【完結】京都若旦那の恋愛事情〜四年ですっかり拗らせてしまったようです〜

藍生蕗

文字の大きさ
19 / 49

18. 思わぬ再会


 二週間後に行われるのは、四ノ宮家主催のパーティーだそうだ。朔埜は宴会と言っていたけど、パーティーだ。規模的にあれは、多分。
 東京を拠点にしている朔埜の父が息子を連れてこの地で要人たちをもてなす。朔埜の父は東京を居住としているから、実家と疎遠なんて言われているから、それを否定する意味合いもあるのかもしれない。

 それにしても、その規模といったら。
 どうやら国際的なもののようで、この日の為に外国語を話せるスタッフを手配したり、会場担当者と打ち合わせしたり……その作業の多さに、旅館てこんな事するんだ? と連日のように驚いている。

「ここで結婚式や披露宴を挙げるお客様もいますからね。パーティーを催す事も多いのですよ」
 そう教えてくれたのは辻口だ。
 
 史織が凛嶺旅館に来てから一週間。
 三芳指導の元、史織は旅館勤めのイロハから礼儀作法のあれこれから旅館のルールまで幅広く学んでいる。スマホの使い方講座まであるのだから徹底したものだ。
 今は忙しいのもあり、僅かに時間が短縮されているが。その短い時間でも三芳の教育的指導は恐ろしく厳しい。

「そうなんですね」
 史織も結婚式き参加した事はあるが、その時は都心の一等地にある今風のチャペルだった。タイトな時間で式場を貸切り、退室すると次のカップルがドアの前で待機していて……とにかく慌ただしい上き人が多い印象の場所だ。
 そこはその真逆だ。

 ──雄大な景観。趣ある建物。
 こんな景色を眺めながら永遠を誓えたら、良い思い出に残るだろうなあと思う。
 
「西野さん、ぼけっとしてる時間ありませんよ。今日からお客様が増えますからね」
「あ、はい」

 紅葉の時期は一般客も訪れる繁忙期だ。
 宿泊とイベントの手配で、旅館内はてんやわんやしていた。
 正直言って史織が見習いを許されたのは、猫の手も借りたい程忙しかったかはではないかと、今なら思う。
 それにしても本来の目的である、朔埜の調査だが……残念ながら今はそんな隙は無い。
 まあ、朔埜もパーティーの準備で忙しそうなので、恋人とゆっくりデートなんて時間は無さそうだけど。
(結局、恋人いるのかな? どうなんだろ……)

 朔埜はいつも不機嫌そうな顔だが、お客様の前では上手に仮面を被る。その変わりようたるや……史織はその決定的瞬間を目撃したとき、辻口の背中を思い切り叩いて怒られたくらいだ。

 ついでに、たまたまそれを見ていたらしい朔埜にも睨まれた。
 ……もしかしたら既に目をつけられているかもしれない、気をつけよう。

 仕事を始めて一週間。
 言いつけられた通りに動ければいい方で、メモが手放せない日々を送っている。立ち仕事と言うより、歩き仕事というか走り仕事というか、時間も無くて目まぐるしい。二週間後には体力がついていそうである。

 今日は、初めてお客様の案内を言いつけられており、史織はエントランスへと急いだ。

「あれ、千田さん……?」
「え?」
 振り返った先を見て、史織はさぁっと青褪める。
 気を抜いていた訳では無いけれど、こんな所で知り合いに会うなんて思っていなかった。

 頭の中で今日の宿泊状況を確認する。
 会社の研修で予約のあった、二十人の団体さんだ。流石にその名簿に目を通すなんてしなかった、けれど。今はしておけば良かったと後悔してる。

(藤本君?! ……ど、ど、どうしよう!)

 その中にいたのは史織の学生時代の知り合いだった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか?

奏千歌
恋愛
[イヌネコ] 「奥様、旦那様がお見えです」 「はい?」 ベッドの上でゴロゴロしながら猫と戯れていると、侍女が部屋を訪れて告げたことだった。

小さくなった夫が可愛すぎて困ります

piyo
恋愛
夫が、ある日突然、幼児の姿になってしまった。 部下の開発中の魔法薬を浴びてしまい、そのとばっちりで若返ってしまったらしい。 いつも仏頂面な夫が、なんだかとっても可愛い――。 契約結婚で、一生愛とは無縁の生活を送ると思っていたノエルだったが、姿が変わってしまった夫を、つい猫可愛がりしてしまう。 「おい、撫でまわすな!」 「良いじゃありませんか。減るもんじゃないし」 これまで放置されていた妻と、不器用に愛を示す夫。 そんな二人が、じれじれ、じわじわとお互いの距離を詰めていく、甘くて切ない夫婦再生の物語 ※本編完結済(全26話+後日談1話)、小話追加中 ※一章ほのぼの、二章シリアスの二部構成です。 ※他サイトにも投稿

完璧な政略結婚のはずでしたが、宰相閣下の“私の妻”扱いが甘すぎます

星乃和花
恋愛
政略結婚のはずでした。 家同士の利も、立場の釣り合いも、全部きちんと整った、完璧に合理的な結婚。 ……なのに、夫となった冷徹宰相は、なぜか人前で私を「最高の妻」と紹介し、暮らしを完璧に整え、他人に近づかれると不機嫌になってしまいます。 “天使”と噂される穏やかな令嬢フィオナもまた、 そんな不器用な優しさに少しずつ心をほどかれて――。 これは、条件で選ばれたはずの夫婦が、 いつの間にかお互いを“ただ一人”として欲しくなるまでの、甘くてやさしい政略結婚物語。 (完結済ー全8話)

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ
恋愛
 公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。  ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。 ※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?