未練

玉城真紀

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一人目の同居人

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次の日。息子の弁当を作るため台所へ降りていく。
「わぁ!」
驚いて大きな声を出してしまった。台所で、真理がこちらを向いてボウっと立っていたのだ。
「あんたかい。あ~驚いた!それよりどうしたの?家に帰ったんじゃなかったんかい」
「帰ったよ。帰ったけど・・・・・・」
「帰ったけど?」
「辛くなって出てきた」
「何が辛いの」
「だって。親が半狂乱になって泣いてるんだもん」
そりゃ。両親は半狂乱にでもなんにでもなるだろう。
「そうかい」
真理は下を向き黙っている。少しだけ不憫に思った私は
「じゃあ。この家にいるといいよ。私と息子しかいないしね。あんたが良ければだけど」
真理はハッと顔を上げると
「いいの?」
と少し嬉しそうな顔をして言った。
「ああいいよ」
と、言う訳で生きている息子と死んでいる私。真理との共同生活が始まった。
暫くすると、息子が起きてきた。きちんと出来上がった弁当を見て
「夢じゃなかったのか」
(夢?現実だよ。ばかたれ。ちゃんと朝ご飯食べていくんだよ)
さらさらと紙に書く。
「ああ。わかったよ」
息子は、テーブルに置かれた朝食をモソモソと食べ始めた。その隣には、真理がチョコンと椅子に座って息子を見ている。これが息子に見えたらさぞかし驚くのだろう。私はニヤニヤしながら黙々と食べている息子を見ていた。朝食を食べ終えた息子は
「じゃ、行ってくる」
と、会社へ出かけて行った。私は食器を片付けながら
「さてと、息子も出かけたし掃除でもしようかね。あ、そうだ。あんた居候するなら家の事手伝ってよ」
「え?何をすればいいの?」
「何って、沢山あるだろ?掃除、洗濯、炊事。いくらでもあるさ」
「私・・・・・・やったことない」
「はぁ?家で手伝いしたことないのかい?」
「うん」
「はぁ~。たいしたもんだよ。今の子は。うちではそうじゃないから、ちゃんと手伝いしてもらうよ」
「わかった」
「わかりました!」
「・・・・・・わかりました」
真理は椅子に座りシュンとしている。私は食器を洗いながら考えた。真理は、あの時何故飛び降りたのだろう。「死ぬつもりはなかった」確かにそう言った。それにあの踊り・・・・・・
本当に奇妙な踊りだった。私は祭りが大好きで、行ける所には自分で調べて祭りに参加してきた。いろんな踊りがあるが、あんな踊りは見た事がない。頭は一切動かさず、両手足をくねくねとと動かす。思い出すだけで気持ち悪い。
「あ、そうだ。あんた」
私は気になる事を思い出した。洗い物の手を止め、濡れた手を拭きながら真理の所に行き目の前の椅子に座る。
「そういえばさ、あんたは物には触れるのかい?これ。ちょっと触ってみな」
私はテーブルにあった醤油さしを真理の目の前に置いた。真理は手を出して触ろうとするが、手が醤油さしをすり抜ける。
「ふん。物には触れないんだね。じゃあ。人はどうだろう?外に行って試してみようか」
「あ。人にはぶつかります」
「え?」
「家に歩いて帰ってきた時に、前から来る人とぶつかりました」
「ふ~ん。その相手はあんたの事見えたのかい?」
「ううん。見えてなかったみたい。不思議そうにしていたから」
「なるほど」
どうやら、同じ「死後」でもパターンが違うようだ。しかし、困ったことになる。色々手伝いをさせたくても物に触れないのなら何もできない。
「う~ん」
私は、考え込んだ。
「すみません」
真理は、何か悪いことでもしたかのように謝った。
