
「はいはい。それで、一つ気になってたんだが……」
俺は体を起こし、真剣な眼差しを向けた。
「カノンはなんで俺のこと、あんなに慕ってくれているんだ?」
今日の部室での出来事を思い出す。
ベアトリスにはあれだけ噛みついていたのに、俺の失敗は全肯定する。
初対面(のはず)であそこまで懐かれる理由が見当たらない。
「俺……というか『セレスティア』は、この世界に本来存在していなかったんだよな? なぜそんなやつを『お姉様』と慕っているんだ?」
「んー……それは……私にもわかりません♪」
……は?
「お前さっき何でも知ってるって言っただろ!」
「『あなたが来る前の世界』のことは何でも知ってますよ? でも、あなたという本来いない異物がこの世界に混ざったことで、世界に色々な変化が起こったみたいなんです♪」
世界に変化?
「もちろん、あなたが来る前のカノンさんのことは知ってますよ♪いつもひとりぼっちで、真面目に勉強と生徒会の仕事をするだけの人でした。あんな元気な人じゃなかったはずです」
あのカノンが?
ギャーギャー騒いで部室に殴り込んできたあのカノンが、ひとりぼっち?
想像がつかない。
「私の推測ですが……あなたが転生してきたことで、カノンさんの記憶や認識が突然変異して、今の『お姉様大好きっ子』になったんじゃないですか? まあ、本人は幸せそうだしいいじゃないですか♪」
「うーん……まあ、敵対してきてるわけじゃないし……いいのか……?」
確かに、殺意を向けられるよりは百倍マシだ。
それに、あの子が孤独じゃなくなったのならそれは悪いことではないのかもしれない。
「多分、あなたをストーキングしてるあのクロード殿下も似たようなものなんじゃないですかね♪ 本来なら、あんなにしつこく求婚なんてしないはずですし♪」
「うげっ、それは困るなぁ……」
それだけはなんとかしてほしい。
切実に。
「とにかく、このことは本人には話さないほうが良いですね。どうなるか私にも分かりませんから♪カノンさんの『お姉様』として頑張ってください♪」
「……分かったよ。カノンは悪いやつじゃないしな。それに、なんか苦労してそうだし……」
昼間のベアトリスへの剣幕を思い出す。
彼女も彼女なりに、この学園で必死に生きているのだろう。
カノンを守るためと思えばいい。
「しかし女神といっても、結局何でも知ってるわけじゃないんだな」
「でも、そっちのほうが面白いじゃないですか♪ 何が起こるかわからないってわくわくしません?」
エリスは目をキラキラさせて笑う。
こいつにとっては、俺の人生も予測不能なエンターテインメントの一つに過ぎないらしい。
「ほんと暇なんだなお前……」
「暇つぶしのためにあなたを呼んだんですから♪ さあ、明日はどんな面白いことが起こるかな~?」
「不吉なこと言うな!はぁ……もういい。俺は寝る」
俺は溜息をつき、今度こそ布団を頭から被った。
「えっ、もう寝るんですか?ていうか制服のままですよ?」
「今日はもう疲れた。もう気になってたことは聞いたし、これ以上お前と話す気力はない」
でも、不思議とさっきまでの疲れは少しだけ軽くなった気がする。
なんだかんだ言っても、元の世界を知っているこいつと話すのが一番気が楽なのかもしれない。
……癪だけど。
「ふふっ、素直じゃないですねぇ♪おやすみなさい♪お着替えは私がやっておいてあげますからねぇ~♪」
布団の上から、ポンポンと軽く叩かれる感触がした。
次の瞬間、俺の体はいつの間にか肌触りの良いパジャマに包まれていた。
こういう時だけは、本当に女神様だな……
明日は平和でありますように。
そう願いながら、俺は眠りについた。
扉を開け、ようやく一息つく。
「ただいまぁ~」
……って、誰もいないか。
俺は制服のまま一目散にベッドへダイブした。
「疲れたぁ~……」
今日一日の出来事が走馬灯のように駆け巡る。
サフィアの実験台にされそうになり、ベアトリスの爆発を喰らい、カノンに襲撃され、ミーナの薪割りを目撃し……
情報量が多すぎる。この学園、もしかして魔境なんじゃないか?
「おかえりなさい♪」
「わぁっ!?」
不意に耳元で声がして、俺はベッドの上で飛び跳ねた。
心臓が口から飛び出るかと思った。
「び、びっくりした……!? いたのかよ!?」
「なんでそんなに驚くんです? ルームメイトでしょう♪」
ベッドの端に、いつの間にかエリスが座っていた。
ニヤニヤと楽しそうな笑みを浮かべてこちらを見ている。
普段なら文句の一つでも言うところだが、今の俺は疲れで精神的に限界だった。
「うぅ……エリスぅ……」
「おやぁ?どうしたんです?」
俺は思わずエリスに抱きついた。
華奢な体に顔を埋め、情けない声を漏らす。
「この学園、変な奴ばっかだよ~! お前が相対的にマシに見えるレベルだよ~!」
「……なんかしれっと失礼なこと言ってる気がしますが、まあ大変だったんですね♪」
エリスはクスクスと笑いながら、俺の頭をよしよしと撫でてくれた。
女神様の手は優しく、不思議と安心する。
「よしよし、可哀想なセレスティアさん♪異世界の洗礼を受けてきたんですね♪」
「うるさい!ていうかお前は放課後なにしてたんだよ!」
俺は顔を上げ、涙目でエリスを睨んだ。
こいつのことだ、どうせろくなことはしていないだろう。
「人間観察ですよ♪ 人間観察♪」
「人間観察ぅ?」
「はい♪ この学園には色んな人がいますからねぇ。見ていて飽きないんですよ♪」
エリスは楽しそうに指を折って数え始めた。
「例えば~、友達の実験台にされそうになって必死に逃げる人とか♪」
「……」
「部室に入った瞬間、爆発に巻き込まれて煤だらけになる人とか♪」
「…………ん?」
「掃除しようとして、逆に爆発起こして仕事増やしちゃう人とか♪」
「全部俺のことじゃねえか!! お前見てたのかよ!?」
俺はエリスから飛び退いた。
こいつ、全部知ってて放置していたのか!
