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第5章 第4話 潜入 風俗店
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「それは無茶がある…」
「鼎サンはお客サンとして正面から入る。ボクは風俗嬢として裏から入る。上手く行くと思うよ~?」
桃香が提案した作戦は、鼎は客として、桃香は風俗嬢として潜入するというものだった。二人で正面から入店するよりはまともな策だが、鼎は渋っていた。
「私が客として入って、風俗嬢にどうやって相手してもらうの?」
「風俗嬢は女の子相手でも適切なプレイをするよ」
ブラックエリアで賭場を管理にしている桃香は、水商売についてもある程度の知識を身につけていた。別に同性愛者向けの店で無くとも、風俗嬢は拒否出来ないらしい。
「…マイノリティは、ブラックエリアの店を使うものなの?」
「少数派に対して、未だに冷たい世の中だからね。VR空間のアングラな領域で欲望を満たすしか無い人もいるんだよ」
そう言う桃香は、普段とは違う暗い表情になっていた。鼎は静かに彼女の話を聞いて、客としての潜入を決意した。
「バレない様に、上手くやれるかな?」
「大丈夫大丈夫!鼎サン、女の子にも人気出そうな顔してるし」
「女の子の人気集めた事無いけど…」
「ま、上手くやれると思うよ」
桃香は相変わらず無責任そうだが、鼎はしょうがないので了承した。桃香は手早くデバイスを操作して、風俗店に潜入する準備をした。
「へぇ、結構綺麗な色合い」
「風俗嬢に変装するからこそ、オシャレしないとね」
桃香がデバイスを使って召喚したのは、落ち着いた深い青のドレスだった。ちなみに鼎の方は、敢えて普段外出する為の服を設定した。
「ま、あんな店にオシャレしてくる客の方が不自然だから、ピッタリだと思うよ」
「…服のセンスが悪いのは、自分で分かってるから」
「それじゃあ、指定の場所に行こう。鼎サンも気をつけて」
「風俗嬢のフリする桃香の方が危険でしょ…ま、あなたなら大丈夫か」
鼎と桃香は二手に分かれて、風俗店への潜入を開始した。鼎は早速、ピンク色の光に照らされた風俗店に入った。
ーー
(店内はそこまで明るくない…というか暗いな)
派手に照らされた外観とは裏腹に、店内は暗く陰鬱な雰囲気だった。鼎は改めてここがブラックエリアの店なのだと理解した。
(キョロキョロしてたら怪しまれる。カウンターは…)
鼎はカウンターと思われる場所に行ってみたが、勝手が分からない。取り敢えず利用時間の料金表を見ていたら、店員の方から話しかけられた。
「…こういう店は、初めてですか?」
「ええ…これまで、他の方法でストレスを発散していたので…」
幸い、女性だからという理由で怪しまれる事は無かった。鼎は気を取り直して、愛莉と接触する手段を探し始めた。
「指名はできますか?」
「追加料金がかかります」
「では、アイリという子を…」
「アイリを指名できるのは、プラチナ会員に限られます」
どうやら、愛莉には簡単に接触出来ない様にしているみたいだ。鼎は落ち着いて、他の風俗嬢を指名する事にした。
「他に指名出来る子で、初めての人へのオススメは…?」
「こちらのナオちゃんがオススメです。もう新人では無いので、慣れてますよ」
店員が見せて来た写真には、黄色のショートヘアの女の子が写っていた。元気そうな表情だったがブラックエリアで風俗嬢をやっている時点で、平和な生活を送れていないのは明らかだった。
「ではこの子でお願いします」
指名料はかなり高かったが、入ったばかりの新人が相手ではまともな情報を得られない。鼎はナオから、何としてでも愛莉について聞き出したかった。
「手荒なマネだけはおやめください。ブラックエリアなら全てが許される訳では無いので…」
「それは分かっています」
手続きを終えた鼎は、指定された部屋へと向かう。すぐに扉を開けるのは良くないと思った彼女は、まずノックした。
「カナエさんですね。どうぞ入ってください」
返事が聞こえたので、鼎はゆっくりドアを開けて部屋に入る。中にいたのは黄色のショートヘアの少女、ナオだった。
「扉の扱いも丁寧ですね。普段はもっと乱暴な方がお客さんなので…」
「そう…普段のあなたの仕事がどんな感じなのか、想像もつかないな…」
鼎は風俗嬢であるナオに対して、無用な深掘りはしたくなかった。辛い体験が日常になっている可能性もあるので、下手に刺激するのは危険なのだ。
「私、普段は会社員やってるけど…上司が高圧的でね…」
鼎は風俗嬢の前では、会社員だと偽る事に決めていた。万が一探偵であると口にしてしまえばまず間違いなく調査だと疑われて、全てがぶちこわしになる。
「あはは…ちゃんとした所で働くのも、大変なんですね…」
ナオは鼎の愚痴も大人しく聞いてあげる、優しい少女だった。風俗店の普段の客はもっと乱暴なので、行為を求めない客の相手をしている間は落ち着けるのだ。
「このお店の、他の子について聞いてもいい?」
「プライベートな事は、秘密にします」
詳細を聞く事は難しいかも知れないが、少しでも愛莉の状況が分かるかも知れない。鼎は余計な詮索をしない様にしながら、この風俗店の真相を探り始めた。
「アイリってどんな子かな?私まだプラチナ会員じゃないから会えなくて」
「アイリちゃんですか…犬耳で紫色の髪の子ですよね?すみません、入って来たばかりの子は私もよく知らないんです」
どうやらナオは、それなり長くこの風俗店に勤めているのかも知れない。風俗嬢にはそれぞれの事情があるので、後輩の事を何も知らなくてもおかしくは無いのだ。
「でもあの子は自分の意思でここで働いている訳では無さそうです。誘拐して来たみたいな話も聞いたし…」
「アナザーアースでの誘拐は意味が無いんじゃない?ログアウトすれば一瞬で現実世界へ脱出できる訳だし…」
「ユーザーデータを改竄できる人がいるらしいんです…当然規約違反ですが、誰がやっているかも分からないので摘発出来ないみたいです」
「ユーザーデータの改竄…なるほどね…」
愛莉のユーザーデータが何者かによって改竄されているのは明らかだった。そのせいで、記憶や人格すら書き換えられてしまっているのだ。
(ここから愛莉を連れ出して…どうするか…)
ーー
(風俗嬢のみんな、やっぱり暗い表情の子が多いな…)
桃香は風俗嬢の控え室の隅で、彼女達の様子を観察していた。ここで働いている風俗嬢の多くが、疲弊している様だ。
(まだ愛莉チャンは戻って来てない…まずは聞き込みかな)
風俗嬢達に話を聞いた桃香だったが、彼女達は新人に扮した少女の話など聞かなかった。もちろん、この程度で諦めてしまう桃香では無い。
(風俗嬢が入れない場所…従業員用のフロアを調べてみよう)
ーー
連勤して疲れ果てている警備員の隙を突くのは、桃香にとっては空き巣の何倍も簡単な事だった。見回りもちゃんとしていない警備員を尻目に、エレベーターへ乗り込んだ。
(古いエレベーター…最新式に変えたりはしてないんだね)
桃香はエレベーターを降りて、暗い照明の廊下を歩く。客が利用するフロアとは違い、灰色で無機質だった。
(廊下の隅に埃が溜まってるよう…汚いなぁ…)
桃香は廊下に並ぶ扉の先を、一つ一つ調べていた。更衣室や倉庫などがあったが、重要そうな物は無かった。
(今ところ人の気配は無いけど急いだ方が良いな。念の為、更衣室で適当な服を拝借しよう)
更衣室で事務員の服に着替えた桃香は、廊下の奥の方にあった小さなオフィスを調べ始めた。事務員が使用していると思われるデスクには、資料が散乱していた。
(これは風俗嬢達の履歴書みたいなものかな?)
桃香の目を引いたのは、風俗嬢の顔写真がついた資料だった。本人の申告ではなく、風俗店側が勝手に調べた経歴だろう。
(この中に…あった!愛莉チャンの!)
桃香は風俗嬢にされた愛莉についての資料を見つけ、すぐにデバイスにデータを残した。こうすれば、ここにある紙を持ち出す必要も無い。
(やはり無理やり連れて来られてた…でも人格を書き換えた方法が分からないな)
データがデバイスに入っている以上、ここにいる必要は無い。桃香はオフィスを出て、エレベーターへ向かおうとした。
「オフィスはとっくに閉めたはずだけど…忘れ物でもしたの?」
「ええ…妹への誕生日プレゼントを取りに来たんです。本当に大切なんです…」
エレベーターから出て来た大きいバッグを持った従業員に鉢合わせた桃香だったが、落ち着いて誤魔化そうとしていた。服は着替えてあるので、最近来たばかりで慣れていない事務員として振舞う事にした。
「誕生日プレゼント?ゴミ箱に突っ込んであったこれじゃなくて?」
従業員は大きいバッグから、桃香が風俗嬢に扮する為に着ていたドレスを引っ張り出した。もう使わないと判断した桃香が、ゴミ箱に入れたのだ。
「ゴミ箱に手を突っ込んだんですか…?汚いですよ…」
「あなたこそ、質のいいドレスを簡単に捨てるなんてもったいないわ。ウチの風俗嬢の為に再利用するね」
桃香本人も、自分が侵入者だとバレている事を悟っていた。この場を突破して脱出する隙を、探っているのだ。
(今しかない!)
桃香は咄嗟にデバイスを操作して、小型の手榴弾を召喚した。これを従業員に投げつけてやれば、かなりのダメージを与えられるだろう。
「甘いわね」
従業員がそう言うと同時に、桃香の周囲に避雷針の様な4つの鉄で出来た長い棒が現れた。長い棒に向かって電撃が発生して、その内側にいる桃香へダメージを与える。
「電撃への対策はしてないのね、そのアバター」
(しまっ…た…)
電撃が直撃した桃香は倒れ、従業員によって運ばれてしまった…
「鼎サンはお客サンとして正面から入る。ボクは風俗嬢として裏から入る。上手く行くと思うよ~?」
桃香が提案した作戦は、鼎は客として、桃香は風俗嬢として潜入するというものだった。二人で正面から入店するよりはまともな策だが、鼎は渋っていた。
「私が客として入って、風俗嬢にどうやって相手してもらうの?」
「風俗嬢は女の子相手でも適切なプレイをするよ」
ブラックエリアで賭場を管理にしている桃香は、水商売についてもある程度の知識を身につけていた。別に同性愛者向けの店で無くとも、風俗嬢は拒否出来ないらしい。
「…マイノリティは、ブラックエリアの店を使うものなの?」
「少数派に対して、未だに冷たい世の中だからね。VR空間のアングラな領域で欲望を満たすしか無い人もいるんだよ」
そう言う桃香は、普段とは違う暗い表情になっていた。鼎は静かに彼女の話を聞いて、客としての潜入を決意した。
「バレない様に、上手くやれるかな?」
「大丈夫大丈夫!鼎サン、女の子にも人気出そうな顔してるし」
「女の子の人気集めた事無いけど…」
「ま、上手くやれると思うよ」
桃香は相変わらず無責任そうだが、鼎はしょうがないので了承した。桃香は手早くデバイスを操作して、風俗店に潜入する準備をした。
「へぇ、結構綺麗な色合い」
「風俗嬢に変装するからこそ、オシャレしないとね」
桃香がデバイスを使って召喚したのは、落ち着いた深い青のドレスだった。ちなみに鼎の方は、敢えて普段外出する為の服を設定した。
「ま、あんな店にオシャレしてくる客の方が不自然だから、ピッタリだと思うよ」
「…服のセンスが悪いのは、自分で分かってるから」
「それじゃあ、指定の場所に行こう。鼎サンも気をつけて」
「風俗嬢のフリする桃香の方が危険でしょ…ま、あなたなら大丈夫か」
鼎と桃香は二手に分かれて、風俗店への潜入を開始した。鼎は早速、ピンク色の光に照らされた風俗店に入った。
ーー
(店内はそこまで明るくない…というか暗いな)
派手に照らされた外観とは裏腹に、店内は暗く陰鬱な雰囲気だった。鼎は改めてここがブラックエリアの店なのだと理解した。
(キョロキョロしてたら怪しまれる。カウンターは…)
鼎はカウンターと思われる場所に行ってみたが、勝手が分からない。取り敢えず利用時間の料金表を見ていたら、店員の方から話しかけられた。
「…こういう店は、初めてですか?」
「ええ…これまで、他の方法でストレスを発散していたので…」
幸い、女性だからという理由で怪しまれる事は無かった。鼎は気を取り直して、愛莉と接触する手段を探し始めた。
「指名はできますか?」
「追加料金がかかります」
「では、アイリという子を…」
「アイリを指名できるのは、プラチナ会員に限られます」
どうやら、愛莉には簡単に接触出来ない様にしているみたいだ。鼎は落ち着いて、他の風俗嬢を指名する事にした。
「他に指名出来る子で、初めての人へのオススメは…?」
「こちらのナオちゃんがオススメです。もう新人では無いので、慣れてますよ」
店員が見せて来た写真には、黄色のショートヘアの女の子が写っていた。元気そうな表情だったがブラックエリアで風俗嬢をやっている時点で、平和な生活を送れていないのは明らかだった。
「ではこの子でお願いします」
指名料はかなり高かったが、入ったばかりの新人が相手ではまともな情報を得られない。鼎はナオから、何としてでも愛莉について聞き出したかった。
「手荒なマネだけはおやめください。ブラックエリアなら全てが許される訳では無いので…」
「それは分かっています」
手続きを終えた鼎は、指定された部屋へと向かう。すぐに扉を開けるのは良くないと思った彼女は、まずノックした。
「カナエさんですね。どうぞ入ってください」
返事が聞こえたので、鼎はゆっくりドアを開けて部屋に入る。中にいたのは黄色のショートヘアの少女、ナオだった。
「扉の扱いも丁寧ですね。普段はもっと乱暴な方がお客さんなので…」
「そう…普段のあなたの仕事がどんな感じなのか、想像もつかないな…」
鼎は風俗嬢であるナオに対して、無用な深掘りはしたくなかった。辛い体験が日常になっている可能性もあるので、下手に刺激するのは危険なのだ。
「私、普段は会社員やってるけど…上司が高圧的でね…」
鼎は風俗嬢の前では、会社員だと偽る事に決めていた。万が一探偵であると口にしてしまえばまず間違いなく調査だと疑われて、全てがぶちこわしになる。
「あはは…ちゃんとした所で働くのも、大変なんですね…」
ナオは鼎の愚痴も大人しく聞いてあげる、優しい少女だった。風俗店の普段の客はもっと乱暴なので、行為を求めない客の相手をしている間は落ち着けるのだ。
「このお店の、他の子について聞いてもいい?」
「プライベートな事は、秘密にします」
詳細を聞く事は難しいかも知れないが、少しでも愛莉の状況が分かるかも知れない。鼎は余計な詮索をしない様にしながら、この風俗店の真相を探り始めた。
「アイリってどんな子かな?私まだプラチナ会員じゃないから会えなくて」
「アイリちゃんですか…犬耳で紫色の髪の子ですよね?すみません、入って来たばかりの子は私もよく知らないんです」
どうやらナオは、それなり長くこの風俗店に勤めているのかも知れない。風俗嬢にはそれぞれの事情があるので、後輩の事を何も知らなくてもおかしくは無いのだ。
「でもあの子は自分の意思でここで働いている訳では無さそうです。誘拐して来たみたいな話も聞いたし…」
「アナザーアースでの誘拐は意味が無いんじゃない?ログアウトすれば一瞬で現実世界へ脱出できる訳だし…」
