26 / 44
居酒屋にて
しおりを挟む
先程大将が水を入れたやかんが沸騰してきた。カンカンと音をさせ上を向いた象の鼻のような出口から蒸気を吹き出している。油と埃で煤けた壁に掛かっている時計は、いつしか深夜2時30分を指していた。
隣りの男の前には、いつの間にか徳利三本とお銚子が置かれている。綺麗に骨だけになったほっけを名残惜しそうに箸でつついていた男は、カチャリと箸を置くと
「なるほど、まさしく奇祭ですね。私も祭りが好きなので、本で色々調べた事がありますが、そんな祭りは聞いた事がない」
「ええ。私もそう思います。あの後、達郎さんは全ての家を周り終え、橋に向かいました」
「ああ、百目鬼旅館のご主人が言っていた赤い橋ですね?」
「はい。未帰橋です。太鼓橋のようになっていて、川幅がそれほど広くない川に架かる橋です。そうなると、渡り始めはきつい傾斜を歩かなくてはいけない。達郎さんは怖かったんでしょう。猫のように四つん這いになりながら必死に橋の真ん中まで行きました」
「本当に子供みたいですね。一体達郎さんに何が起きたんでしょう」
「分かりません・・・橋の真ん中まで来た達郎さんを、俺は離れた所から見守っていました。勿論、梨花ちゃんも少し離れたところにいましたよ。川の水は雨のせいで増水してましたし、橋の手すりも高さ1メートルもない。丁度、達郎さんの腰の辺りでしたから、落ちてしまわないかとヒヤヒヤして見てました」
知らず知らず、自分の声が震えている。視界が歪み鼻の奥がつ~んと痛くなってくる。
「ゆっくりでいいですよ」
男は、俺を憐れむような目で見ながら優しく言う。
「・・・・達郎さんは、背負っていたモノを降ろしました。そこではっきりとソレが何なのか分かったんです」
「何だったんですか?」
「地蔵です。木で出来た地蔵です。頭が半分欠けた地蔵。達郎さんは、背中から地蔵を降ろすと・・・」
そこまで話した時、瞬きをした。何故か、俺の両目からポタリと大粒の涙が落ちた。
隣りの男の前には、いつの間にか徳利三本とお銚子が置かれている。綺麗に骨だけになったほっけを名残惜しそうに箸でつついていた男は、カチャリと箸を置くと
「なるほど、まさしく奇祭ですね。私も祭りが好きなので、本で色々調べた事がありますが、そんな祭りは聞いた事がない」
「ええ。私もそう思います。あの後、達郎さんは全ての家を周り終え、橋に向かいました」
「ああ、百目鬼旅館のご主人が言っていた赤い橋ですね?」
「はい。未帰橋です。太鼓橋のようになっていて、川幅がそれほど広くない川に架かる橋です。そうなると、渡り始めはきつい傾斜を歩かなくてはいけない。達郎さんは怖かったんでしょう。猫のように四つん這いになりながら必死に橋の真ん中まで行きました」
「本当に子供みたいですね。一体達郎さんに何が起きたんでしょう」
「分かりません・・・橋の真ん中まで来た達郎さんを、俺は離れた所から見守っていました。勿論、梨花ちゃんも少し離れたところにいましたよ。川の水は雨のせいで増水してましたし、橋の手すりも高さ1メートルもない。丁度、達郎さんの腰の辺りでしたから、落ちてしまわないかとヒヤヒヤして見てました」
知らず知らず、自分の声が震えている。視界が歪み鼻の奥がつ~んと痛くなってくる。
「ゆっくりでいいですよ」
男は、俺を憐れむような目で見ながら優しく言う。
「・・・・達郎さんは、背負っていたモノを降ろしました。そこではっきりとソレが何なのか分かったんです」
「何だったんですか?」
「地蔵です。木で出来た地蔵です。頭が半分欠けた地蔵。達郎さんは、背中から地蔵を降ろすと・・・」
そこまで話した時、瞬きをした。何故か、俺の両目からポタリと大粒の涙が落ちた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる