病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向

文字の大きさ
2 / 27

第0.2話 

しおりを挟む
「皆さん。こんにちは。今日も私達『Nice Thank you』の『世界まるごと音世界』の公開収録に来て下さりありがとうございます。」
さっきまで鬼の形相だったとは思えない清楚な笑顔で司会を進行していく彼女を見て俺は夢でも見ているんじゃないか?と何いつ見ても思う。
俺はと言うと、ゲストが呼ばれるまでの間、袖口で出番を待っていた。
「りょーう!何やってるの?」
「どうせ咲菜に見惚れてたんだろ。」
マネージャーに呼び出されていた俺の相方たちが戻ってきた。少し悲しそうな顔をしているのは多分、俺のせいだ。
「なわけ。なんもしてねぇし。」
「でも、咲菜ちゃん凄いよねぇー。女性アイドルって俺たち男子アイドルよりちょっと露出多いところあるでしょ?」
ピンク色のメッシュが入った元気な髪色の寿《たもつ》がきゅるっとした大きな瞳を向けてくる。
「露出狂のじじいが多いからな。」
女性アイドルの身体露出は売上に大きな影響を与えるし。

「でも、それがどうして咲菜が偉いに繋がるんだ?」
アイドルに露出はつきものだろ?普通じゃね?


そっかぁ。遼ちんは知らないんだっけ?
何が?
「遼が倒れてた間に『ないきゅ』の握手会があったんだ。その時に、マナー違反者がいて、咲菜ちゃん、陰湿な接触プレイをされたんだって。」

へぇ。それは初耳だ。
「きっと、本人が一番怖いと思うのに、今日も公開収録笑顔でやってさ...。」


「それが、仕事だからな。」
「でも、そんなに簡単に割り切れないよ。僕たちでも怖いもん。」
「はんっ。俺なら、すぐ、死ね変態が!って言ってやる!」
「てか、まず、俺らのファンにそんな変態ちゃんいないから。」
もう。遼は考えなさすぎだよ。
あははと面白そうに声を上げた。


■■■■■

「それより、今は体大丈夫なんだよね?」
お見舞い行かせてもらえなかったから。
裏で出番を待っている時に不安そうな顔を向けてきた。


らしくもない。そんな心配そうな顔で見るなよ。
「ああ。」
俺はあえて素っ気なく返す。


すると、さっきまで黙って見ていたもう一人の白髪の相方が口をは挟んできた。
「さっきマネージャーに聞いた。」
なるほどね。

「俺はお前を3回くらい殺したくなった」
3回か…。割と少ないな。正直、両手足を削ぎ落とされ、東京湾に生き埋めにされるものだと…。


「前に耐性ができていたから今回はそんなに…。」
冗談めかして言ったつもりだったが、言葉が途切れた。
「来るときが来てしまったなぁって感じだよね。」
寿もまた眉を伏せた。
「なんで、遼なんだろうね...。僕たち、これからなのにさ。」
そんなしんみりとした空気を読んでか無意識からなのか、楓真ふうまが真顔で言った。
「遼、普段平気そうな顔してるのに、割とメンタル体に出るんだな。」
「メンタルって...おまっ。」
俺のストレスコントロール力舐めるなよ。神レベルで上手いし。そう反論しようとしたら、楓真に遮られた。
「遼が倒れたのはの抱えすぎ...だ。」

あまり多く語らない彼は目で物を言う。
口は悪いが多分、彼なりに心配してくれての事なんだろう。


なるほど。
「そうだな。俺はこう見えて、豆腐メンタルのヨワヨワ星人だ。」
へにょんへにょんと踊って見せると寿たもつが嬉しそうに八重歯を見せる。
「あはは。でも、元気そうでよかった。今日、一緒に仕事できるのすっごい嬉しいや。」
目に涙を溜めて抱き付いてきた。



「...。ああ。俺たちは3人で最強のアイドル、『Cherry’sちぇりーず』だからな!」
俺は無理にでも笑う。
悲しくなんてない。そう。悔いなく今を生きれたらそれで充分だ。それ以上、豊かな未来を望むのは傲慢なんだ。

