40 / 83
第5章 第5話 追い詰められる桃香 そしていなくなるNPC
しおりを挟む
「で…なんであなたは風俗嬢に紛れていたの?」
桃香は不審者の取り調べをするための、殺風景な部屋に連れて来られていた。風俗店の従業員であるスミレは、早速桃香に対して質問をした。
「単刀直入に聞くわね。あなたは何処から来た何者なの?」
「…ブラックエリアに流れ着いて来た者同士なら、分かるでしょ。ボクに居ていい場所なんて無かったんだよ」
桃香には素性を明かす気など、当然ながら無かった。ブラックエリアにいる者なら、過去について話さないのは当たり前だからである。
「こんな所に忍び込んで来たんだし、まともじゃないやヤツなのは分かってる」
ブラックエリアの賭場の管理人である事を証明すれば、この場からは脱出可能だろう。だが、長期的な視点で見れば無駄な争いを生むデメリットの方が大きい。
(対して強くない女1人を倒すのは簡単だけど…もう少し事態の変化を待ってもいいかな)
ーー
(桃香は上手くやっているかな…)
鼎は風俗店の客として、ナオに相手をしてもらっていた。もちろん客のフリをしているだけなので、ナオに何かする気は無い。
「まぁこのご時世、真面目に働いていても生活は苦しくて…ごめんナオ、ここで電話出ていい?」
「大丈夫ですよ」
ナオと世間話をしていた鼎のデバイスから、着信音が鳴り響いた。ナオの許可をもらってから電話に出ると、かなり慌てている声が聞こえて来た。
「この声は…アリス?すごい慌ててるみたいだけど緊急事態?」
「ペルタがいなくなった!」
鼎はすぐに電話の向こうで起きている事態の異常性を理解した。ゲームのNPCが“外側”に出るなど、当然ながらあり得ないはずだからだ。
「ペルタの居所の目星はついてる?他のルナプロのNPCに話は聞いた?」
「NPCの子達に聞いたら、ペルタはずっと外の世界への憧れを語ってたって言ってました…ペルタは多分まだメインストリートにいるはずです」
落ち着きを取り戻したアリスは、現在起きている事態について鼎に伝えた。脳内で情報を整理しながら、鼎は最善策を考え続けた。
「ペルタって長いオレンジ色の髪の子だよね。すぐには動けないけど、私がいるギルドのメンバーにメッセージを送る…ギルド名変わってるかな」
「助かります…私は鼎さんがいるギルド、ワーウルフズと協力して捜索します。進展があったら連絡します…」
通話が切れて、鼎はふと以前のギルド名を思い出す。“アルティメット気持ち良すぎだろギャラクシー”という、桃香のあまりに壊滅的なセンスから生み出された名前だ。
(ワウカ、ギルド名変えたんだ…まあギルドマスターの桃香がほとんどプレイしてなかったんだし、勝手に名前変えられても文句言えないだろうな)
桃香は先日起こした騒動のせいで、ギルド出入り禁止になった。ついでにギルドマスターもワウカに変わってしまった。
「大丈夫ですか?電話の相手はかなり焦ってるみたいでしたけど…」
「だからって私が焦っても事態は変わらない。ここで出来ることをやるよ」
「さっきゲームのNPCの話をしていましたが…」
「うん、lunar eclipse projectってゲームなんだけど…知ってる?」
「るな…いく?」
「やっぱり知らないか。だいぶマイナーなゲームだからね」
ナオはきょとんとした表情だったが、改めて真剣な顔になって鼎を見つめた。鼎もそんな彼女の顔を見て、これから何を言うのかを察した。
「鼎さんがここに来た目的は何ですか?ただのお客さんじゃ無いですよね…?」
桃香は不審者の取り調べをするための、殺風景な部屋に連れて来られていた。風俗店の従業員であるスミレは、早速桃香に対して質問をした。
「単刀直入に聞くわね。あなたは何処から来た何者なの?」
「…ブラックエリアに流れ着いて来た者同士なら、分かるでしょ。ボクに居ていい場所なんて無かったんだよ」
桃香には素性を明かす気など、当然ながら無かった。ブラックエリアにいる者なら、過去について話さないのは当たり前だからである。
「こんな所に忍び込んで来たんだし、まともじゃないやヤツなのは分かってる」
ブラックエリアの賭場の管理人である事を証明すれば、この場からは脱出可能だろう。だが、長期的な視点で見れば無駄な争いを生むデメリットの方が大きい。
(対して強くない女1人を倒すのは簡単だけど…もう少し事態の変化を待ってもいいかな)
ーー
(桃香は上手くやっているかな…)
鼎は風俗店の客として、ナオに相手をしてもらっていた。もちろん客のフリをしているだけなので、ナオに何かする気は無い。
「まぁこのご時世、真面目に働いていても生活は苦しくて…ごめんナオ、ここで電話出ていい?」
「大丈夫ですよ」
ナオと世間話をしていた鼎のデバイスから、着信音が鳴り響いた。ナオの許可をもらってから電話に出ると、かなり慌てている声が聞こえて来た。
「この声は…アリス?すごい慌ててるみたいだけど緊急事態?」
「ペルタがいなくなった!」
鼎はすぐに電話の向こうで起きている事態の異常性を理解した。ゲームのNPCが“外側”に出るなど、当然ながらあり得ないはずだからだ。
「ペルタの居所の目星はついてる?他のルナプロのNPCに話は聞いた?」
「NPCの子達に聞いたら、ペルタはずっと外の世界への憧れを語ってたって言ってました…ペルタは多分まだメインストリートにいるはずです」
落ち着きを取り戻したアリスは、現在起きている事態について鼎に伝えた。脳内で情報を整理しながら、鼎は最善策を考え続けた。
「ペルタって長いオレンジ色の髪の子だよね。すぐには動けないけど、私がいるギルドのメンバーにメッセージを送る…ギルド名変わってるかな」
「助かります…私は鼎さんがいるギルド、ワーウルフズと協力して捜索します。進展があったら連絡します…」
通話が切れて、鼎はふと以前のギルド名を思い出す。“アルティメット気持ち良すぎだろギャラクシー”という、桃香のあまりに壊滅的なセンスから生み出された名前だ。
(ワウカ、ギルド名変えたんだ…まあギルドマスターの桃香がほとんどプレイしてなかったんだし、勝手に名前変えられても文句言えないだろうな)
桃香は先日起こした騒動のせいで、ギルド出入り禁止になった。ついでにギルドマスターもワウカに変わってしまった。
「大丈夫ですか?電話の相手はかなり焦ってるみたいでしたけど…」
「だからって私が焦っても事態は変わらない。ここで出来ることをやるよ」
「さっきゲームのNPCの話をしていましたが…」
「うん、lunar eclipse projectってゲームなんだけど…知ってる?」
「るな…いく?」
「やっぱり知らないか。だいぶマイナーなゲームだからね」
ナオはきょとんとした表情だったが、改めて真剣な顔になって鼎を見つめた。鼎もそんな彼女の顔を見て、これから何を言うのかを察した。
「鼎さんがここに来た目的は何ですか?ただのお客さんじゃ無いですよね…?」
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
────────
自筆です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる