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最終章
少女の髪
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27
「なんや、ほんであんた、肩のケガ、すっかり治ったんかいな?」
気持ちのよい秋晴れの朝。
店がひらくと同時にやってきたディルディーネのフェルルブローラ。もうすっかり常連顔で鏡の前にすわり、ミスローダに髪をといてもらっている。
「ま、だいたいはね。ときどき雨の日にピリッとひきつる感じで痛むけど。でも、それ以外は問題ない。指もちゃんとぜんぶ動くし――」
ミスローダはそう言って、それを証明するように、右の手のひらの上で櫛を曲芸のようにクルクルクルッと回した。
「…にしたかて、最近あれやな。なんやちょっと、雰囲気悪ぅなったな、ここの店。なんやら落ちつかれへん」
「なにが気にいらないの?」
「なにって、そら、あれやがな」
ディルディーネが言って、苦々しげに店の奥をにらむ。
いまそちらではニニが、また別の常連さんの髪を、ミスローダ特製の洗髪料をつかって、ちゃぷちゃぷ、ぺたぺた、丁寧に洗っているところだ。
「なんでまたあんなんに手伝わしとんの? まったく、ほんまに世も末やで」
「あら。なにがご不満?」
「不満に決まったるわ。だいいちあんなん、仕事つとまんのかい。あんなわけのわからん、おっそろしいバケモンに――」
「ずいぶん言うわね。でもじっさいのところ、近頃あの子、髪を洗うのだけは、ま、それなりに、最初にくらべると少しは上手くなってきてるわ。指の使い方も、それなりには、けっこうさまになって――」
「ちょ、ちょっと、きゃあ! なにこれ! どうなってるのよッ!!!!」
そっちにいたお客の女の子が、いきなり叫び声をあげた。
「あの、お客様、何かうちの助手に落ち度がありましたでしょうか?」
ミスローダが慌ててそばまでかけて行く。
「落ち度?? あんたこれ見なさいよ! なんでいきなりムラサキなのよ! なにしたらこんなどぎつい色に―― 冗談じゃないわよ! もうほんっっっとに信じられないッ!」
「ニニ、あなた何つかったのそれ??」
「なにって―― その、ここにあった、いつもの洗髪料だけど――」
「って、あんたそれ、中身ぜんぜん違うでしょ! これ、染色液よ! しかもこれ、まったく落ちないやつ! 落ちないどころか、髪の色素そのものを変えちゃうのよこれは!」
「え! す、すいませんすいませんっ。うっかり気づかなかったです~」
「うっかりってあなた、泡が立たない時点で普通は気づくでしょ! 色もほら、ぜんぜん違うじゃない! なんでこの時点で変だと思わないのよ??」
「ご、ごめんなさーい!」
…… …… ……
そのあとその女の子は怒りたけって泣きわめき―― なんとかそれをとりなしながら、もういちどミスローダがムリヤリ色を染め直し、いちおうそれっぽくもとの黄色の髪に復元し――
「まったく冗談じゃないわ! こんなひどい店、もうニ度と来ないから!」
と、その子はぷんぷん怒りながら帰ってしまった。ま、この日に限らず、今月に入ってからニニの失敗で失ったお客の数は、もうすでに、ひとりやふたりではない――
「ふえぇーん。。ご、ごめんなさいミスローダ~。もうほんとわたしったら、鈍くさくて――」
「いいから泣かない。失敗は誰にでもあるわ」
「でもでも~。せっかく近ごろ、いい感じでお客さんが増えてきたのに~。ほんとにバカなわたしのせいで、また、お客さん、減っちゃったら―― わたし、わたし―― ぐすん、」
「もういいから、さっさと泣きやみなさい。まだあっちにお客もいるのよ。みっともない――」
「ぐすん、ぐすん、でもでも、わ、わたしほんとに、こんなんじゃ、ふつうならもうとっくにクビですよ~。ミスローダを手伝う資格、もう、ぜんぜん、まるっきりあるはずもないですし――」
「資格? そんな言葉、あなたどこで覚えたの?」
ミスローダはめんどくさそうに片手でアタマをかいた。
「ま、べつにうちでは、こんなのでクビになんかしないわ。そもそもが、半分くらいわたしの趣味の道楽みたいなもの。お客が少々減ろうが、それで何かが変わるわけでもない」
ミスローダが深く息を吐く。それから少し、口調をゆるめた。
「だいいちあなた、まだここで始めたばかりでしょ? いろんなバカな間違いから、ちょっとずつでも学んで、なにが悪かったか考えて、少しずつでも良くなればいい。わたしも昔はいっぱい間違った。あんたよりもっとひどいのもあった。だから。ね? もういいから泣くのはやめて、またさっきみたいに、あなたのできることでわたしを手伝ってほしい。ね? わかった?」
「ふぇぇ~ん、ミスローダ~、」
「おいこら、そこっ。ミドリ髪ムスメ!」
むこうのイスの上から、ディルディーネがいらいらして叫んだ。
「あかんで! そんな、ミスローダになれなれしゅう抱きついたりしたら! うちの許可もとらんとそこ、なにベタベタニ人で湿っぽいことやっとんのや! もうこれ、ニ人して海に沈めたろかい!」
「あ、う、ご、ごめんなさい――」「ニニも、別にあいつにあやまる必要はないでしょ」
「ミスローダもミスローダや。うちもな、これでもいちおう客なんやで? あんた、さっきからどんだけうちのこと待たして――」
「ごめんごめん、悪かったわ、フェルルブローラ。今すぐそっちに戻る――」
…… …… ……
昼にはまたひとり、めずらしい客がきた。
夏のはじめに一度だけきた、ビーストテイマーの女の子。
こんどはオリフォンではなく、冬にむけて、自分の髪を可愛らしくアレンジしてほしいというリクエストだった。彼女がのってきたオリフォンは、今回は美容が終るまで、店の上空でおとなしく(?)待っているらしい。
その子はミスローダに髪を結ってもらいながら、次回はいちど春に、親友のクローダム・ライオンをつれてきてはダメだろうか、などと真顔でミスローダに相談していた。どうにもタテガミのカットがうまくいかないから、ぜひともこの店でやってあげて欲しいと。ミスローダはこの依頼を、ちょっぴり顔を引きつらせながら、その場でやんわり断っていたが――
午後には、釣り師のリヒティカットが家族連れでやってきた。淡い金色の長髪をなびかせた若い奥さんと、ちびのドラゴンハーフの娘と。
奥さんはいたって無口で―― というか、店にいるあいだじゅう、ひとことも何も話さなかった―― リヒティカットがミスローダを紹介すると、とても品の良い微笑をうかべ、目だけで綺麗にあいさつをした。そのあと夫が何か冗談言うと、くすくすと、手で口もとをかくして品よく笑った。ほっそりした、まるで絵の中から抜け出してきたような、とにかくものすごい美人で――
彼女とリヒティカットがならぶと、これはもう、実に似あいのカップルだった。店にいたほかのお客たちが、どうにも落ち着かない様子でちらちらとニ人の方を盗み見していた。
その奥さんは、かなり長く足もと近くまでのびていた金の髪を、ミスローダのすすめにしたがい、背中の真ん中あたりまで、思いきって短くして――
彼女はその新しい髪形を、とても気に入ったようだった。
鏡を見ながら、さいごはニコッと笑顔になって―― リヒティとふたり手を取りあい、仲良く店を出て行った。
そのあと赤髪のチビの娘だけは、まだ店に残った。このあと店がしまったら、ニ階の部屋でニニと遊んで、今夜は泊まって帰ることになっている。店の中で待つうちに、三つ四つ、化粧品の瓶を勝手に口に入れて食べてしまったから、怒り狂うミスローダによって店のニ階に叩き上げられた。そのときミスローダは顔を引っかかれ、ほっぺたにいくつかあらたに切り傷を作った――
…… …… ……
もうそろそろ閉店という時刻になって、思いがけなく、その男がやってきた。
もうだいぶ外は暗くなりかけていたが――
彼が戸口に立ったとたん、急に夜がまた近くなったようで――
ひやりと冷たい風が吹き――
「おや、これはよかった。まだ閉店ではないのですね?」
「ダルムロッグ? あなた何しに――」
ミスローダはあっけにとられて、その、黒ずくめの服をきた、顔色の悪いやせた男を見つめた。あいかわらず表情にとぼしく、鼻の上には、いつもの小さな丸眼鏡が怪しく光り――
「あらためまして、こんにちは。ミスローダ殿。それに助手の御嬢さんも。おふたりとも、いつにもまして見目麗しく――」
「って、なんであんたがまたここにくるのよ! こんどは何の話? もうあの件は、イシュミラの調停で全部おわったはず――」
「いえいえ、今日は仕事ではありません」
男は左右に首をふり、にやりと小さく笑った。
「今日はわたくし非番を頂いております。いやね、なかなか気持ちの良い時候になりましたから、それにあわせて、ひとつ、わたくしのこの髪でも整えようかと。さきほど思い立ちまして。いつもはコウモリの肝脂などで、むりやりまとめて押さえつけることしかしておりません。たまにはもう少し、今風の若々しい、さわやかな髪に変えていただいたりはできないものかなと。ま、このように考えまして――」
「なに、まさかおまえ、お客できたっていうの?」
「おや? いけませんでしたか?」
男がふたたび微笑する。唇の端から、鋭い犬歯がのぞく。
「わたくしの知りうるかぎり、美容室はとくに女性専用というわけでもないはずですし―― それにそちらの看板にも、ほら、ちゃんと書いてあります。職業性別を問わず、と。ですからネクロマンサー男子たるわたくしが来たとして、まさか入店を断られるなどとは、ゆめ、想像もしませんでしたが――」
「くっ。痛いところをついてくるわね」
「ふ、冗談です」
ダルムロッグが、きゅうに表情をやわらげた。
「じっさい髪をみて頂きたいのは、わたくしではありません」
「え?」
「そうではなく、こちら、このムスメの方で――」
ミスローダが視線を下げると、そこには、ひとりの――
ダルムロッグの足にしがみつくようにして――
ちっちゃな、かわいらしい、サラサラした真珠色の髪の――
「ちょっとあんた! これ何よ! どっからさらってきたのよ、こんなかわいい女の子!」
「おや? 人さらいとは人聞きのわるい。何を申しましょう、これはわたくしの本当のムスメです。名前はヴェラザード。ほら、ヴェラ、ちゃんとこの方にあいさつして」
「こ、こんにちはっ。」
淡い真珠色の髪の少女が、こわごわミスローダにアタマを下げた。しかしまたすぐに、ダルムロッグの後ろにまわる。かくれるようにミスローダの様子を下からじっとうかがって――
「いや、申し訳ない。これはいささか人見知りなところがありましてね。ま、でも、すぐに慣れると思いますよ」
「って、あんた娘がいたなんて聞いてないわよ! 結婚してることだってこれ、わたしには初耳も初耳――」
「おや? そうでしたかな?」
ダルムロッグがとぼけた顔で首をひねる。
「わたくしひとことも、未婚であるとは誰にも申し上げたことがなかったかと。じっさいこれ以外にもあとふたり、妻とのあいだに娘がおります。これはその、一番末の子でして」
ダルムロッグが、娘のアタマにそっとさわった。
「いえね、じつは今日が、この子の誕生日なのです。このあと夜には家で、ささやかな誕生の宴を催す手はずになっておりまして。で、その、なんと申しましょう、わたくしからの、ひとあし早いプレゼント、とでも申しましょうか。ふだん忙しさにかまけてあまりかまってもやれない。なにかちょっとくらい、今日は特別なことをしてやれないものかと。そのように思いましてね。いかがでしょう? こういう話であっても、やはりこれは、無理ですかな?」
「誕生――日? プレゼント?」
ミスローダはまぶしいものでも見るように――
いまそこに隠れている、その、臆病そうな小さな娘を見やった。
✵ ☆ ☾ ✵ ☆ ☾ ✵ ☆ ☾
――ねえさま、見て見て! この新しい髪形!
――へえ、あなたそれ、どうしたの?
――明日はね、わたし、お誕生日なのよ! それでね、お母様がわざわざ自分で、さっき切ってくださったの! お誕生日にふさわしいように、かわいくしてあげるわって! どうどう? わたしに似合ってる?
――ええ。すごくいいわね。ほんとに可愛く見えるわヨルフェ
――やった~! へへ~ ミスローダねえさまにもほめられた~
――なにさわいでんの、ふたりして?
――あ、イシュミラおねえさま!
――ふん、なにそれ? ヨルフェあんた、ま~たそんな、かわいげなお嬢様カットなんか――
――へへへ~。お母様に切ってもらったのよ~
――あっそう。ま、それなりに似合ってるかも… って言っといたげるわ。まったくあんた、この手のロリっこブリッこの路線をやらせたら、ほんとに右に出るものは――
――こらイシュミラ。素直にかわいいって褒めてあげれないの?