■■■■■


「今日の特別ゲストはメジャーデビューして今年で1年。アイドル業界に新しい風を吹き込んでいる男子アイドルグループ『Cherry’s』の皆さんです。」
どうぞ~。
咲菜の司会で俺たちはスポットライトの下へ向かった。


公開収録。
目の前には俺たちのファンの子が沢山いた。
客席が黄色の歓声で染まる。
「こんにちは!『Cherry’s』の可愛い天使、鈴海すずかい寿たもつでーす!」
皆ー。会いたかったよぉ。
「どうも。静かでイケメンな毒舌アイドル、楓真ふうまです。」
「自分で毒舌アイドルとか言うなし!どうもー。こいつらの世話係やってます。リーダーの日生ひなせりょうです!今日は集まってくれてありがとな!収録、楽しんでいこうぜぃ!」
俺は楓真のボケを回収しながら、観衆に笑顔で手を挙げた。


俺たちは用意された椅子に座り、咲菜の進行で番組が始まった。
「まず、今日届いたメッセージを読み上げていこうと思います。えーっと、『Cherry’s』の皆さんこんにちは」
咲菜が届いたメールを読み上げる。
「「「こんにちは。」」」
「いつも元気で明るく仲のいい雰囲気に楽しませてもらっています。」
「ありがとう。」
「ありがとう!」
「そんな皆さんに質問です。私は3歳離れた妹が居るのですが、毎日喧嘩ばかりしててお母さんに怒られています。仲良しの秘訣、があったら知りたいです。これからも、ずっと、応援しています。頑張ってください!」
だそうです。

「応援、ありがと~。これからも俺たちと一緒に盛り上がってくらたら嬉しいです!」
「仲良しの秘訣、何かあったりするんですか?私も気になりますね」
咲菜が話を振ってきた。
「ん~。そうだなぁ~。妹ちゃんの事を大好きって思うとか?」
「いや、喧嘩するほど仲が良いと言う。むしろ、喧嘩しない俺たちは不仲なんじゃないか?」
「おい。公衆の面前で、そんな物騒な事言うなよ。フラグが立つだろ?」
「じゃ、遼。今から寿と喧嘩しろ。」
楓真が言った。
は?
なんでそうなる?

「喧嘩したら仲良しに見えるから...」
何かおかしな事言ってる?そう興味なさそうな目で俺を見てくる。
たっく。楓真、意味が分からん。

「遼君、よーいっ、ふぁいっと!!」
なぜか椅子から立ち上がり、嬉しそうに拳を前に構えてくる寿がいる。
「待て待て待て!やめろ!序盤でぐだってたら先、進まないだろ!」
突っ込みどころ満載で俺は一旦整理を図る。

「仲良くなる秘訣。それは、相手の事をよく理解する事だと俺は思う。喧嘩になる原因をよく考えて思い返してくれ。その妹ちゃんが何をしたい?今からどこへ行く?それをよく見て、妹ちゃんのやろうとする事を知る。そうすれば、喧嘩しないですむ道が見えてきたりするんじゃないか?まぁ、俺的に、こいつらみたいに手の負えない人間はこの世に存在しないと思うから、試してみ?
ただ、喧嘩する事=悪い事じゃないぞ?喧嘩をして、その後、仲直りするとか、きちんと正しい事を説明するとかそういう後処理が大事だ。俺も最近、メンバーに報告する事があったんだが、最初は嘘並べて隠そうとしてた。
大丈夫。
俺でも出来たんだし、君もできる。
喧嘩せず、仲良くなれるといいな?頑張れ!」
「遼君、お母さんみたい。」
「遼のサトリ部屋開いたら人気が出るんじゃないか?」
「お前らが使えない話ばっかするかだろ!絶対、さっきの会話、オンエアではカットされてるんだからな?!」
テレビ割と慣れてきただろ?!
ちゃんと、考えろよ!

俺は自由奔放な二人の世話に手を焼く。
元気で馬鹿な寿と、まじめそうに見えて一番常識知らずな楓真の相手は大変だ。疲れる。
けど、これも今日で最後になると思うと愛おしく感じた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...