「いや。謝らなくていいんだよ。しょうがないことだからね・・・・・・そうだ!」
私が、突然大きな声を出したので真理は、体をビクッとさせ驚いた。
「あ、あの・・・・・・」
「うん。そうだ。それでいこう!」
私は、にやりと笑うと、早速真理を外に連れ出した。真理は訳も分からず手を引かれながらついてくる。幽霊同士は触ることが出来るようだ。私は、外に出て玄関の前に立った。
「あの・・・・・・どうしたんですか?」
「ん?いいから。見てな」
暫くすると、隣のあの奥さんが周りをキョロキョロしながらうちの敷地に入ってきた。凝りもせずに、またポストの近くに来ると中をガサゴソと探っている。
「全く。あれだけ怖がらせたのに懲りない人だね。真理。この人はね、こうやって人ん家のポストの手紙やらを見て旦那と笑ってるのさ」
「え!そんな人がいるの?」
「ああ。いるんだよ世の中にはこういう人が。あんたどう思う?」
「最低」
「そうだね。これは、懲らしめた方がいいよね?」
「うん」
「どうやって懲らしめようかね」
「そうだ!」
今度は真理が大きな声を出した。
真理は、ポストの表側に回るとそこからポストをすり抜け手を入れた。次の瞬間、手を入れて手紙をあさっていた隣の奥さんが悲鳴を上げる。
片腕をポストに入れながら、ジタバタと暴れ、腕を引き抜こうとするが抜けないようだ。おそらく、真理が手を握っているのだろう。奥さんは涙を流し始め「ごめんなさい。ごめんなさい」と何度も何度も謝り出した。私は、最後の締めとばかりに腕が入ったポストを思い切り、近くにあった箒の柄で思い切り叩いた。辺りには「ガィ~ン」という大きな音が響く。パニック状態になっている奥さんは箒がひとりでに動いたのは気がつかなかったようで、腕は抜けないうえに、大きな音がしたことでその場で伸びてしまった。
手を離した真理は、そんな奥さんを見てやり過ぎたかなとでも思ったのか、心配そうに見ている。
「大丈夫だよ。この人は鉄の心臓してるんだから。でも、これだけ驚かせばもうやらないだろ」
私は、スカッとしながら言うと、倒れている奥さんをほっといて真理を連れて歩き出した。
歩きながら私は、さっき思いついたことを真理に話した。
「私は死んだのは初めてだから分からないけど、普通死んだら成仏するもんなんだろ?でも、私と真理はそうじゃない。未練があるからこの世にとどまっているかって言うとそうでもない。私は未練なんてものはないからね。あんたは何か未練はあるのかい?」
「未練・・・・・・車に乗りたかったかな。結婚もしたかったし。自分の子供も見たかった」
「ん~そうじゃなくて、例えば見られたくない日記を机の上に出しっぱなしにして来たとか、食べかけのまんじゅうを誰かに食べられちゃうとか、そんな感じの未練だよ」
「ハハハハ。何それ。意味わかんない」
真理は可笑しそうに笑う。笑った顔を見たのは初めてだったが、中々可愛い顔をしている。
「未練なんて私には縁のない言葉だからよく分からないんだよ。ま、そんな事はいいとして、せっかくこの世に残ったんだ。何かしてやろうって思わないかい?」
「何をするの?」
「いたずらさ」
「いたずら?」
「そ。だって、生きてる時には出来なかった事を出来るんだよ。ただ死んだままでこの世にいるなんて面白くないだろ?だったら、いろんな事やってやるのさ。面白くなるよ」
「いろんな事って?」
「何でもいいんだよ」
「よくわかんないな」
「私も分からないけど、良いんだよ最初はそんな風で」
私は、自分でうまく説明できないのを隠すように無理やり話をまとめた。
「そうだね。まず、いろんな場所に出かけてみよう。普段生きてた時にはいかなかった場所とか、勿論行ってた場所でもいい。動かないと分からないからね」
「うん。わかった。何か分からないけど、面白そうね」
