8 / 12
祖母の入院
しおりを挟む
「チリリリリりりり」
又兵衛の話が気になり、あれやこれやと考えていた時私の携帯が鳴った。画面を見ると母と表示されている。
「はい」
「あ、あんた早くこっちに戻りなさい」
「え?突然何?」
「実はね、お祖母ちゃん二か月前から体調が思わしくなくて入院していたの。さっき病院から連絡があってちょっと危ないらしいのよ」
母は、焦った様子で早口でしゃべる。
「お祖母ちゃんが⁉」
「そう。学校の方にはお母さんの方から連絡しておくから、直ぐに用意してこっちに来なさい。いいわね!」
そう言うと電話が切れた。
余りの突然の事に、直ぐに体が動かなかったが
「ぽん」
又兵衛の登場の音が聞こえたのをきっかけに急いで実家に帰る用意に取り掛かる。この時は、自分の事で精一杯だったので又兵衛が出たのかどうかは分からなかった。
話しかけても来なかったから、「急げ」という意味で鳴らしてくれたのかもしれない。
急いで鞄に財布と携帯を押し込みソレを持って急いで家を出る。
このまま瞬間移動出来ればいいのに。と何度も思いながら実家に向かう。
何とか地元に着き、お金はかかるがタクシーで母に聞いた病院まで向かう。
村には小さな診療所はあるが入院施設はないので、町の大きな病院にいるとのことだ。
タクシーから見える久しぶりの地元の景色だが、気持ちが落ち着かず感傷に浸る暇もない。病院に着き、受付でお祖母ちゃんの病室を調べてもらい部屋へ行く。
病院の消毒臭い匂いが強くなった病棟の廊下を歩いていると、目の前の部屋から母が出てきた。
「あ、お母さん」
「ああ良かった。結構早く着いたのね」
そう話す母の眼が真っ赤になっている。まるで泣いていたかのように。私は足元から冷たくなるのが分かった。
(まさか)
最悪な事を考えてしまう。
「あんたも最後お祖母ちゃんとお話ししなさい」
(生きてるんだ。良かった。でも・・・最後って)
私は荷物を母に預けると部屋へ入る。個室の部屋の窓際にベッドがあり、その上にお祖母ちゃんは寝ていた。点滴はしていたが、特に生命維持装置とかドラマで見るような機械に囲まれている訳ではなかった。
「お祖母ちゃん」
ベッドに近づきながら、目をつぶっている祖母に声を掛ける。私の声に気が付いた祖母は、ゆっくり眼を開け私の方を見た。
ショックだった。家を出てからたった一年しかたっていない。あんなに元気だった祖母は、やせこけた頬に力のない眼差し、唇は乾ききっているのか痛々しく荒れて血がにじんでいる。
「お祖母ちゃん・・・」
その次に続く言葉が出ない。
祖母は私をジッと見た後、骨ばった顔をゆっくり動かしにっこりと笑うと口を動かし始める。何かしゃべっているようだが、声が聞こえない。私は急いで祖母の口元へ耳を近づけ何を話しているのか聞き取ろうとした。
「・・・又兵衛さんは来たかい?」
「⁉」
予想外の言葉だった。
驚きすぎて言葉もなく祖母の顔を見る私に、またにっこりとほほ笑むとまた口を動かす。
急いで祖母の口元へ耳を近づけ話の続きを聞く。
「・・・その顔は来たようだね。祖母ちゃんこんなになるとは思っていなかったから、言わなかったんだけど・・やっぱりあの時話しとけば良かったよ」
その後、休み休み話した祖母の話はこんな事だった。
又兵衛の話が気になり、あれやこれやと考えていた時私の携帯が鳴った。画面を見ると母と表示されている。
「はい」
「あ、あんた早くこっちに戻りなさい」
「え?突然何?」
「実はね、お祖母ちゃん二か月前から体調が思わしくなくて入院していたの。さっき病院から連絡があってちょっと危ないらしいのよ」
母は、焦った様子で早口でしゃべる。
「お祖母ちゃんが⁉」
「そう。学校の方にはお母さんの方から連絡しておくから、直ぐに用意してこっちに来なさい。いいわね!」
そう言うと電話が切れた。
余りの突然の事に、直ぐに体が動かなかったが
「ぽん」
又兵衛の登場の音が聞こえたのをきっかけに急いで実家に帰る用意に取り掛かる。この時は、自分の事で精一杯だったので又兵衛が出たのかどうかは分からなかった。
話しかけても来なかったから、「急げ」という意味で鳴らしてくれたのかもしれない。
急いで鞄に財布と携帯を押し込みソレを持って急いで家を出る。
このまま瞬間移動出来ればいいのに。と何度も思いながら実家に向かう。
何とか地元に着き、お金はかかるがタクシーで母に聞いた病院まで向かう。
村には小さな診療所はあるが入院施設はないので、町の大きな病院にいるとのことだ。
タクシーから見える久しぶりの地元の景色だが、気持ちが落ち着かず感傷に浸る暇もない。病院に着き、受付でお祖母ちゃんの病室を調べてもらい部屋へ行く。
病院の消毒臭い匂いが強くなった病棟の廊下を歩いていると、目の前の部屋から母が出てきた。
「あ、お母さん」
「ああ良かった。結構早く着いたのね」
そう話す母の眼が真っ赤になっている。まるで泣いていたかのように。私は足元から冷たくなるのが分かった。
(まさか)
最悪な事を考えてしまう。
「あんたも最後お祖母ちゃんとお話ししなさい」
(生きてるんだ。良かった。でも・・・最後って)
私は荷物を母に預けると部屋へ入る。個室の部屋の窓際にベッドがあり、その上にお祖母ちゃんは寝ていた。点滴はしていたが、特に生命維持装置とかドラマで見るような機械に囲まれている訳ではなかった。
「お祖母ちゃん」
ベッドに近づきながら、目をつぶっている祖母に声を掛ける。私の声に気が付いた祖母は、ゆっくり眼を開け私の方を見た。
ショックだった。家を出てからたった一年しかたっていない。あんなに元気だった祖母は、やせこけた頬に力のない眼差し、唇は乾ききっているのか痛々しく荒れて血がにじんでいる。
「お祖母ちゃん・・・」
その次に続く言葉が出ない。
祖母は私をジッと見た後、骨ばった顔をゆっくり動かしにっこりと笑うと口を動かし始める。何かしゃべっているようだが、声が聞こえない。私は急いで祖母の口元へ耳を近づけ何を話しているのか聞き取ろうとした。
「・・・又兵衛さんは来たかい?」
「⁉」
予想外の言葉だった。
驚きすぎて言葉もなく祖母の顔を見る私に、またにっこりとほほ笑むとまた口を動かす。
急いで祖母の口元へ耳を近づけ話の続きを聞く。
「・・・その顔は来たようだね。祖母ちゃんこんなになるとは思っていなかったから、言わなかったんだけど・・やっぱりあの時話しとけば良かったよ」
その後、休み休み話した祖母の話はこんな事だった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
洒落にならない怖い話【短編集】
鍵谷端哉
ホラー
その「ゾワッ」は、あなたのすぐ隣にある。
意味が分かると凍りつく話から、理不尽に追い詰められる怪異まで。
隙間時間に読める短編ながら、読後の静寂が怖くなる。 洒落にならない実話風・創作ホラー短編集。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる