Welcome to Another Earth

八神獅童

文字の大きさ
15 / 83

第2章 第6話 管理人の実力

しおりを挟む
「そんな…全然効いてない?!」

桃香は自身の攻撃が研究施設の管理人に通用しなかった事に驚愕していた。ブラックエリアでの改造を重ねたアバターなので、打撃力は十分なはずだった。

「貴方のアバターは普通に強いですよ。普通以上ではないですが」

「くそっ…単なる打撃が駄目なら…」

桃香はデバイスを操作して、2つの拳銃を召喚した。2つとも昔製造されていた"S&WM500"に酷似した形状になっていた。

「往生せいやぁっ!」

桃香は管理人に二丁拳銃を向けて、ビームを連射した。管理人に直撃したビームは爆発し、普通のユーザーなら一瞬で再起不能になる威力である事は明らかだった。

「何その銃…ビーム連射できるの…?」

「うん。大抵の場合はこれで相手のアバターは粉微塵になるけど…そうはいかないかぁ…」

管理人はスーツがボロボロになっただけで、本体は無傷だった。特に痛そうにしている様子も無く、桃香の戦闘能力を冷静に分析している様子だった。

「それでは…こっちの番ですね」

(速いけど…)ガンッ!「ぐっ…一撃が…重いっ…!」

管理人の攻撃スピードは確かに速かったが、それでも見切れない程ではなかった。しかし威力は高く、ギリギリ受け止められる限界の重さだった。

「おや、反撃はしないのですか?でしたらこのままトドメといきましょう」

管理人は乱暴に腕を振り回しているだけなのに、威力は凄まじかった。桃香は両腕を使って受け止めているだけだったので、突破されるのは時間の問題に見えた。

「桃香!」

「鼎サンはその子を守って!」

桃香は、ナイフ型に変えたデバイスを構えて管理人に立ち向かおうとする鼎を制止した。鼎は加奈を連れて安全な場所まで急いで移動する事にした。

「やれやれ…貴方を倒してから追いかけるとしますか」

「そう簡単にやられる訳ないでしょ!」

管理人は相変わらず乱暴なパンチによる攻撃しかしなかったが、威力はかなり高かった。桃香は耐えて避けつつ、反撃の機会を待っていた。

(もう少し…もう少しこっちまで誘き寄せられれば…)

桃香は後退しながら、攻撃を受け止め続けていた。管理人に気づかれないように罠の準備をしながら、後ろに下がり続けていた。

(…今だ!)

桃香は後ろに飛び退いて転がりながらデバイスを操作して、雷撃網を起動した。気づかぬうちに網を踏んでいた管理人に、凄まじい電撃が走った。

(物理的な打撃が駄目なら…!)

物理攻撃が通用しないのであれば、電撃を使ってアバターの神経を攻撃しようという考えだった。神経系統を破壊してしまえば、仮想現実のアバターだろうと修理が必要になる。

「なるほど…よく考えましたね。元のアバターで来なくて良かった…ですけどね」

「なにっ…!」

「現実世界の死体と同じですよ。抜け殻使っていれば、今さら神経壊されてもどうと言う事は無いんです」

「がはっ…」

動揺していた桃香は隙を突かれて、腹部に強烈な一撃を喰らった。受け止める事が出来なかった桃香は、そのまま倒れ込んでしまった。

「さてと…今頃加奈は敦也が回収しているでしょうか…」

管理人は素早くその場を立ち去って、鼎達が逃げた方向へ向かった。桃香はダメージが大きく、その場から動けない状態になっていた。

ーー

「もうすぐブラックエリアの出口…!ここから出れば安全だから…!」

鼎と加奈は、ブラックエリアの出入口の間近まで来ていた。ブラックエリアを脱出してしまえば、無関係のユーザーがたくさんいる中で、堂々と攻撃を仕掛けられる事はなくなるはずだ。

「待て!その少女を連れてここを出る事は許さない!」

鼎達の前に立ちはだかったのは、中世の騎士の姿をしたアバターの男だった。少なくとも、管理人の男の様な異質さは感じられないが…

(こいつ一人なら…私一人で何とかできる!)

「お前の同行者は拘束させてもらった!」

同行者…桃香が拘束されたと聞いて、鼎は一瞬だが動きを止めてしまった。その隙に腹部に強烈な一撃を喰らい、鼎は蹲ってしまった。

「はい、侵入者は気絶させました…分かりました、彼女も拘束して…」

薄れゆく意識の中、敦也の電話の声を聞いた鼎は、

(加奈だけでも逃がさないと…)

そう思っていたが、それが叶わないまま、意識を手放した…
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...