憧れの悪役令嬢にTS転生した俺は殿下の求婚を回避して気ままな魔法学園ライフを送ります ~女神に貰った最強ボディで好き勝手やらしてもらう~

ゆきなっしゅ

文字の大きさ
36 / 50

第36話 変な奴ばっかの学園

しおりを挟む
リリィを部屋まで送り届けた後、俺は自分の部屋へと戻った。
扉を開け、ようやく一息つく。

「ただいまぁ~」

……って、誰もいないか。
俺は制服のまま一目散にベッドへダイブした。

「疲れたぁ~……」

今日一日の出来事が走馬灯のように駆け巡る。
サフィアの実験台にされそうになり、ベアトリスの爆発を喰らい、カノンに襲撃され、ミーナの薪割りを目撃し……
情報量が多すぎる。この学園、もしかして魔境なんじゃないか?

「おかえりなさい♪」
「わぁっ!?」

不意に耳元で声がして、俺はベッドの上で飛び跳ねた。
心臓が口から飛び出るかと思った。

「び、びっくりした……!? いたのかよ!?」
「なんでそんなに驚くんです? ルームメイトでしょう♪」

ベッドの端に、いつの間にかエリスが座っていた。
ニヤニヤと楽しそうな笑みを浮かべてこちらを見ている。
普段なら文句の一つでも言うところだが、今の俺は疲れで精神的に限界だった。

「うぅ……エリスぅ……」
「おやぁ?どうしたんです?」

俺は思わずエリスに抱きついた。
華奢な体に顔を埋め、情けない声を漏らす。

「この学園、変な奴ばっかだよ~! お前が相対的にマシに見えるレベルだよ~!」
「……なんかしれっと失礼なこと言ってる気がしますが、まあ大変だったんですね♪」

エリスはクスクスと笑いながら、俺の頭をよしよしと撫でてくれた。
女神様の手は優しく、不思議と安心する。

「よしよし、可哀想なセレスティアさん♪異世界の洗礼を受けてきたんですね♪」
「うるさい!ていうかお前は放課後なにしてたんだよ!」

俺は顔を上げ、涙目でエリスを睨んだ。
こいつのことだ、どうせろくなことはしていないだろう。

「人間観察ですよ♪ 人間観察♪」
「人間観察ぅ?」
「はい♪ この学園には色んな人がいますからねぇ。見ていて飽きないんですよ♪」

エリスは楽しそうに指を折って数え始めた。

「例えば~、友達の実験台にされそうになって必死に逃げる人とか♪」
「……」
「部室に入った瞬間、爆発に巻き込まれて煤だらけになる人とか♪」
「…………ん?」
「掃除しようとして、逆に爆発起こして仕事増やしちゃう人とか♪」
「全部俺のことじゃねえか!! お前見てたのかよ!?」

俺はエリスから飛び退いた。
こいつ、全部知ってて放置していたのか!

「当たり前じゃないですか♪ こんな面白い逸材、観察するにはうってつけですよ♪」
「誰が逸材だ! 助けろよ!」
「いやぁ、セレスティアさんのリアクションが面白くてつい……ドンマイです♪」

エリスは「あはは♪」と無責任に笑い転げている。
やっぱりこいつもこいつで性格悪い!
俺はふてくされてベッドに寝転がったが、ふと疑問に思っていたことを思い出した。
こいつと落ち着いて話せる機会なんてそうそうない。聞いておくべきかもしれない。

「なぁ。そういえばお前、この世界のことなら何でも知ってるんだろ?」
「もちろん♪何せ『女神』ですからね♪」

エリスはふふん、と自慢げに胸を張る。

「はいはい。それで、一つ気になってたんだが……」

俺は体を起こし、真剣な眼差しを向けた。

「カノンはなんで俺のこと、あんなに慕ってくれているんだ?」

今日の部室での出来事を思い出す。
ベアトリスにはあれだけ噛みついていたのに、俺の失敗は全肯定する。
初対面(のはず)であそこまで懐かれる理由が見当たらない。

「俺……というか『セレスティア』は、この世界に本来存在していなかったんだよな? なぜそんなやつを『お姉様』と慕っているんだ?」
「んー……それは……私にもわかりません♪」

……は?

「お前さっき何でも知ってるって言っただろ!」
「『あなたが来る前の世界』のことは何でも知ってますよ? でも、あなたという本来いない異物がこの世界に混ざったことで、世界に色々な変化が起こったみたいなんです♪」

世界に変化? 

