疑心暗鬼

玉城真紀

文字の大きさ
9 / 12

死に際の疑問

しおりを挟む
お祖母ちゃんのご先祖の話として伝えられているものらしい。

遠いご先祖に侍がいたという。
ある日、その侍はトメという女中に恋心を持つ。しかしトメは身分の違いから侍の誘いを断り続けた。だが、侍の地道なアピールが功を奏したのかトメと恋仲になり人目を忍んで夜な夜な会っていたそうだ。

しかしそんな幸せも長くは続かなかった。
侍の友人が気に入った娘がいると言ってきた。(ちょうどあの店から出てくる娘なんだ)と言うので侍も友人を冷かしながらも店の出入口を建物の影から見ていた。(ほら!あの娘だ)友人が指さす方を見て侍は驚いた。友人が気に入った娘というのはトメだったのだ。侍は友人に対し腹が立ったが、友人にしてみれば、侍とトメがもう恋仲になっているなんて事とは知らなかったのだ。

侍は迷った。
トメも大切だし友人も大切だ。どちらかを選ぶという事なんて出来ない。一番の解決は自分が身を引く事。そうすれば万事解決する。
夜も眠れず悩み続けた。

私はそこまでの話を祖母から聞いた時、又兵衛が言っていたことに似てると思った。
では、又兵衛がその侍なのか・・・

話は続く。
悩み続けて、食事もろくに取れず日に日にやせ衰えていく侍。周りが心配して医者に見せるが原因不明と家族は言われるばかり。
ついに、床に臥せってしまった。

そんなある日。
心配した友人が見舞いに来た。
侍は複雑な気持ちで見舞いに来てくれた友人と話をしていると、友人が少し言いにくそうに切り出した。
(実は今度祝言を挙げる事になってな。お前にも来てほしいから早く良くなってくれ)
それを聞いた侍はそれはそれは喜んだ。
体を起こし、骨が浮き出た手で友人の手を掴み(良かったな)と泣いて喜んだ。
なぜなら、今まで悩んできた事が一気に解決されたと感じたからだ。
友人も嬉しそうに侍の手を握り返し
(実は今連れて来てるんだ。会ってやってくれないか)
侍は二つ返事で受け入れる。
友人の(おい)という言葉で座敷に入って来た女性はトメだった。

侍の心はその時に壊れた。

自分と会っていた時より綺麗な着物に身を包み、恥じらいながら入って来たトメ。友人に寄り添うように音もなく座り深々と頭を下げ
(初めまして・・・)
その後の挨拶は続かなかった。
三つ指を付き頭を垂れた女の頭を、侍ははねたのだ。
ホースから水が噴き出すかのように血が勢いよく出る。隣にいた友人は何が起こったのか理解できず、これから夫婦めおととなるはずだった女の転がった首を見つめる。
(裏切者!)
と吐き捨てると、続けざまに侍は友人の首もはねた。
勿論、家中大騒ぎとなり侍は暴れまわるところを取り押さえられる。
役人?(今で言う警察だろうか)が呼ばれ連れていかれた。
侍は打ち首を言い渡される。昔は打ち首をする時、人々の前で行う公開処刑をしていたようで侍も例にもれず公開処刑に。
町の人達の好奇の眼が降り注ぐ中、筵の上に正座をさせられ手は縄で後ろ手に縛られる。頭を垂れ、打ち首執行人というのだろうか、その人が持つ刀が振り上げられた時だ。

「又兵衛さん!」

自分を呼ぶ懐かしい声。
侍は咄嗟に声のする方を向いた。しかし顔には白い布がつけられているので声の主を確認することは出来ない。声を聞きそれに侍が反応し動いたことで、振り下ろされた刀は侍の後頭部から後ろの首をそぐように切られてしまった。しかしそのお陰で顔についていた白い布がはらりと落ちた。激痛の中、何度も自分の名を呼ぶ声の方を見る。そこには、自分がこの世で一番愛した人。自分の手で首を撥ねたはずの人がいつものみすぼらしい着物を着て涙を流しながら策にしがみつきながら自分の名を呼んでいる。

「え?なん・・で」

その答えは出なかった。
侍の視界はぐるりと回り、青い空が見えた。
そして・・・何も見えなくなった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様を書いたストーリーです。

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...