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第5話
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デューイの振りあげた腕はつかまれて空中でとまっていた。
腕をつかんでいるのは、ふわふわとした明るい栗色のくせ毛の青年である。その人は長身のデューイにくらべて頭半分ほど背が低く、人に威圧感を与えない柔らかな表情をしている。
しかし、その手はかたくデューイの腕を握りしめているようで、指の節が白く浮きあがって見える。
「くっ……なにをするっ!」
痛みを感じたらしいデューイは眉間にしわを寄せて、腕を振り払った。
「ハーパー侯爵子息、暴力はいけません」
「貴様には関係ないだろ! ――クレスウェル侯爵家の……」
穏やかな声でとがめられたデューイは一瞬激高したが、相手が誰であるか気づいた途端にその勢いを失った。
……どうやら相手によっては多少の理性が働くらしい。
シェリーは思った。
ユーリアン・クレスウェル侯爵子息は、名門クレスウェル侯爵家の嫡男であり、生徒会のメンバーである。また、生徒会の会長でもある王太子に側近として重用されていることは誰でも知っていた。
傍若無人なデューイであっても敵にまわしたくない相手なのだろう。
「あなた方はこんな場所でなにをしているのですか?」
「いや……この女が言うことを聞かないもので」
ユーリアンが穏やかにたずねるとデューイはしどろもどろに答える。
「『この女』……ハーパー侯爵子息、いくら婚約者相手でもそんな呼び方はよくないのでは?」
「いや! この女はもう俺の婚約者ではなくて——」
「そうです! シェリー様は婚約破棄されたのです!」
ずっとデューイの背後に半分かくれていたヴィオラが突然前に出て、あまったるい声で主張した。
「シェリー様はヴィオラとデューイ様にいじわるするのです!」
困ったように眉を下げて、うるうるした瞳で訴える様子はとても可憐で、男性の庇護欲をそそるものに思われ、シェリーは瞳を翳らせた。
ユーリアンは柔らかな表情のまま、たずねた。
「いじわるとは?」
「今までずっとデューイ様の課題をやっていたのに、婚約破棄された途端にやりたくないと言うのです! きっとヴィオラのことが気にくわないのです……」
「そ、そうだ! 本当に嫉妬深い女だ!」
シェリーはとても恥ずかしかった。こんなくだらない揉め事にクレスウェル侯爵子息を巻き込んでしまうなんて……。
言うべき言葉がみつからず、ますますうつむいてしまった。
ユーリアンはたしなめるように言った。
「課題は自分でやるものですよ。人に押しつけてはいけません。カヴァデール伯爵令嬢を開放してください。彼女にはこれから生徒会の仕事があるのですから」
「でも……!」
「彼女を放してください」
穏やかで優しいユーリアンの声には、人に有無を言わせないなにかが含まれていた。
騒いでいた二人は不服そうに道をあける。
シェリーが無表情に彼らの前を通り過ぎると、デューイが声をかけてきた。
「調子に乗るなよ。お前の態度はお母様に報告するからな」
シェリーは理性ではくだらないセリフだと思ったが、どうしてもおびえる心を制御できなかった。
シェリーはユーリアンのあとに続いて生徒会室へむかった。
腕をつかんでいるのは、ふわふわとした明るい栗色のくせ毛の青年である。その人は長身のデューイにくらべて頭半分ほど背が低く、人に威圧感を与えない柔らかな表情をしている。
しかし、その手はかたくデューイの腕を握りしめているようで、指の節が白く浮きあがって見える。
「くっ……なにをするっ!」
痛みを感じたらしいデューイは眉間にしわを寄せて、腕を振り払った。
「ハーパー侯爵子息、暴力はいけません」
「貴様には関係ないだろ! ――クレスウェル侯爵家の……」
穏やかな声でとがめられたデューイは一瞬激高したが、相手が誰であるか気づいた途端にその勢いを失った。
……どうやら相手によっては多少の理性が働くらしい。
シェリーは思った。
ユーリアン・クレスウェル侯爵子息は、名門クレスウェル侯爵家の嫡男であり、生徒会のメンバーである。また、生徒会の会長でもある王太子に側近として重用されていることは誰でも知っていた。
傍若無人なデューイであっても敵にまわしたくない相手なのだろう。
「あなた方はこんな場所でなにをしているのですか?」
「いや……この女が言うことを聞かないもので」
ユーリアンが穏やかにたずねるとデューイはしどろもどろに答える。
「『この女』……ハーパー侯爵子息、いくら婚約者相手でもそんな呼び方はよくないのでは?」
「いや! この女はもう俺の婚約者ではなくて——」
「そうです! シェリー様は婚約破棄されたのです!」
ずっとデューイの背後に半分かくれていたヴィオラが突然前に出て、あまったるい声で主張した。
「シェリー様はヴィオラとデューイ様にいじわるするのです!」
困ったように眉を下げて、うるうるした瞳で訴える様子はとても可憐で、男性の庇護欲をそそるものに思われ、シェリーは瞳を翳らせた。
ユーリアンは柔らかな表情のまま、たずねた。
「いじわるとは?」
「今までずっとデューイ様の課題をやっていたのに、婚約破棄された途端にやりたくないと言うのです! きっとヴィオラのことが気にくわないのです……」
「そ、そうだ! 本当に嫉妬深い女だ!」
シェリーはとても恥ずかしかった。こんなくだらない揉め事にクレスウェル侯爵子息を巻き込んでしまうなんて……。
言うべき言葉がみつからず、ますますうつむいてしまった。
ユーリアンはたしなめるように言った。
「課題は自分でやるものですよ。人に押しつけてはいけません。カヴァデール伯爵令嬢を開放してください。彼女にはこれから生徒会の仕事があるのですから」
「でも……!」
「彼女を放してください」
穏やかで優しいユーリアンの声には、人に有無を言わせないなにかが含まれていた。
騒いでいた二人は不服そうに道をあける。
シェリーが無表情に彼らの前を通り過ぎると、デューイが声をかけてきた。
「調子に乗るなよ。お前の態度はお母様に報告するからな」
シェリーは理性ではくだらないセリフだと思ったが、どうしてもおびえる心を制御できなかった。
シェリーはユーリアンのあとに続いて生徒会室へむかった。
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