秘密

玉城真紀

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俺は、昼食を食べて行けという達郎の好意を丁重にお断りし橋の方へと向かった。
「ミヨ。ミヨは旅館の方へ戻ってるか?疲れただろう?」
腕の中にいるミヨに話しかける。
ミヨは、馬鹿なこと言うんじゃないよ。ついていくんだ。と言うように「にゃふ」と勢いよく鳴く。
「そうか。お前と俺はいつも一緒だもんな」
ミヨの頬に自分の頬を摺り寄せた。ミヨの温かい体温が、冷めきった俺の心を温めてくれる。
ミヨがうちに来てから俺は色々と変わった。
劇的な変化と言う訳ではないが、何事に関しても無関心だった俺が、様々な事に関心を持ち行動することが出来る様になった。ここに来れたのも、ミヨが一緒と言うのもデカい。まさに、猫と侮ることなかれである。彼女と言うのも半ば本気で、ミヨが俺の中でとても大切な存在として大きくなっている。

あれほど勢い良く降っていた雨が嘘のように上がり、灰色の陰気な雲がゆっくりと西に流れ晴れ間が出てきた。至る所に出来た水たまりをよけながら未帰橋に向かって歩く。待ってましたとばかりに蝉達の声が山の方から聞こえてくる。村全体を視野に見ると、刈り入れが近い稲穂は柔らかく揺れ、淀んだものを雨で流したようにキラキラしている。
T字路にぶつかり古里川沿いに歩く。まだ川の勢いは衰えず茶色く濁った水が川幅を広くし、どうどうと流れている。その流れに圧倒されながら未帰橋へと歩いていく。
達郎が地蔵を川に投げ込んだ時、間違いなくあの地蔵は梨花の姿に変わった。足から落ちていく梨花。川からの風にあおられて着物の裾がめくれ、細く白い足が露になった。両腕は自分の身体を抱くようにしており、俯くようにして落ちて行った梨花。ドボンと音をたて川の中に吸い込まれるまで表情一つ変えなかった梨花。
「あれは一体何だったんだろうな」
白昼夢でも見たのだろうか。それとも、これも地蔵の呪いなのだろうか。自分が見たものは本当に現実だったのだろうか。混乱と不思議で、自分が自分でないような気分にさえなってしまう。
そんな事を考えているうちに未帰橋に着いた。
太鼓橋は上り始めの傾斜がきついので、滑らないように階段みたいになっている。朱色と言うより、「赤」それも毒々しい赤。汚れが激しい雨で流れ落ちたのか、その赤は太陽の光を帯びてペンキ塗りたてのようにぎらぎらと光っている。
「さてと、ミヨ。下りられるか?橋を色々見てみるから」
「にゃふ」
俺の腕からひらりと音もなく地面に降りたミヨは、軽い足取りで先に橋を渡りだした。
俺は小さく息を吐くと身をかがめ、目を皿にして橋の隅々から見ていく。この橋を架けてどのくらい経つのかは知らないが、多少の軋みだけでヒビも腐っている部分もなく頑丈で立派な橋だ。流石、村の人達が誇る橋。
トキ子は、橋を見ればすべてが分かると言った。一体何を見れば分かるというのか。
俺は、事件が起こった後の鑑識班のように腰をかがめ、橋の欄干から床版に至る所まで舐めるように見ていく。

どのくらいの時間が経ったろうか。首筋が太陽の光を浴び、じりじりと焼きじっとりと体全体に汗をかき始めた頃。床版を這うようにしている俺の頭の上でミヨが「にゃふ」と鳴いた。顔を上げると、太陽と青空を背にしたミヨが欄干の上に座りこちらを見下ろしている。逆光になっているため表情は見えないが、後光が差したように見えるミヨは輪郭がゆがみ黒いだるまのように見えた。
「はぁ~。何もないな」
俺は立ち上がり固まった背中と腰をうん!と伸ばすと、橋の中央まで歩いていく。ミヨは俺の歩みに合わせて細い欄干を器用に歩き出す。
「おいおい。落ちるなよ。こんな流れが早いんだ。あっという間に飲み込まれちゃうぞ」
欄干に手をつき俺は川を覗き込む。
静かで穏やかな川なら、俺の顔やシルエットぐらい映るのだろうが茶色く濁り流れの早い川は、俺の顔や輪郭さえ映さない。上流から連れてきた枝や葉っぱが猛スピードで流れていく。あれらは何処に流れていくのだろう。
俺は、自分の足元で勢いよく流れていく川の流れから目が離せなくなっていた。
「え?・・・」
川の中から、茶色く濁った濁流の勢いなど関係なく、ゆっくりと顔が出てきた。泳げない子供が水に顔をつけたのを、下から見ている様にゆっくりと川の中から出てきた。
「・・・・ルナ?」
ルナだ。ショートの髪がゆらゆらと水に揺れ、黒目がちの目で俺をジッと見ている。大きな白いマスクがやけに不気味に見える。
「ルナ!」
俺は欄干から体を乗り出しルナを呼ぶ。
ルナは表情一つ変えず、こちらをジッと見ている。
「え?」
ルナの周りにまた一つ顔が出てきた。見た事のない子供の顔。それをきっかけに、ポカリポカリといくつもの顔が浮かんでくる。頬が赤い男の子。切れ長の目をした女の子。太い眉が特徴的な女の子。やたら唇が厚い男の等々・・・・
いくつもの子供の顔がルナを中心に浮かび、それらの小さな目は全て俺をしっかりと捉えている。

「あ・・・あ・・・・」
恐ろしさで体が震え、体中からはねっとりとした嫌な汗が吹き出し欄干を掴む手に力が入る。足は小刻みに震え自分が今立っているのか座っているのか分からない。顔から流れた汗がぽたりぽたりと流れ落ち、川から顔を出す子供の顔に落ちる。
感情のない子供達の顔を、目玉だけを動かし一人一人見ていく。
「あっ!」
俺は驚き、ある一人の子供の顔に目を止め息が止まりそうな程驚いた。
度の強い眼鏡をかけ、ぷっくりとした頬にやけに薄い上唇。眼鏡の奥の目でしっかり俺を見ているその子は・・梨花だ。
「なんで?・・・どうして?・・・」
梨花は家にいるはず。今朝、御地家の子祭りに参加し、疲れて家で眠ってるのではなかったか。幻?幻覚?幻影?幻想・・・似たような意味の言葉の羅列が頭をよぎる。
力強く欄干を握っていた片手を引きはがし目をこすってみる。
何度見なおしても、梨花だ。
その時ふと思った。
最後に俺が梨花の姿を見たのは、橋の所でだ。その後は、達郎が川に投げたものが梨花の姿に変わり・・・
その後、梨花の姿は見ていない。てっきり、家にいるものだと思っていたが違うのか?どういう事なんだ?この子達は何なんだ?
恐ろしさと混乱で、夢かうつつか分からなくなってくる。
分かっているのは、こんな荒れ狂う川の中から顔だけ出すなんてことが出来るわけないと言う事。と言う事は、この子達は生きてる子供達ではないと言う事だ。そして俺は、ここから早く逃げ出したいと思っていること・・

(どんぶらり~どんぶらり~。今宵のコトリのご機嫌は~・・・)

身体がびくりと跳ねる。
川に浮かぶ子供達の顔が一斉に歌いだしたのだ。皆、一様に俺の方に視線を向けたまま口を大きく動かし歌う。茶色の川の水が口や目の中に入るのもお構いなしに、俺をじっと見たまま歌っている。
余りの異様な光景に声も出ず、ガチガチと歯が鳴る。全身の震えが酷くなりねっとりとかいていた汗が一気に引き、冷水を被ったかのように体が冷たくなった。

(良いか悪いか誰が知る~サイコロ振って怖い夜明けがやってくる~・・・)

聞きたくない。
耳を塞ぎ逃げだしたい。でも、身体が動かず言う事を聞かない。喉がひりつき「ひゅ~ひゅ~」という笛のような音が漏れる。
すると、子供達の顔の横から小さな手がにゅっと出てきた。その手は、それぞれの両目を覆い口を「お」の形にすると

(今度の出番は・・・)

