37 / 44
先行投資・俺だけの人。
最終章<俺だけの人>
しおりを挟む
『傍にいて、一生愛してください』
不安になるんだ。
自分が自分でいられなくなるくらい。
不安になるんだ、傍にいると。
自分なんかで、いいものかって。
自分のような、なんの価値もない存在が、隣にいてもいいものかって。
傍にいると
不安で、不安で、
怖くて怖くて。
隣にいてもいいのか、いい存在なのか、不安でたまらないんだ。
いつもいつも。
でも、傍にいないと、寂しくて、苦しくて。
呼吸もまともに出来なくて。
会いたいと、叫んでしまう。
傍にいたいと願ってしまう。
馬鹿みたいに、好きで。
好きすぎて。
こんな自分が嫌になって。
嫌で
いやで
いやで。
それでも…
それでも…。
離れられない。
離れたりなんか、出来ない。
求めずにはいられない。
その、温もりも、その眼差しも。全てが、欲しくて堪らない。
たとえ、自分が狂ったとしても。
それでも、お前の傍にいたい。
お前の傍、だけ、いたい。
愛している、から…。
誰になんと言われようと、
愛している…。
「いってきます、公久さん」
「…、」
「そんな顔しないで、すぐ帰ってくるから。大学、今日は絶対に出ないといけない授業があって…。ほんとは、出たくないんだけど…、ずっと一緒にいたいんだけど」
「…、」
「ごめん…、ね…、公久さん」
樹の顔が、そういって、ゆがむ。
私の頬を両手でつつみながら、口づけを交わす樹。
絡み合う舌。くちゅ、と音をたてながら、舌を吸われる。
毀れ落ちる、銀の糸。
繋がれたそれが、口端から滴り落ちる。
うっとりと樹を見れば、樹も同じような視線で私を見つめていた。
「あ…、」
散々口づけをされた後、ゆっくりと、顔が離れていった。
もっと、キスしていたかったのに。
もっと、くっついていたかったのに。
「じゃぁ…」
立ち上がり、ベッドから遠ざかる樹。
「あ…、」
縋るように、手を伸ばし樹の服を掴もうとする…。
が、それは叶わず、くくりつけられた手錠のせいで、ガチャガチャという音しかならない。
ガチャ、ガチャ、ガチャ。
音がするたびに、遠ざかる樹。
いつき…どこへいくんだ…
私を、置いて、どこへいくんだ…。
私には、樹が必要なのに…。
ーどうして、離れていくの…?
ガチャガチャ、と必死に音を立てて、鎖を解こうとしているのに、樹は一回もこちらを向いてくれない。
まるで、鎖をつけられた犬のような、私。
「あ…っ」
「いってきます」
なんでもない、挨拶。なのに、どうしようもなく、怖くなるのはなぜだろう。
その言葉が、一生の別れに聞こえてしまうのは。
遠ざかる、樹。
ばたん、という無情にも響く、空しいドア音。
どこかへいった樹。残された、私。
「…っ、」
静まり返った室内。
ベッドの柱に手錠で仰向けにくくりつけられた。
足も手も縛られ、自由は奪われている。どこにもいけない。
誰も、いない。私一人。
鳥かごのような、小さな部屋の空間に私一人。
この鳥かごには、私一人。
他は誰もいない。
途端、漠然とした孤独感に襲われる。
白い白い、天井。
ただ白だけのそれを見ていると、虚無感に襲わる。
*
どこにいった…?
いつきは、私をおいていった?
もう、繋いでいた手錠はない。
もう、いつきは、いない。
いつきだけの世界がない。
いつきがいない。
いつきの世界がなくなった。
いつきがいないと、生きていけない。
いつきがいないと、私の世界は終わる。
終わる。
「いつきぃぃぃ」
怖い…怖い…、怖い。
堪らなく、怖い。
いつき、いつき、いつき。
樹がいないと…樹がいないと、生きていけない。
だって、私の世界は、樹のもの。
樹が支配する、もの。
そう、支配された。樹だけのものになれ、と何度もこの何日間で囁き続け、洗脳のように言われた。
壊れた私の回路は、樹を支えに作り直された。
その樹がいない今、私は…。
私は、どうすれば…。
樹がいなければ、どうしようもない。
「いつきぃぃぃぃ、やだ…いつきぃぃ」
怖い…怖い!
声の限り叫ぶ。涙を流しながら。
半ば、癇癪をおこしながら、泣き叫ぶ。
いつきが戻ってくることを願って。
「いつき、いつき…いつき…いつきぃ…」
ガチャンガチャン、と鎖が鳴る。樹と繋がれていたときは、さして拘束されている気にはならなかったのに。
今はこの鎖が邪魔で仕方がない。樹の傍に近づかないようにするための鎖にしか思えない。
樹を追わないと…。
早く樹に合わないと…
樹がいないと…
私は…
「いつきぃ、や、いつきぃぃぃ、」
私は、狂ってしまう。
絶望に、叩き落されてしまう。
「いつきぃぃぃぃー」
不安になるんだ。
自分が自分でいられなくなるくらい。
不安になるんだ、傍にいると。
自分なんかで、いいものかって。
自分のような、なんの価値もない存在が、隣にいてもいいものかって。
傍にいると
不安で、不安で、
怖くて怖くて。
隣にいてもいいのか、いい存在なのか、不安でたまらないんだ。
いつもいつも。
でも、傍にいないと、寂しくて、苦しくて。
呼吸もまともに出来なくて。
会いたいと、叫んでしまう。
傍にいたいと願ってしまう。
馬鹿みたいに、好きで。
好きすぎて。
こんな自分が嫌になって。
嫌で
いやで
いやで。
それでも…
それでも…。
離れられない。
離れたりなんか、出来ない。
求めずにはいられない。
その、温もりも、その眼差しも。全てが、欲しくて堪らない。
たとえ、自分が狂ったとしても。
それでも、お前の傍にいたい。
お前の傍、だけ、いたい。
愛している、から…。
誰になんと言われようと、
愛している…。
「いってきます、公久さん」
「…、」
「そんな顔しないで、すぐ帰ってくるから。大学、今日は絶対に出ないといけない授業があって…。ほんとは、出たくないんだけど…、ずっと一緒にいたいんだけど」
「…、」
「ごめん…、ね…、公久さん」
樹の顔が、そういって、ゆがむ。
私の頬を両手でつつみながら、口づけを交わす樹。
絡み合う舌。くちゅ、と音をたてながら、舌を吸われる。
毀れ落ちる、銀の糸。
繋がれたそれが、口端から滴り落ちる。
うっとりと樹を見れば、樹も同じような視線で私を見つめていた。
「あ…、」
散々口づけをされた後、ゆっくりと、顔が離れていった。
もっと、キスしていたかったのに。
もっと、くっついていたかったのに。
「じゃぁ…」
立ち上がり、ベッドから遠ざかる樹。
「あ…、」
縋るように、手を伸ばし樹の服を掴もうとする…。
が、それは叶わず、くくりつけられた手錠のせいで、ガチャガチャという音しかならない。
ガチャ、ガチャ、ガチャ。
音がするたびに、遠ざかる樹。
いつき…どこへいくんだ…
私を、置いて、どこへいくんだ…。
私には、樹が必要なのに…。
ーどうして、離れていくの…?
ガチャガチャ、と必死に音を立てて、鎖を解こうとしているのに、樹は一回もこちらを向いてくれない。
まるで、鎖をつけられた犬のような、私。
「あ…っ」
「いってきます」
なんでもない、挨拶。なのに、どうしようもなく、怖くなるのはなぜだろう。
その言葉が、一生の別れに聞こえてしまうのは。
遠ざかる、樹。
ばたん、という無情にも響く、空しいドア音。
どこかへいった樹。残された、私。
「…っ、」
静まり返った室内。
ベッドの柱に手錠で仰向けにくくりつけられた。
足も手も縛られ、自由は奪われている。どこにもいけない。
誰も、いない。私一人。
鳥かごのような、小さな部屋の空間に私一人。
この鳥かごには、私一人。
他は誰もいない。
途端、漠然とした孤独感に襲われる。
白い白い、天井。
ただ白だけのそれを見ていると、虚無感に襲わる。
*
どこにいった…?
いつきは、私をおいていった?
もう、繋いでいた手錠はない。
もう、いつきは、いない。
いつきだけの世界がない。
いつきがいない。
いつきの世界がなくなった。
いつきがいないと、生きていけない。
いつきがいないと、私の世界は終わる。
終わる。
「いつきぃぃぃ」
怖い…怖い…、怖い。
堪らなく、怖い。
いつき、いつき、いつき。
樹がいないと…樹がいないと、生きていけない。
だって、私の世界は、樹のもの。
樹が支配する、もの。
そう、支配された。樹だけのものになれ、と何度もこの何日間で囁き続け、洗脳のように言われた。
壊れた私の回路は、樹を支えに作り直された。
その樹がいない今、私は…。
私は、どうすれば…。
樹がいなければ、どうしようもない。
「いつきぃぃぃぃ、やだ…いつきぃぃ」
怖い…怖い!
声の限り叫ぶ。涙を流しながら。
半ば、癇癪をおこしながら、泣き叫ぶ。
いつきが戻ってくることを願って。
「いつき、いつき…いつき…いつきぃ…」
ガチャンガチャン、と鎖が鳴る。樹と繋がれていたときは、さして拘束されている気にはならなかったのに。
今はこの鎖が邪魔で仕方がない。樹の傍に近づかないようにするための鎖にしか思えない。
樹を追わないと…。
早く樹に合わないと…
樹がいないと…
私は…
「いつきぃ、や、いつきぃぃぃ、」
私は、狂ってしまう。
絶望に、叩き落されてしまう。
「いつきぃぃぃぃー」
1
あなたにおすすめの小説
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
【完結】取り柄は顔が良い事だけです
pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。
そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。
そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて?
ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ!
BLです。
性的表現有り。
伊吹視点のお話になります。
題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。
表紙は伊吹です。
下っ端公務員の俺は派遣のαに恋してる【完結済】
tii
BL
市役所勤めの野々宮は、どこにでもいる平凡なβ。
仕事は無難、恋愛は停滞、毎夜の癒しはゲームとストゼロだけ。
そんな日々に現れたのは、派遣職員として配属された青年――朝比奈。
背が高く、音大卒で、いっけん冷たそうに見えるが、
話せば驚くほど穏やかで優しい。
ただひとつ、彼は自己紹介のときに言った。
「僕、αなんです。迷惑をかけるかもしれませんが……」
軽く流されたその言葉が、
野々宮の中でじわりと残り続ける。
残業続きの夜、偶然居酒屋でふたりきりになり――
その指先が触れた瞬間、世界が音を立てて軋んだ。
「……野々宮さんって、本当にβなんですか?」
揺らぎ始めた日常、
“立場”と“本能”の境界が、静かに崩れていく。
☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。
【第13回BL小説大賞】にエントリーさせて頂きました!
まこxゆず の応援 ぜひよろしくお願いします!
☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。✩☪︎⋆˚。
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!
中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。
無表情・無駄のない所作・隙のない資料――
完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。
けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。
イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。
毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、
凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。
「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」
戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。
けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、
どこか“計算”を感じ始めていて……?
狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ
業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる