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祖母の入院
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「チリリリリりりり」
又兵衛の話が気になり、あれやこれやと考えていた時私の携帯が鳴った。画面を見ると母と表示されている。
「はい」
「あ、あんた早くこっちに戻りなさい」
「え?突然何?」
「実はね、お祖母ちゃん二か月前から体調が思わしくなくて入院していたの。さっき病院から連絡があってちょっと危ないらしいのよ」
母は、焦った様子で早口でしゃべる。
「お祖母ちゃんが⁉」
「そう。学校の方にはお母さんの方から連絡しておくから、直ぐに用意してこっちに来なさい。いいわね!」
そう言うと電話が切れた。
余りの突然の事に、直ぐに体が動かなかったが
「ぽん」
又兵衛の登場の音が聞こえたのをきっかけに急いで実家に帰る用意に取り掛かる。この時は、自分の事で精一杯だったので又兵衛が出たのかどうかは分からなかった。
話しかけても来なかったから、「急げ」という意味で鳴らしてくれたのかもしれない。
急いで鞄に財布と携帯を押し込みソレを持って急いで家を出る。
このまま瞬間移動出来ればいいのに。と何度も思いながら実家に向かう。
何とか地元に着き、お金はかかるがタクシーで母に聞いた病院まで向かう。
村には小さな診療所はあるが入院施設はないので、町の大きな病院にいるとのことだ。
タクシーから見える久しぶりの地元の景色だが、気持ちが落ち着かず感傷に浸る暇もない。病院に着き、受付でお祖母ちゃんの病室を調べてもらい部屋へ行く。
病院の消毒臭い匂いが強くなった病棟の廊下を歩いていると、目の前の部屋から母が出てきた。
「あ、お母さん」
「ああ良かった。結構早く着いたのね」
そう話す母の眼が真っ赤になっている。まるで泣いていたかのように。私は足元から冷たくなるのが分かった。
(まさか)
最悪な事を考えてしまう。
「あんたも最後お祖母ちゃんとお話ししなさい」
(生きてるんだ。良かった。でも・・・最後って)
私は荷物を母に預けると部屋へ入る。個室の部屋の窓際にベッドがあり、その上にお祖母ちゃんは寝ていた。点滴はしていたが、特に生命維持装置とかドラマで見るような機械に囲まれている訳ではなかった。
「お祖母ちゃん」
ベッドに近づきながら、目をつぶっている祖母に声を掛ける。私の声に気が付いた祖母は、ゆっくり眼を開け私の方を見た。
ショックだった。家を出てからたった一年しかたっていない。あんなに元気だった祖母は、やせこけた頬に力のない眼差し、唇は乾ききっているのか痛々しく荒れて血がにじんでいる。
「お祖母ちゃん・・・」
その次に続く言葉が出ない。
祖母は私をジッと見た後、骨ばった顔をゆっくり動かしにっこりと笑うと口を動かし始める。何かしゃべっているようだが、声が聞こえない。私は急いで祖母の口元へ耳を近づけ何を話しているのか聞き取ろうとした。
「・・・又兵衛さんは来たかい?」
「⁉」
予想外の言葉だった。
驚きすぎて言葉もなく祖母の顔を見る私に、またにっこりとほほ笑むとまた口を動かす。
急いで祖母の口元へ耳を近づけ話の続きを聞く。
「・・・その顔は来たようだね。祖母ちゃんこんなになるとは思っていなかったから、言わなかったんだけど・・やっぱりあの時話しとけば良かったよ」
その後、休み休み話した祖母の話はこんな事だった。
又兵衛の話が気になり、あれやこれやと考えていた時私の携帯が鳴った。画面を見ると母と表示されている。
「はい」
「あ、あんた早くこっちに戻りなさい」
「え?突然何?」
「実はね、お祖母ちゃん二か月前から体調が思わしくなくて入院していたの。さっき病院から連絡があってちょっと危ないらしいのよ」
母は、焦った様子で早口でしゃべる。
「お祖母ちゃんが⁉」
「そう。学校の方にはお母さんの方から連絡しておくから、直ぐに用意してこっちに来なさい。いいわね!」
そう言うと電話が切れた。
余りの突然の事に、直ぐに体が動かなかったが
「ぽん」
又兵衛の登場の音が聞こえたのをきっかけに急いで実家に帰る用意に取り掛かる。この時は、自分の事で精一杯だったので又兵衛が出たのかどうかは分からなかった。
話しかけても来なかったから、「急げ」という意味で鳴らしてくれたのかもしれない。
急いで鞄に財布と携帯を押し込みソレを持って急いで家を出る。
このまま瞬間移動出来ればいいのに。と何度も思いながら実家に向かう。
何とか地元に着き、お金はかかるがタクシーで母に聞いた病院まで向かう。
村には小さな診療所はあるが入院施設はないので、町の大きな病院にいるとのことだ。
タクシーから見える久しぶりの地元の景色だが、気持ちが落ち着かず感傷に浸る暇もない。病院に着き、受付でお祖母ちゃんの病室を調べてもらい部屋へ行く。
病院の消毒臭い匂いが強くなった病棟の廊下を歩いていると、目の前の部屋から母が出てきた。
「あ、お母さん」
「ああ良かった。結構早く着いたのね」
そう話す母の眼が真っ赤になっている。まるで泣いていたかのように。私は足元から冷たくなるのが分かった。
(まさか)
最悪な事を考えてしまう。
「あんたも最後お祖母ちゃんとお話ししなさい」
(生きてるんだ。良かった。でも・・・最後って)
私は荷物を母に預けると部屋へ入る。個室の部屋の窓際にベッドがあり、その上にお祖母ちゃんは寝ていた。点滴はしていたが、特に生命維持装置とかドラマで見るような機械に囲まれている訳ではなかった。
「お祖母ちゃん」
ベッドに近づきながら、目をつぶっている祖母に声を掛ける。私の声に気が付いた祖母は、ゆっくり眼を開け私の方を見た。
ショックだった。家を出てからたった一年しかたっていない。あんなに元気だった祖母は、やせこけた頬に力のない眼差し、唇は乾ききっているのか痛々しく荒れて血がにじんでいる。
「お祖母ちゃん・・・」
その次に続く言葉が出ない。
祖母は私をジッと見た後、骨ばった顔をゆっくり動かしにっこりと笑うと口を動かし始める。何かしゃべっているようだが、声が聞こえない。私は急いで祖母の口元へ耳を近づけ何を話しているのか聞き取ろうとした。
「・・・又兵衛さんは来たかい?」
「⁉」
予想外の言葉だった。
驚きすぎて言葉もなく祖母の顔を見る私に、またにっこりとほほ笑むとまた口を動かす。
急いで祖母の口元へ耳を近づけ話の続きを聞く。
「・・・その顔は来たようだね。祖母ちゃんこんなになるとは思っていなかったから、言わなかったんだけど・・やっぱりあの時話しとけば良かったよ」
その後、休み休み話した祖母の話はこんな事だった。
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