「そう。面白くなりそうだよ」
私はニヤリと笑った。

「おはよう」
俺は会社に着くと、いつものようにオフィスに置いてあるコーヒーメーカーの所に行き、朝の一杯をコップに注いでいた。コーヒーのいい匂いがこれから仕事に移るいいスイッチとなる。コップを持ち自分のデスクに座り、飲もうかと口に運んだ時
「ようおはよう。昨日はどうだった?」
日高だ。心配そうな顔をして俺の所に来た。
「どうだったって?」
「何言ってんだよ。お化けだよ。お化け」
「ああ」
俺は迷った。日高に昨日あった事を言うか・・・・・・
「・・・・・・何もなかったよ」
「そうか。俺が言ったように話かけてみたのか?」
「いや。昨日は何も起こらなかったから」
「起こらなかったのか」
少し残念そうに日高は言う。
「でもさ、またおかしなことが起きたら、今度はちゃんと話しかけてみるんだぞ。返事とかするかもしれないし。手に負えなかったらお祓いだな」
そう言うと、日高は自分のデスクに戻って行った。日高には悪いが、今回の事は黙っていよう。俺自身もあれが本当の出来事なのかいまだに信じられない。一気にコーヒーを飲み干すと、頭を仕事モードに切り替えた。

「私、学校に行きたい」
あてもなく歩いている時、突然真理は言った。
「学校?」
「うん」
「学校かぁ。そうだね行ってみよう」
真理が死んだ場所でもある学校に行くというのは、少し不安でもあったが本人が行きたいというのなら仕方がない。それに、あれだけの人が集まる場所だ。きっと面白いことがあるはず。私はワクワクしながら歩いていた。本当なら飛んで行けばすぐなのだが、真理が飛べないので仕方なく移動は歩きだ。
ようやく学校に着いた。
「まだお昼前だね。この時間は授業中かい?」
「うん。多分3,4時限目だと思う」
正門から入り堂々と校舎に入る。真理の案内で何十年ぶりかの学校を見て回るのは楽しかった。
「本当。久しぶりだよ。私はこの学校卒業じゃないけど、学校なんて似たり寄ったりだからね。・・・・・・ちょっと、あれ見てよ。あの先生。ぷぷ。あれ絶対ヅラだよ」
授業中のクラスの窓やドアが開け放たれているので、中の様子がよく見える。
「え?ああ。畠山先生。みんなもヅラじゃないかって噂してたの。本当はどうなのかは知らないけど」
「じゃあ。確かめてみよう」
私は授業中のクラスに躊躇なく入っていくと、黒板に慣れた手つきでカツカツと字を書いている先生の頭をじっと見た。
「やっぱりね」
私は廊下で心配そうに私を見ている真理を呼んだ。
「ちょっと、やっぱりヅラだよ。来て見てごらん」
姿が見えるはずもないのに、真理はおずおずと周りを気にしながら入ってきて頭を見る。
「ふふふ。本当だ。何か変なのがついてる」
「これは古いタイプのヅラだよ。この先生も古いからヅラも古いの使ってるのかねぇ?」
「ハハハ。何それ」
二人は、壇上で笑い転げた。
「あ~あ。面白かった。じゃ、次行こう」
「うん」
初め学校には行った時には難しい顔をしていた真理も、このヅラのお陰で楽しくなったようだ。真理から色々な話を聞きながら次々とクラスを見て回る。その間に授業が終わり休み時間になった。教室から吐き出されるように出る生徒達は、思い思いに過ごす。弁当を持ち隣のクラスの友達と食べるものや、一人で食べるもの。購買にでも買いに行くのだろう財布の中身を気にしながら歩いていく者。それぞれである。私は自分の学生時代の時の事を思い出しながら、ほのぼのと見ていた。
気がつくと真理が一つのグループの所にいる。近くに行くとそのグループは女の子3人で机を寄せ合い弁当を広げている。
「あんたの友達かい?」
真理は返事もせずじっと見ている。