「にゃ~~~~おう~~ん」
突然、雄たけびにも似た鳴き声が俺のすぐ近くで聞こえた。それは、耳をつんざく程の大きな鳴き声。スピーカーのすぐ近くに耳を寄せたぐらいの、鼓膜にダイレクトにぶつかる鳴き声だった。
「わっ!!!」
咄嗟に目をつぶり両耳を塞ぐ。
キィ~~ンという耳鳴りが耳の奥で鳴っている。耳が痛い。頭も痛い。脳みそに音がぶつかり揺れたのではないかと思う程の衝撃が、俺の耳と頭に衝撃を与える。
何だ・・・ミヨ?・・
まだ耳鳴りがやまない俺は、薄目を開け欄干に座っているミヨの方を見た。
ミヨは俺を見ていた。
灰色がかった瞳を大きく開き、垂れた両耳をピンと立たせ見ている。
「ミ・・ミヨ?」
俺がそう言った時だ。

(あ、猫ちゃんだ!)

キ~ンという耳鳴りと共に、無邪気な子供の高い声が聞こえる。
川の方に目を移すと、梨花が両目から手を離し嬉しそうにミヨを見ている。

(ミヨちゃん!ミヨちゃん!)

梨花は嬉しそうにミヨの名前を呼ぶ。
初めて会った時のように、顔をクシャリとさせとても嬉しそうに笑って。
その声につられたかのように、周りの子供達が両目から手を避けると、ミヨの方を一斉にギョロリと見て口を「お」のままにこう言った。

(今年の出番はミヨだ!)

ハッとした俺は、咄嗟にミヨを片腕で引き寄せ抱く。
その瞬間、川の中から無数の長い手が風を切るようにしゅるんと伸びてきた。
いくつものその手は、ミヨの耳や前足に後ろ脚、背中や腹、尻尾にいたるまで所かまわずむんずと掴んだ。
「あっ!!!」
あっという間だった。
ミヨは「ぎゃん」と喉がつぶれたような苦し気な鳴き声を出すと、俺の腕の中から無数の手によって物凄い速さで川の中へと引きずり込まれていった。
「ミヨ!!ミヨ!!ちくしょう!!」
俺は欄干を飛び越えそのまま川の中へと飛び込む。
それ程の深さはないと思っていた。
確かめた訳ではないが、高野と来た時に優しく流れる川の底の丸い石を見ていたから、それほど深くないと高を括っていた。
しかし、今俺が飛び込んだ川は身長175㎝ある俺が一直線にドボンと頭まで入る。足を延ばし地面を探すが見つからない。川の川底が全て平坦な訳がないのぐらいは知っている。偶々深い場所なのかもしれない。俺は無我夢中で両腕を動かしミヨを探す。目を開けてみようにも、茶色く濁った川の中は何も見えず目に痛みが走る。
「ぷはぁっ!!ミヨ!ミヨ!」
川の水面に顔を出し辺りを見回すが、ミヨの姿は勿論、さっきまであった子供達の顔も見当たらない。
「くそっ!!」
俺はもう一度川の中に潜り、両腕両足に全神経を張り巡らせミヨを探す。川の流れが速く思うように手足を動かせないが、死に物狂いで流れに逆らいながら潜り探す。途中何かを掴み、水面へと顔を出し確かめるが、それは枯れ枝だったり蔓。あっという間に川下の方へと流される体を何とか川岸に上げ、ミヨの姿がないのを確認すると橋まで戻り潜る。
流されたのか・・それともどこか深い淵があり、そこに入ってしまったか・・
俺は諦めずに何度も潜った。何度も何度も・・流されては戻り潜る。ザラザラとした川の水を何度も飲み、目の痛みに耐えながらも何度も潜った。
「ちくしょう!」
水面に顔を出しては、幾度となく同じ言葉を吐き捨てまた潜る。川の水は冷たく、身体が冷え次第に指先の感覚が鈍くなってくる。
何十回と潜ったその時だった。
俺の手に、今までとは違う感触の何かが触った。柔らかい。ミヨか?安堵と絶望の気持ちが入り混じる。
俺は急いでソレを掴み抱きかかえるようにすると、川から顔を出した。
「はぁはぁはぁ・・ミヨ!!」
川底から手にしたそれを見る。
「え・・・」
それは着物だった。
俺は慌てて川岸まで行くと、土手に上り着物を広げてみた。
着物には、思い思いに泳ぐ小さな金魚が描かれている。帯はなく、着物に絡まるように帯紐が巻かれていた。着ていた時は真っ赤な色だっただろう赤も黒ずみ、緑がかってぬるぬるとしている。
俺は、この着物を着て梨花の家に夜中訪ねてきたルナを思い出した。この着物はルナのものだったのか。影来神社にある日本人形もこの着物と同じ着物を着ている。と言う事は、あの日本人形はルナ・・・
「これは・・?」
帯紐にかろうじて引っかかっている巾着袋を見つけた。
触っただけでも崩れてしまいそうな巾着をそっと開けてみる。中から出てきたのは帽子だ。
とても細い毛糸で編まれた帽子。至る所にカビが繁殖しており元の色が分からないくらい黒ずんだいる。
「もしかして、これがルナが探していた帽子か?」
ぽたぽたと髪の毛からしずくを垂らしながら、手のひらにある帽子を見ていた時
「見つけてくれたんですね」
突然頭の上から声が降ってきた。
「っ!!」

勢いよく顔を上げると、そこにはルナが立っていた。
「ルナ!!」
「ふふふ。何でそんなに驚いてるんですか?」
「え。何でって・・・」
「ふふふ」
マスクをしているので口元が分からないが、恐らく満面の笑みを浮かべている。可愛らしく首を傾げたので、ショートの髪がさらりと流れた。その髪を見て
「さっき、川の中に・・」
「忘れてませんか?私はこの世にはいませんって事」
「あ・・・」
忘れてた。拝み屋一族は滅んだと聞いていたのに・・
「探していた帽子、見つけてくれたんですね」
そう言うとルナは、愛おしそうに自分の手の中にある帽子を見た。
「え?え?え?」
まだ帽子は俺が持っていたはず。ルナには渡してない。なのに、ルナの手の中には帽子が握られている。それに、あれほどカビで黒ずんでいた帽子が、新品のように鮮やかな赤色をしている。
「?????」
「この帽子は、お祖母ちゃんが作った物。とても大切にしていたそうです。だから私は探していたんです」
「大切にしていたそう?って、それはルナの帽子なんだろう?」
「私のではないですよ?いつ、私の帽子だと言いました?」
「え・・・」
確かに、自分の帽子だとは言ってない。俺が勝手にそう思い込んだんだ。
「じゃあそれは・・・」
「本当に人は弱い生き物ですよね。そう思いませんか?」
俺を見たルナの目は潤んでいた。
「え?」
突然の話の飛躍に、咄嗟に俺の頭はついていけない。
「見たい、知りたい、聞きたい。行きたい。自分の知らないことに対して積極的になれるのはとてもいいことですが、時にそれは良くない事を招く事もあります。見なければよかった。知らなければよかった。聞かなければよかった。そういう結果を招く事に。貴方がそうですよね?どんな声が聞こえたとしても、影来神社に行かなければ良かった。行ってしまったがために、お友達はあんな事になり、あなた自身にも災いが降りかかる。でも、そこで辞めとけばよかったんです。私がお守りしますと言っているんだから、そこでね」
「だからそれは・・」
「分かりますよ。自分自身で確かめたい。私が守ると言っても信用できるのかどうか分からない。そんな気持ちからこの村に来たんですよね?でも結果、来て良かったですか?それとも来なければ良かったですか?」
「俺は・・・」
正直分からなかった。御地家の子祭りに参加したのはいいが、祭りの本当の意味はまだ分からないし、影来神社の事もまだだ。
ルナは、長い睫毛をそっと閉じ何やら考えている様子だったが、直ぐに顔を上げ満面の笑みを俺に見せると
「あの猫ちゃんの事はお悔やみ申し上げます。でも大丈夫ですよ。貴方次第では会えますから」
「は?そうだ!!ミヨ!おい!ミヨは何処なんだ?」
俺はルナの腕を掴もうとしたが、そこには何もなくルナの姿は蜃気楼の様にユラユラと消えてしまった。
「・・・貴方次第って何なんだよ」
荒れ狂う川の音と蝉の声がやけに大きく聞こえてきた。












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