【1話完結】5分で人の怖さにゾッとする話

風上すちこ

文字の大きさ
11 / 13

ぬいぐるみ


私の住む近所には、通ってはならない道がある。
通ってはならない、というよりも通らない方がいい道。と言った方がよいだろうか。
熊が出るとか整備されていない道だからとかそんな理由ではなく、ただただ、通らない方がよいと言われる。そんな道だ。

皆さんの住む街にもそのような道はないだろうか。
治安の悪い商店街や街灯もない路地裏だったり…
はたまた、あなたが想像したのは人身事故が起こりやすい交差点か。





あとは…明らかにおかしい人がいる道…だとか。
幽霊とかの類ではなく確実に人間であるのに、どこかのネジが外れてしまっている人。

私が体験した、通ってはならない道に関するエピソードを、どうか聞いていってほしい。





そう、近所には人生おばさんと呼ばれるおばさんがうろうろ徘徊している道があった。



「じぃ~~~んせぇえ~らっくありゃあくぅ~もあ~るさぁ~~~~~」

しゃがれた暗い声で、ボソボソと。
それも、この一小節を繰り返し歌う。
いつも薄汚れた白色だったであろうワンピースを着ていて、髪はのびっぱなしだ。くせ毛なのか灰色の髪が絡まりうねっている。
俯きがちで顔はほとんど見えない。
左手では杖をつき、そしてなぜか右手には馬のぬいぐるみを握っていた。

人生おばさんは格好はみすぼらしいものの、ぬいぐるみの手入れはしているようで新品同様だった。
定期的に違う馬のぬいぐるみに変わっていたりもする。

この前のぬいぐるみは「ヒヒーン」と音を出すタイプだったらしく、人生おばさんの歌とヒヒーンという馬の声が近所中に響き渡っていた。

音楽が流れるタイプのぬいぐるみだったこともある。
ちゃらちゃらと流れる曲は気味が悪く、近所をズンっと暗い雰囲気に陥れていた。
そのぬいぐるみが雨か何かで壊れかけていたことがあった。ただでさえ壊れかけのおもちゃは不気味なのに、人生おばさんの歌と合わさり不協和音を奏でているのだ。
そのぬいぐるみから変わったときは、心底ほっとしたものだ。



何故私がこんなにも詳しいのかというと、自分の住むアパートがその道からとても近くにあるからだった。
人生おばさんが影響しているかは分からないが家賃がとても安く、そのアパートに住むことに決めた。
今では後悔しかないが。


もちろん、道は通らないようにし、人生おばさんもと対面することは避けた。

ただ、自分の部屋のアパートからおばさんを覗いているというだけ。
何故だろう。怖いもの見たさだろうか。
実際近所の人からも人生おばさんはこの道を徘徊するだけで危害を加えたことはないと聞いているものだから、高みの見物というところだったのかもしれない。
好奇心は猫をも殺すとは、このことだ。

見ない方がいいと分かっていても、覗くことを辞められなかった。
自分は道を通ることはないし、人生おばさんに会うこともない。そう高を括っていたのだ。


そんな日々が二三ヶ月続いたある日。
その日は台風上陸により大雨が降り続いていた。

いつもは徘徊している時間なのに、その日は人生おばさんがその道にいなかった。
流石に人生おばさんでも台風の日は出歩かないんだな。
人生おばさんを覗くことが日課になっていた私は、ついそんなことを思ってしまった。


そんなとき、ベランダの掃き出し窓に
ドンッ!!!と何かがあたったような鈍い音がした。

葉っぱか、何かか…いいや、音がなるほどの音ということは、鳥がぶつかってしまったのかもしれない。





ベランダに出ると、そこにはうまの人形があった。
汚れて雨に濡れているのかベチョベチョだった。

「馬のぬいぐるみって…これ…」


もしかして、これ…人生おばさんの…?

部屋に戻りベランダの鍵を閉め考える。
台風で飛ばされてしまったのか…?
それは、あまりに非現実的だった。

いくら近所だったとしても、2階にあるこの部屋に、ぬいぐるみが飛んでくるだろうか?
誰かが、投げ入れたのではないか、その考えが頭に浮かび、血の気が引いた。

手が震え、その反動で馬のぬいぐるみを床に落としてしまう。そのときだった。








「きぃぃ~ずいてるよぉ」

人の声を真似し、オウム返しするタイプのぬいぐるみだったのだ。あのヒヒーンと鳴っていたぬいぐるみも、人生おばさんの声だったのかもしれない。




「きぃぃ~ずいてるよぉ」

落としたことで作動してしまったそれは、床に落ちたまま話し続ける。











「きぃぃ~ずいてるよぉ」
感想 1

あなたにおすすめの小説

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

意味コワ! 10秒で読めるゾッとする話

絢郷水沙
ホラー
旧題:10秒で読めるちょっと怖い話。  ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?