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成仏
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「さて、今日は何をしようかね」
今日やることを考えながら、朝の洗濯や掃除を済ませる。一通り済ませるといつものように一服しようとコーヒーを淹れカップを持ち茶の間に座る。テレビをつけ朝のニュースを見ながらコーヒーを飲む。
「・・・・・・ん?・・・・・・これ飲めるんだ!」
普段やっている習慣と言うのは恐ろしいものだ。死んでいると分かっていながらも、生きていた時と同じ行動をしてしまった。私はまたコーヒーを一口飲む。
「味がしないね」
死んだことがないから知らなかったけど、死後の世界はこういう物なのか。
「ま、物が食べれるのは嬉しいけど、味がしないなら食べる気しないね」
面倒くさいので、あまり深く考えないことにした。テレビを消し、私はあの女子高生の所に行こうと思い立ち二階の窓から飛び出した。私の事を見ることが出来る唯一の子だ。
「まさか。自殺してないだろうね」
フワフワと飛びながら、屋上で話をしていた時の女の顔を思い出していた。相変わらず綿毛のようなスピードで飛んでいると、学校が見えてきた。
「お、見えた見えた」
私は、学校の校舎に近づき一つ一つ窓を覗いて回る。中では、授業中らしく制服を着た生徒達が机に座りノートをとっている。
「懐かしいねぇ」
自分が大昔、学生だった頃と重ねながら見ていると、ある教室の窓際にあの女がいるのが見えた。
「あ。いたいた」
私はその女の側に行き、窓越しから中を覗いてみる。ノートに一生懸命何かを書いているので感心しながら覗き込むと、ノートいっぱいに「死ね」「うざい」などの言葉がぎっしりと書かれている。
「何だい何だい?不吉な言葉ばかり書いて」
私は、窓をコンコンと叩いた。
彼女はその音に気がつき顔を上げこちらを見る。私と目が合った彼女はすぐにこわばった顔をして今にも叫び出しそうだったが、授業中というのが頭をよぎったのだろう、手で口を押え、険しい顔でじっと見るというだけでとどまった。
「あんた。何てこと書いてるんだい?授業中だろ?何か悩みがあるんなら話を聞いてやるから、学校が終わったら屋上へおいで」
聞こえるかどうかわからなかったが、私はゆっくりと話しかけてみた。
彼女は、険しい顔から驚きの顔に変わると立ち上がり、カーテンを勢いよく閉めた。
「あらあら。ま、まだ学校は終わらないから終わるまで時間つぶしでもしようかね」
また、フワフワとあてもなく飛び始めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
会社に着いた俺は、今朝あった事を忘れるためにガンガン仕事に励んだ。周りのみんなが驚くほどに積極的に動く。昨日、途中で帰ってしまった日高の事など気にもくれず動いていると
「おい」
と、呼ばれた。振り向くと、日高が探るような目で俺を見て立っている。俺はすぐに目をそらし
「なんだよ」
と仕事の手を休めずに返事だけする。
「お前今日どうしたんだよ。人が変わったようだぞ。もしかして・・・・・・」
それだけ言い日高が黙ったので、仕事の手を止め日高の方を見て聞いた。
「もしかして。なんだ?」
「いや・・・・・・昨日は途中でかえって悪かったよ。でもさ」
日高は、俺の隣に椅子をもってきて座ると、真剣な顔で話し出した。
「俺。見たんだよ」
「なにを」
「お前のお袋さん」
「は?いつ」
「弁当の事で話していた時、お前の後ろにいた」
「は?」
「本当だよ。お前の後ろに立っててさ。俺の事凄い顔で睨んでたんだ。嘘じゃない」
確かに日高は調子のいい奴だが、今まで嘘をついたことがない。俺は日高の目をジッと見た。日高も俺から目をそらさずに真剣な顔で見返す。
「わかった。信じるよ」
それを聞いた日高は、嬉しそうな顔をすると
「そうか。良かった」
「でもさ。それが本当だとしても、何でお袋はお前の事を睨んだりするんだ?」
「知らないよ・・・・・・あっ!俺がお前の家の事お化け屋敷なんて言ったからじゃないのか?」
「お化け屋敷?・・・・・・ああ。確かに言ってたな。でも、それぐらいの事で睨むか?」
「だって、それしか思い当たる事しかないからな。家だって初めて行ったし。会った事もない。写真で見たぐらいだからな。・・・・・・もしかしてお前。お袋さんに俺の事悪く言わなかったか?だから、その悪い奴が家に来たから化けて出て来たとか」
