~春の国~片足の不自由な王妃様

アルトとマリーナ ２通の手紙と永遠の愛

5 アルト視点①

私はずっと後悔をしていた。
もっと早く行動をしていれば。
異変に気がついていれば。

あの日。
やっと。ローズとの婚約の書類にサインした。嬉しすぎて～手が震えたのを覚えている。
そして。直ぐに結婚できると言われ、私は浮かれていた。

その隙をつかれたのだろう。

あの夜。使用人から「マリーナお嬢様からローズマリーお嬢様の事で話があるから、部屋に来てほしいと伝言されました。」と言われた。

あの時。あの使用人を疑わなかったんだろうか？ローバー侯爵家に来て、一度も見たことのないのに～いつもなら。気がつく筈なのに。なぜかあの時は～ローズと言う言葉と、部屋に行かないといけない。…なにかがあった。部屋に入ると～なにかの匂いが部屋中充満していた。

途中から意識がハッキリしなくなった。モヤがかかったような。
ただ。ローズの名を呼び、抱いている幸せの夢をみていた。

～一生の後悔の始まり～

朝起きたら、私は裸で(繋がったまま)マリーナを抱きしめていた。

マリーナも目を覚まし、今の状態が理解できずにいた。
あたふたしていると、ドアが開いた。

大勢の人が流れ込んできた。

よく見ると。
王太子に抱かれながら、私達を見つめ泣きながら意識を失くす愛しいローズがいた。

ローズに話しかけるタイミングもなく、ローズを宝物のように抱きしめながら部屋を出る王太子の後ろ姿を見ていた。

ふと王太子は振り返り、私に口を動かし(ローズは私のだ。残念だったな。)と。

そのまま。ローズは城へ連れていかれ～帰って来なかった。