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2巻
2-2
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「ではこちらへ。村に参りましょう」
族長と少女に案内され、村へと歩を進める。
《索敵》に妙な反応が出たのはその時じゃった。数個の白点が十を超える赤点に囲まれておる。その包囲網は徐々に狭められていっとる。
「これは戦闘かのぅ。少数対多数の基本みたいな戦術じゃな」
「どうかしましたか?」
儂のつぶやきに族長コボルトが反応を示す。
「この先で何者かが襲われてるみたいなんじゃよ」
「なんですって!」
「もう村のすぐ近くなんですが……まさか村の子が後を追ってきちゃったとか!?」
顔を見合わせ慌てる族長と少女。
「ルーチェ行くぞ。見つけてしまったものを助けんのは後味が悪いからの」
「はーい。さくっと助けよー」
足早に現場へ向かうと、そこにはゴブリンに囲まれた幼いコボルトたちがおった。
「《結界》」
まずはコボルトの安全を確保する魔法をかけてやる。
「せいっ! やっ! はっ!」
《結界》の展開に合わせて、ルーチェは駆けてきた勢いそのままに飛び出す。後頭部への飛び蹴り、裏拳、回し蹴りと三連打でゴブリン三体が倒れていく。
「《麻痺》」
残るゴブリンが動くより早く、儂の魔法で全員を麻痺させる。そうして動けなくなったゴブリンにも、ルーチェの繰り出す容赦のない体術が襲いかかる。正拳突き、前蹴り、踵落とし、ひざ蹴り、ジャーマンスープレックス、DDTと次々技を繰り出して倒していく。
「大丈夫!?」
少女が追いつき、幼いコボルトたちに声を掛けた時には既に戦闘が終了しておった。
「へ?」
「これを……貴方たち二人で?」
呆気にとられつつも族長コボルトが確認してくる。
「そうじゃよ。まぁゴブリン如きに後れはとらんからのぅ」
「うん。相手にならないよ」
ひと暴れして満足したのか胸を張るルーチェ。《結界》を解いてやり、近付いた少女が抱きしめると、幼子たちは一様に泣き出した。緊張の糸が切れたんじゃろな。
「ありがとうございます」
「間に合って良かったのぅ」
族長は姿勢を正し、すっと頭を下げる。
「このお礼は後ほど必ずします。早く村に帰りましょう」
追手のゴブリンが来ると面倒じゃ。《索敵》に反応はないが用心するに越したことはないからの。
村は戦闘を行った場所からすぐ近くだったようで、十分も歩かずに到着。幼子を村人に任せると、儂らは族長の家に案内される。少女も儂らの傍に付いてきておる。
集落の造りは、ヒトの村と大して変わらないものじゃった。雨風をしっかり防げんことには生活できんからのぅ。族長の家も他の家とさして変わらん。
「ここで少し待っていてください。村の者に説明してきますので」
客間のような部屋に案内されひと息つく。族長はすぐに外へ行ってしまったので、部屋にはルーチェと儂、それにコボルト少女だけになる。
「一服して待つとするかの」
「じいじ、お茶ちょうだい」
二人分のお茶を用意し、少女には果実水を出す。茶請けはかりんとう。
よそ様の家だろうと全くお構いなしな儂らじゃった。
《 4 コボルト村 》
「あの……これは?」
おずおずと聞いてくるコボルト少女。
「果実水じゃよ。お前さんも待ってるだけでは暇じゃろ? のんびり一服せんか?」
「そうそう。かりんとうでも食べながら待ってようよ」
「はぁ」
言われるがまま、少女は恐る恐る果実水を口に含む。
「なんですかこれ! 甘くておいしいじゃないですか!」
「果物を搾っただけじゃよ」
「このカリカリも甘くておいしいのです!」
「甘じょっぱいお菓子だからね」
元々キラキラしてた瞳が一段と輝きを増す少女を、儂らは微笑ましく見守る。
「そういえば嬢ちゃんに名前はないのかの?」
「名前ですか? ありませんね」
食べることを止めずに少女は答える。
「あったほうが便利だよ」
「そうなんですか? 今は赤茶の娘とか黒の息子って呼び合ってますけど、それじゃダメですか?」
かりんとうをパクつきながら答える少女。毛色で識別しとるんか。なりたて魔族だからなのかのぅ。自分たちで見分けが付けば、名前はいらないのかもしれんな。
「嬢ちゃんは普段なんて呼ばれてるんじゃ?」
「私はこげ茶の娘ですよ。お父さんがこげ茶ですからね」
かりんとうに水分を持っていかれた喉を、果実水で潤す少女。
「族長もこげ茶色しとったが」
「あれがお父さんです。だから長の娘って呼ばれたりもします」
長の娘がヒトに関わったのか。それで長自身が出張ってきたんじゃな。
「儂らであだ名のような呼び方しても大丈夫かの? こげ茶の娘ってのも呼びにくいからの」
「正式な名前じゃないから平気だと思うよ」
小声でルーチェに聞いてみたところ問題なさそうじゃ。まぁ本人にも確認してからにしようかの。
「嬢ちゃんをあだ名みたいなもんで呼んでもいいかの? コボルトの呼び方に慣れてなくてのぅ」
「いいんじゃないですか? 代わりにおじいさんたちの名前も教えてください」
あっけらかんとした答えが返ってくる。そういえば名乗ってなかったわい。
「儂はアサオ・セイタロウじゃ」
「アサオ・ルーチェです」
儂らの名乗りに頷きながらも、少女は変わらずかりんとうをパクついとる。
「アサオ、というのが一緒ですね」
「そうじゃな。そこはコボルトのこげ茶やら黒やらみたいなもんじゃ。どっちを呼んでるか分からんから、セイタロウ、ルーチェって名前を使うんじゃよ」
「へー、分かりやすいですね。私の呼び名は何になります?」
「色で呼ぶのがコボルトみたいじゃからな。こげ茶なら……マロネ、でどうじゃ?」
「マロネ……なんか可愛いです」
少し笑みがこぼれてる辺り、この子も満更でもないみたいじゃな。
「これからマロネって呼ぶねー」
「はい。私もルーチェって呼びます」
女の子同士だから仲良くなるのも早いのかの? 年が近いからか街でニーナと友達になるのも早かったしのぅ、ルーチェ自身の性格もあるんじゃろな。友達が多くて困ることはないから構わんか。
三人でそんな他愛もない会話をしつつ一服していると、族長が戻ってきた。
「遅くなりました。人族と関わるのが初めてな者もいましたので、説明に手間取りました」
「ゆっくり待っとっただけじゃから気にしとらんよ。お前さんも喉が渇いたじゃろ」
族長に果実水を差し出す。
「甘い香りがしますね。これは?」
「果実を搾った飲み物じゃよ」
「美味しいよお父さん」
娘が飲んでるモノも同じ香りがするのを見て、族長は口を付ける。まずほんの少しだけ口に含み、それから一気にあおった。
「これはすごいですね! 果実のまま食べるより美味しい!」
初めての経験に驚きが乗って興奮状態のようじゃな。
「それで、この後はどうすればいいんじゃ?」
「そうでした。あまりの感動でそっちを忘れてました」
興奮冷めやらぬ族長は我に返ったように頭を振る。そんなに心震わすモノかのぅ。
「広場で、幼子を救出してくれた恩人だと紹介します。それでこの村では普通に過ごせるはずです。恩を仇で返すような一族ではありませんから」
「そんな大仰なことはしとらんよ」
「いえ、幼子は村の宝です。その宝を救ってくれたのですから恩人に相違ありません」
首を振って否定しながら、力強く答える族長。
「子供が宝ってのは分かるが、そんなもんかの?」
「いいじゃん、じいじ。貰えるモノは貰っとこうよ。礼に形はないけどさ」
五歳児らしからぬ発言じゃな。
「まぁ新たな友人が出来たと思えばよいかの」
「それはこちらとしても嬉しいですね。では行きましょうか」
族長に連れられ、村の中心部にある広場へ向かう。そこには百人くらいのコボルトが集まっておった。
「先程話した我らの恩人だ! 人族だが、我が娘に食事も与えてくれた。幼子も救ってくれた。これに応えること、我ら一族異存はないな? 新たな友人を皆で迎えよう!」
「「「「おぉぉぉぉ!」」」」
野太い声、高い声、幼い声。皆が合わさり大合唱となる。
「アサオ・セイタロウじゃ。そこらにいる人族の爺じゃよ。見慣れん人族だろうが仲良くしてくれるとありがたいのぅ」
「孫のルーチェです。よろしくおねがいしまーす」
「「「「おぉぉぉぉ!」」」」
再度の大合唱。その中から、数人の子供たちが親に連れられ前へ出てくる。
「おじちゃん、たすけてくれてありがとう」
「「ありがとう」」
丁寧に頭を下げる子供たち。
「怪我がなくて良かったのぅ」
儂もしゃがんで目線を合わせ、にこりと微笑む。
「「「うん」」」
「本当にありがとうございました。人族に助けてもらえるとは思いませんでした」
頭を下げながら幼子らの親がそう告げる。長年積み上げてきた、いや積もった疑念は、そう簡単に晴れるモノじゃないからの。
「悪いヒトも良いヒトもいるんじゃよ。儂だって善人とは言い切れんからの」
「だとしても私たちの恩人に変わりはないです」
子を助けてもらった事実のみを見て礼が言えるとは、良い親じゃな。
「そう固くならず、新しい友人としてルーチェと一緒に頼むのじゃ」
儂は真っ直ぐ笑顔を向け、ルーチェもそれに倣い笑顔を見せる。コボルト親子は皆の中へと戻っていった。
「新たな友人に感謝を! 何かあれば私の家に来てくれ。では解散」
族長の言葉を聞いたコボルトは各々の仕事に戻っていく。広場に残ったのは子供たちのみ。その子供たちも追いかけっこなどをして遊び始める。
「子供は遊んで、食べて、寝るのが仕事じゃからな」
「えぇ。その子供たちを助けてくれてありがとうございました」
笑顔で子供たちを見つめる族長。そんな族長に連れられ、儂らは族長の家へと戻った。
《 5 料理と宝石 》
家へ入った途端、族長から果実水をせがまれる。一族の前で演説したあとじゃから、喉が渇くのも仕方ないことじゃろう。
「やはり美味いです。これはどんな果実でもできるのですか?」
「そうじゃな。搾って果汁が出るモノならできるはずじゃ」
マロネが長の後ろで目を輝かせてるのぅ。儂らがいなくなってからも飲めると知れて嬉しいんじゃろな。
「で、どんな料理が知りたいんじゃ? 今持ってるモノを味見してから決めるか?」
「それはありがたいです。そもそもあまり料理をしないので、どんなモノがあるのかすら分かりませんから」
族長の言葉に頷きながらマロネが補足する。
「肉も魚も、塩を使って焼くか煮るくらいです」
「それしか知らないんじゃもったいないよねー。美味しいモノはまだまだ沢山あるんだから」
満面の笑みを浮かべて話すルーチェ。
【無限収納】から手持ちの料理を少しずつ多種多様に取り出して並べていく。肉、魚、野菜、汁物、焼き物、揚げ物、甘味……
「同じ肉でもこんなに変わるものなのですね」
「ふわー。これ甘くて美味しい」
族長もマロネも一つひとつ試食しては感嘆の言葉を呟いておった。塩、醤油、味噌、砂糖と、どの味もしっかり判別できるみたいじゃな。味覚に問題なさそうで安心したわい。
「乾燥させた果実も、それだけで十分甘味になるじゃろ?」
「果実はあまり食べないんですよね。ほとんど肉、魚ばかりで。でもこれだけ美味しいならこれからは食べるだろうな」
「果実や木の実、山菜がこんなに美味しいとは驚きです。これまでは森に行っても全く採りませんでした」
料理を口に含んだまま笑みを浮かべるマロネとは対照的に、族長はそれぞれの料理に真剣な眼差しを向けとる。
「森にあるなら食材に困ることはないじゃろ。調味料だけ確保すればいけそうじゃな」
この世界に来て見つけた醤油の実を見せると、森で見たことのあるモノだと分かった。これならあとは塩、砂糖、蜂蜜辺りを仕入れれば問題ないじゃろ。あ、調理器具全般もじゃな。
「仕入れは人族の街へ行って買うのがてっとり早いじゃろうな。村としてはどうするつもりなんじゃ?」
「私たちも魔族になったのですから、人族を含めた他種族と関わりを持たないとダメですよね」
族長は期待と不安の入り混じった難しい表情を浮かべる。
「ダメというわけでもないがのぅ。良いモノと悪いモノの見極めが大事じゃよ」
「そこはヒトも魔族も同じだよね」
うんうんと頷くルーチェは、その悪いモノに国を奪われたからのぅ。
「湖の街では分からんが、南にあるフォスの街なら人族と対等な取引ができるからの。何かあれば儂の名前を出すといい」
「商業ギルドでも冒険者ギルドでも、じいじの名前出せば問題ないね」
「人族には何を渡せばいいのでしょう?」
「商業ギルドへ加工前の宝石を持ち込んで、通貨に換えてもらってそれを使うのが一番じゃな」
今回料理を教えることへのお代は原石じゃが、かといって店で原石を渡すと迷惑になるかもしれん。それならまず換金すりゃええじゃろ。コボルトの特性で、原石集めはじゃんじゃんできるらしいでな。何でも原石のありかが匂いで分かるんじゃと。先立つものが不足するようなことはなさそうじゃ。
ただ、そのことをおおっぴらにするのはやめるよう注意しておいた。悪いことを考える奴を招きかねんからの。
「料理の件だけでもありがたいのに、こんなに良くしていただいていいんですか?」
「乗りかかった船じゃからな。これをギルドで見せればきっと大丈夫じゃ」
そう言いながら一筆したためた手紙を渡す。中には簡潔に『宜しく頼むのじゃ』とだけ書いた。
そのあと肉、魚料理を中心に色々料理を教える。族長とマロネにだけ教えるのも不公平じゃから希望者を募って。すると思った以上に集まり、料理教室は大盛況じゃった。
関わるなと言われてはいたが、興味はあったんじゃな。自分たちも作る体験方式だったので、試食の時間も大盛り上がりで幕を閉じた。ただ一方的に教えられるより、自分で作ったほうが楽しいし、覚えもいいじゃろ。
手持ちの調味料を分け与えたので、今後は自分たちでも料理できるはず。
これで、コボルト村でやることも終わりじゃな。
別れ際、少しばかりお代の原石を多く渡されたと思ったら、あるお願いも込みでのことじゃった。まぁそれはイレカンへの道中でこなせるから、受けてやろうかの。
《 6 周辺ゴブリン殲滅作戦 》
コボルトたちに頼まれたのは、周辺のゴブリンを根絶やしにしてくれということじゃった。奴らは百害あって一利なしで、ヒトにも魔族にも嫌われとる。
武器が使えて、多少の戦術も扱える。それに加えて繁殖力の高さがあるから、駒として便利なんじゃろうがの。もう少し知能があれば一大勢力になれそうなんじゃが……まぁ、ゴブリンにそんなことを求める者もおらんか。さっさと片付けよう。
《索敵》とマップで周辺の洞窟などを探索する。
洞窟や大木の洞などが巣になることが多いんじゃが、見つけた巣を外から魔法で掃討できないのが面倒なんじゃよ。なぜかというと、もし中に捕まっとるヒトがいたらまずいじゃろ?
「コボルト村の周辺だけでも結構な数があるのぅ」
「頼まれちゃったしね。ゴブリンは色んな意味で美味しくないから好きじゃない。だから、サクッとやっちゃおうよ」
死体を放置して別の魔物を呼び寄せてもよろしくないからの。ルーチェがその場で吸収しない分は燃やし尽くしとるんじゃ。どうせならとことんやってやろうかと思ってな。ルーチェと二人で殲滅作戦実行中なんじゃ。
「村を出てから半日でもう五か所潰しとるんじゃが、これでまだ半分もいかんとはな」
広域マップに表示される巣を、時計回りに潰し歩きながら、徐々にコボルト村から離れていく。今のところ人質もお宝もなし。
「弱いから早く済むけど、たまに毒とか使ってくるから嫌なんだよね」
「身を守る為でなく、狩る為に使ってくる毒じゃから、こちらも罪悪感なしで狩れていいじゃろ」
「じいじは外からやれるけど、私は近付かないとやれないの」
ルーチェが頬を膨らませて少しむくれる。
旅の最中に教えてはいるんじゃが、ルーチェに合う魔法はないみたいじゃ。ステータスとしては問題ないはずなんじゃがのぅ。
その後も日が暮れるまでゴブリン殲滅を繰り返す。
美味しくないモノを吸収した反動で、ルーチェの食欲がそれはもう凄かった。ラビを一匹テリヤキでぺろりじゃったからな。食後の一服もしっかり取り、ゆっくり眠る。
そんなことを数日繰り返すと、巣はほぼ消えていた。規模は大小様々あったが、無事な人質は五人しかおらず、全て娘さんじゃった。皆、《清浄》と《治癒》で十分対処できるくらいの軽傷だったのは幸いじゃ。
人族の娘をさらって繁殖しようとするのはゴブリン社会の基本なんかのぅ。
助けた五人を殲滅作戦に同行させるのも酷じゃろうから、《結界》を張って街へ向かわそうとしたところ、皆に断られた。
《加速》と《堅牢》をかけて移動と防御を万全の態勢にし、テリヤキバーガーと果実水も数個ずつ持たせてと思ったんじゃが……まぁ一緒にいたほうが安全なのは確かかの。
イレカンまでまだもう少しかかりそうなんじゃが、《加速》を常時使ったことで馬車以上の速さでの移動が可能になった。もちろん十分な食事と休息も取った。娘さんたちは街にいる時より食事が良いと嬉しそうじゃった。