――なによ~ローダ姉。今のはわたしなりの褒め言葉なんだからね~
――どうかしら。あんたいつもこの子に嫌味ばっかり言って
――そんなことないない~ そこはなにげにローダ姉のかんちがい
――ね、ね、いまね、いまさっきね、裏の玄関に、ブレフュスの叔父様が着かれたの。明日のパーティーのために、はるばるネイラディアからいらしたんですって
――へえ。あのおじさまが。めずらしい
――ね、きっとまたたくさん、おみやげくれると思うの。ね、今から三人で会いにいかない? ね? みんなでいまから一緒に行こ? ね?
――ま、それもいいわね。じゃ、ちょっと、顔出しにいこうかしら。色々おもしろい旅の話もきけるかもしれない。イシュミラ、あんたはどうする? 来る?
――も~、しょうがないな~ じゃ、ま、ローダ姉が行くっていうなら、わたしも別に、行ってもいいけど~
――わーい! じゃ、三人で行きましょ!
――って、こら。勝手に手にぎらないでよヨルフェってば
――別にいいでしょイシュミラねえさま! さ、はやくはやく。ミスローダねえさまも、ね?
――そうね。一緒に行きましょう。みんなそろって、三人で――
「おや? どうかされましたか? ミスローダ殿?」
「あ、ごめんなさい。ちょっと、ん、昔のことを、ちょっとその、考えて――」
「ほう。それはまた――」
「いいわ。ふたりとも、入って。じゃ、ヴェラザード、お父さんとわたしと三人で、あなたにぴったりな素敵な髪形を一緒に考えましょうか。お誕生日にふさわしい、とびきりのかわいい髪を、ね」
ミスローダは言って、
ニ人のために大きくドアをひらき、ニ人を中にとおした。そのあとうしろでドアを閉め――
閉める前に――
ミスローダはいちど、暗くなりゆく秋の夕空をちらりと見上げ――
そしてわずかに、唇の端で笑って――
そのあと静かに、中からドアをバタンと閉めた。
暗くなりゆく町の路地に、店の窓から光がやさしく漏れている。
人通りの途切れた道の上には、ひとつ、その、いつもの看板だけが残された。大きくも小さくもない、どこにでもある木でつくった素朴な看板。
そこにはこう記されている――
ミスローダの美容室
年齢・性別・職業・種族を問わず
「なんや、ほんであんた、肩のケガ、すっかり治ったんかいな?」
気持ちのよい秋晴れの朝。
店がひらくと同時にやってきたディルディーネのフェルルブローラ。もうすっかり常連顔で鏡の前にすわり、ミスローダに髪をといてもらっている。
「ま、だいたいはね。ときどき雨の日にピリッとひきつる感じで痛むけど。でも、それ以外は問題ない。指もちゃんとぜんぶ動くし――」
ミスローダはそう言って、それを証明するように、右の手のひらの上で櫛を曲芸のようにクルクルクルッと回した。
「…にしたかて、最近あれやな。なんやちょっと、雰囲気悪ぅなったな、ここの店。なんやら落ちつかれへん」
「なにが気にいらないの?」
「なにって、そら、あれやがな」
ディルディーネが言って、苦々しげに店の奥をにらむ。
いまそちらではニニが、また別の常連さんの髪を、ミスローダ特製の洗髪料をつかって、ちゃぷちゃぷ、ぺたぺた、丁寧に洗っているところだ。
「なんでまたあんなんに手伝わしとんの? まったく、ほんまに世も末やで」
「あら。なにがご不満?」
「不満に決まったるわ。だいいちあんなん、仕事つとまんのかい。あんなわけのわからん、おっそろしいバケモンに――」
「ずいぶん言うわね。でもじっさいのところ、近頃あの子、髪を洗うのだけは、ま、それなりに、最初にくらべると少しは上手くなってきてるわ。指の使い方も、それなりには、けっこうさまになって――」
「ちょ、ちょっと、きゃあ! なにこれ! どうなってるのよッ!!!!」
そっちにいたお客の女の子が、いきなり叫び声をあげた。
「あの、お客様、何かうちの助手に落ち度がありましたでしょうか?」
ミスローダが慌ててそばまでかけて行く。
「落ち度?? あんたこれ見なさいよ! なんでいきなりムラサキなのよ! なにしたらこんなどぎつい色に―― 冗談じゃないわよ! もうほんっっっとに信じられないッ!」
「ニニ、あなた何つかったのそれ??」
「なにって―― その、ここにあった、いつもの洗髪料だけど――」
「って、あんたそれ、中身ぜんぜん違うでしょ! これ、染色液よ! しかもこれ、まったく落ちないやつ! 落ちないどころか、髪の色素そのものを変えちゃうのよこれは!」
「え! す、すいませんすいませんっ。うっかり気づかなかったです~」
「うっかりってあなた、泡が立たない時点で普通は気づくでしょ! 色もほら、ぜんぜん違うじゃない! なんでこの時点で変だと思わないのよ??」
