惑わし

玉城真紀

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追いかけっこ

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この時期の事、葉が生い茂っている訳ではないので「縄」がしゅるりしゅるりと木から木へと移動している様子が枝の隙間から見え隠れしている。俺はその動きを目で追っていた。意外に速い。まるで、蛇が猿の動きを習得したようだ。
「あんな木の上にいられちゃ捕まえられない。どうしたらいいんだ」
飯野と佐竹は、「縄」の後を必死になって追いかけている。あれではいつまで経っても捕まえることは出来ない。俺は暫く「縄」の動きをじっと観察していた。すると、ある事に気が付く。
「縄」は後藤と一体化し目的を果たしたはず、なのにこの町から出ようとせず大きくぐるぐると町の中を周っているだけなのだ。俺は自分の考えが正しいことを確認するため、もう一度「縄」の動きを見る。
「思った通りだ」
「縄」を追いかけている二人は、次第に疲れて来たのか次第に「縄」との距離が開いてきている。
俺は急いで「縄」がいる反対方向へ走って行く。同じところを周っているのなら先回りして捕まえようと思ったのだ。
木登りは得意ではないが、手頃な木を見つけ登る。「縄」に見つからないように影に隠れ待ち構えていた。
すると、シュル、シュル、シュルという音が近づいてくる。枝の上に立ち不安定な体勢ながらも木の影から「縄」の姿を確認する。「縄」は俺がいる事に気が付いていないのか、俺の方に木から木へと伝い真っ直ぐ向かって来た。
(よし!今だ!)
タイミングを見計らい、まさに「縄」の目の前に立ち手を伸ばそうとした時
(駄目‼)
何処からか叫ぶような声で誰かが言った。
「え・・・」
驚いた俺は、そのまま木から落ちてしまった。もちろん「縄」を捕まえることは出来ずに。
木から落ちたものの枯れ葉がある程度クッションになってくれたのか、痛かったが致命的な怪我はしなくて済んだ。すぐに周りを見渡し、先程聞いた声の主を探す。しかし、周りには誰もいない。
では、さっきの声は一体何だったのか。
飯野と佐竹が息を切らしながら、こちらに走って来る。
(この二人じゃないよな)
飯野は、俺を見つけ近くまで来るとその場にペタンと座り込むとぜーぜーと肩で息をしている。佐竹も飯野の隣に来て、座り込むかと思いきやその場に前のめりのまま、ばたんと倒れてしまった。
「おい!大丈夫か?しっかりしろ!」
俺は慌てて佐竹の側に近寄り、大きな体を揺する。
「あ~大丈夫。こいつ力はあるけど持久力はないんだ。ほっとけばそのうち目を覚ますから」
「・・・そうか」
「それにしても・・どうやったらいいんだ」
「やっぱり日引さんに来てもらおう。日引さんが唱える呪文みたいのが必要なんだろ?俺達じゃ無理なんだよ」
「ん~頼みたいのはやまやまなんだけどね」
二度も「縄」を逃がしてしまった張本人としては頼みずらいのだろう。でもこれじゃあ埒が明かない。
「俺、日引さんに頼んでくるよ」
「縄」の動向を見ながら俺は水島の家に向かった。
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