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番外編:分岐小説 夢の通い路 分岐後
「なんて夢を見てしまったの? 私は……!」
夢から目覚めたヴィクトリアは、頭を抑えて溜め息を吐いた。
「眠れなかった……」
眠りが浅かったせいか、頭がガンガンする。
ろくに眠った気がしないとヴィクトリアが思っていると、いつものようにルーファスがノックとともに部屋に入ってきた。
「おはようございます。昨夜はよくお眠りになれましたか?」
いつもと変わらない、ルーファスの言葉。
だがヴィクトリアは、ルーファスにすぐに返事をすることが出来なかった。
「へ、陛下! 顔色がお悪いですが、大丈夫ですか?」
「……!」
カーテンを開けたルーファスが、ヴィクトリアに気付いて近づく。
だが彼の手が頬に触れそうになったとき、ヴィクトリアは夢を思い出して、思わずその手を払ってしまった。
「……陛下?」
あからさまな拒絶に、ルーファスは目を丸くした。
「ご……ごめんなさい! 私の体調は大丈夫だから! 気にしなくても景気だから! ほら、元気元気!!」
夢の中でルーファスを汚してしまった気がして、ヴィクトリアは心の中で平身低頭して謝った。
朝食をとってヴィクトリアがカーライルの執務室に行くと、何故かカーライルは上機嫌だった。
「昨夜はよく眠れましたか?」
「この顔が眠れたように見える?」
「もう一眠りした方が良さそうな顔をしていますね」
どこか楽しそうに、カーライルはにこりと笑う。
そんな彼にいらだちが募って、ヴィクトリアは頭を抑えたままバランスを崩した。
「クラクラする……」
「陛下!」
戸棚にぶつかりそうになったところで、ヴィクトリアはルーファスに体を受け止められた。
「大丈夫ですか? おけがは……」
「あ……あ、ありがとう……。ルーファス……」
ヴィクトリアは、ぎこちなくルーファスに礼を言った。
その瞬間、何かが棚から落ちた。
「……ん? なにこれ。『恋の魔道具カタログ』??」
カーライルが読むにしては、色合いが少々奇抜すぎる。
冊子を拾い上げたヴィクトリアは、嫌な予感がしてペラペラとそれをめくった。
「『夢で、気になるあの子をオトす!? 夢の通い路用・縁結び枕発売開始』……?」『夢の中で貴方の愛を伝えよう!』 ……?」
そのカタログに載っていた枕は、昨夜自分お部屋に置いてあった枕とうり二つだった。
「……魔界の魔法道具店のものだな」
背後からカタログを覗いたレイモンドがポツリつぶやく。
「なにこれ高っ! 桁が多い!」
ヴィクトリアは思わず叫んだ。
そこには、とても枕の値段とは思えない法外な値段が記載されていた。
「――ところで、質問なのですがヴィクトリア。昨夜の夢に、私は現れましたか?」
「……………………もしかして、私が眠れなかった原因が貴方だったりする?」
ヴィクトリアは長い沈黙の後、静かにカーライルに訊ねた。
「残念。気づいてしまいましたか」
全ての元凶である男は、悪びれる様子一つなく、善人のような笑みを浮かべていた。
「貴方の中に私への好意をすり込もうと思っていたのに」
「? 刷り込みですか?」
「はい。潜在意識に訴えようかと」
ルーファスの問いに、カーライルはさらりと答えた。
「カーライル……! こんなものを使って、また私の気持ちで遊んで……!」
(寝不足は全部この男のせいじゃない!)
ヴィクトリアは眠さも相まって、頭に血が上った。
「本よ燃えて灰となれ!」
彼女は枕を部屋に取りに戻ると、カーライルの目の前で枕を燃やした。
「なんてことするんですか。高かったのに」
「……カーライル……? いっそ貴方のことも燃やしてあげましょうか……?」
火球を手に、ヴィクトリアはカーライルの服の襟を掴んで笑った。
「いいですよ。貴方に与えられる痛みならよろこんで」
ヴィクトリアの提案に、カーライルはとても嬉しそうに笑った。
その笑顔を見た瞬間、ヴィクトリアはひどく疲れた。
(ああそう。そうだった。これでこそカーライルだった……。こういう脅しは、全部この男には無駄だったんだった……)
ヴィクトリアはがっくりと肩を落とした。幼馴染みの気持ち悪さになれてしまった自分が悲しい。
「本当にろくなものを作らないな。この魔道具屋は。以前町で客引きで声をかけられたんだが、何故カーライルはこの店を知っていたんだ?」
「まあ、夢魔が経営している店ですからね。品揃えはいいんですよ。媚薬から致死毒まで幅広く品揃えがあったんですが、一部の毒薬は流石に危ないと思ったので販売は停止させました」
「仕事で知っていたわけか」
ヴィクトリアはレイモンドとカーライルの会話で更に精神が摩耗していくのを感じた。
レイモンドにはどういうシチュエーションで声をかけられたのか、小一時間正座させて問い詰めたい気分だった。――前世の養い親として。
「それで? 一体どんな夢を見たんですか?」
「ぜ……絶対に言わない!」
(夢の中ではカーライルが意外と紳士で、ルーファスが野獣で、レイモンドが激甘だったなんて、絶対に言えない……!)
