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現代人の異能 異世界について
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「いせかい…?!何それ、私を家に帰して‼︎」
取り乱した仁子は涼子に詰め寄って、元の世界に戻せと要求した。涼子は困った様な表情をした後、渋々喋り始めた。
「私は自由に行き来出来るけど…あなた達を元の世界に戻す方法は知らないよ」
仁子の顔はどんどん青ざめていき、俺も涼子の無責任さに怒りを感じていた。元の世界に帰す方法も分からないまま、俺達をこの世界に放り出したのだ。
「お前は、どうやって世界を行き来しているんだ?」
「歪を開く、それが私の能力だよ」
二つの世界を自由に移動できるなんて、とんだチート能力だ。不幸なのはそんなチートが、俺には出来ないと言う事だった。
「改めて自己紹介しないとね。私は荒井涼子…リリィ達から見れば異世界人だね」
リリィ達は最初こそ驚いていたが、すぐに納得していた。俺達が異世界から来たのであれば、色々と辻褄が合うからだ。
「涼子は…どうやってそんな能力を手に入れたんだ?」
「どうやって?レイジ達も既に能力を得ているはずだよ」
俺の能力は先程盗賊に襲われた時には発動しなかった。本当に能力を得ているのか、或いは戦いの時には発動しない能力なのだろうか…
「ニコは?何か出来そう?」
「えっと…きゃっ?!」
異能力を突き止めようとしていた仁子の手のひらが光り、リップクリームが現れた。仁子自身も驚いて、現れたそれを落としそうになっていた。
「ニコの異能は物体を生成する能力だね」
「物体の生成?」
仁子は戸惑いながらも、別の物を生成しようと念じ始めた。しかし1分経っても、彼女の手のひらには変化は起きない。
「何を作ろうとしてるの?」
「扉を作りたいの。歪があれば帰れるんでしょ?」
仁子の目的を聞いた涼子は、すぐに呆れた様な表情になってしまった。俺も仁子の異能力では、恐らく帰れない事は分かっていた。
「ニコの能力は質量がある物の生成。歪は概念に近い存在だから作れないよ」
「そんな~すぐ帰れる能力が欲しかったのに…」
仁子はかなりガッカリしていたが、しょうがないだろう。元の世界に帰れる可能性が、一つ失われたのだから。
「涼子…何故俺達を巻き込んだ」
それは異世界に連れて来られた俺が、一番気になっている事だった。何の関係も無いはずなのに、どうしてこんな理不尽な目に遭わなければいけないのか。
「ある願いを…叶える為だよ」
「…は?」
涼子の個人的な願いのために、こんな目に遭っているのだとしたらやはり理不尽だ。とは言え、涼子に怒りをぶつけても事態の解決に繋がらないのは分かっている。
「そんな事よりお腹空いた~ご飯ないの?」
「はぁ?」
涼子の言動に呆れていたのは、俺だけでは無かった。リリィの家族も、涼子の事を怪しんでいる様子だった。
「…あなた達は私をあまり歓迎していないのね」
「当たり前だ。何が目的かも分からない…ただの強盗よりよほど不審だ」
涼子はその場の雰囲気を察して、魔法の様な力を使って家から出て行った。俺としては涼子にもう少し聞きたい事があったのだが、しょうがないだろう。
「その…俺は」
「しばらくこの家にいるといい。飯ぐらいなら用意できる」
俺と仁子は、リリィの父親の厚意に甘える事にした。この世界の金も何も持っていない人間が、助けを借りずに生き抜くのは困難だろう。
その日の夕食は、シチューと野菜炒めとパンだった。少なくともこの地域には、米を炊く文化は無さそうだ。
「美味い…シンプルな味付けだ」
「まぁ、ありがとう」
野菜炒めは塩と胡椒で味付けしたもので、シチューの具は人参と芋、鳥の肉だった。味付けは薄かったがこの状況で食事にありつける事が、ありがたかった。
「味薄い…もっと塩かけていい?」
「塩の摂り過ぎは…」
仁子からしてみれば、この味付けは薄過ぎるのだろう。リリィは塩分の摂り過ぎにならないか心配していた。
「その…いつまでここに居て良いですか」
「行き場が無くて困ってるんでしょ。取り敢えず村の仕事の手伝いをして過ごして」
リリィの母親であるエリーさんは、村の仕事の手伝いをして欲しいと言ってきた。要するにここに居て良いから、仕事の手伝いをしてとの事だ。
(もう一度涼子に話を聞くべきか…)
この国の話についてはリリィから聞けば良いが、歪の詳細やら他にも転移者がいるのかは涼子に聞く必要があった…とは言え、何処にいるのかも分からないので、闇雲に動くのは危険だが。
「うーむ…また近いうちに王都に向かわないと行けないな」
「またなのジョージ?大変ねぇ…」
リリィの父親であるジョージさんは、王都に用事があるらしい。ここから王都までの距離は俺達には分からないので、どれ程大変なのかは分からない。
夕食を食べ終わった後は、エリーさんに洗い物を手伝って欲しいと頼まれた。家の中に小さな井戸があり、そこから出る水を使って食器を洗った。
「この村の家全てに井戸を引いたのも、つい最近なのよ。職人を探すのも大変で…」
食器洗いを済ませた後は、リリィにこの場所についての話を聞く事にした。この村が、王都とは、この国はどんな場所なのかを、聞かなければいけなかった。
「何処から話せば…ええと、ここはライロという村で、私達エルフが集まって暮らしています。王都とはそう離れていない土地です」
この村は人口は少ないが、その分穏やかな場所だった。人々の暮らしは質素なものだが、特別貧しい人も居なさそうだった。
「さっき父さんが話していた王都とはレウニアスの事で、オリヴェル王国の王都です」
オリヴェル王国…俺の中では、中世ヨーロッパの国に近いかも知れない。とは言え、どうやら魔法が存在する世界の様だから、単純な比較はできないが。
「そう言えばこの国って平和なの?治安はどうなの?」
「盗賊もいるので治安が良いとは…」
「ええ…村から出ない方が良さそう…」
退屈そうに話を聞いていた仁子は、治安について聞いた。まぁ、俺も盗賊に襲われた訳だし、集落から離れた場所は危険だろう。
「さっき盗賊を倒した時に使っていたのは…」
「あれは魔法です。攻撃のため、防御のため…様々な種類があります」
「…私達にも使えるかな」
仁子は異世界人にも魔法は使えるのかを気にしていた。確かに、危険から身を守る手段としては最適だと言えた。
「ジョージさんは、王都にどんな用事があるんだ」
「村に住む人間が増えたから、その報告に行くんだと思う」
「はぇ~私達の為なのね…」
住民の数が増えた事を放って置くと、色々と不都合なのだろう。余所者である俺達を追い出す様な、冷酷な人間で無くて良かった。
「そう言えば…レイジは涼子と会った事があるの?」
「私もあの子のこと何も知らない…」
「…涼子に連れ回された挙句、この世界に来たんだ」
リリィに聞かれたので、自分の知っている範囲で涼子について話した。仁子の方は彼女について何も知らなかったみたいだ。
「涼子は村の外に出たのかな…」
「それは無いでしょう。この辺りも夜は盗賊や魔物が発生してかなり危険になります」
だとすれば、明日も涼子に話を聞ける可能性が高い。出来るだけ早く彼女を見つける為にも、今日はもう寝た方が良いかも知れない。
「流石に疲れた…風呂に入ったらすぐ寝ようかな」
リリィは先に入っていいと言ってくれたが、俺は遠慮した。結局、俺は一番最後に入る事になったが、そこまで遅い時間にはならなかった。
夜、俺は用意された寝室のベッドで寝る準備を済ませたが、この日はかなり疲労が溜まっていた。これからの事を少し考えたが、結局まとまらなかった。
「長い1日だった…」
俺は明日どうするのか、ひょっとしたら全部夢かも知れないなどと考えていたが答えは出なかった。
その日の俺は、夢を見る事も無かった。
取り乱した仁子は涼子に詰め寄って、元の世界に戻せと要求した。涼子は困った様な表情をした後、渋々喋り始めた。
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「お前は、どうやって世界を行き来しているんだ?」
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「改めて自己紹介しないとね。私は荒井涼子…リリィ達から見れば異世界人だね」
リリィ達は最初こそ驚いていたが、すぐに納得していた。俺達が異世界から来たのであれば、色々と辻褄が合うからだ。
「涼子は…どうやってそんな能力を手に入れたんだ?」
「どうやって?レイジ達も既に能力を得ているはずだよ」
俺の能力は先程盗賊に襲われた時には発動しなかった。本当に能力を得ているのか、或いは戦いの時には発動しない能力なのだろうか…
「ニコは?何か出来そう?」
「えっと…きゃっ?!」
異能力を突き止めようとしていた仁子の手のひらが光り、リップクリームが現れた。仁子自身も驚いて、現れたそれを落としそうになっていた。
「ニコの異能は物体を生成する能力だね」
「物体の生成?」
仁子は戸惑いながらも、別の物を生成しようと念じ始めた。しかし1分経っても、彼女の手のひらには変化は起きない。
「何を作ろうとしてるの?」
「扉を作りたいの。歪があれば帰れるんでしょ?」
仁子の目的を聞いた涼子は、すぐに呆れた様な表情になってしまった。俺も仁子の異能力では、恐らく帰れない事は分かっていた。
「ニコの能力は質量がある物の生成。歪は概念に近い存在だから作れないよ」
「そんな~すぐ帰れる能力が欲しかったのに…」
仁子はかなりガッカリしていたが、しょうがないだろう。元の世界に帰れる可能性が、一つ失われたのだから。
「涼子…何故俺達を巻き込んだ」
それは異世界に連れて来られた俺が、一番気になっている事だった。何の関係も無いはずなのに、どうしてこんな理不尽な目に遭わなければいけないのか。
「ある願いを…叶える為だよ」
「…は?」
涼子の個人的な願いのために、こんな目に遭っているのだとしたらやはり理不尽だ。とは言え、涼子に怒りをぶつけても事態の解決に繋がらないのは分かっている。
「そんな事よりお腹空いた~ご飯ないの?」