族長と少女に案内され、村へと歩を進める。
《索敵》に妙な反応が出たのはその時じゃった。数個の白点が十を超える赤点に囲まれておる。その包囲網は徐々に狭められていっとる。
「これは戦闘かのぅ。少数対多数の基本みたいな戦術じゃな」
「どうかしましたか?」
儂のつぶやきに族長コボルトが反応を示す。
「この先で何者かが襲われてるみたいなんじゃよ」
「なんですって!」
「もう村のすぐ近くなんですが……まさか村の子が後を追ってきちゃったとか!?」
顔を見合わせ慌てる族長と少女。
「ルーチェ行くぞ。見つけてしまったものを助けんのは後味が悪いからの」
「はーい。さくっと助けよー」
足早に現場へ向かうと、そこにはゴブリンに囲まれた幼いコボルトたちがおった。
「《結界》」
まずはコボルトの安全を確保する魔法をかけてやる。
「せいっ! やっ! はっ!」
《結界》の展開に合わせて、ルーチェは駆けてきた勢いそのままに飛び出す。後頭部への飛び蹴り、裏拳、回し蹴りと三連打でゴブリン三体が倒れていく。
「《麻痺》」
残るゴブリンが動くより早く、儂の魔法で全員を麻痺させる。そうして動けなくなったゴブリンにも、ルーチェの繰り出す容赦のない体術が襲いかかる。正拳突き、前蹴り、踵落とし、ひざ蹴り、ジャーマンスープレックス、DDTと次々技を繰り出して倒していく。
「大丈夫!?」
少女が追いつき、幼いコボルトたちに声を掛けた時には既に戦闘が終了しておった。
「へ?」
「これを……貴方たち二人で?」
呆気にとられつつも族長コボルトが確認してくる。
「そうじゃよ。まぁゴブリン如きに後れはとらんからのぅ」
「うん。相手にならないよ」
ひと暴れして満足したのか胸を張るルーチェ。《結界》を解いてやり、近付いた少女が抱きしめると、幼子たちは一様に泣き出した。緊張の糸が切れたんじゃろな。
「ありがとうございます」
「間に合って良かったのぅ」
族長は姿勢を正し、すっと頭を下げる。
「このお礼は後ほど必ずします。早く村に帰りましょう」
追手のゴブリンが来ると面倒じゃ。《索敵》に反応はないが用心するに越したことはないからの。
村は戦闘を行った場所からすぐ近くだったようで、十分も歩かずに到着。幼子を村人に任せると、儂らは族長の家に案内される。少女も儂らの傍に付いてきておる。
集落の造りは、ヒトの村と大して変わらないものじゃった。雨風をしっかり防げんことには生活できんからのぅ。族長の家も他の家とさして変わらん。
「ここで少し待っていてください。村の者に説明してきますので」
客間のような部屋に案内されひと息つく。族長はすぐに外へ行ってしまったので、部屋にはルーチェと儂、それにコボルト少女だけになる。
「一服して待つとするかの」
「じいじ、お茶ちょうだい」
二人分のお茶を用意し、少女には果実水を出す。茶請けはかりんとう。
よそ様の家だろうと全くお構いなしな儂らじゃった。
《 4 コボルト村 》
「あの……これは?」
おずおずと聞いてくるコボルト少女。
「果実水じゃよ。お前さんも待ってるだけでは暇じゃろ? のんびり一服せんか?」
「そうそう。かりんとうでも食べながら待ってようよ」
「はぁ」
言われるがまま、少女は恐る恐る果実水を口に含む。
「なんですかこれ! 甘くておいしいじゃないですか!」
「果物を搾っただけじゃよ」
「このカリカリも甘くておいしいのです!」
「甘じょっぱいお菓子だからね」
元々キラキラしてた瞳が一段と輝きを増す少女を、儂らは微笑ましく見守る。
「そういえば嬢ちゃんに名前はないのかの?」
「名前ですか? ありませんね」
食べることを止めずに少女は答える。
「あったほうが便利だよ」
「そうなんですか? 今は赤茶の娘とか黒の息子って呼び合ってますけど、それじゃダメですか?」
かりんとうをパクつきながら答える少女。毛色で識別しとるんか。なりたて魔族だからなのかのぅ。自分たちで見分けが付けば、名前はいらないのかもしれんな。
「嬢ちゃんは普段なんて呼ばれてるんじゃ?」
「私はこげ茶の娘ですよ。お父さんがこげ茶ですからね」
かりんとうに水分を持っていかれた喉を、果実水で潤す少女。