「ユーザーデータを改竄できる人がいるらしいんです…当然規約違反ですが、誰がやっているかも分からないので摘発出来ないみたいです」
「ユーザーデータの改竄…なるほどね…」
愛莉のユーザーデータが何者かによって改竄されているのは明らかだった。そのせいで、記憶や人格すら書き換えられてしまっているのだ。
(ここから愛莉を連れ出して…どうするか…)
ーー
(風俗嬢のみんな、やっぱり暗い表情の子が多いな…)
桃香は風俗嬢の控え室の隅で、彼女達の様子を観察していた。ここで働いている風俗嬢の多くが、疲弊している様だ。
(まだ愛莉チャンは戻って来てない…まずは聞き込みかな)
風俗嬢達に話を聞いた桃香だったが、彼女達は新人に扮した少女の話など聞かなかった。もちろん、この程度で諦めてしまう桃香では無い。
(風俗嬢が入れない場所…従業員用のフロアを調べてみよう)
ーー
連勤して疲れ果てている警備員の隙を突くのは、桃香にとっては空き巣の何倍も簡単な事だった。見回りもちゃんとしていない警備員を尻目に、エレベーターへ乗り込んだ。
(古いエレベーター…最新式に変えたりはしてないんだね)
桃香はエレベーターを降りて、暗い照明の廊下を歩く。客が利用するフロアとは違い、灰色で無機質だった。
(廊下の隅に埃が溜まってるよう…汚いなぁ…)
桃香は廊下に並ぶ扉の先を、一つ一つ調べていた。更衣室や倉庫などがあったが、重要そうな物は無かった。
(今ところ人の気配は無いけど急いだ方が良いな。念の為、更衣室で適当な服を拝借しよう)
更衣室で事務員の服に着替えた桃香は、廊下の奥の方にあった小さなオフィスを調べ始めた。事務員が使用していると思われるデスクには、資料が散乱していた。
(これは風俗嬢達の履歴書みたいなものかな?)
桃香の目を引いたのは、風俗嬢の顔写真がついた資料だった。本人の申告ではなく、風俗店側が勝手に調べた経歴だろう。
(この中に…あった!愛莉チャンの!)
桃香は風俗嬢にされた愛莉についての資料を見つけ、すぐにデバイスにデータを残した。こうすれば、ここにある紙を持ち出す必要も無い。
(やはり無理やり連れて来られてた…でも人格を書き換えた方法が分からないな)
データがデバイスに入っている以上、ここにいる必要は無い。桃香はオフィスを出て、エレベーターへ向かおうとした。
「オフィスはとっくに閉めたはずだけど…忘れ物でもしたの?」
「ええ…妹への誕生日プレゼントを取りに来たんです。本当に大切なんです…」
エレベーターから出て来た大きいバッグを持った従業員に鉢合わせた桃香だったが、落ち着いて誤魔化そうとしていた。服は着替えてあるので、最近来たばかりで慣れていない事務員として振舞う事にした。
「誕生日プレゼント?ゴミ箱に突っ込んであったこれじゃなくて?」
従業員は大きいバッグから、桃香が風俗嬢に扮する為に着ていたドレスを引っ張り出した。もう使わないと判断した桃香が、ゴミ箱に入れたのだ。
「ゴミ箱に手を突っ込んだんですか…?汚いですよ…」
「あなたこそ、質のいいドレスを簡単に捨てるなんてもったいないわ。ウチの風俗嬢の為に再利用するね」
桃香本人も、自分が侵入者だとバレている事を悟っていた。この場を突破して脱出する隙を、探っているのだ。
(今しかない!)
桃香は咄嗟にデバイスを操作して、小型の手榴弾を召喚した。これを従業員に投げつけてやれば、かなりのダメージを与えられるだろう。
「甘いわね」
従業員がそう言うと同時に、桃香の周囲に避雷針の様な4つの鉄で出来た長い棒が現れた。長い棒に向かって電撃が発生して、その内側にいる桃香へダメージを与える。
「電撃への対策はしてないのね、そのアバター」
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