「ご、ごめんなさーい!」
…… …… ……
そのあとその女の子は怒りたけって泣きわめき―― なんとかそれをとりなしながら、もういちどミスローダがムリヤリ色を染め直し、いちおうそれっぽくもとの黄色の髪に復元し――
「まったく冗談じゃないわ! こんなひどい店、もうニ度と来ないから!」
と、その子はぷんぷん怒りながら帰ってしまった。ま、この日に限らず、今月に入ってからニニの失敗で失ったお客の数は、もうすでに、ひとりやふたりではない――
「ふえぇーん。。ご、ごめんなさいミスローダ~。もうほんとわたしったら、鈍くさくて――」
「いいから泣かない。失敗は誰にでもあるわ」
「でもでも~。せっかく近ごろ、いい感じでお客さんが増えてきたのに~。ほんとにバカなわたしのせいで、また、お客さん、減っちゃったら―― わたし、わたし―― ぐすん、」
「もういいから、さっさと泣きやみなさい。まだあっちにお客もいるのよ。みっともない――」
「ぐすん、ぐすん、でもでも、わ、わたしほんとに、こんなんじゃ、ふつうならもうとっくにクビですよ~。ミスローダを手伝う資格、もう、ぜんぜん、まるっきりあるはずもないですし――」
「資格? そんな言葉、あなたどこで覚えたの?」
ミスローダはめんどくさそうに片手でアタマをかいた。
「ま、べつにうちでは、こんなのでクビになんかしないわ。そもそもが、半分くらいわたしの趣味の道楽みたいなもの。お客が少々減ろうが、それで何かが変わるわけでもない」
ミスローダが深く息を吐く。それから少し、口調をゆるめた。
「だいいちあなた、まだここで始めたばかりでしょ? いろんなバカな間違いから、ちょっとずつでも学んで、なにが悪かったか考えて、少しずつでも良くなればいい。わたしも昔はいっぱい間違った。あんたよりもっとひどいのもあった。だから。ね? もういいから泣くのはやめて、またさっきみたいに、あなたのできることでわたしを手伝ってほしい。ね? わかった?」
「ふぇぇ~ん、ミスローダ~、」
「おいこら、そこっ。ミドリ髪ムスメ!」
むこうのイスの上から、ディルディーネがいらいらして叫んだ。
「あかんで! そんな、ミスローダになれなれしゅう抱きついたりしたら! うちの許可もとらんとそこ、なにベタベタニ人で湿っぽいことやっとんのや! もうこれ、ニ人して海に沈めたろかい!」
「あ、う、ご、ごめんなさい――」「ニニも、別にあいつにあやまる必要はないでしょ」
「ミスローダもミスローダや。うちもな、これでもいちおう客なんやで? あんた、さっきからどんだけうちのこと待たして――」
「ごめんごめん、悪かったわ、フェルルブローラ。今すぐそっちに戻る――」
…… …… ……
昼にはまたひとり、めずらしい客がきた。
夏のはじめに一度だけきた、ビーストテイマーの女の子。
こんどはオリフォンではなく、冬にむけて、自分の髪を可愛らしくアレンジしてほしいというリクエストだった。彼女がのってきたオリフォンは、今回は美容が終るまで、店の上空でおとなしく(?)待っているらしい。
その子はミスローダに髪を結ってもらいながら、次回はいちど春に、親友のクローダム・ライオンをつれてきてはダメだろうか、などと真顔でミスローダに相談していた。どうにもタテガミのカットがうまくいかないから、ぜひともこの店でやってあげて欲しいと。ミスローダはこの依頼を、ちょっぴり顔を引きつらせながら、その場でやんわり断っていたが――
午後には、釣り師のリヒティカットが家族連れでやってきた。淡い金色の長髪をなびかせた若い奥さんと、ちびのドラゴンハーフの娘と。
奥さんはいたって無口で―― というか、店にいるあいだじゅう、ひとことも何も話さなかった―― リヒティカットがミスローダを紹介すると、とても品の良い微笑をうかべ、目だけで綺麗にあいさつをした。そのあと夫が何か冗談言うと、くすくすと、手で口もとをかくして品よく笑った。ほっそりした、まるで絵の中から抜け出してきたような、とにかくものすごい美人で――
彼女とリヒティカットがならぶと、これはもう、実に似あいのカップルだった。店にいたほかのお客たちが、どうにも落ち着かない様子でちらちらとニ人の方を盗み見していた。
その奥さんは、かなり長く足もと近くまでのびていた金の髪を、ミスローダのすすめにしたがい、背中の真ん中あたりまで、思いきって短くして――
彼女はその新しい髪形を、とても気に入ったようだった。
鏡を見ながら、さいごはニコッと笑顔になって―― リヒティとふたり手を取りあい、仲良く店を出て行った。