「当たり前じゃないですか♪ こんな面白い逸材、観察するにはうってつけですよ♪」
「誰が逸材だ! 助けろよ!」
「いやぁ、セレスティアさんのリアクションが面白くてつい……ドンマイです♪」
エリスは「あはは♪」と無責任に笑い転げている。
やっぱりこいつもこいつで性格悪い!
俺はふてくされてベッドに寝転がったが、ふと疑問に思っていたことを思い出した。
こいつと落ち着いて話せる機会なんてそうそうない。聞いておくべきかもしれない。
「なぁ。そういえばお前、この世界のことなら何でも知ってるんだろ?」
「もちろん♪何せ『女神』ですからね♪」
エリスはふふん、と自慢げに胸を張る。
「はいはい。それで、一つ気になってたんだが……」
俺は体を起こし、真剣な眼差しを向けた。
「カノンはなんで俺のこと、あんなに慕ってくれているんだ?」
今日の部室での出来事を思い出す。
ベアトリスにはあれだけ噛みついていたのに、俺の失敗は全肯定する。
初対面(のはず)であそこまで懐かれる理由が見当たらない。
「俺……というか『セレスティア』は、この世界に本来存在していなかったんだよな? なぜそんなやつを『お姉様』と慕っているんだ?」
「んー……それは……私にもわかりません♪」
……は?
「お前さっき何でも知ってるって言っただろ!」
「『あなたが来る前の世界』のことは何でも知ってますよ? でも、あなたという本来いない異物がこの世界に混ざったことで、世界に色々な変化が起こったみたいなんです♪」
世界に変化?
「もちろん、あなたが来る前のカノンさんのことは知ってますよ♪いつもひとりぼっちで、真面目に勉強と生徒会の仕事をするだけの人でした。あんな元気な人じゃなかったはずです」
あのカノンが?
ギャーギャー騒いで部室に殴り込んできたあのカノンが、ひとりぼっち?
想像がつかない。
「私の推測ですが……あなたが転生してきたことで、カノンさんの記憶や認識が突然変異して、今の『お姉様大好きっ子』になったんじゃないですか? まあ、本人は幸せそうだしいいじゃないですか♪」
「うーん……まあ、敵対してきてるわけじゃないし……いいのか……?」
確かに、殺意を向けられるよりは百倍マシだ。
それに、あの子が孤独じゃなくなったのならそれは悪いことではないのかもしれない。
「多分、あなたをストーキングしてるあのクロード殿下も似たようなものなんじゃないですかね♪ 本来なら、あんなにしつこく求婚なんてしないはずですし♪」
「うげっ、それは困るなぁ……」
それだけはなんとかしてほしい。
切実に。
「とにかく、このことは本人には話さないほうが良いですね。どうなるか私にも分かりませんから♪カノンさんの『お姉様』として頑張ってください♪」
「……分かったよ。カノンは悪いやつじゃないしな。それに、なんか苦労してそうだし……」
昼間のベアトリスへの剣幕を思い出す。
彼女も彼女なりに、この学園で必死に生きているのだろう。
カノンを守るためと思えばいい。
「しかし女神といっても、結局何でも知ってるわけじゃないんだな」
「でも、そっちのほうが面白いじゃないですか♪ 何が起こるかわからないってわくわくしません?」
エリスは目をキラキラさせて笑う。
こいつにとっては、俺の人生も予測不能なエンターテインメントの一つに過ぎないらしい。
「ほんと暇なんだなお前……」
「暇つぶしのためにあなたを呼んだんですから♪ さあ、明日はどんな面白いことが起こるかな~?」
「不吉なこと言うな!はぁ……もういい。俺は寝る」
俺は溜息をつき、今度こそ布団を頭から被った。
「えっ、もう寝るんですか?ていうか制服のままですよ?」
「今日はもう疲れた。もう気になってたことは聞いたし、これ以上お前と話す気力はない」
でも、不思議とさっきまでの疲れは少しだけ軽くなった気がする。
なんだかんだ言っても、元の世界を知っているこいつと話すのが一番気が楽なのかもしれない。
……癪だけど。
「ふふっ、素直じゃないですねぇ♪おやすみなさい♪お着替えは私がやっておいてあげますからねぇ~♪」
布団の上から、ポンポンと軽く叩かれる感触がした。
次の瞬間、俺の体はいつの間にか肌触りの良いパジャマに包まれていた。
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そう願いながら、俺は眠りについた。
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