ヴィクトリアは何があっても夢については話さないことを心に決めた。
いつもと印象が真逆すぎる。いや、ルーファスはある意味種族に忠実なのかもしれないけれど!
そう思ってヴィクトリアが顔を真っ赤にして蹲ると、その光景を見てカーライルはふむと頷いた。
「なるほど……。こういう反応が見られるなら、今後も道具を使うのもありかもしれないですね」
「これもあれも全部燃えろっ!!!」
その言葉を聞いて、ヴィクトリアは再び火球を出現させた。
カーライルに向かって投げつけるも、雪女の血を引く彼は、あっさり火球を無力化してしまう。
「次回の購入の検討なんてしないでいいからね! あとまた私で試したら次こそ本気で怒るからね!」
「わかりました。『また面白い商品が出ていたら、私のために買ってきて』ですね」
「私の話の何を聞いたらそうなるのっ!!!!」
弾むような声で言われ、ヴィクトリアは思わず叫んだ。
◇
「陛下……。どうして私から逃げようとなさるのですか? 逃げないでください。逃げられたら、追いたくなってしまいます」
因みにその後、枕は実は夢の中に出てきた相手の願望をみせるということを知ってしまい、ヴィクトリアが三人の顔をまともに数日間見れなくなったせいで、不安になった(?)らしいルーファスやカーライルに、彼女が追いかけられたり追い込まれたりしたのは、また別の話である。
夢から目覚めたヴィクトリアは、頭を抑えて溜め息を吐いた。
「眠れなかった……」
眠りが浅かったせいか、頭がガンガンする。
ろくに眠った気がしないとヴィクトリアが思っていると、いつものようにルーファスがノックとともに部屋に入ってきた。
「おはようございます。昨夜はよくお眠りになれましたか?」
いつもと変わらない、ルーファスの言葉。
だがヴィクトリアは、ルーファスにすぐに返事をすることが出来なかった。
「へ、陛下! 顔色がお悪いですが、大丈夫ですか?」
「……!」
カーテンを開けたルーファスが、ヴィクトリアに気付いて近づく。
だが彼の手が頬に触れそうになったとき、ヴィクトリアは夢を思い出して、思わずその手を払ってしまった。
「……陛下?」
あからさまな拒絶に、ルーファスは目を丸くした。
「ご……ごめんなさい! 私の体調は大丈夫だから! 気にしなくても景気だから! ほら、元気元気!!」
夢の中でルーファスを汚してしまった気がして、ヴィクトリアは心の中で平身低頭して謝った。
朝食をとってヴィクトリアがカーライルの執務室に行くと、何故かカーライルは上機嫌だった。
「昨夜はよく眠れましたか?」
「この顔が眠れたように見える?」
「もう一眠りした方が良さそうな顔をしていますね」
どこか楽しそうに、カーライルはにこりと笑う。
そんな彼にいらだちが募って、ヴィクトリアは頭を抑えたままバランスを崩した。
「クラクラする……」
「陛下!」
戸棚にぶつかりそうになったところで、ヴィクトリアはルーファスに体を受け止められた。
「大丈夫ですか? おけがは……」
「あ……あ、ありがとう……。ルーファス……」
ヴィクトリアは、ぎこちなくルーファスに礼を言った。
その瞬間、何かが棚から落ちた。
「……ん? なにこれ。『恋の魔道具カタログ』??」
カーライルが読むにしては、色合いが少々奇抜すぎる。
冊子を拾い上げたヴィクトリアは、嫌な予感がしてペラペラとそれをめくった。
「『夢で、気になるあの子をオトす!? 夢の通い路用・縁結び枕発売開始』……?」『夢の中で貴方の愛を伝えよう!』 ……?」
そのカタログに載っていた枕は、昨夜自分お部屋に置いてあった枕とうり二つだった。
「……魔界の魔法道具店のものだな」
背後からカタログを覗いたレイモンドがポツリつぶやく。
「なにこれ高っ! 桁が多い!」
ヴィクトリアは思わず叫んだ。
そこには、とても枕の値段とは思えない法外な値段が記載されていた。
「――ところで、質問なのですがヴィクトリア。昨夜の夢に、私は現れましたか?」
「……………………もしかして、私が眠れなかった原因が貴方だったりする?」
ヴィクトリアは長い沈黙の後、静かにカーライルに訊ねた。
「残念。気づいてしまいましたか」
全ての元凶である男は、悪びれる様子一つなく、善人のような笑みを浮かべていた。
「貴方の中に私への好意をすり込もうと思っていたのに」
「? 刷り込みですか?」
「はい。潜在意識に訴えようかと」
ルーファスの問いに、カーライルはさらりと答えた。
「カーライル……! こんなものを使って、また私の気持ちで遊んで……!」
(寝不足は全部この男のせいじゃない!)
