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第一章 予想外の婚約破棄
第11話 衝撃の婚約
しおりを挟むそしてそんな場にうっかり行き交うと、周りから天の助けとばかりに期待されるのがリヴィアだ。
一介の伯爵令嬢に過度な期待をしないで欲しい。どっちの言い分も正しいかもしれないが、仲裁に入る身としてはお互い主観はかなり偏っている。頭に血も登っている事だし……
とは言えライラが生粋の令嬢である事には変わらない。納めところは分かっているらしく、リヴィアが仲裁に入ると応じる事が多い。ただその後は気が済むまで貴族のなんたるかに付き合わされる事になる。
シェリルが雇用されるまで、リヴィアは上司の秘書のような立ち回りもしていた。平民に使われる貴族などそうそう無い。貴族は体面を気にするものだから。
「お可哀想にリヴィア様。どれ程努力されても、魔術の素養は持って生まれたもの。けれどだからと言って平民に謙る事なんて、わたくしの貴族の矜持が見過ごす事は出来ませんわ。何故エルトナ伯爵はお許しになっているのか……まあでも人の役に立ちたいという気持ちは分かりますわ。わたくしもアーサーの────国の為になるからと父に言われて来ていますの。リヴィア様もいつか誰かのお役に立てるとよろしいですわね。私も心からお祈り申し上げます」
彼女の感覚だと正論なのだろうが、毎回哀れみと婚約者自慢をされる身としては非常に面倒臭い。リヴィアは貴族の多い中央塔で噂に上るような振る舞いはしたくない。もし父に言い咎められたら面倒だ。稀に上司を平民如きと侮られるが、事実だし。あの人はそんな事位では怒るまい。
ただリヴィアの中でその彼女の婚約者候補であるアーサーも長年良い印象は無かった。美しければ全て許される。或いは美は正義というヤツなのだろう。だが放置しすぎだ。
その弊害が自分みたいな立場の弱い者に皺寄せている。例え被害妄想だとしても、これ位の苦情は許して欲しいものだ。勿論決して口にはしないので。
まあリヴィアの事情はともかく、あの様子では彼女は貴族社会では立派に淑女をやっているのだろう。
美人で気丈で家柄も良く第二皇子殿下の婚約者第一候補。
……やっかみくらいされるだろう。
なぜなら少し前に第二皇子は軍事による公務をひと段落させ、皇城に滞在するようになってから事態は変わった。彼の皇族らしからぬ凛々しく逞しい容姿に多くの貴族令嬢が悩殺されてしまったからだ。
そうしたご令嬢が第二皇子殿下に迫る為、ライラを陥れようと嫌がらせを始めた。彼女は随分参ってしまったらしく、第二皇子の計らいで休養を要され、しばらく社交会に顔を出さなかった。
だがライラが社交会から遠ざかり少ししてから、イスタヴェン子爵との婚約が発表され、貴族会は騒然となった。
イスタヴェン子爵は元は公爵家の三男坊で、父親が持っていた子爵位を継承し子爵となった。子爵とは言え、生まれは公爵。ライラの婚約者としては何も問題無い。ただ彼が第二皇子の侍従を勤めていた事は、当時噂好きの社交会を大層騒がせたのだった。
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