「もちろん、あなたが来る前のカノンさんのことは知ってますよ♪いつもひとりぼっちで、真面目に勉強と生徒会の仕事をするだけの人でした。あんな元気な人じゃなかったはずです」

あのカノンが?
ギャーギャー騒いで部室に殴り込んできたあのカノンが、ひとりぼっち?
想像がつかない。

「私の推測ですが……あなたが転生してきたことで、カノンさんの記憶や認識が突然変異して、今の『お姉様大好きっ子』になったんじゃないですか? まあ、本人は幸せそうだしいいじゃないですか♪」
「うーん……まあ、敵対してきてるわけじゃないし……いいのか……?」

確かに、殺意を向けられるよりは百倍マシだ。
それに、あの子が孤独じゃなくなったのならそれは悪いことではないのかもしれない。

「多分、あなたをストーキングしてるあのクロード殿下も似たようなものなんじゃないですかね♪ 本来なら、あんなにしつこく求婚なんてしないはずですし♪」
「うげっ、それは困るなぁ……」

それだけはなんとかしてほしい。
切実に。

「とにかく、このことは本人には話さないほうが良いですね。どうなるか私にも分かりませんから♪カノンさんの『お姉様』として頑張ってください♪」
「……分かったよ。カノンは悪いやつじゃないしな。それに、なんか苦労してそうだし……」

昼間のベアトリスへの剣幕を思い出す。
彼女も彼女なりに、この学園で必死に生きているのだろう。
カノンを守るためと思えばいい。

「しかし女神といっても、結局何でも知ってるわけじゃないんだな」
「でも、そっちのほうが面白いじゃないですか♪ 何が起こるかわからないってわくわくしません?」

エリスは目をキラキラさせて笑う。
こいつにとっては、俺の人生も予測不能なエンターテインメントの一つに過ぎないらしい。

「ほんと暇なんだなお前……」
「暇つぶしのためにあなたを呼んだんですから♪ さあ、明日はどんな面白いことが起こるかな~?」
「不吉なこと言うな!はぁ……もういい。俺は寝る」

俺は溜息をつき、今度こそ布団を頭から被った。

「えっ、もう寝るんですか?ていうか制服のままですよ?」
「今日はもう疲れた。もう気になってたことは聞いたし、これ以上お前と話す気力はない」

でも、不思議とさっきまでの疲れは少しだけ軽くなった気がする。
なんだかんだ言っても、元の世界を知っているこいつと話すのが一番気が楽なのかもしれない。
……癪だけど。

「ふふっ、素直じゃないですねぇ♪おやすみなさい♪お着替えは私がやっておいてあげますからねぇ~♪」

布団の上から、ポンポンと軽く叩かれる感触がした。
次の瞬間、俺の体はいつの間にか肌触りの良いパジャマに包まれていた。
こういう時だけは、本当に女神様だな……
明日は平和でありますように。
そう願いながら、俺は眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

前世で過労死し、宿屋のモブ女子に転生。失感情なばかりに完璧な接客で最強の女たちをダメにする――「お客様、添い寝はオプション料金になりますが

駄駄駄(ダダダ)
ファンタジー
前世で部下のミスを被り、不眠不休で働いた末に過労死した伝説のマネージャー・清水(28歳)。彼女が転生したのは、人気RPG『アステリア・ファンタジア』の世界。それも、名前も出ない宿屋のモブ店主、シエル(18歳・小柄)だった。 前世で感情を使い果たして「失感情症」気味になったシエルは決意する。「今世は、自分の手の届く範囲だけを、完璧に『おもてなし』して静かに暮らそう」 そんなある日。宿の前に、かつての自分と同じように使い潰され、泥の中に捨てられた一人の「ゴミ」がいた。それは、クズ勇者に「壊れた盾」と罵られ、解雇された最強の聖騎士・アルテミス。 泥まみれの彼女を、シエルは淡々と「収容」し、プロの技術で洗浄し、栄養満点のスープを差し出す。「お客様。当宿のサービスに『絶望』は含まれておりません。オプションで『安眠』ならございますが?」 勇者への復讐? 世界平和? そんなもの、宿屋の仕事には関係ない。だが、完璧な接客(隠れママ力)で心身を解されたアルテミスは、いつしかシエルなしでは眠れない体になってしまい――。 さらには後悔して戻ってきた天才魔術師までが、シエルの「膝」を奪い合う抗争を始め……。これは、失感情症な少女が、無自覚に最強の女たちを「わからせて」しまう、癒やしと執着の宿屋経営録。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ゲームの悪役貴族に転生した俺、断罪されて処刑される未来を回避するため死ぬ気で努力したら、いつの間にか“救国の聖人”と呼ばれてたんだが

夏見ナイ
ファンタジー
過労死した俺が転生したのは、大好きな乙女ゲームの悪役貴族アレン。待つのはヒロインたちからの断罪と処刑エンド!?冗談じゃない! 絶対に生き延びて平穏な老後を送るため、俺はゲーム知識を総動員して破滅フラグ回避に奔走する。領地を改革し、民を救い、来るべき災厄に備えて血の滲むような努力を重ねた。 ただ死にたくない一心だったのに、その行動はなぜか周囲に「深謀遠慮の聖人」と勘違いされ、評価はうなぎ登り。 おまけに、俺を断罪するはずの聖女や王女、天才魔導師といったヒロインたちが「運命の人だわ!」「結婚してください!」と次々に迫ってきて……!? これは、破滅を回避したいだけの悪役貴族が、いつの間にか国を救う英雄に祭り上げられ、ヒロインたちに溺愛される勘違い救国ファンタジー!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...