病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向

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第16話

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次の日。
俺は学校を休んだ。
体調を崩してとかじゃない。
単なる定期検査だ。





今日の俺に課されたミッションは馬鹿デカい大学病院の生理検査室と書かれたフロアーを片っ端から回っていく事。
血液検査、心電図検査、脳波検査、心エコー、運動負荷心電図、CT、マルク。
朝一から来たはずなのに、全ての検査が終わった頃にはもう、3時を回っていた。
「いっつ‥」
検査で疲弊したと言わんばかりに体が悲鳴を上げているのがわかる。
本当は検査入院して2泊3日とかでがっつりやる検査項目を無理矢理、『日帰りでお願いします』と頼んだのだ。
ハードスケジュールすぎて、体が追いついていないのは当然と言えば当然の結果だ。

けど、一回の検査で一週間の半分を検査入院としてあてられるほど、俺の人生はもう安くない。
これからどうせ何十回とやるんだ。トータルすれば、1年分の人生を検査入院で埋め尽くす事にもなるかもしれない。
そんなの死んでもごめんだ。
何度、検査したってこれ以上良くなることはもうないのだから。


「けど、マジで痛いな」
俺は、マジでクソ痛い骨髄穿刺の勲章の耐え難い腰の痛みに、腰をさすりながら待合室で主治医の先生の診察を待つ。
待合室のテレビに視線を流すと、『Cherry‘s』の寿と楓真と『ナイキュ』の咲菜の3人でバラエティー番組の司会をしていた。
本当に有名になったもんだ。
あの3人の中に俺が入ってたんだもんな。
凄い事だよな。

―4人、あの中に俺が立っていれば....4人だった....。



「大丈夫。今の俺は竹中祐だ」
嫉妬の渦に飲み込まれそうだった俺は、そう呟き心に暗示をかける。

待合室のテレビを見ながらふと昨日の話を思い出した。
昨日、磯崎さんに『将来の夢は何か?』と聞かれた。

その時はその場しのぎで、『別に何もないよ。普通に大学生になって普通に働いて、普通に墓場に入っていくよ』とロクでもない事を答えた。

俺は、すぐ答える事が出来なかった。
夢が無いわけじゃない。けれど、今後、絶対に叶うはずない妄想を夢と、将来の夢と呼んでいいのか迷った。
あの場に俺の事情をすべて知る人が居たなら、逆に質問したかった。
『俺に、未来はあるのか?』と。

「竹中さーん」
受付から制服姿の医療事務のお姉さんが俺の名前を呼んだ。
「もう少しで診察ですので、中待合でお待ち下さい。」
どうやら、順番がもうすぐみたいだ。




『病院は病気を治す場所である』
そう願って病院に来る人はどれだけいるんだろうか。
『少しは良くなっていればいいな。』
そんな、淡い期待など、とうの昔に捨てた。
「はい」
俺は無機質な返事をお姉さんに返して、血液循環器内科と書かれた待合室へ足を向けた。



俺だってアイドルをしたかった。
俺だってステージに立ちたかった。
俺だって....。
俺だって....。
その心残りだけが俺の心を永遠とむしばんでいく。

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