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落ちる者
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「ミ・・ミヨ。達朗さん大丈夫かな」
「にゃふ」
「今の達郎さんはおかしくなってる。子供になったかのようなんだ。もしあそこから落ちたりでもしたら・・死んじまうぞ」
俺は、達郎の下を流れる川へ視線を移す。振り続けた雨のせいでどうどうと流れる川。高野と一緒に来た時に見た川は、水量はそれ程多くなくゆるゆると優しく流れていた。それが雨という味方をつけると、横となく縦となく川岸にぶつかり泡立てながら激しい流れを見せる。
「地蔵降ろしたけど、アレをどうするんだ?」
バケツをひっくり返したような土砂降りの雨は視界を煙のように遮る。橋の袂から少し離れた場所に梨花がいる。達郎の様子をジッと見ている。俺はその二人が視界に入る離れた場所から、様子をうかがっていた。
気のせいか、川の側に来た途端何かが腐ったような匂いがしている。さっきはこんな臭いしなかったのに。
地蔵を抱えた達郎は、川の中へ落とそうとした。
「あれは?」
いつの間にか、達郎の隣に誰かが立っている。さっきまで誰もいなかったところに煙のように現れた人物。
ルナだ。
「ルナ・・?」
雨で視界が悪い中でも、ルナが着ている赤い着物と黄色の帯がハッキリと見える。
マスクがやけに白く見え、表情まではよく分からないが俺には笑っているように見えた。
ルナは達郎を見ているのではなく、達郎が持っている地蔵の方を見ているようだ。達郎は、隣にルナがいることに気が付いていないようで、手にしていた地蔵を川へと落とした。
太鼓橋なので、橋の真ん中が盛り上がっている。そこから川までの距離はおよそ1m30から2メートルぐらい。その頂点に立つ達郎が落とした地蔵はゆっくりと川へと落ちていく。まるでスローモーションのように落ちていくその地蔵が・・・・梨花の姿へと変わる。
「あっ!!」
思わず俺は大きな声を出した。
ゆっくりとスローモーションのように川に落ちていく梨花。梨花の二つのおさげや着物の裾が、川から立ち上る風に柔らかくあおられているのまでが分かる。
「た、大変だ!」
俺は、そう言ったと同時に走り出していた。さしていた傘を放り投げミヨを抱いたままがむしゃらに橋に向かって走る。
「にゃ、にゃ、にゃ」
驚いたミヨは、俺の走りに合わせて短く鳴く。
橋に着くまでの間に、下着までびしょ濡れになるがかまわない。
この時の俺はおかしかったのかもしれない。
転がるように慌てて川に向かって走っている時、その手前で達郎を見ている梨花の姿を俺は見ている。見ているのに、梨花が川に落ちたと思い走っていたのだ。
でも、あれは間違いなく梨花だった。
何処かで違和感を感じながらも走る俺の耳に、遠くの方でどぉ~んどぉ~んと太鼓が鳴る音が聞こえてきた。
「にゃふ」
「今の達郎さんはおかしくなってる。子供になったかのようなんだ。もしあそこから落ちたりでもしたら・・死んじまうぞ」
俺は、達郎の下を流れる川へ視線を移す。振り続けた雨のせいでどうどうと流れる川。高野と一緒に来た時に見た川は、水量はそれ程多くなくゆるゆると優しく流れていた。それが雨という味方をつけると、横となく縦となく川岸にぶつかり泡立てながら激しい流れを見せる。
「地蔵降ろしたけど、アレをどうするんだ?」
バケツをひっくり返したような土砂降りの雨は視界を煙のように遮る。橋の袂から少し離れた場所に梨花がいる。達郎の様子をジッと見ている。俺はその二人が視界に入る離れた場所から、様子をうかがっていた。
気のせいか、川の側に来た途端何かが腐ったような匂いがしている。さっきはこんな臭いしなかったのに。
地蔵を抱えた達郎は、川の中へ落とそうとした。
「あれは?」
いつの間にか、達郎の隣に誰かが立っている。さっきまで誰もいなかったところに煙のように現れた人物。
ルナだ。
「ルナ・・?」
雨で視界が悪い中でも、ルナが着ている赤い着物と黄色の帯がハッキリと見える。
マスクがやけに白く見え、表情まではよく分からないが俺には笑っているように見えた。
ルナは達郎を見ているのではなく、達郎が持っている地蔵の方を見ているようだ。達郎は、隣にルナがいることに気が付いていないようで、手にしていた地蔵を川へと落とした。
太鼓橋なので、橋の真ん中が盛り上がっている。そこから川までの距離はおよそ1m30から2メートルぐらい。その頂点に立つ達郎が落とした地蔵はゆっくりと川へと落ちていく。まるでスローモーションのように落ちていくその地蔵が・・・・梨花の姿へと変わる。
「あっ!!」
思わず俺は大きな声を出した。
ゆっくりとスローモーションのように川に落ちていく梨花。梨花の二つのおさげや着物の裾が、川から立ち上る風に柔らかくあおられているのまでが分かる。
「た、大変だ!」
俺は、そう言ったと同時に走り出していた。さしていた傘を放り投げミヨを抱いたままがむしゃらに橋に向かって走る。
「にゃ、にゃ、にゃ」
驚いたミヨは、俺の走りに合わせて短く鳴く。
橋に着くまでの間に、下着までびしょ濡れになるがかまわない。
この時の俺はおかしかったのかもしれない。
転がるように慌てて川に向かって走っている時、その手前で達郎を見ている梨花の姿を俺は見ている。見ているのに、梨花が川に落ちたと思い走っていたのだ。
でも、あれは間違いなく梨花だった。
何処かで違和感を感じながらも走る俺の耳に、遠くの方でどぉ~んどぉ~んと太鼓が鳴る音が聞こえてきた。
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