そのあと赤髪のチビの娘だけは、まだ店に残った。このあと店がしまったら、ニ階の部屋でニニと遊んで、今夜は泊まって帰ることになっている。店の中で待つうちに、三つ四つ、化粧品の瓶を勝手に口に入れて食べてしまったから、怒り狂うミスローダによって店のニ階に叩き上げられた。そのときミスローダは顔を引っかかれ、ほっぺたにいくつかあらたに切り傷を作った――
…… …… ……
もうそろそろ閉店という時刻になって、思いがけなく、その男がやってきた。
もうだいぶ外は暗くなりかけていたが――
彼が戸口に立ったとたん、急に夜がまた近くなったようで――
ひやりと冷たい風が吹き――
「おや、これはよかった。まだ閉店ではないのですね?」
「ダルムロッグ? あなた何しに――」
ミスローダはあっけにとられて、その、黒ずくめの服をきた、顔色の悪いやせた男を見つめた。あいかわらず表情にとぼしく、鼻の上には、いつもの小さな丸眼鏡が怪しく光り――
「あらためまして、こんにちは。ミスローダ殿。それに助手の御嬢さんも。おふたりとも、いつにもまして見目麗しく――」
「って、なんであんたがまたここにくるのよ! こんどは何の話? もうあの件は、イシュミラの調停で全部おわったはず――」
「いえいえ、今日は仕事ではありません」
男は左右に首をふり、にやりと小さく笑った。
「今日はわたくし非番を頂いております。いやね、なかなか気持ちの良い時候になりましたから、それにあわせて、ひとつ、わたくしのこの髪でも整えようかと。さきほど思い立ちまして。いつもはコウモリの肝脂などで、むりやりまとめて押さえつけることしかしておりません。たまにはもう少し、今風の若々しい、さわやかな髪に変えていただいたりはできないものかなと。ま、このように考えまして――」
「なに、まさかおまえ、お客できたっていうの?」
「おや? いけませんでしたか?」
男がふたたび微笑する。唇の端から、鋭い犬歯がのぞく。
「わたくしの知りうるかぎり、美容室はとくに女性専用というわけでもないはずですし―― それにそちらの看板にも、ほら、ちゃんと書いてあります。職業性別を問わず、と。ですからネクロマンサー男子たるわたくしが来たとして、まさか入店を断られるなどとは、ゆめ、想像もしませんでしたが――」
「くっ。痛いところをついてくるわね」
「ふ、冗談です」
ダルムロッグが、きゅうに表情をやわらげた。
「じっさい髪をみて頂きたいのは、わたくしではありません」
「え?」
「そうではなく、こちら、このムスメの方で――」
ミスローダが視線を下げると、そこには、ひとりの――
ダルムロッグの足にしがみつくようにして――
ちっちゃな、かわいらしい、サラサラした真珠色の髪の――
「ちょっとあんた! これ何よ! どっからさらってきたのよ、こんなかわいい女の子!」
「おや? 人さらいとは人聞きのわるい。何を申しましょう、これはわたくしの本当のムスメです。名前はヴェラザード。ほら、ヴェラ、ちゃんとこの方にあいさつして」
「こ、こんにちはっ。」
淡い真珠色の髪の少女が、こわごわミスローダにアタマを下げた。しかしまたすぐに、ダルムロッグの後ろにまわる。かくれるようにミスローダの様子を下からじっとうかがって――
「いや、申し訳ない。これはいささか人見知りなところがありましてね。ま、でも、すぐに慣れると思いますよ」
「って、あんた娘がいたなんて聞いてないわよ! 結婚してることだってこれ、わたしには初耳も初耳――」
「おや? そうでしたかな?」
ダルムロッグがとぼけた顔で首をひねる。
「わたくしひとことも、未婚であるとは誰にも申し上げたことがなかったかと。じっさいこれ以外にもあとふたり、妻とのあいだに娘がおります。これはその、一番末の子でして」
ダルムロッグが、娘のアタマにそっとさわった。
「いえね、じつは今日が、この子の誕生日なのです。このあと夜には家で、ささやかな誕生の宴を催す手はずになっておりまして。で、その、なんと申しましょう、わたくしからの、ひとあし早いプレゼント、とでも申しましょうか。ふだん忙しさにかまけてあまりかまってもやれない。なにかちょっとくらい、今日は特別なことをしてやれないものかと。そのように思いましてね。いかがでしょう? こういう話であっても、やはりこれは、無理ですかな?」
「誕生――日? プレゼント?」
ミスローダはまぶしいものでも見るように――
いまそこに隠れている、その、臆病そうな小さな娘を見やった。
✵ ☆ ☾ ✵ ☆ ☾ ✵ ☆ ☾
――ねえさま、見て見て! この新しい髪形!
――へえ、あなたそれ、どうしたの?
――明日はね、わたし、お誕生日なのよ! それでね、お母様がわざわざ自分で、さっき切ってくださったの! お誕生日にふさわしいように、かわいくしてあげるわって! どうどう? わたしに似合ってる?
――ええ。すごくいいわね。ほんとに可愛く見えるわヨルフェ
――やった~! へへ~ ミスローダねえさまにもほめられた~
――なにさわいでんの、ふたりして?
――あ、イシュミラおねえさま!
――ふん、なにそれ? ヨルフェあんた、ま~たそんな、かわいげなお嬢様カットなんか――
――へへへ~。お母様に切ってもらったのよ~
――あっそう。ま、それなりに似合ってるかも… って言っといたげるわ。まったくあんた、この手のロリっこブリッこの路線をやらせたら、ほんとに右に出るものは――
――こらイシュミラ。素直にかわいいって褒めてあげれないの?
――なによ~ローダ姉。今のはわたしなりの褒め言葉なんだからね~
――どうかしら。あんたいつもこの子に嫌味ばっかり言って
――そんなことないない~ そこはなにげにローダ姉のかんちがい
――ね、ね、いまね、いまさっきね、裏の玄関に、ブレフュスの叔父様が着かれたの。明日のパーティーのために、はるばるネイラディアからいらしたんですって
――へえ。あのおじさまが。めずらしい
――ね、きっとまたたくさん、おみやげくれると思うの。ね、今から三人で会いにいかない? ね? みんなでいまから一緒に行こ? ね?
――ま、それもいいわね。じゃ、ちょっと、顔出しにいこうかしら。色々おもしろい旅の話もきけるかもしれない。イシュミラ、あんたはどうする? 来る?
――も~、しょうがないな~ じゃ、ま、ローダ姉が行くっていうなら、わたしも別に、行ってもいいけど~
――わーい! じゃ、三人で行きましょ!
――って、こら。勝手に手にぎらないでよヨルフェってば
――別にいいでしょイシュミラねえさま! さ、はやくはやく。ミスローダねえさまも、ね?
――そうね。一緒に行きましょう。みんなそろって、三人で――
「おや? どうかされましたか? ミスローダ殿?」
「あ、ごめんなさい。ちょっと、ん、昔のことを、ちょっとその、考えて――」
「ほう。それはまた――」
「いいわ。ふたりとも、入って。じゃ、ヴェラザード、お父さんとわたしと三人で、あなたにぴったりな素敵な髪形を一緒に考えましょうか。お誕生日にふさわしい、とびきりのかわいい髪を、ね」
ミスローダは言って、
ニ人のために大きくドアをひらき、ニ人を中にとおした。そのあとうしろでドアを閉め――
閉める前に――
ミスローダはいちど、暗くなりゆく秋の夕空をちらりと見上げ――
そしてわずかに、唇の端で笑って――
そのあと静かに、中からドアをバタンと閉めた。
暗くなりゆく町の路地に、店の窓から光がやさしく漏れている。
人通りの途切れた道の上には、ひとつ、その、いつもの看板だけが残された。大きくも小さくもない、どこにでもある木でつくった素朴な看板。
そこにはこう記されている――
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