「族長もこげ茶色しとったが」
「あれがお父さんです。だから長の娘って呼ばれたりもします」
長の娘がヒトに関わったのか。それで長自身が出張ってきたんじゃな。
「儂らであだ名のような呼び方しても大丈夫かの? こげ茶の娘ってのも呼びにくいからの」
「正式な名前じゃないから平気だと思うよ」
小声でルーチェに聞いてみたところ問題なさそうじゃ。まぁ本人にも確認してからにしようかの。
「嬢ちゃんをあだ名みたいなもんで呼んでもいいかの? コボルトの呼び方に慣れてなくてのぅ」
「いいんじゃないですか? 代わりにおじいさんたちの名前も教えてください」
あっけらかんとした答えが返ってくる。そういえば名乗ってなかったわい。
「儂はアサオ・セイタロウじゃ」
「アサオ・ルーチェです」
儂らの名乗りに頷きながらも、少女は変わらずかりんとうをパクついとる。
「アサオ、というのが一緒ですね」
「そうじゃな。そこはコボルトのこげ茶やら黒やらみたいなもんじゃ。どっちを呼んでるか分からんから、セイタロウ、ルーチェって名前を使うんじゃよ」
「へー、分かりやすいですね。私の呼び名は何になります?」
「色で呼ぶのがコボルトみたいじゃからな。こげ茶なら……マロネ、でどうじゃ?」
「マロネ……なんか可愛いです」
少し笑みがこぼれてる辺り、この子も満更でもないみたいじゃな。
「これからマロネって呼ぶねー」
「はい。私もルーチェって呼びます」
女の子同士だから仲良くなるのも早いのかの? 年が近いからか街でニーナと友達になるのも早かったしのぅ、ルーチェ自身の性格もあるんじゃろな。友達が多くて困ることはないから構わんか。
三人でそんな他愛もない会話をしつつ一服していると、族長が戻ってきた。
「遅くなりました。人族と関わるのが初めてな者もいましたので、説明に手間取りました」
「ゆっくり待っとっただけじゃから気にしとらんよ。お前さんも喉が渇いたじゃろ」
族長に果実水を差し出す。
「甘い香りがしますね。これは?」
「果実を搾った飲み物じゃよ」
「美味しいよお父さん」
娘が飲んでるモノも同じ香りがするのを見て、族長は口を付ける。まずほんの少しだけ口に含み、それから一気にあおった。
「これはすごいですね! 果実のまま食べるより美味しい!」
初めての経験に驚きが乗って興奮状態のようじゃな。
「それで、この後はどうすればいいんじゃ?」
「そうでした。あまりの感動でそっちを忘れてました」
興奮冷めやらぬ族長は我に返ったように頭を振る。そんなに心震わすモノかのぅ。
「広場で、幼子を救出してくれた恩人だと紹介します。それでこの村では普通に過ごせるはずです。恩を仇で返すような一族ではありませんから」
「そんな大仰なことはしとらんよ」
「いえ、幼子は村の宝です。その宝を救ってくれたのですから恩人に相違ありません」
首を振って否定しながら、力強く答える族長。
「子供が宝ってのは分かるが、そんなもんかの?」
「いいじゃん、じいじ。貰えるモノは貰っとこうよ。礼に形はないけどさ」
五歳児らしからぬ発言じゃな。
「まぁ新たな友人が出来たと思えばよいかの」
「それはこちらとしても嬉しいですね。では行きましょうか」
族長に連れられ、村の中心部にある広場へ向かう。そこには百人くらいのコボルトが集まっておった。
「先程話した我らの恩人だ! 人族だが、我が娘に食事も与えてくれた。幼子も救ってくれた。これに応えること、我ら一族異存はないな? 新たな友人を皆で迎えよう!」
「「「「おぉぉぉぉ!」」」」
野太い声、高い声、幼い声。皆が合わさり大合唱となる。
「アサオ・セイタロウじゃ。そこらにいる人族の爺じゃよ。見慣れん人族だろうが仲良くしてくれるとありがたいのぅ」
「孫のルーチェです。よろしくおねがいしまーす」
「「「「おぉぉぉぉ!」」」」
再度の大合唱。その中から、数人の子供たちが親に連れられ前へ出てくる。
「おじちゃん、たすけてくれてありがとう」
「「ありがとう」」
丁寧に頭を下げる子供たち。
「怪我がなくて良かったのぅ」
儂もしゃがんで目線を合わせ、にこりと微笑む。
「「「うん」」」
「本当にありがとうございました。人族に助けてもらえるとは思いませんでした」
頭を下げながら幼子らの親がそう告げる。長年積み上げてきた、いや積もった疑念は、そう簡単に晴れるモノじゃないからの。
「悪いヒトも良いヒトもいるんじゃよ。儂だって善人とは言い切れんからの」
「だとしても私たちの恩人に変わりはないです」
子を助けてもらった事実のみを見て礼が言えるとは、良い親じゃな。
「そう固くならず、新しい友人としてルーチェと一緒に頼むのじゃ」
儂は真っ直ぐ笑顔を向け、ルーチェもそれに倣い笑顔を見せる。コボルト親子は皆の中へと戻っていった。
「新たな友人に感謝を! 何かあれば私の家に来てくれ。では解散」
族長の言葉を聞いたコボルトは各々の仕事に戻っていく。広場に残ったのは子供たちのみ。その子供たちも追いかけっこなどをして遊び始める。
「子供は遊んで、食べて、寝るのが仕事じゃからな」
「えぇ。その子供たちを助けてくれてありがとうございました」
笑顔で子供たちを見つめる族長。そんな族長に連れられ、儂らは族長の家へと戻った。
《 5 料理と宝石 》
家へ入った途端、族長から果実水をせがまれる。一族の前で演説したあとじゃから、喉が渇くのも仕方ないことじゃろう。
「やはり美味いです。これはどんな果実でもできるのですか?」
「そうじゃな。搾って果汁が出るモノならできるはずじゃ」
マロネが長の後ろで目を輝かせてるのぅ。儂らがいなくなってからも飲めると知れて嬉しいんじゃろな。
「で、どんな料理が知りたいんじゃ? 今持ってるモノを味見してから決めるか?」
「それはありがたいです。そもそもあまり料理をしないので、どんなモノがあるのかすら分かりませんから」
族長の言葉に頷きながらマロネが補足する。
「肉も魚も、塩を使って焼くか煮るくらいです」
「それしか知らないんじゃもったいないよねー。美味しいモノはまだまだ沢山あるんだから」
満面の笑みを浮かべて話すルーチェ。
【無限収納】から手持ちの料理を少しずつ多種多様に取り出して並べていく。肉、魚、野菜、汁物、焼き物、揚げ物、甘味……
「同じ肉でもこんなに変わるものなのですね」
「ふわー。これ甘くて美味しい」
族長もマロネも一つひとつ試食しては感嘆の言葉を呟いておった。塩、醤油、味噌、砂糖と、どの味もしっかり判別できるみたいじゃな。味覚に問題なさそうで安心したわい。
「乾燥させた果実も、それだけで十分甘味になるじゃろ?」
「果実はあまり食べないんですよね。ほとんど肉、魚ばかりで。でもこれだけ美味しいならこれからは食べるだろうな」
「果実や木の実、山菜がこんなに美味しいとは驚きです。これまでは森に行っても全く採りませんでした」
料理を口に含んだまま笑みを浮かべるマロネとは対照的に、族長はそれぞれの料理に真剣な眼差しを向けとる。
「森にあるなら食材に困ることはないじゃろ。調味料だけ確保すればいけそうじゃな」
この世界に来て見つけた醤油の実を見せると、森で見たことのあるモノだと分かった。これならあとは塩、砂糖、蜂蜜辺りを仕入れれば問題ないじゃろ。あ、調理器具全般もじゃな。
「仕入れは人族の街へ行って買うのがてっとり早いじゃろうな。村としてはどうするつもりなんじゃ?」
「私たちも魔族になったのですから、人族を含めた他種族と関わりを持たないとダメですよね」
族長は期待と不安の入り混じった難しい表情を浮かべる。
「ダメというわけでもないがのぅ。良いモノと悪いモノの見極めが大事じゃよ」
「そこはヒトも魔族も同じだよね」
うんうんと頷くルーチェは、その悪いモノに国を奪われたからのぅ。
「湖の街では分からんが、南にあるフォスの街なら人族と対等な取引ができるからの。何かあれば儂の名前を出すといい」
「商業ギルドでも冒険者ギルドでも、じいじの名前出せば問題ないね」
「人族には何を渡せばいいのでしょう?」
「商業ギルドへ加工前の宝石を持ち込んで、通貨に換えてもらってそれを使うのが一番じゃな」
今回料理を教えることへのお代は原石じゃが、かといって店で原石を渡すと迷惑になるかもしれん。それならまず換金すりゃええじゃろ。コボルトの特性で、原石集めはじゃんじゃんできるらしいでな。何でも原石のありかが匂いで分かるんじゃと。先立つものが不足するようなことはなさそうじゃ。
ただ、そのことをおおっぴらにするのはやめるよう注意しておいた。悪いことを考える奴を招きかねんからの。
「料理の件だけでもありがたいのに、こんなに良くしていただいていいんですか?」
「乗りかかった船じゃからな。これをギルドで見せればきっと大丈夫じゃ」
そう言いながら一筆したためた手紙を渡す。中には簡潔に『宜しく頼むのじゃ』とだけ書いた。
そのあと肉、魚料理を中心に色々料理を教える。族長とマロネにだけ教えるのも不公平じゃから希望者を募って。すると思った以上に集まり、料理教室は大盛況じゃった。
関わるなと言われてはいたが、興味はあったんじゃな。自分たちも作る体験方式だったので、試食の時間も大盛り上がりで幕を閉じた。ただ一方的に教えられるより、自分で作ったほうが楽しいし、覚えもいいじゃろ。
手持ちの調味料を分け与えたので、今後は自分たちでも料理できるはず。
これで、コボルト村でやることも終わりじゃな。
別れ際、少しばかりお代の原石を多く渡されたと思ったら、あるお願いも込みでのことじゃった。まぁそれはイレカンへの道中でこなせるから、受けてやろうかの。
《 6 周辺ゴブリン殲滅作戦 》
コボルトたちに頼まれたのは、周辺のゴブリンを根絶やしにしてくれということじゃった。奴らは百害あって一利なしで、ヒトにも魔族にも嫌われとる。
武器が使えて、多少の戦術も扱える。それに加えて繁殖力の高さがあるから、駒として便利なんじゃろうがの。もう少し知能があれば一大勢力になれそうなんじゃが……まぁ、ゴブリンにそんなことを求める者もおらんか。さっさと片付けよう。
《索敵》とマップで周辺の洞窟などを探索する。
洞窟や大木の洞などが巣になることが多いんじゃが、見つけた巣を外から魔法で掃討できないのが面倒なんじゃよ。なぜかというと、もし中に捕まっとるヒトがいたらまずいじゃろ?
「コボルト村の周辺だけでも結構な数があるのぅ」
「頼まれちゃったしね。ゴブリンは色んな意味で美味しくないから好きじゃない。だから、サクッとやっちゃおうよ」
死体を放置して別の魔物を呼び寄せてもよろしくないからの。ルーチェがその場で吸収しない分は燃やし尽くしとるんじゃ。どうせならとことんやってやろうかと思ってな。ルーチェと二人で殲滅作戦実行中なんじゃ。
「村を出てから半日でもう五か所潰しとるんじゃが、これでまだ半分もいかんとはな」
広域マップに表示される巣を、時計回りに潰し歩きながら、徐々にコボルト村から離れていく。今のところ人質もお宝もなし。
「弱いから早く済むけど、たまに毒とか使ってくるから嫌なんだよね」
「身を守る為でなく、狩る為に使ってくる毒じゃから、こちらも罪悪感なしで狩れていいじゃろ」
「じいじは外からやれるけど、私は近付かないとやれないの」
ルーチェが頬を膨らませて少しむくれる。
旅の最中に教えてはいるんじゃが、ルーチェに合う魔法はないみたいじゃ。ステータスとしては問題ないはずなんじゃがのぅ。
その後も日が暮れるまでゴブリン殲滅を繰り返す。
美味しくないモノを吸収した反動で、ルーチェの食欲がそれはもう凄かった。ラビを一匹テリヤキでぺろりじゃったからな。食後の一服もしっかり取り、ゆっくり眠る。
そんなことを数日繰り返すと、巣はほぼ消えていた。規模は大小様々あったが、無事な人質は五人しかおらず、全て娘さんじゃった。皆、《清浄》と《治癒》で十分対処できるくらいの軽傷だったのは幸いじゃ。
人族の娘をさらって繁殖しようとするのはゴブリン社会の基本なんかのぅ。
助けた五人を殲滅作戦に同行させるのも酷じゃろうから、《結界》を張って街へ向かわそうとしたところ、皆に断られた。
《加速》と《堅牢》をかけて移動と防御を万全の態勢にし、テリヤキバーガーと果実水も数個ずつ持たせてと思ったんじゃが……まぁ一緒にいたほうが安全なのは確かかの。
イレカンまでまだもう少しかかりそうなんじゃが、《加速》を常時使ったことで馬車以上の速さでの移動が可能になった。もちろん十分な食事と休息も取った。娘さんたちは街にいる時より食事が良いと嬉しそうじゃった。
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