ヴィクトリアは眠さも相まって、頭に血が上った。
「本よ燃えて灰となれ!」
彼女は枕を部屋に取りに戻ると、カーライルの目の前で枕を燃やした。
「なんてことするんですか。高かったのに」
「……カーライル……? いっそ貴方のことも燃やしてあげましょうか……?」
火球を手に、ヴィクトリアはカーライルの服の襟を掴んで笑った。
「いいですよ。貴方に与えられる痛みならよろこんで」
ヴィクトリアの提案に、カーライルはとても嬉しそうに笑った。
その笑顔を見た瞬間、ヴィクトリアはひどく疲れた。
(ああそう。そうだった。これでこそカーライルだった……。こういう脅しは、全部この男には無駄だったんだった……)
ヴィクトリアはがっくりと肩を落とした。幼馴染みの気持ち悪さになれてしまった自分が悲しい。
「本当にろくなものを作らないな。この魔道具屋は。以前町で客引きで声をかけられたんだが、何故カーライルはこの店を知っていたんだ?」
「まあ、夢魔が経営している店ですからね。品揃えはいいんですよ。媚薬から致死毒まで幅広く品揃えがあったんですが、一部の毒薬は流石に危ないと思ったので販売は停止させました」
「仕事で知っていたわけか」
ヴィクトリアはレイモンドとカーライルの会話で更に精神が摩耗していくのを感じた。
レイモンドにはどういうシチュエーションで声をかけられたのか、小一時間正座させて問い詰めたい気分だった。――前世の養い親として。
「それで? 一体どんな夢を見たんですか?」
「ぜ……絶対に言わない!」
(夢の中ではカーライルが意外と紳士で、ルーファスが野獣で、レイモンドが激甘だったなんて、絶対に言えない……!)
ヴィクトリアは何があっても夢については話さないことを心に決めた。
いつもと印象が真逆すぎる。いや、ルーファスはある意味種族に忠実なのかもしれないけれど!
そう思ってヴィクトリアが顔を真っ赤にして蹲ると、その光景を見てカーライルはふむと頷いた。
「なるほど……。こういう反応が見られるなら、今後も道具を使うのもありかもしれないですね」
「これもあれも全部燃えろっ!!!」
その言葉を聞いて、ヴィクトリアは再び火球を出現させた。
カーライルに向かって投げつけるも、雪女の血を引く彼は、あっさり火球を無力化してしまう。
「次回の購入の検討なんてしないでいいからね! あとまた私で試したら次こそ本気で怒るからね!」
「わかりました。『また面白い商品が出ていたら、私のために買ってきて』ですね」
「私の話の何を聞いたらそうなるのっ!!!!」
弾むような声で言われ、ヴィクトリアは思わず叫んだ。
◇
「陛下……。どうして私から逃げようとなさるのですか? 逃げないでください。逃げられたら、追いたくなってしまいます」
因みにその後、枕は実は夢の中に出てきた相手の願望をみせるということを知ってしまい、ヴィクトリアが三人の顔をまともに数日間見れなくなったせいで、不安になった(?)らしいルーファスやカーライルに、彼女が追いかけられたり追い込まれたりしたのは、また別の話である。
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