「はぁ?」
涼子の言動に呆れていたのは、俺だけでは無かった。リリィの家族も、涼子の事を怪しんでいる様子だった。
「…あなた達は私をあまり歓迎していないのね」
「当たり前だ。何が目的かも分からない…ただの強盗よりよほど不審だ」
涼子はその場の雰囲気を察して、魔法の様な力を使って家から出て行った。俺としては涼子にもう少し聞きたい事があったのだが、しょうがないだろう。
「その…俺は」
「しばらくこの家にいるといい。飯ぐらいなら用意できる」
俺と仁子は、リリィの父親の厚意に甘える事にした。この世界の金も何も持っていない人間が、助けを借りずに生き抜くのは困難だろう。
その日の夕食は、シチューと野菜炒めとパンだった。少なくともこの地域には、米を炊く文化は無さそうだ。
「美味い…シンプルな味付けだ」
「まぁ、ありがとう」
野菜炒めは塩と胡椒で味付けしたもので、シチューの具は人参と芋、鳥の肉だった。味付けは薄かったがこの状況で食事にありつける事が、ありがたかった。
「味薄い…もっと塩かけていい?」
「塩の摂り過ぎは…」
仁子からしてみれば、この味付けは薄過ぎるのだろう。リリィは塩分の摂り過ぎにならないか心配していた。
「その…いつまでここに居て良いですか」
「行き場が無くて困ってるんでしょ。取り敢えず村の仕事の手伝いをして過ごして」
リリィの母親であるエリーさんは、村の仕事の手伝いをして欲しいと言ってきた。要するにここに居て良いから、仕事の手伝いをしてとの事だ。
(もう一度涼子に話を聞くべきか…)
この国の話についてはリリィから聞けば良いが、歪の詳細やら他にも転移者がいるのかは涼子に聞く必要があった…とは言え、何処にいるのかも分からないので、闇雲に動くのは危険だが。
「うーむ…また近いうちに王都に向かわないと行けないな」
「またなのジョージ?大変ねぇ…」
リリィの父親であるジョージさんは、王都に用事があるらしい。ここから王都までの距離は俺達には分からないので、どれ程大変なのかは分からない。
夕食を食べ終わった後は、エリーさんに洗い物を手伝って欲しいと頼まれた。家の中に小さな井戸があり、そこから出る水を使って食器を洗った。
「この村の家全てに井戸を引いたのも、つい最近なのよ。職人を探すのも大変で…」
食器洗いを済ませた後は、リリィにこの場所についての話を聞く事にした。この村が、王都とは、この国はどんな場所なのかを、聞かなければいけなかった。
「何処から話せば…ええと、ここはライロという村で、私達エルフが集まって暮らしています。王都とはそう離れていない土地です」
この村は人口は少ないが、その分穏やかな場所だった。人々の暮らしは質素なものだが、特別貧しい人も居なさそうだった。
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オリヴェル王国…俺の中では、中世ヨーロッパの国に近いかも知れない。とは言え、どうやら魔法が存在する世界の様だから、単純な比較はできないが。
「そう言えばこの国って平和なの?治安はどうなの?」
「盗賊もいるので治安が良いとは…」
「ええ…村から出ない方が良さそう…」
退屈そうに話を聞いていた仁子は、治安について聞いた。まぁ、俺も盗賊に襲われた訳だし、集落から離れた場所は危険だろう。
「さっき盗賊を倒した時に使っていたのは…」
「あれは魔法です。攻撃のため、防御のため…様々な種類があります」
「…私達にも使えるかな」
仁子は異世界人にも魔法は使えるのかを気にしていた。確かに、危険から身を守る手段としては最適だと言えた。
「ジョージさんは、王都にどんな用事があるんだ」
「村に住む人間が増えたから、その報告に行くんだと思う」
「はぇ~私達の為なのね…」
住民の数が増えた事を放って置くと、色々と不都合なのだろう。余所者である俺達を追い出す様な、冷酷な人間で無くて良かった。
「そう言えば…レイジは涼子と会った事があるの?」
「私もあの子のこと何も知らない…」
「…涼子に連れ回された挙句、この世界に来たんだ」
リリィに聞かれたので、自分の知っている範囲で涼子について話した。仁子の方は彼女について何も知らなかったみたいだ。
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「それは無いでしょう。この辺りも夜は盗賊や魔物が発生してかなり危険になります」
だとすれば、明日も涼子に話を聞ける可能性が高い。出来るだけ早く彼女を見つける為にも、今日はもう寝た方が良いかも知れない。
「流石に疲れた…風呂に入ったらすぐ寝ようかな」
リリィは先に入っていいと言ってくれたが、俺は遠慮した。結局、俺は一番最後に入る事になったが、そこまで遅い時間にはならなかった。
夜、俺は用意された寝室のベッドで寝る準備を済ませたが、この日はかなり疲労が溜まっていた。これからの事を少し考えたが、結局まとまらなかった。
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