「そんなこと言ったことないな。それにそんなに息子思いでもなかったぞ。自分の事と、文句を言うだけの人だったから。あのお袋は」
「そうなのか。じゃあ。何だったんだろうな」
「さあな」
俺はまた仕事を始めた。
「お前何かあったのか?」
「何で」
「別人の様だぞ。仕事の鬼みたいな・・・・・・なんかあったろ」
俺は動きを止めた。忘れたいと思って仕事に集中していたが、日高の一言で今朝の事が蘇ってきた。
「やっぱ。なにかあったな。話してみ」
日高をちらっと見る。真剣な顔で俺を見る日高に話してしまおうか。それとも何もなかったと言おうか。俺は一瞬迷った。しかし、今の俺の反応で日高は何かあったという事に気がついている。話してしまえば楽になるか・・・・・・
「実はさ、今朝・・・・・・」
俺は、今朝あった事を日高に全て話した。
全て話を聞き終わった日高は、腕を組み考え込んだ。俺は日高に話したお陰か、少し落ち着いて来た。
「お前のお袋さん成仏出来てないんじゃないか?」
「は?なんで」
「何でって・・・・・・それは分からないけど・・・・・・最初にお前から聞いた話は弁当ことだったろ?それで、俺がお袋さんを見る。次にお前が弁当を作っている透明人間を見る。その透明人間はお前のお袋さん。これで、話が合うだろうが。そうだ!手紙!あの手紙もあったろ?何か思い当たる事とかないのかよ。じゃなかったら、お前ずっと死んだお袋さんに弁当作ってもらう事になるんだぞ?」
「そんな事って・・・・・・」
あのお袋が成仏できない理由。何も思い当たる事がない。いつも、自分が一番で好き勝手に生きてるとしか思ってなかった。
「そうだ!お寺でお祓いしてもらったらどうだ?」
「お祓い?」
「そう。俺調べてやるよ」
そう言うと日高は席を立とうとした。
「ちょっと待てよ」
「何だ?」
日高の事を止めた自分に俺は驚いた。何故止めたのか。何も言えずにいると日高はまた椅子に座る。
「どうした?何か思い当たることがあるのか?」
「いや。そうじゃない。そうじゃないけど・・・・・・」
「お祓いしてもらった方がいいだろ?そんな気持ち悪い毎日過ごすなんて嫌じゃないのか?」
確かに嫌だ。嫌だ・・・・・・けど。
「少し、考えてみる」
「成仏できない理由をか?そうだな。それからでも遅くないな」
話がついたとばかりに日高は自分の仕事に戻って行った。
その後の仕事は、はかどらなかった。
今日やることを考えながら、朝の洗濯や掃除を済ませる。一通り済ませるといつものように一服しようとコーヒーを淹れカップを持ち茶の間に座る。テレビをつけ朝のニュースを見ながらコーヒーを飲む。
「・・・・・・ん?・・・・・・これ飲めるんだ!」
普段やっている習慣と言うのは恐ろしいものだ。死んでいると分かっていながらも、生きていた時と同じ行動をしてしまった。私はまたコーヒーを一口飲む。
「味がしないね」
死んだことがないから知らなかったけど、死後の世界はこういう物なのか。
「ま、物が食べれるのは嬉しいけど、味がしないなら食べる気しないね」
面倒くさいので、あまり深く考えないことにした。テレビを消し、私はあの女子高生の所に行こうと思い立ち二階の窓から飛び出した。私の事を見ることが出来る唯一の子だ。
「まさか。自殺してないだろうね」
フワフワと飛びながら、屋上で話をしていた時の女の顔を思い出していた。相変わらず綿毛のようなスピードで飛んでいると、学校が見えてきた。
「お、見えた見えた」
私は、学校の校舎に近づき一つ一つ窓を覗いて回る。中では、授業中らしく制服を着た生徒達が机に座りノートをとっている。
「懐かしいねぇ」
自分が大昔、学生だった頃と重ねながら見ていると、ある教室の窓際にあの女がいるのが見えた。
「あ。いたいた」
私はその女の側に行き、窓越しから中を覗いてみる。ノートに一生懸命何かを書いているので感心しながら覗き込むと、ノートいっぱいに「死ね」「うざい」などの言葉がぎっしりと書かれている。
「何だい何だい?不吉な言葉ばかり書いて」
私は、窓をコンコンと叩いた。
彼女はその音に気がつき顔を上げこちらを見る。私と目が合った彼女はすぐにこわばった顔をして今にも叫び出しそうだったが、授業中というのが頭をよぎったのだろう、手で口を押え、険しい顔でじっと見るというだけでとどまった。
「あんた。何てこと書いてるんだい?授業中だろ?何か悩みがあるんなら話を聞いてやるから、学校が終わったら屋上へおいで」
聞こえるかどうかわからなかったが、私はゆっくりと話しかけてみた。