何となく様子がおかしかったので、私もその3人を見た。3人はいたって普通の女の子達で派手でもなく地味でもない。弁当も親に作ってもらうのか自分で作るのか、色とりどりの可愛い弁当を広げている。問題は会話だった。
「ね。やばくない?」
「別に私が悪いわけじゃないもん」
「そうだけど。何か後味悪いって言うか」
「ねぇ」
「だって、真理の彼氏取った訳でもないんだよ?向こうから私のとこに来ただけだもん。私は悪くないわ」
「でも、真理とは小さい頃からの友達だったんでしょ?」
「だから何?」
「ん~。何て言うか。友達の彼氏だからさぁ」
ハッキリ言えないらしい。
「とにかく、私は悪くないの!それに、噂で聞いたんだけど校庭で部活やってた男子が見たって言うのよ」
「何を?」
「真理が飛び降りた時、屋上に真理ともう一人いたのを見たって。だから、そいつが真理を突き落としたんじゃないかっていう噂」
「え?!そうなの?初めて聞いたそんなの」
「それ誰なの?」
「知らない。そんな死んだ奴の事よりもさ、今度ライブ行くじゃん?何時に待ち合わせにする?」
「ああそうだ。じゃあさ・・・・・・」
きゃいきゃいとライブの話で盛り上がる。
私は、何とも言えない気持ちだった。人が一人死んでいるのに、すぐに話題が切り替わる。こんなものなんだろうか。真理を見ると顔色一つ変えていない。
「おばさん」
真理がこちらも見ずに口を開いた。
「この子ね。私が幼稚園の頃から一緒だった人なの。お互いの好きなもの嫌いなもの何でも知ってた。いつも一緒に遊んで親に叱られる時も一緒。姉妹のように仲良かったの。もちろん喧嘩もしたけど、それでもいつも一緒。・・・・・・親友だと思ってた。でも・・・・・・
結局そう思ってたのは私だけだったのね」
その時だ。静かに波が押し寄せるように地響きが聞こえてきた。真理を見ると、目にいっぱい涙をためている。次に、部屋が揺れるような音が響き渡る。真理が泣き始めたのだ。その大きな音に耳をふさぎながら、私は周りを見た。教室の中の生徒達は何も気づかない。
(私にしか聞こえないのか?)
真理を泣き止ませようと顔を戻した時、ふとさっきの女に目が止まる。真理の彼氏を取った子だ。その子は、明らかに真理の方を見ている。他の二人は話に夢中でその子の様子に気がついていない。私は、下を向き涙を流す真理に
「ちょっと真理。この子あんたの事見てるよ」
と声をかけた。真理は、ハッと顔を上げその子を見る。その途端、見られた女は「ぎぃやぁぁ」と大きな声を上げ椅子ごとひっくり返った。
「あんたが見えたのかもしれないね」
「え?」
真理は泣き止んだ。涙を拭きながらまたその女の近くに行く。椅子ごとひっくり返った女は真理から目を離さず逃げようと後ずさる。どうやら腰が抜けてしまったらしい。他の二人の友達は突然の事に何がどうなっているのかが分からず
「何?どうしたの?」
としきりに聞いているが、返事も出来ないようだ。

「丁度いい。思い切り言いたいこと言っちゃいなよ。今まで言えなかった事。全部ぶちまけちゃいな」
「う、うん。あ、あの。私・・・・・・」
いざと言うとなると言葉がうまく出てこないのか、しどろもどろになっていたが、真理はゆっくりと息を吐くように、自分の気持ちを話し出した。
「初めは許せないと思ってたんだけど、もう今は気にしてないから。紘一はそう言う奴だったんだって諦める。それに、私も人を責める事が出来る立場じゃないんだ。ちょっといいなって思った人が他にいてね。でも・・・・・・でも・・・・・・少しだけでも、私が死んだこと悲しんでほしかったかな」
スカートがめくれ、露になった足を隠すこともせずに座り込んでいる女は、恐怖に引きつった顔から次第に泣き顔へと変わっていった。
「おばさん。もう行こう」
「もういいのかい?」
「うん」
「じゃあ。行こうかね。もしかしたらあんたの気持ち伝わったのかもしれないね」
「だといいけど」
クラスが騒然とする中、私達は学校を出た。
また、あてもなくぶらぶらと歩く。真理は何か吹っ切れたものがあったのか表情が明るくなっている。
「しかし、お腹が減らないって言うのはいいね。お金がかからないよ」
「でも、美味しいもの食べられないのは少し悲しくない?」
「私はたくさん食べて来たからね。そんなこと思わないよ。それにね、私は物に触れるだろ?だから、食べることも出来るんだよ」
「え?そうなの?いいなぁ」
「それが良くないんだよ。全く味がしないんだから」
「ふ~ん。味覚がないって事か・・・・・・私アイスクリーム沢山食べたいな」
「沢山なんて食べたらお腹壊すよ!」
「ハハハ。壊さないよ。死んでるんだもん」
こんな若い子と笑いながら話すなんて、生きてた頃の私には想像もつかない事だった。第一、外でも家でも私は笑った事がない。死んでから自然に笑い、話すことが出来るというのも皮肉なものだ。

その後、高級な車が置いてある店や、家具店に入り大きなベッドで昼寝をしたり、生きてる時には出来ないことを好き放題やって家路についた。家に着くとまだ息子は帰っていないようだ。家に入った真理と私は、茶の間に座り
「あ~楽しかった。今度は大きな道路に寝そべってみたいな。ハハハ」
「ああそうだね。それをやるの忘れたね。しかし、あのベッドは本当に気持ちが良かったよ。やっぱり高いものはいいんだねぇ」
「そうだね」
と、今日一日の事を振り返りながら話していた。しかし、確かに楽しかったがなぜか私の心には少しだけ空しさがあった。
「さてと、息子の夕飯でも作るかな」
「手伝えなくてごめんね。見守ることは出来るわ」
「あんたに見守ってもらいながら料理なんか作りたくないわ。ハハハ」
私は、台所に行き夕飯作りに取り掛かった。暫くすると、息子が会社から帰ってきた。
「ただいまぁ」
「はい。おかえり」
台所から声をかける。
「おかえりなさい」
真理も同じように声をかける。台所に入ってきた息子は、ひとりでに動いているフライパンを見て
「やっぱり夢じゃなかったんだ」
とボソッと呟く。
「まだ言ってる。ブツブツ言ってないで、もうできるからご飯食べちゃいな」
手を動かしながら聞こえないのを承知で言った。
息子は自分の部屋で着替えを済ますと、下に降りてきて席に着く。その頃には料理が出来上がっており、私と真理は、同じ席で今日の事を話していた。
私達が見えない息子は出来上がっている料理に箸をつけ黙々と食べ始める。その間も隣で私達の話は盛り上がっていたが突然息子が、箸を置き
「お袋。やっぱりこのままじゃいけないような気がするんだ」
私はノートとペンを取り
(どういうことだい?)
「ちゃんとあの世に成仏したほうがいいってことさ。どうしたらいいんだろうな」
(知らんね。成仏できる方法があるなら教えてほしいもんだよ)
「寺に行ってみたらどうだ?」
(寺?)
「うん。お寺でもう一度お経を読んでもらうんだよ」
そのやり取りを見ていた真理が
「おばさん。お寺行くの?」
「う~ん。どうしようね」
「いいんじゃない?行かなくても。だって私達がここにいたって何も迷惑かけてないじゃない」
「そうだねぇ」
確かに真理の言う通りだが、しかしいつまでもこのままではいられないと感じている部分もある。
「お袋?」
返事がないことにおかしいと思ったのか息子が問いかける。
(はいはい。聞いてるよ。気が向いたら行くよ)
取り敢えずそう返事した。
その後息子は、黙って食事を続けた。
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