大好きな小説の悪役令息に転生したら、婚約破棄するはずの婚約者に執着されていました

エアコン

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7章

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校舎から出た瞬間だった。

「ソフォラぁぁああ!!」

視界の端から何かが突っ込んできたかと思うと、次の瞬間――

ヘンリーの身体が腕一本で弾き飛ばされ、校庭の端まで吹き飛ぶ。

「えっ」

思考が追いつく前に、そのまま勢いよく抱きしめられた。

「おめでとうぅ!カッコよかったよぉ……!こんなに立派になって……お兄様は……っ、う、うぅ……うわあああああああん!!」

「お、お兄様……ぐるじい……!」

ぎゅうぎゅうと締め付けられる腕は、魔力だけでなく筋力までしっかり成長していて、本気で苦しい。

「やめなさいティペス。折れるだろう」

ベリッ、と強引に引き剥がされ、トネリコに救出される。

「大丈夫かソフォラ?……うぅ」

「お父様まで……」

安心したのも束の間、トネリコまで泣き出してしまう。

(外向きの顔、どこいったの……)

さっきまでの威厳ある姿はどこへやら。完全に崩れている。
――いや、ここまでよく耐えた方かもしれない。

「ソフォラ、大丈夫か?」

土埃を払いながら、ヘンリーが戻ってくる。

「大丈夫だよ。お父様、お兄様。入学式に来てくださってありがとうございました」

自然に微笑んで、二人を抱きしめる。

「これから学園で励んで参りますので、見守っていてください」

二人はさらに泣きながら抱きしめ返し――最終的にサンセベリアに引きずられて退場していった。

嵐みたいだった。

「……あの二人は相変わらずだな」

苦笑しながら、ヘンリーはまた当然のように腰を抱く。

(また……!)

「さぁ、寮へ案内する」

抵抗する隙もなく、そのまま歩き出す。



寮は校舎から少し離れた場所にあり、整えられた並木道が続いている。

左右に道が分かれ、右が女子寮、左が男子寮。

説明を聞きながら歩いていると――

「わぁ……」

思わず声が漏れた。

レンガ造りの大きな建物は、どこか現代の東京駅を思わせる重厚さと美しさを兼ね備えている。

「綺麗だろ。結構気に入ってるんだ」

そう言って扉を開けられ、中に入る。

床も壁も整えられ、隅々まで手入れが行き届いている。

(すごい……)

感嘆が止まらない。

「五階建てで、階数と爵位や学年は関係ない。学園生活だから気負わなくていい」

そう言いながら、ヘンリーは当然のように頬を指でふに、とつまむ。

「緊張しなくていい。ソフォラより上なんて王族くらいだ。今年は俺とディスキディアくらいだし、タメ口でもいい」

にこっと笑う。

(無理だよ……)

「無理だよ」

思わずそのまま出る。

眉間に皺を寄せると――

「っ、ぶ……辺境伯様みたいだな……っははは!」

吹き出される。

(え、なんで笑われたの)

むっとしながらも、そのまま三階の部屋の前へ。

「ここがソフォラの部屋だ」

鍵を取り出し、迷いなく開ける。

(いや、なんでそんな慣れてるの)

その様子がおかしくて、つい笑いが漏れる。

「ヘンリー、ここ僕の部屋だよ。ふふ、後で鍵返してね」

そう言うと――

「何言ってるんだ?」

不思議そうな顔で返される。

「ここはソフォラと俺の部屋だぞ」

「……え?」

思考が止まる。

次の瞬間、ぐいっと引き寄せられ、そのまま部屋の中へ。

バタン、と扉が閉まる音。

カチャ、と鍵がかかる音。

背中に扉の感触。

逃げ場が、ない。

顔のすぐ横に手がつかれる。

もう片方の手は、腰を逃がさないように固定されている。

(え、え、え、なにこれ)

距離が、近い。

近すぎる。

「はは、可愛い」

至近距離で、覗き込まれる。

「驚くと、目もっと大きくなるよな。昔から変わらない」

指で前髪をすくわれ、そっと額に口づけられる。

「これからよろしくな、ソフォラ」

(むりむりむりむり)

頭が真っ白になる。

さっきからずっと我慢していた。

腰に回る腕も。
抱き上げられた時に触れた硬い胸も。
成長した体格も、全部。

(好きなの、バレる……)

顔に出さないようにしていたのに。

もう無理だった。

ぱしっ、とヘンリーの腕を払いのける。

そのまま両手で顔を覆う。

「な、なんで僕と同室なの……おかしいよ……!」

声が震える。

自分でも分かるくらい、顔が熱い。

でも。

(ちょっと嬉しいとか思ってるの何!?ダメでしょ!?)

内心ぐちゃぐちゃだった。

そんなソフォラを見て、ヘンリーは嬉しそうに笑う。

払い除けられたはずなのに、気にした様子もなく、再び抱き寄せる。

「掛け合ったんだ」

つむじに、軽くキスが落ちる。

「婚約者が取られそうで不安だからな。今年だけでも一緒にいられるようにって」

さらっと、とんでもないことを言う。

(いやいやいやいや)

小説では、一年は三年と同室。

そしてヘンリーの同室は――ドラセナのはずだった。

(なにこれ、全部違う)

思考が追いつかない。

(もうおかしくなっちゃうよお!!)

顔は真っ赤。
目は見開きっぱなし。
口はぱくぱく。

完全にキャパオーバーだった。

それでも――

逃げられない距離で、ヘンリーは満足そうに微笑んでいた。
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