彼女は、険しい顔から驚きの顔に変わると立ち上がり、カーテンを勢いよく閉めた。
「あらあら。ま、まだ学校は終わらないから終わるまで時間つぶしでもしようかね」
また、フワフワとあてもなく飛び始めた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
会社に着いた俺は、今朝あった事を忘れるためにガンガン仕事に励んだ。周りのみんなが驚くほどに積極的に動く。昨日、途中で帰ってしまった日高の事など気にもくれず動いていると
「おい」
と、呼ばれた。振り向くと、日高が探るような目で俺を見て立っている。俺はすぐに目をそらし
「なんだよ」
と仕事の手を休めずに返事だけする。
「お前今日どうしたんだよ。人が変わったようだぞ。もしかして・・・・・・」
それだけ言い日高が黙ったので、仕事の手を止め日高の方を見て聞いた。
「もしかして。なんだ?」
「いや・・・・・・昨日は途中でかえって悪かったよ。でもさ」
日高は、俺の隣に椅子をもってきて座ると、真剣な顔で話し出した。
「俺。見たんだよ」
「なにを」
「お前のお袋さん」
「は?いつ」
「弁当の事で話していた時、お前の後ろにいた」
「は?」
「本当だよ。お前の後ろに立っててさ。俺の事凄い顔で睨んでたんだ。嘘じゃない」
確かに日高は調子のいい奴だが、今まで嘘をついたことがない。俺は日高の目をジッと見た。日高も俺から目をそらさずに真剣な顔で見返す。
「わかった。信じるよ」
それを聞いた日高は、嬉しそうな顔をすると
「そうか。良かった」
「でもさ。それが本当だとしても、何でお袋はお前の事を睨んだりするんだ?」
「知らないよ・・・・・・あっ!俺がお前の家の事お化け屋敷なんて言ったからじゃないのか?」
「お化け屋敷?・・・・・・ああ。確かに言ってたな。でも、それぐらいの事で睨むか?」
「だって、それしか思い当たる事しかないからな。家だって初めて行ったし。会った事もない。写真で見たぐらいだからな。・・・・・・もしかしてお前。お袋さんに俺の事悪く言わなかったか?だから、その悪い奴が家に来たから化けて出て来たとか」
「そんなこと言ったことないな。それにそんなに息子思いでもなかったぞ。自分の事と、文句を言うだけの人だったから。あのお袋は」
「そうなのか。じゃあ。何だったんだろうな」
「さあな」
俺はまた仕事を始めた。
「お前何かあったのか?」
「何で」
「別人の様だぞ。仕事の鬼みたいな・・・・・・なんかあったろ」
俺は動きを止めた。忘れたいと思って仕事に集中していたが、日高の一言で今朝の事が蘇ってきた。
「やっぱ。なにかあったな。話してみ」
日高をちらっと見る。真剣な顔で俺を見る日高に話してしまおうか。それとも何もなかったと言おうか。俺は一瞬迷った。しかし、今の俺の反応で日高は何かあったという事に気がついている。話してしまえば楽になるか・・・・・・
「実はさ、今朝・・・・・・」
俺は、今朝あった事を日高に全て話した。
全て話を聞き終わった日高は、腕を組み考え込んだ。俺は日高に話したお陰か、少し落ち着いて来た。
「お前のお袋さん成仏出来てないんじゃないか?」
「は?なんで」
「何でって・・・・・・それは分からないけど・・・・・・最初にお前から聞いた話は弁当ことだったろ?それで、俺がお袋さんを見る。次にお前が弁当を作っている透明人間を見る。その透明人間はお前のお袋さん。これで、話が合うだろうが。そうだ!手紙!あの手紙もあったろ?何か思い当たる事とかないのかよ。じゃなかったら、お前ずっと死んだお袋さんに弁当作ってもらう事になるんだぞ?」
「そんな事って・・・・・・」
あのお袋が成仏できない理由。何も思い当たる事がない。いつも、自分が一番で好き勝手に生きてるとしか思ってなかった。
「そうだ!お寺でお祓いしてもらったらどうだ?」
「お祓い?」
「そう。俺調べてやるよ」
そう言うと日高は席を立とうとした。
「ちょっと待てよ」
「何だ?」
日高の事を止めた自分に俺は驚いた。何故止めたのか。何も言えずにいると日高はまた椅子に座る。
「どうした?何か思い当たることがあるのか?」
「いや。そうじゃない。そうじゃないけど・・・・・・」
「お祓いしてもらった方がいいだろ?そんな気持ち悪い毎日過ごすなんて嫌じゃないのか?」
確かに嫌だ。嫌だ・・・・・・けど。
「少し、考えてみる」
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